アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第298話

グランドフェスティバル準決勝。

247名から始まったこの祭典も、残るは4名。スタジアムの熱気は飽和状態に達し、観客の歓声はもはや地鳴りのように会場を震わせている。

ハルカの対戦相手は、彼女がコーディネーターとして歩み始めた当初からの最大のライバルであり、幾度となくその高い壁に跳ね返されてきた相手――シュウだった。

 

「待っていたよ、ハルカ。……君がミナトに勝ち、ここまで登ってくるとはね」

シュウはいつも通りの涼やかな表情で、しかしその瞳には隠しきれない本気の闘志を宿してステージに立っていた。

「シュウ……。今日こそ、あなたに勝つ。それが私の、そしてミナト君の分まで戦うっていう約束だから!」

ハルカは、ミナトに託されたバトンを握りしめるように胸に手を当て、力強く宣言した。

 

「準決勝、第1試合! バトルスタート!」

「君の成長、この手で確かめさせてもらうよ。フライゴン、ロゼリア!」

「ワカシャモ、フシギダネ! 私たちの全力、見せてあげる!」

シュウが繰り出したのは、砂漠の精霊フライゴンと、美しき毒花ロゼリア。対するハルカは、ミナト戦でも活躍したエース、ワカシャモとフシギダネの布陣だ。

 

「フライゴン、『りゅうのはどう』! ロゼリアは空中から『マジカルリーフ』だ!」

シュウの攻撃は、流れるように美しく、そして致命的だった。フライゴンがロゼリアを背に乗せて高く舞い上がり、上空から青い炎の奔流を放つ。さらにロゼリアが周囲に散らした虹色の葉が、意思を持っているかのような複雑な軌道を描いてハルカたちを包囲した。

「フシギダネ、空中へ『はっぱカッター』! ワカシャモ、『ほのおのうず』で自分たちを護って!」

ハルカも応戦するが、シュウのコンビネーションは一枚上手だった。ロゼリアの葉が炎の渦の隙間を縫うようにしてフシギダネを捉え、フライゴンのブレスがハルカのポイントをジリジリと削り取っていく。

 

(シュウはロゼリアの技でハルカの視界と注意を奪い、フライゴンの高火力でトドメを刺す構えか。三次元的な波状攻撃……ハルカ、どう突破する?)

俺は観客席でサトシたちと共に、固唾を飲んでステージを見守っていた。

シュウは、フライゴンの機動力を最大限に活かし、ロゼリアを空中砲台として運用している。地上からでは届かない高さ。だが、ハルカの瞳に絶望の色はなかった。

 

「フシギダネ、ワカシャモの『ジャンプ台』を作って! 『つるのムチ』、最大出力!」

フシギダネがステージに叩きつけた2本の蔓が、バネのようにしなり、ワカシャモを天高くへと弾き飛ばした。

「ワカシャモ、一気に決めるよ! 『スカイアッパー』!」

驚異的な垂直跳躍。空中のフライゴンに、ワカシャモの拳が届こうとしたその瞬間――。

「無駄だよ。フライゴン、そのまま横へ旋回」

シュウの冷静な指示。フライゴンが羽ばたき一つでワカシャモの軌道をかわし、逆に反撃の態勢に入る。

「逃がさない! フシギダネ、『やどりぎのタネ』を散布!」

 

ワカシャモが空中でスカ振ったその刹那、地上から放たれた無数の種が、フライゴンの翼に吸い付くように絡みついた。

「なっ……!? 上空の気流を読んで、種の散布を!?」

シュウが初めて驚愕の表情を見せる。動きを封じられたフライゴンが失速し、空中で一瞬の隙が生じた。

「今よ! ワカシャモ、もう一度跳ねて!!」

ワカシャモは空中で自らの足に炎を纏わせ、その爆発的な推進力を利用して二段ジャンプを敢行した。これこそ、ミナトとの特訓で培った機動力だ。

 

強烈なアッパーカットがフライゴンの顎を直撃し、背中に乗っていたロゼリアもろとも墜落させる。

「ロゼリア、『ソーラービーム』で立て直せ!」

シュウが土壇場で最大火力のカウンターを命じる。

「ワカシャモ、最後よ! 全身のエネルギーをぶつけて! 『オーバーヒート』!!」

 

激突する光と炎。

スタジアムが真っ白な閃光に包まれ、次の瞬間、爆風が吹き荒れた。

煙が晴れた時、そこには――。

 

「……フライゴン、ロゼリア、戦闘不能! 勝者、ハルカ選手!!」

 

「やったぁぁぁぁぁ!!」

ハルカが膝をつき、勝利の喜びに震える。バトルの終了を告げるブザーと共に、会場は割れんばかりの歓声と「ハルカ」コールに包まれた。

シュウはゆっくりとポケモンをボールに戻すと、静かにハルカの元へ歩み寄った。

「……完敗だ。君の情熱が、僕の計算を超えたよ。強くなったね、ハルカ」

シュウは懐から一輪の深紅のバラを取り出すと、それをハルカに向けて軽く投げ渡した。

「決勝、一番いい席で見てるよ。……必ず、トップコーディネーターになってくれ」

 

ハルカはバラを大切に受け取り、涙を拭って力強く頷いた。

ついに、決勝戦。

ホウエン地方のコーディネーターが憧れる頂の舞台。

ハルカの夢まで、あと一つ。

俺は立ち上がり、ステージ上の彼女に向けて、最高級の拍手を送り続けた。

 

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