アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第299話

グランドフェスティバル決勝戦。

スタジアムは今、この地上で最も華やかで、そして最も過酷な場所へと変貌していた。

幾多の激戦を勝ち抜き、最終ステージに辿り着いた二人のコーディネーター。

一人は、新進気鋭のチャレンジャーとして快進撃を続けてきたハルカ。

そしてもう一人は、現役のトップコーディネーターであり、完璧な礼儀作法と圧倒的な実力から「コンテストの貴公子」と称される最強の壁――ロバート。

 

「君のこれまでの演技、全て見させてもらったよ。とても情熱的で、生命の輝きを感じる素晴らしいものだった」

ロバートは優雅な所作で一礼し、穏やかな、しかし逃げ場のないプレッシャーを纏った声で続けた。

「……だが、私の積み上げてきた美学の前では、その情熱も一瞬の徒花に過ぎない。君がどこまで耐えられるか、楽しませてもらおうか」

ロバートがボールを放つ。そこから現れたのは、虹色の鱗を持つ「水の美の極致」ミロカロス。そして、古代の神秘を体現したような、六つの瞳を持つネンドール。

二匹が並び立つだけで、フィールドの空気が静謐な神秘に塗り替えられていくのが分かった。

 

「行こう、ワカシャモ! フシギダネ! 私たちの集大成、全部ぶつけよう!」

ハルカも震える手でボールを投げ、相棒たちを繰り出した。

だが、試合開始の合図と共に、会場の誰もが「頂点」の真の恐ろしさを目の当たりにすることになる。

 

「ミロカロス、『しんぴのまもり』。ネンドール、『サイコキネシス』」

ロバートの指示は短く、冷徹なまでに的確だった。ミロカロスが放つ淡い光のヴェールが自分たちを包み込み、ハルカの仕掛けるあらゆる状態異常や搦め手を完全に封殺する。さらにネンドールの不可視の念動波がフィールド全体を支配し、ワカシャモとフシギダネの自由な動きを奪っていく。

「ワカシャモ、強引に突破して! 『かえんほうしゃ』!」

「無駄だよ。ミロカロス、『ミラーコート』」

ワカシャモが吐き出した灼熱の炎が、ミロカロスの美しい鱗に触れた瞬間、倍以上の威力を持つ水の波動となって跳ね返された。

「ワカシャモ!!」

自分の技に飲み込まれ、ワカシャモが壁際まで吹き飛ばされる。ハルカのポイントが、かつてない速度で減少していく。

 

「フシギダネ、最大パワーの『ソーラービーム』!!」

「ネンドール、『はかいこうせん』で迎え撃ちなさい」

スタジアムを二分する光線の衝突。だが、パワーの差は歴然だった。ネンドールの放つ破壊の光が、フシギダネのビームを強引に押し返し、そのままフシギダネを爆炎の中に沈めた。

 

「つ、強い……。今までの相手とは、次元が違いすぎるわ……」

観客席でサトシが拳を握りしめ、冷や汗を流している。タケシも「ロバートには隙がない。ハルカの情熱を、全て計算と技術でいなしてしまっている」と顔を歪めた。

俺はデバイスを握りしめ、網膜ディスプレイに表示される残り時間とポイント差を凝視していた。

(残り3分。ポイント差は7対3。……ハルカの攻撃は全て読まれている。ロバートの『美学』は、相手の努力すらも自分を引き立てるための素材に変えてしまうのか)

スタジアムの観客も、ロバートの圧倒的な優雅さに魅了されつつあった。空気は次第に「ロバートの連覇」を確信する、残酷な静寂に支配されていく。

 

「(諦めちゃダメだ……! ここで終わったら、応援してくれたみんなに顔向けできない。……ミナト君との、あの約束も!)」

ハルカは膝をつきそうになる体を必死に支え、唇を強く噛み締めた。その衝撃で血の味がしたが、おかげで意識が研ぎ澄まされる。

「ワカシャモ、フシギダネ! まだ、まだやれるよね!? 私たち、あんなに練習したもんね!」

「チャモッ!!」「ダネッ!!」

二匹は全身に傷を負いながらも、ハルカの声に応えて立ち上がった。その瞳には、敗北など微塵も受け入れていない、狂おしいほどの闘志が燃え盛っている。

 

「……いい目だ。その不屈の意志こそが君の美しさの源か。だが、終わりだ」

ロバートの瞳に、初めて憐憫ではない、対戦相手への「敬意」を込めた冷徹な光が宿った。

「ミロカロス、最大出力の『ハイドロポンプ』! ネンドール、それを加速させる『サイコキネシス』! 総攻撃だ、すべてを終わらせなさい」

ステージ全体を飲み込むほどの巨大な水流が、ネンドールの念力によって螺旋状に圧縮され、回避不能の超高速の槍となってワカシャモたちへと肉薄する。

 

「ワカシャモォォォ!!」

ハルカの絶叫がスタジアムに響き渡った、その時。

絶望的な濁流を前にして、ワカシャモの全身から、凄まじいまでの紅蓮の光が溢れ出した。

(特性『もうか』? いや、この光はもっと根源的な……!)

俺は反射的に立ち上がった。

スタジアム中の視線を一身に集め、ワカシャモのシルエットが激しく変化していく。

それは、限界を超えた情熱が、新たな可能性の扉をこじ開けた瞬間だった。

 

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