アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第296話

「準々決勝、第1試合。ハルカ選手 対 ミナト選手!!」

司会者のリリアンの声が、スタジアムを埋め尽くした数万人の観衆の絶叫にかき消された。

カイナシティの巨大ドームが、これまでの試合とは明らかに異なる、異様なほどの熱気に包まれている。

ホウエン地方の期待の星として成長した「トウカシティのハルカ」。

そして、カントー地方から現れ、精密なデータと圧倒的な「美」で会場を魅了し続ける異質のコーディネーター「マサラタウンのミナト」。

共に旅をし、支え合ってきた二人が、ついにグランドフェスティバルの準々決勝という最高の舞台で激突する。

 

ステージに向かう薄暗い通路で、俺たちは互いに一歩も譲らず並んで歩いていた。

「……ついに来たね、この時が。ミナト君」

ハルカの横顔は、緊張で強張りながらも、見たこともないほど澄み切った瞳をしていた。

「ああ。正直、決勝まで当たりたくはなかったが……運命ってやつかな」

俺は腰のモンスターボールに手をかけ、その冷たい感触に集中する。

「手加減はしないぞ、ハルカ。お前がハーリーを倒したあのコンボ、俺も本気で攻略させてもらう」

「望むところよ! 私だって、ミナト君の背中ばかり追いかけてきたわけじゃないんだから!」

二人の視線がぶつかり、火花が散る。そこにあるのは敵意ではなく、互いの全力を引き出したいという純粋な闘志だった。

 

光り輝くステージへと足を踏み出す。数万人の視線と、無数のフラッシュが俺たちを射抜く。

観客席の最前列では、サトシがピカチュウと一緒に身を乗り出し、「ミナト! ハルカ! 最高のバトルを見せてくれよ!」と声を枯らして叫んでいた。タケシも、マサトも、言葉を失ったようにこの対決を見守っている。

シュウは、少し離れた位置から静かに腕を組み、その冷徹な瞳で俺たちの配置を分析していた。

 

「二次審査、準々決勝、第1試合! バトルスタート!」

俺たちは同時にボールを投げた。

「美しさの頂点を見せてやれ! サーナイト! ミロカロス!」

「情熱と元気を届けよう! ワカシャモ! エネコ!」

俺のフィールドには、純白のドレスを纏ったようなサーナイトと、虹色の鱗を輝かせるミロカロスが降り立つ。完璧に統制された静の美。

対するハルカのフィールドには、闘志を全身から放つワカシャモと、愛らしくも機敏なエネコ。エネルギーと動の美の対照的な組み合わせだ。

 

「サーナイト、『マジカルシャイン』! ミロカロス、高圧の『ハイドロポンプ』!」

俺は開幕から最大出力の連携を仕掛けた。サーナイトが放つ多色の輝きがステージ全体を照らし出し、そこにミロカロスが放つ水流が交差する。

光が水流に屈折し、無数の虹色の矢となってハルカたちを襲う。

「ワカシャモ、『ほのおのうず』で防御! エネコ、『ふぶき』を空中に!」

ハルカの反応も速い。ワカシャモが放った炎が自分たちを包むドーム状の壁となり、俺の攻撃を遮断する。それと同時に、エネコが上空に放った冷気が、炎との温度差でステージに幻想的なダイヤモンドダストを発生させた。

炎の赤と、氷の白。その対比に観客からため息が漏れる。オーロラビジョンのポイントは、ほぼ互角の削り合いを見せた。

 

「(やるな……。だが、計算の速さならこちらが上だ!)」

俺はデバイスでハルカのポケモンの重心移動を解析し、次の一手を指示する。

「ミロカロス、エネコの『ふぶき』を『ミラーコート』で吸収し、変換しろ!」

ミロカロスがその美しい体をくねらせ、エネコの冷気を真正面から受け止めた。普通ならダメージを受けるはずだが、ミロカロスの特性と俺の技術介入がそれを「美しさ」に変える。冷気を吸収した鱗がオーロラのような光を放ち、倍以上の威力となった冷気の奔流がハルカの足元を狙う。

「ニャッ!?」

凍てつく衝撃に、機動力の要であるエネコが大きく吹き飛ばされる。ハルカのポイントが大きく減少した。

 

「エネコ! ……負けてられないわ! ワカシャモ、お願い! 『スカイアッパー』!」

ハルカは守りに入らず、攻めの姿勢を崩さない。ワカシャモがステージを蹴り、驚異的な跳躍で空中のサーナイトへと迫る。

「サーナイト、『サイコキネシス』で捕まえろ!」

サーナイトが右手を差し出し、不可視の念力がワカシャモの動きを縛ろうとする。だが、ワカシャモは空中で身をよじり、噴射される炎を足場にするかのような独自の体捌きで念力の網を強引に突破した。

「速い!!」

「そのままサーナイトへ! 最大火力の『ブレイズキック』!」

ワカシャモの右足に猛烈な炎が宿る。

 

「サーナイト、『テレポート』!」

俺の指示と同時に、サーナイトが空間に溶け込むように消えた。ワカシャモの蹴りは空を切るが、その残された炎がステージ上で大きな花のように弾け、俺のポイントを減少させる。

一進一退。俺のチームは、計算された完璧な連携と、圧倒的な統制で魅せる。対するハルカのチームは、躍動感あふれる動きと、底知れない「パッション」で会場を沸かせる。

 

観客席からは、「どっちもすごい!」「なんてハイレベルなコンテストバトルなんだ!」という驚嘆の声が止まない。

俺は激しい鼓動を感じていた。

勝負の最中なのに、俺は微かに笑みを浮かべていた。デバイスのデータだけでは計れない、魂のぶつかり合い。

ハルカの顔を見ると、彼女もまた同じように、汗を光らせながら最高に輝く笑顔を俺に向けていた。

言葉を交わさなくても分かる。俺たちは今、この旅で培ってきた全てを相手にぶつけ、認め合っているのだ。

 

「ミナト君! 私たちの全力、もっと見せてあげる!」

「ああ! 来い、ハルカ! 俺とサーナイトたちが、その輝きごと飲み込んでやる!」

 

残り時間はあと2分を切った。

ポイントは依然として数ミリの差で拮抗している。

だが、ハルカのワカシャモの瞳に、これまでにないほど激しい闘志の炎が宿ったのを俺は見逃さなかった。

 

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