アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第304話

激しい特訓の連続から一夜明け、俺は今日を「完全休養日」と定めた。

リーグ本番の極限状態を前に、張り詰めすぎた精神の糸を一度緩めることも、テスターとしての、そして一人のトレーナーとしての重要な管理業務だ。

俺はサトシ、ハルカ、マサト、そしてタケシを誘って、選手村の裏手に広がる、緑豊かな「憩いの丘」へと足を運んだ。

 

「わぁ……! ここ、風がとっても気持ちいいね! 潮の香りがするよ!」

ハルカが嬉しそうに草原にレジャーシートを広げ、大きな伸びをした。

丘の上からはサイユウシティの白亜の街並みが一望でき、その向こうには宝石を散りばめたようなホウエンの青い海が輝いている。

俺は腰のベルトから全てのボールを取り出し、青空の下へと解き放った。

 

「みんな、今日は自由にしていいぞ。明日に備えて、たっぷり羽を伸ばしてくれ」

 

眩い光と共に、草原に相棒たちが勢揃いした。

ポリゴンZは、まるで日光浴でもするかのように空中に静止し、緩やかに明滅しながらデータの自動整理を始めている。

ペリッパーは近くの池を見つけると豪快に飛び込み、羽を広げて気持ちよさそうに水浴びを始めた。

バクーダはその場にどっしりと腰を下ろし、南国の午後の日差しを浴びて幸せそうにあくびを繰り返している。

マッスグマは草原の匂いを追いかけて一直線に駆け抜け、何かの宝物(ものひろいの対象だろうか)を探し始めたようだ。

サーナイトは、俺の隣に静かに座ると、風に揺れる髪を優雅に整えながら、穏やかな眼差しで周囲を見守っている。

ボスゴドラは、その巨体を大地に沈めて昼寝の体勢に入った。その鋼鉄の背中には、ハルカのエネコが恐る恐る、しかし好奇心に勝てずに飛び乗り、快適な場所を見つけて毛繕いを始めている。

 

「ミロォ……」

ミロカロスがその長い首を伸ばし、俺の頬を冷たい鱗で優しく撫でた。

虹色に輝く鱗が、太陽の光を受けてプリズムのように多彩な光を周囲に放つ。

ルネシティの泥だらけの湖で出会ったヒンバスだった頃の、あの惨めな姿が今では遠い夢のようだ。

 

「ミロカロスも、本当に綺麗になったな。……強さも、美しさも、俺の自慢だぞ」

俺が呟くと、ハルカが隣で誇らしげに頷いた。

「本当にね。ミナト君が決して諦めずに、愛情を持って育てたからだよ。……ねえ、私のバシャーモも、少し見てくれる?」

 

ハルカが繰り出したバシャーモは、準決勝・決勝の死闘を経て、以前よりも一層逞しく、王者の風格を漂わせていた。

かつてミシロタウンで出会ったあのアチャモが、ミナトとの旅を通じて、これほどまでの高みに達したのだ。

(彼女の成長もまた、俺がこの世界で成し遂げた最高のバタフライエフェクトの一つだ)

 

マサトはポケモン図鑑を片手に、俺のポケモンたちのデータを熱心に記録していた。

「ミナトお兄ちゃんのボスゴドラ、筋肉の密度と外殻の硬度が通常の個体よりも高いよ! 一体どんな成分のポロックを食べさせてるの?」

「企業秘密だ……と言いたいところだが、後で『名人の配合』を特別に教えてやるよ」

「やったぁ! さすがミナトお兄ちゃん、太っ腹!」

 

少し離れた場所では、タケシが携帯用キッチンで手慣れた手つきで、特製ポケモンフーズを調理し始めていた。

「栄養バランスの調整は俺に任せておけ。リーグの連戦を戦い抜くには、内側からの完璧なケアが不可欠だからな」

香ばしい匂いが草原に漂い始めると、昼寝をしていたポケモンたちも一斉に目を輝かせて集まってくる。

 

