アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第300話

まばゆい進化の光がスタジアムを支配し、ロバートの放った絶望的な水流を真っ向から押し返した。

光の中から立ち上がったのは、ワカシャモの面影を色濃く残しながらも、より長くしなやかな脚、鋭い鉤爪、そして手首から絶え間なく溢れ出す灼熱の炎を持つ、威風堂々たる姿だった。

 

「バシャアァァァッ!!」

咆哮一閃。猛火ポケモン、バシャーモ。

その圧倒的な存在感に、数万人の観衆が息を呑み、次の瞬間、スタジアムが崩れんばかりの地鳴りのような歓声に包まれた。

 

「進化した!? この最終局面で、限界を超えたのか!」

ロバートが初めてその優雅な仮面を崩し、目を見開いて驚愕する。

「すごい……。バシャーモ! あなた、私たちの想いに応えてくれたんだね!」

ハルカの瞳に、溢れんばかりの涙が溜まる。だが、彼女はそれを拭うことなく、鋭い眼差しで前を見据えた。

「行くよ、バシャーモ、フシギダネ! 反撃開始!」

 

バシャーモは、その驚異的な脚力でステージを一蹴した。

一瞬で距離を詰め、迫りくるミロカロスの『ハイドロポンプ』を、炎を纏った回し蹴りで真っ二つに切り裂く。蒸気が爆発し、霧となった水滴がバシャーモの炎に照らされて、黄金の粒子となって舞い散る。

「バシャーモ、『ブレイズキック』!!」

目にも止まらぬ速さの跳躍。バシャーモは空中で身を翻し、重力と遠心力をすべて乗せた炎の蹴りをミロカロスへと叩き込む。

「ミロカロス、回避だ!」

ロバートの指示も速いが、進化したバシャーモの機動力は計算を遥かに凌駕していた。

炎の衝撃がミロカロスを直撃し、フィールドの端まで吹き飛ばす。効果はいまひとつのはずだが、その威圧感と美しさに、オーロラビジョンのロバートのポイントが大きく削り取られた。

 

「ネンドール、援護を! 『サイコキネシス』で動きを止めろ!」

「させない! フシギダネ、『つるのムチ』でネンドールを空中で捕まえて!」

バシャーモの背後から伸びたフシギダネの蔓が、念力を放とうとしたネンドールの体を蛇のように締め上げる。

自由を奪われたロバートの布陣に、ハルカが最後の、そして最大の賭けに出る。

 

「今だ! バシャーモ、最大出力! 私たちのすべてを、この一撃に!! 『ブラストバーン』!!」

バシャーモが拳を地面に叩きつけた瞬間、スタジアムが激しく揺れた。

大地が割れ、そこから灼熱のマグマが噴き出すかのように、巨大な炎の柱がいくつも立ち上がる。それは破壊の炎でありながら、ハルカの情熱をそのまま形にしたかのような、美しく、気高い紅蓮の舞だった。

「究極の炎技……! 逃げ場はないぞ、ロバート!」

俺は観客席で拳を握りしめた。

ネンドールとミロカロスが、逃げる術もなく炎の柱に飲み込まれていく。その爆炎の中ですら、ハルカのバシャーモは毅然としたポーズを保ち、自らの炎をコントロールして「美しさ」を演出してみせた。

 

スタジアムを震撼させる大爆発。

そして、その後に訪れたのは、耳が痛くなるほどの静寂だった。

もうもうと立ち込める煙が、潮風に流されてゆっくりと消えていく。

 

煙が晴れた時、そこには――。

戦闘不能となったミロカロスとネンドール。

そして、傷だらけになりながらも、ハルカを背負うようにして、しっかりと大地を踏み締めて立つバシャーモとフシギダネの姿があった。

 

タイムアップのブザー。

オーロラビジョンの最終スコアは、最後の『ブラストバーン』による大逆転劇によって、ハルカのポイントがロバートをわずかに、しかし確実な差で上回っていた。

 

「……ミロカロス、ネンドール、戦闘不能! よって、今大会の優勝者は、トウカシティのハルカ選手です!!」

 

「やったぁぁぁぁぁ!!」

ハルカがその場に泣き崩れた。

バシャーモが優しく、その逞しい腕でハルカを抱き起こす。フシギダネもハルカの足元に擦り寄り、共に勝利を喜び合った。

会場を揺るがす、これまでにないほどの大歓声。

新しいトップコーディネーターの誕生。その歴史的な瞬間に、スタジアム中の誰もが立ち上がり、惜しみない拍手を送っていた。

 

「おめでとう、ハルカ。……最高にかっこよかったぜ」

俺も立ち上がり、視界が滲むのを感じながら、ステージ上の彼女に向けて言葉を送った。

ロバートが、静かにハルカへと歩み寄る。

「完敗だ。……君たちの熱い情熱が、私の美学を跡形もなく溶かしてしまったよ。素晴らしいバトルだった。おめでとう、新しいトップコーディネーター」

彼は誇り高き敗者として、晴れやかな笑顔でハルカの手を取り、その健闘を称えた。

 

ハルカは震える手で、黄金に輝くリボンカップを高々と掲げた。

その瞳は、涙と喜びでキラキラと輝き、スタジアムのどの照明よりも美しく、眩しかった。

これまでの苦労、涙、ミナトと共に歩んだ日々。そのすべてが、この一瞬の輝きのためにあった。

ハルカの夢が、最高の形で叶った瞬間だった。

 

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