アニポケ転生者物語   作:投稿者

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dアニメストアでポケモンやっているんですね。


第295話

一次審査を突破した64名のコーディネーターによる、二次審査トーナメントが幕を開けた。

ここからは、2匹のポケモンを同時に繰り出すダブルバトル形式。華やかさの裏で、相手のポイントをいかに削り、自分たちの美しさを守り抜くかという、コンテスト特有の高度な戦術が求められる。

スタジアムを包む空気は、一次審査のそれよりも一段と鋭く、真剣勝負の気配に満ちていた。

 

ハルカのトーナメント一回戦の相手は、因縁の深い相手――ハーリーだった。

「あらぁ〜ハルカちゃん!また会ったわね〜!」

紫色の禍々しい衣装を翻し、独特のステップでハーリーがステージに登場する。会場の一部からは、彼の熱狂的なファンと思われる人々からの悲鳴に近い歓声が上がった。

「今回は手加減なんてしないからね!私の愛おしいノクタスちゃんと、呪いの人形ジュペッタちゃんで、あんたのその能天気な顔を絶望に染めてあげるわ!」

「ハーリーさん……!今度は、あなたの罠にはまりません。全力で戦います!」

ハルカは緊張に強張る顔を上げ、凛とした声で宣言した。

「ふん、精々威勢がいいのは今のうちだけねぇ。……うふふ、楽しみ!」

ハーリーの細められた瞳の奥で、粘りつくような悪意が揺れている。彼はこれまで、偽造された手紙や嘘の情報で何度もハルカを心理的に追い詰めてきた。この試合でも、どんな盤外戦術を仕掛けてくるか分かったものではない。

 

「二次審査、第16試合、バトルスタート!」

リリアンの合図と共に、両者がボールを投げた。

「負けません!……行こう、アゲハント!フシギダネ!」

「呪いなさい、ジュペッタ!棘で刻みなさい、ノクタス!」

ハルカは飛行タイプのアゲハントと、搦め手を得意とするフシギダネ。対するハーリーは、不気味な笑みを浮かべるジュペッタと、巨大な棘を持つノクタスを繰り出した。

 

「ノクタス、『ミサイルばり』!ジュペッタ、援護の『シャドーボール』よ!」

ハーリーの攻撃は苛烈かつ、的確だった。ノクタスの全身から放たれた無数の光る棘が、雨のようにハルカたちを襲う。その後ろからは、ジュペッタが放った漆黒のエネルギー弾が死角を縫うように迫っていた。

「アゲハント、『ぎんいろのかぜ』で相殺して!フシギダネ、『つるのムチ』でジュペッタを捕まえて!」

アゲハントが鱗粉を輝かせながら放った銀色の突風が、ノクタスの棘をいくつか弾き飛ばす。その隙を突いてフシギダネの蔓が蛇のように伸びるが、ハーリーはニヤリと唇を歪めた。

 

「甘いわよ!ジュペッタ、『かげうち』!」

「ジュペ……!」

実体を影に溶け込ませたジュペッタが、フシギダネの蔓をすり抜け、その直後にフシギダネの背後の影からヌッと現れた。

「フシギダネ、後ろ!危ない!」

「そこよ!『おにび』!」

至近距離からの青白い炎が、回避の間に合わなかったフシギダネを直撃する。

「ダネェッ!?」

フシギダネの体が赤い光に包まれ、火傷状態に陥る。物理攻撃力が削られるだけでなく、継続的にダメージを受け続ける最悪の状態だ。

オーロラビジョンに映し出されたハルカのポイントが、一気に3割近く削られる。

「ああっ!ポイントが……!」

ハルカの顔に焦りの色が浮かぶ。それを逃さず、ハーリーの舌戦が追い打ちをかけた。

「あらあら、もう泣きそう?あんたのフシギダネちゃん、熱そうで可哀想ねぇ!早く楽にしてあげたらどうかしらぁ?」

 

観客席の最前列で、俺はデバイスの網膜ディスプレイを走るデータを見つめていた。

(フシギダネの心拍数が上がってる。ハルカの焦りがポケモンにも伝染しているな……。だが、ハーリーの配置には偏りがある)

ハーリーのノクタスは、ジュペッタを護衛するように『ニードルガード』で防御を固めつつ、カウンターの構えをとっている。鉄壁の防御と、回避不能のトリッキーな動き。典型的な、相手を焦らせてミスを誘う戦法だ。

「ハルカ、落ち着け……。お前の特訓は、そんな安っぽい悪意に負けるようなものじゃないはずだ」

隣でマサトが「お姉ちゃん、頑張って!」と声を枯らして応援している。タケシも「火傷は痛いが、アゲハントのサポートがあればまだ道はある」と冷静に戦況を見守っていた。

 