俺は、一匹ずつに手ずから食事を与えながら、彼らのコンディションを指先で確かめた。

筋肉の張り、毛並みの艶、瞳の輝き。

ホウエンの厳しい自然の中で、俺の論理的なトレーニングと彼ら自身の不屈の努力が結実した姿。

カントーから連れてきたポリゴンZを除けば、全員がこのホウエンの地で出会い、共に死線を潜り抜けてきた、かけがえのない仲間たちだ。

 

(最初の一歩は、あの嵐の船の上で出会った、一匹のキャモメからだったな……)

 

懐かしい記憶が脳裏をかすめる。

転生知識があっても、文字通りゼロからのスタート。不安がなかったと言えば嘘になる。

だが、今目の前にいる彼らの満足げな表情を見れば、自分の歩んできた道が正しかったことが、理屈抜きで理解できる。

彼らは俺の「現実」を支える、世界で唯一無二の、最強の家族だ。

 

「ミナト君、さっきから何をそんなに感慨深げに考えてるの?」

ハルカが、半分に割った手作りサンドイッチを俺に差し出しながら、悪戯っぽく微笑んで聞いてきた。

「……いや。みんなと出会えて、ここまで一緒に来られて、本当によかったなって思ってさ」

俺が少し気恥ずかしさを感じながら素直に言うと、ハルカは一瞬だけ意外そうな顔をした後、春の陽だまりのような満面の笑顔を見せた。

 

「私もだよ。……ミナト君に出会えなかったら、私、今頃どうしてたかな。きっと、パパの背中を追うだけの、目標のない旅をしてたと思う」

ハルカは俺の肩に、そっと自分の頭を預けてきた。

「……ありがとう。私を、ここまで連れてきてくれて。最高の景色を、見せてくれて」

 

「……礼を言うのは俺の方だ。ハルカがいなきゃ、俺はもっと冷たい、数字だけの人間になってた」

 

二人の間に、穏やかで、しかし確かな熱量を持った贅沢な時間が流れる。

少し離れた場所で、タケシが「……ふぅ、お熱いねぇ。砂漠のバクーダもびっくりだぜ」と呟きながら、わざとらしく青空を仰いでいた。

サトシはというと、ジュプトルと一緒に木の上で、明日の試合のイメージトレーニングに没頭している。相変わらず、バトル馬鹿の彼らしい。

 

(明日からは、また命懸けの戦いが始まる)

 

俺は、草原で無邪気に遊ぶ相棒たちの姿を、永遠に消えない記憶として瞳の奥に焼き付けた。

この光景を守るために、俺は明日のリーグを勝ち抜かなければならない。

頂点に立つのは一人だけ。だが、その過程で得たこの絆と記憶は、たとえ神であろうと誰にも奪うことはできない。

俺は、ハルカの温かい手を強く握りしめた。

彼女の手は、微かに震えていた。

その震えを止めるように、俺はさらに力を込める。

「大丈夫だ。……俺たちが、世界で一番輝くところを、必ずお前に見せてやる」

「……うん。信じてるよ、ミナト君」

 

サイユウシティの昼下がり。

嵐の前の、この上なく贅沢で穏やかな静寂が、俺たちの心を一つに結んでいた。

ポケモンたちの楽しげな鳴き声が、丘の上からどこまでも高い青空へと吸い込まれていった。

俺は、目を閉じて深く、深く息を吸い込んだ。

大地の匂い、草の香り、そして隣にいる大切な人のぬくもり。

その全てが、俺の細胞の一つ一つに染み渡り、絶対的な力へと変わっていく。

ホウエンの冒険の集大成。その幕が上がるまで、あと二日。

俺たちは、この穏やかな光の中で、最強の英気を養い続けた。

 

シンオウ地方以降ハルカとの行動について

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  • ハルカとは別行動
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