アニポケ転生者物語 作:投稿者
ルネシティの夜、祝祭の灯火
ルネジムでの激闘から一夜が明け、ルネシティは復興への確かな手応えと共に、穏やかな祝祭の夜を迎えていた。街の中央を流れる運河には色とりどりの灯籠が流され、白亜の壁にはバトルの興奮を思い出させるような光の演出が施されている。
俺たちは、ミクリさんが特別に用意してくれた、地底湖を一望できる高台のテラスで、ささやかな祝賀会に参加していた。
テーブルには、ホウエン地方の海の幸をふんだんに使った豪華な料理が並び、心地よい潮風が料理の香りを運んでくる。
「……これで、ついにバッジが全部揃ったんだな」
サトシが、バッジケースに並んだ8つの輝きを愛おしそうに見つめながら、しみじみと呟いた。
「ああ。長かったような、あっという間だったような……。でも、一歩一歩、自分たちの足で歩いてきた結果だ」
俺は自分のケースを開き、最後に加わったレインバッジの輝きを確認した。この一つ一つの石に、あの砂漠での特訓や、海底での死闘、そして仲間たちと笑い合った記憶が刻まれている。
「ミナト君、……君はリボン、あといくつなんだい?」
ミクリさんが、シャンパングラスを傾けながら優雅に尋ねてきた。
「今は3つです。ユノハナ、ハジツゲ、そしてシダケ。グランドフェスティバルまで、あと2つ足りません」
俺が正直に答えると、ハルカが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「ミナト君、大丈夫なの? グランドフェスティバルまでもう時間がないよ」
「分かってる。……だから明日、俺は一人でキナギタウンへ向かうつもりだ。あそこなら、ちょうど明日から大会が始まるはずだ」
「キナギタウン……。あそこは激しい海流に囲まれた、たどり着くことさえ困難な場所だよ。だが、君のミロカロスなら超えられるだろう」
ミクリさんが期待を込めた瞳で頷く。
「ハルカ、サトシ。お前たちは一足先にカイナシティへ向かってくれ。ハルカはグランドフェスティバルの調整、サトシはリーグに向けての準備が必要だろ」
「ミナト、本当に行くのか? 一人で大丈夫かよ」
サトシが心配そうに言うが、俺の決意は固かった。
「ああ。……自分を追い込んでみたいんだ。最高のステージに立つために、俺自身の限界を超えてくる。……必ず、5つのリボンを揃えてカイナシティに現れてみせるよ」
リーグへの登録、高鳴る鼓動
翌朝、俺とサトシは、ルネシティのポケモンセンターにある専用端末の前に立っていた。
画面には『ホウエンリーグ・サイユウ大会 参加登録』の文字が躍っている。
「行くぜ、ピカチュウ!」
サトシが力強くエントリーボタンを押す。続いて、俺も自分のIDをスキャンさせた。
『ピポォン。エントリー完了。……挑戦者ミナト、挑戦者サトシ。開催地はホウエン地方最東端、サイユウシティ。……本大会は、グランドフェスティバル終了から二週間後の開催となります。健闘を祈ります』
「一ヶ月と少し、か。……ミナト、リーグで戦うのを楽しみにしてるぜ!」
サトシが拳を突き出す。俺はその拳に自分の拳を軽く合わせた。
「ああ。……俺もだ。だがその前に、俺たちのコンテストでの決着が先だな、ハルカ」
「うん! 負けないからね、ミナト君! カイナシティで待ってるわ!」
出航の時、分かたれる航路
ルネシティの巨大な水門が開かれ、俺たち一行を乗せた船がゆっくりと港を離れていく。
だが、この船は途中の分岐点で二手に分かれることになる。
サトシ、ハルカ、タケシ、マサトの一行は、定期船でグランドフェスティバルの会場、カイナシティへ。
そして俺は、ペリッパーの背に揺られ、一路、南の果て『キナギタウン』へと翼を広げる。
「じゃあな、みんな!! カイナシティで会おうぜ!!」
「ミナト君!! 絶対に間に合ってね!! リボン、信じてるから!!」
船のデッキで、ハルカたちが千切れんばかりに手を振っている。
俺はペリッパーの背から、彼らの姿が小さくなるまで手を振り続けた。
「……さて、行くぞ。ペリッパー、ミロカロス、サーナイト。……俺たちの本当の『挑戦』は、ここからだ」
俺は懐のバッジケースと、3つのリボンが入ったケースを交互に見つめた。
ホウエン地方、ジム巡りの旅・完。
ここからは、時間という名の壁を突き破り、栄光の舞台へと駆け上がるための孤独なレースが始まる。
俺たちの「現実」は、ここからさらなる高みへ、誰も見たことのない極致へと加速していく。
水平線の向こうに見える激しい白波。
キナギタウン。そしてその先にある夢の舞台を目指して、俺たちは風の中に消えていった。