ステージ中央に立つハルカは、一旦目を閉じて大きく息を吸い込んだ。

(……ダメ、相手のペースに乗せられちゃ。ミナト君も言ってた。データと感情を切り離して、今の自分たちにできる最善を探すんだ)

ハルカの脳裏に、これまでの旅路と、ミナトと共に繰り返した特訓の光景が浮かぶ。

「……大丈夫。私たちなら、絶対できる。アゲハント、フシギダネ!信じてるよ!」

ハルカの呼びかけに、火傷の痛みに耐えていたフシギダネが力強く鳴いた。アゲハントもまた、その大きな翅を力強く羽ばたかせ、銀色の粉を舞わせる。

 

「アゲハント、フシギダネの背中に止まって!」

「え?何よそれ、心中でもするつもりぃ?」

ハーリーが怪訝そうに眉を潜める。アゲハントがフシギダネの背中の蕾の上に降り立つと、二匹の呼吸がピタリと一致した。

「フシギダネ、最大パワーで『ソーラービーム』のチャージ!アゲハントは『あさのひざし』よ!」

「なっ、なんですって!?」

ハーリーの驚愕も無理はない。本来、日光を蓄える必要がある『ソーラービーム』は、この屋内スタジアムではチャージに時間がかかる。だが、アゲハントが放つ強力な回復と光のエネルギー――『あさのひざし』が、至近距離からフシギダネの蕾に直接注ぎ込まれた。

 

光の粒子が猛烈な勢いで収束していく。フシギダネの蕾が、太陽そのもののように白熱し、スタジアム中の照明を飲み込むほどの輝きを放ち始めた。

「チャージが早すぎるわ!?ノクタス、ジュペッタ、今のうちに叩き潰しなさい!!」

ハーリーが血相を変えて叫ぶが、もう遅い。

「行くよ!合体技、『ソーラー・バタフライ』!!」

 

フシギダネの口から放たれた極太のビームを、その直上にいたアゲハントが大きく広げた翅で受け止め、細かく屈折・拡散させた。

ただの直線的な攻撃ではない。それは、何千、何万という光の蝶が舞い散るような、美しくも苛烈な光の嵐となってステージ全体を飲み込んだ。

「嫌ぁぁぁん!!眩しすぎるわぁぁ!!」

ハーリーが顔を覆う。ノクタスの『ニードルガード』も、ジュペッタの回避も、逃げ場のない光の奔流の前には無力だった。

 

激しい爆音と光の残滓が消えた後、そこには目を回したノクタスとジュペッタが横たわっていた。

一瞬の静寂の後、会場全体が地鳴りのような大歓声に包まれる。

「ノクタス、ジュペッタ、戦闘不能!よって勝者、ハルカ選手!!」

「やったぁぁぁ!やったよ、アゲハント、フシギダネ!!」

ハルカが二匹に駆け寄り、抱きしめる。フシギダネも火傷の痛みを忘れたように、嬉しそうに蔓をハルカに巻き付けた。

「……チッ、最後の最後で何よあのデタラメな技。本当にムカつくわねぇ、あんたたち……」

ハーリーは忌々しそうにポケモンをボールに戻したが、去り際に一瞬だけハルカを振り返った。

「……でも、まあ。その技のセンスだけは、認めてあげなくもないわ。……精々、次の相手にコテンパンにされなさい!」

ハーリーらしい、毒を含んだエールを残して、彼はステージを去っていった。

 

「強くなったな、ハルカ」

観客席から降りてきた俺に、ハルカは満面の笑みで駆け寄ってきた。

「ミナト君!見た?今のコンボ、ミナト君のペリッパーの演技を見て思いついたんだよ!」

「ああ、お前の応用力には驚かされた。……だが、喜んでいる暇はないぞ。今の試合の結果、次の対戦相手が決まった」

俺が指差したオーロラビジョンには、最新のトーナメント表が映し出されていた。

 

そこにあるのは、避けられない残酷な現実。

準々決勝、第1試合。

『ハルカ vs ミナト』

 

「……来たか」

俺の呟きに、ハルカの表情も引き締まった。

これまで共に旅をし、支え合ってきたパートナー。そして今、想いを通わせつつある大切な相手。

だが、ここはグランドフェスティバル。夢を叶えるために、誰一人として譲れない舞台だ。

俺とハルカは、互いの瞳の奥にある静かな、しかし決して消えない闘志を確認するように、じっと見つめ合った。

運命の対決が、今、始まろうとしていた。

 

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