アニポケ転生者物語   作:投稿者

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【閑話】紫煙と虹、そして黒き野望の影

シオンの静寂、新たな仲間と

シオンタウンを後にして数日、俺はタマムシシティへと続く道中の、静かな森でキャンプをしていた。一人と五匹の旅。クチバを出て以来、サトシたちとは別行動だが、この静寂も悪くない。焚き火の心許ない光が、俺と相棒たちの影を、おぼろげに映し出していた。

 

ゴ、ゴースト……(ヒマ……)

 

俺の影から、ひょっこりと顔を出したゴーストが退屈そうに鳴いた。ポケモンタワーからついてきた、好奇心旺盛な元ゴース。道中の密猟者との戦いで進化し、ますますその存在感を増している。

 

「お前なあ、少しは静かにできないのか」

 

ゴーストは楽しそうに笑うと、近くで丸くなって眠っているガーディに、そっと近づいていく。そして、冷たいガス状の手で、ガーディの鼻先をちょん、とつついた。

 

「ワンッ!?」

 

驚いて飛び起きたガーディは、目の前に浮かぶ不気味な笑顔を見て、ぶるぶると体を震わせ、俺の後ろに隠れてしまった。

 

「こら、ゴースト。ガーディを怖がらせるな」

 

俺に窘められて、ゴーストはしゅんとうなだれた。デバイスの感情分析も『反省』の色を示している。まだまだ、力の加減というものを知らないらしい。

 

俺は震えるガーディの背中を優しく撫でた。密猟者に捕らえられていた影響か、このガーディはまだどこか臆病なところがある。俺はガーディを安心させるように、丁寧にブラッシングをしてやった。温かいブラシの感触に、ガーディは気持ちよさそうに目を細め、俺の膝に頭を預けてきた。

 

ゴーストも、そんな俺たちの様子を少し離れた場所から、どこか羨ましそうに見ていた。俺は、そんなゴーストに手招きする。

 

「お前も、こっちに来いよ」

 

ゴーストは一瞬ためらった後、おそるおそる俺の隣に浮かんだ。俺は、その掴みどころのない体にそっと手を伸ばす。

 

「お前は、寂しかったんだよな。タワーで、ずっと一人で」

 

ゴーストの体の揺らめきが止まる。デバイスが、彼の感情の波を『郷愁』と分析した。

 

「これからは、俺たちがいる。みんな、お前の仲間だ」

 

「ゴ……ス……」

 

ゴーストは言葉を発さず、ただその黒い影を、ほんの少しだけ俺の体に寄せた。

 


虹色の街での休息

タマムシシティに到着した際、ジムの前で偶然サトシたちと再会した。彼らはエリカさんに門前払いを受けたようで、俺がレインボーバッジを手に入れて出てきた時には、なにやら怪しげな格好をしてジムへ潜り込もうと画策していた。

 

「(まあ、あいつらなら大丈夫だろう)」

 

俺はサトシたちの騒動を横目に、一度自分の態勢を整えることにした。ジム戦、そして一人で挑んだロケット団アジトへの潜入。心身ともに消耗は激しかった。

 

まずは、仲間たちへのご褒美だ。俺はポケモンたちを連れて、タマムシデパートへと向かった。

 

「フシギソウ、これなんかどうだ?」

 

俺が手渡したのは、シルフカンパニー製の最高級植物用栄養剤。フシギソウは嬉しそうに一声鳴いた。ガーディには骨型のおもちゃ、ゴーストには古代のお守り、ミニリュウには青いスカーフ。ポリゴンにも新しい拡張プログラムを購入した。

 

デパートの屋上で、プレゼントに喜ぶ仲間たちの姿を見ていると、自然と顔が綻ぶ。だが、そんな穏やかな時間の中でも、俺の頭の片隅には常にあの男の影があった。

 

午後の公園。一人でベンチに座り、これまでの旅を振り返る。エンジョイ勢を自認していたはずの俺が、いつの間にかロケット団という巨大な悪の組織の中枢に触れ、そのボスと対峙してしまった。

