アニポケ転生者物語 作:投稿者
第31話
タマムシシティの巨大なビル群が、背後で夕日に照らされている。レインボーバッジの輝きは誇らしいが、俺の心の中には、あのロケットゲームコーナーの地下で味わった、冷たい沈黙が居座り続けていた。
サカキ。あの男のペルシアンが放った一撃。フシギソウが反応すらできずに膝をついたあの瞬間。
俺はこの世界をどこか「アニメの延長線上の物語」として、高みの見物を決め込んでいたのかもしれない。だが、現実は違った。サカキの放つ威圧感は、文字通り俺の喉元にナイフを突きつけていた。
「(強くならなきゃいけない。もっと……圧倒的にだ)」
俺は、サトシたちとは別行動を取り、一人でセキチクシティを目指すことにした。彼らには彼らの旅がある。俺には、シルフのテスターとして、そして「この世界を生きる一人の人間」として、果たさなければならない覚悟があった。
タマムシシティを出て、西へと続く16番道路。ここはサイクリングロードへと続く道だが、俺はあえて、その脇に広がる手付かずの荒野や林を縫うように進んだ。目的地はセキチクシティ。だが、その前にある広大な自然保護区――サファリゾーン。そこが、俺の次なる「強化」の舞台になるはずだ。
「ポリゴン、周囲の生態分布を詳細にマッピングしてくれ。特に、サファリゾーン周辺の個体と遜色ない、強力な個体がいないかスキャンを頼む」
『了解。広域センサーをフル稼働します。……北西方向、約300メートル先に、高い移動速度を持つ反応。また、水辺周辺に、特異な精神波を放出する反応を確認』
「よし。行くぞ、みんな」
俺の足元では、フシギソウが鋭い眼光で周囲を警戒し、ゴーストが俺の影から時折顔を出して周囲を窺っている。ミニリュウは俺の腕に巻き付き、ガーディは勇ましく先頭を駆ける。
最初に出会ったのは、三つの頭を持つ……いや、まだ二つか。二つの首を器用に動かし、驚異的な脚力で荒野を駆けるポケモン。ドードーだった。
『ドードー。ふたごどりポケモン。時速100キロ以上で走行。二つの頭は交代で眠るため、常に周囲を警戒している』
「(あのスピード……サカキのペルシアンに対抗するには、あれくらいの機動力が必要だ)」
俺はガーディに合図を送る。
「ガーディ、『ほのおのうず』で足止めだ!」
「ワンッ!」
ガーディが放った炎の鎖が、ドードーの逃げ道を塞ぐ。ドードーは驚きながらも、その長い脚を活かして炎の隙間を跳ね回る。
「逃がさない。ゴースト、『さいみんじゅつ』!」
影から飛び出したゴーストが、ドードーの目の前で怪しい催眠波を放つ。二つの頭が同時に強烈な眠気に襲われ、その脚が止まる。
「今だ。行け、モンスターボール!」
数回の揺れの後、ボールがカチリと鳴った。ドードー、ゲット。こいつをドードリオに進化させれば、さらに手数は増えるはずだ。
次に俺が向かったのは、静かな池のほとりだった。そこには、何とも言えない、のんびりとした表情で尻尾を水に垂らしているピンク色のポケモンがいた。ヤドンだ。
『ヤドン。まぬけポケモン。非常に鈍感で、尻尾を噛まれても数時間気づかないこともある。だが、稀に強力な超能力を発揮する』
「(ヤドン……その鈍感さは、時としてどんな精神攻撃も寄せ付けない強みになる。それに、進化形のヤドラン、あるいはヤドキング……。あいつらの耐久力と超能力は、チームの安定感を支えてくれるはずだ)」
俺はヤドンに近づく。ヤドンは俺を見ても、逃げようともしない。ただ、「やぁん?」と一鳴きするだけだ。
「戦う気はなさそうだが……。テストさせてもらうぞ。ポリゴン、ヤドンの精神波長をシンクロさせて、その出力を計測してくれ」
『了解。解析中……。驚くべき結果です。表面上の活動はほぼ停止していますが、深層意識では莫大なサイコエネルギーが渦巻いています』
「なるほどな。寝ている獅子、というわけか」
俺は無理なバトルは避け、好物のきのみを与えてヤドンの警戒を解いた。ヤドンは嬉しそうにきのみを咀嚼すると、自ら俺の差し出したモンスターボールに鼻先を触れさせた。
ヤドン、ゲット。
「ドードーに、ヤドンか。これでまた、戦略の幅が広がる」
俺はグラス型デバイスに新しい仲間たちのデータを入力し、彼らのトレーニングメニューを作成した。
ドードーには、フシギソウのツルをかわしながらの高速移動訓練。
ヤドンには、ポリゴンの電脳干渉を跳ね除ける精神統一のテスト。
俺自身の旅のペースも、以前のような「観光」のそれではなくなっていた。一歩一歩を踏みしめ、風の匂い、土の感触、ポケモンの鼓動を全身で感じる。
「(ここは、俺が生きる現実だ。一分一秒を無駄にはできない)」
夕闇が迫る中、俺はセキチクシティの門が見える場所までたどり着いた。そこには、かつて見たアニポケの世界よりも、ずっと広く、深く、そして険しい「原野」が広がっていた。
サファリゾーン。
そこには、俺が求める「強さ」の破片が、数多く眠っているはずだ。
俺は相棒たちのボールを握りしめ、明日から始まる過酷な調査と捕獲の旅に思いを馳せ、静かに夜を待つのだった。
チラシ裏から表にでるべきか
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チラシ裏でいい
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表にでてもいい
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まだ表にでるのは早い