アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第289話

ルネジムの水上スタジアムに、空気を震わせる重厚な咆哮が轟いた。

進化の光が晴れた跡に立っていたのは、これまでのコドラとは比較にならない巨躯を誇る、鋼の帝王ボスゴドラだった。

漆黒の体躯を覆う白銀の装甲は、降りしきる雨を弾き飛ばし、その四肢は浮島を粉砕せんばかりの力強さで大地を掴んでいる。

 

「……素晴らしい。進化とは、単なる成長ではない。それはトレーナーとポケモンの絆が、物理的な限界を突破した瞬間の輝きだ」

ミクリさんが、まるで最高傑作の彫像を眺めるかのように目を細める。だが、その瞳の奥にある闘志は、一瞬たりとも衰えてはいなかった。

「だが、進化したてで私のギャラドスを抑え込めると思わないことだ! ギャラドス、『りゅうのまい』!!」

 

「ギャオオオオオォォォッ!!!」

ミクリさんの指示に応え、巨大な青い龍が水面を激しく叩きながら螺旋を描いて舞い上がる。

その動きに合わせて、ギャラドスの全身から禍々しいまでのオーラが噴出し、攻撃力と素早さが劇的に上昇していく。一回、二回……。瞬く間に積み重ねられるバフ。

「(まずいな。これ以上の強化を許せば、ボスゴドラの重装甲でも耐えきれなくなる。……一気に決めるぞ!)」

 

「ボスゴドラ、逃がすな! 『がんせきふうじ』で退路を断て!!」

ボスゴドラが巨大な拳を水面へと叩きつけた。

水底から巨大な岩の柱が次々と突き出し、上空で舞うギャラドスを包囲するように檻を形成する。

「無駄だよ! そんな岩など、今のギャラドスには羽虫の羽ばたきに等しい! 『アクアテール』!!」

ギャラドスがその巨大な尾を、荒れ狂う激流に変えて一振りした。

轟音と共に、ボスゴドラが作り出した岩の檻が、まるで硝子細工のように粉々に粉砕される。

 

「そのまま押し潰しなさい! 『ハイドロポンプ』!!」

至近距離からの、逃げ場のない水の激流。

「ボスゴドラ、耐えるな!! その水流の中に飛び込め!! 『ヘビーボンバー』だ!!」

俺の、あまりにも無謀な指示に、観客席のサトシたちが身を乗り出す。

ボスゴドラは真正面から迫りくる高圧の激流に向かって、自らその巨体を投げ出した。

重さ360キロを超える鋼鉄の質量が、水の圧力を強引に割り、弾丸となってギャラドスへと突き進む。

 

「何っ!? 正面から受け流すのではなく、突き抜けるだと!?」

驚愕するミクリさんの目の前で、ボスゴドラの鋼鉄の体当たりがギャラドスの無防備な腹部を直撃した。

空中で巨大な二体が激突し、凄まじい衝撃波がルネの街中に響き渡る。ギャラドスの巨体が、その重さに耐えきれず水面へと叩きつけられた。

 

「まだだ! ここで終わらせる!! ボスゴドラ、全エネルギーを角に集中させろ!! 『もろはのずつき』だぁぁぁッ!!」

ボスゴドラが、自身の命を削るほどの膨大なエネルギーを四本の角へと収束させた。

反動ダメージなど恐れない。この一撃に、俺たちがホウエンで歩んできたすべての時間を、すべてを叩き込む。

 

「ギャラドス!! 負けるな! 最大の『はかいこうせん』で迎え撃て!!」

ミクリさんもまた、優雅さを捨てた、剥き出しの叫びを上げる。

ギャラドスの口内に、世界のすべてを無に帰すような漆黒の破壊エネルギーが収束していく。

 

黄金の突進と、漆黒の光線。

二つの究極の技が、水上スタジアムの中央で、真っ正面から激突した。

 

視界が真っ白な閃光に染まる。

直後、ルネの地底湖が半分ほど消し飛んだのではないかと思えるほどの、巨大な水柱が立ち上がった。

衝撃波でスタジアムの強化ガラスが砕け散り、俺たちは必死に指揮台に掴まって耐えた。

 

長い、永遠にも感じられる数秒間。

やがて霧がゆっくりと晴れていった時。

フィールドには、荒い息をつきながらも、膝を屈することなく毅然と立ち尽くすボスゴドラの姿があった。

その足元には、完全に力を使い果たし、水面に浮かび上がったギャラドスの巨体。

 

「……ギャラドス、戦闘不能! よって勝者、挑戦者ミナト!!」

 

審判の宣言が、聖域の静寂を塗り替えた。

直後、割れんばかりの……、いや、世界が揺れるほどの地鳴りのような大歓声が巻き起こった。

「やった……! やったぜ、ボスゴドラ!!」

俺はフィールドへ駆け込み、相棒の硬い、そして誇らしい装甲に抱きついた。

「ボスゴォォォォォォォッ!!!」

ボスゴドラが勝利の勝どきを上げ、ルネの空に向かって咆哮した。

 

ミクリさんは、倒れたギャラドスを愛おしそうにボールに戻すと、ゆっくりと俺の元へ歩み寄ってきた。

「完敗だよ、ミナト君。……美しさの先にある、揺るぎない信念。君とボスゴドラが見せてくれたのは、まさしくホウエンの王者にふさわしい輝きだった」

ミクリさんは、その綺麗な手で、雨粒を模した美しい銀色の勲章を差し出した。

「これが、君の努力と絆の証。レインバッジだ」

 

「ありがとうございます。……一生、大切にします」

俺はバッジをしっかりと受け取り、高く掲げた。

これで、ついに8つ。

ホウエン地方のすべてのバッジが、俺の手元に揃ったのだ。

 

ジムの外へ出ると、サトシたちが笑顔で迎えてくれた。

「ミナト、すっげえよ! あのボスゴドラの進化、そして最後の一撃! 鳥肌が止まらねえぜ!」

サトシが興奮気味に俺の肩を叩く。

「本当ね、ミナト君。……私、なんだか泣きそうになっちゃった。最高のバトルだったよ」

ハルカが潤んだ瞳で俺を見つめる。

 

「おめでとう、ミナト。……これで、俺たちの目的地は一つになったな」

タケシが、遠く南の空を指差す。

「ああ。ホウエンリーグ・サイユウ大会。……そこで、本当の決着をつけようぜ、サトシ」

「望むところだ! 負けねえからな!!」

 

俺たちは夕日に染まるルネシティの街並みを背に、自分たちの足跡を確かめるように歩き出した。

これまでの旅で出会ったすべての人々、すべてのポケモン。

その想いを胸に、俺たちは最高峰の舞台へと向かっていく。

 

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