 

「(俺の旅も、随分と遠いところまで来てしまったな……)」

 


黒い野望の残滓

その夜、俺はポケモンセンターの自室で、ロケット団アジトから奪取したデータチップの解析をポリゴンに命じた。

 

「ポリゴン、進捗は?」

『78%完了。中核データには高度なプロテクト。キーワードを抽出します』

 

画面に表示されたのは、戦慄するような内容だった。

 

【古代ポケモンのDNA】

【ミュウ】

【遺伝子操作】

【カントー地方以外の地名:オレンジ諸島】

 

「オレンジ諸島……?それに、ミュウだと……?」

 

転生者としての知識が、一つの答えを導き出す。奴らは最強のポケモン、ミュウツーを生み出そうとしている。事態は俺が思うよりも、遥かに深刻だった。すぐに母さんに暗号化通信を繋ぐ。

 

『ミナト、そのデータは、本物なの……?』

 

母さんの声も緊張で強張っていた。

 

「ああ。間違いない。奴らは禁忌に触れようとしている」

 

『すぐに上層部に報告するわ。あなたもこれ以上は危険よ。ヤマブキシティに来なさい!』

 

「いや、俺は旅を続けるよ。テスターとして、現地でしか得られない情報があるはずだ」

 

俺は、サカキとの対峙を思い出していた。あの、圧倒的な力の差。

 

「(今のままじゃ、勝てない。何も守れない)」

 

デバイスの戦闘ログで、サカキのペルシアンとの戦いを何度も再生する。神速の動き、一撃の重さ。あれが世界の頂点に立つ者の力だ。

 

俺は静かに拳を握りしめた。超えるべき壁が高ければ高いほど、内なる闘志が燃え上がってくるのを感じた。

 


"物語"の終わり、"現実"の始まり

タマムシシティを出発する日の朝、俺は手持ちのポケモンたちを全員ボールから出した。

 

フシギソウ、ポリゴン、ミニリュウ、ゴースト、ガーディ。

 

俺は五体の仲間たちを、一人ずつ、まっすぐに見つめた。

 

「みんな、聞いてくれ」

 

俺の真剣な声に、ポケモンたちも静かに耳を傾ける。

 

「俺は、この旅を、ただ楽しむだけの物語だと思っていた。ロケット団はアニメの中のコミカルな敵役で、最後は正義が勝つものだと、どこかで高を括っていたんだ」

 

俺は言葉を続ける。

 

「でも、それは違った。サカキという男の力、そして奴らの冷酷さ。ポケモンが傷つき、人が悲しむ。この世界は、都合の良い『物語』なんかじゃない。ここは、俺たちが生きる、『現実』なんだ」

 

俺は一呼吸置いて、言った。

 

「あの男は強かった。俺は初めて自分の無力さを知った。でも、だからこそ決めたんだ。もう、エンジョイ勢なんて言ってられない。ロケット団の野望を、俺たちの手で止める。お前たちと、この世界で出会った大切な人たちを守るために、俺は、もっと強くならなきゃいけない」

 

俺は五匹の目を見た。

 

「これからも、俺に力を貸してくれるか?この、『現実』で共に戦ってくれるか?」

 

最初に答えたのは、フシギソウだった。力強い鳴き声と共に、ツルで俺の肩を叩いた。ガーディが吠え、ゴーストが揺れ、ミニリュウが腕に巻きつく。ポリゴンが静かに光を明滅させた。

 

「……みんな、ありがとうな」

 

込み上げてくるものをこらえ、俺はタマムシシティのゲートをくぐった。

 

次の目的地はセキチクシティ。フジ老人からもらった地図と、奪取したデータが示す先。俺は空を見上げた。どこまでも続く、青い空。その先にある「現実」へと、俺は新たな一歩を踏み出した。

 

チラシ裏から表にでるべきか

  • チラシ裏でいい
  • 表にでてもいい
  • まだ表にでるのは早い
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