アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第5話

「グルオオオォォッ!」

 

巨大なイワークが、威嚇するように再び咆哮を上げる。その風圧だけで、フィールドの砂が舞い上がった。対する俺のポリゴンは、感情の見えない電子音を小さく発しながら、静かに宙に浮いている。そのシュールな光景に、観客たちは完全に言葉を失っていた。

 

タケシは、最初の驚きからは立ち直ったものの、未知のポケモンに対する警戒を隠せないでいた。

 

「正体不明のポケモンか……だが、関係ない!イワーク、力で押し潰せ!『たいあたり』だ!」

 

号令と共に、イワークがその巨体をしならせ、まるで列車のような勢いでポリゴンに突進してくる。ジムの壁が震えるほどの地響き。まともに食らえば、ひとたまりもないだろう。

 

「(だが、お前の動きは……丸見えだ!)」

 

俺のグラス型デバイスが、イワークの突進コースと到達時間を正確に予測し、視界に表示する。

 

「ポリゴン、『かくばる』!」

 

ポリゴンがその場で静止し、体のエッジがより鋭角的に、硬質に変化する。本来なら攻撃力を上げる技だ。直後、イワークの巨体がポリゴンに激突した。

 

ゴッ!!!

 

凄まじい衝撃音。だが、ポリゴンは吹き飛ばされることなく、イワークの猛攻を正面から受け止めていた。まるで巨大な壁にぶつかったかのように、イワークの勢いが殺される。

 

「なっ……受け止めただと!?」

 

タケシが信じられないといった表情で叫ぶ。

 

「ただの防御じゃない。お前のイワークの攻撃ベクトルを分析して、最も効率的に衝撃を殺す角度で受け止めたんだ。こいつは、そういう戦い方ができる」

 

俺の言葉に、タケシの顔に緊張が走る。彼は、俺たちがただ者ではないことを、ようやく理解したようだった。

 

「面白い……面白いじゃないか!だが、小細工がいつまでも通用すると思うなよ!」

 

タケシが次の指示を出すより早く、俺は攻勢に出る。

 

「ポリゴン、距離を取って『サイケこうせん』!」

 

ポリゴンはイワークから素早く離れ、その目にあたる部分から、虹色の破壊光線を放った。昨日確認した通り、イワークの弱点は特殊防御の低さだ。物理的な攻撃ではなく、純粋なエネルギー攻撃で内部からダメージを与える。

 

「グゥッ!」

 

効果はてきめんだ。虹色の光線を浴びたイワークが、苦痛の声を上げる。巨体に似合わず、特殊攻撃には打たれ弱い。

 

「やるな……だが、同じ手が何度も通用するか!イワーク、『あなをほる』!」

 

タケシの指示で、イワークが巨大な頭を使い、猛烈な勢いで地面に穴を掘り始めた。あっという間にその巨体が地中へと消える。これは厄介だ。どこから出てくるか分からない。

 

「(いや、分からない、なんてことはない!)」

 

俺はグラス型デバイスの機能を切り替え、地中の振動を探知するソナーモードを起動した。ポリゴンともリンクし、地中のイワークの動きが、視界に青いラインとして表示される。

 

「……そこか!ポリゴン、真下だ!」

 

俺が叫ぶのと、イワークが地面を突き破って飛び出してくるのは、ほぼ同時だった。だが、ポリゴンは既に回避行動に移っている。イワークの奇襲は空を切った。

 

「な……なぜ場所が分かった!?」

 

「言ったはずだ。こいつは情報戦が得意だって」

 

俺はニヤリと笑う。だが、このままではジリ貧だ。サイケこうせんだけでは、あの巨体を倒しきる前にポリゴンのエネルギーが尽きてしまう。

 

「(決め手は、やはり……)」

 

俺は一度、ポリゴンに防御に徹するよう指示を出し、タイミングを計る。イワークが再び「たいあたり」を仕掛けてくる。その巨体が生み出す隙は、一瞬。

 

「ポリゴン、『テクスチャー』!ゴーストタイプだ!」

 

イワークが激突する寸前、ポリゴンの体の質感が変化し、半透明になる。ノーマルタイプの「たいあたり」は、ゴーストタイプになったポリゴンを、何もなかったかのようにすり抜けていった。

 

「なにぃ!?」

 

タケシの驚愕の声が響く。タイプを自在に変更する「テクスチャー」。これこそ、ポリゴンが持つ最大のトリッキーさだ。イワークが体勢を立て直す、その一瞬の隙。

 

「今だ!戻れ、ポリゴン!」

 

俺はポリゴンをボールに戻し、すぐさま別のボールを投げた。

 

「行け、フシギダネ!仕上げだ!」

 

再びフィールドに降り立ったフシギダネが、勇ましく咆哮を上げる。

 

「ダネフッシャ!」

 

「またフシギダネか!タイプ相性が有利なのは認めるが、今のイワークに通用するか!」

 

「通用させますよ。最高のコンビネーションでね!」

 

俺は叫んだ。

 

「フシギダネ、『やどりぎのタネ』!」

 

フシギダネが背中から発射した小さなタネが、イワークの巨大な体にペタリと付着する。すぐにタネからツルが伸び、イワークの体に巻き付いて、その生命力を少しずつ吸い取り始めた。

 

「グルル……」

 

地味だが、確実に体力を奪う厄介な技だ。タケシが眉をひそめる。

 

「そんなもので俺のイワークは倒せん!『がんせきふうじ』!」

 

イワークが巨体を揺らし、天井近くから巨大な岩石を数個呼び寄せ、フシギダネめがけて落下させる。

 

「『つるのムチ』で岩を叩き落とせ!」

 

フシギダネが二本のツルを巧みに操り、迫り来る岩石を的確に撃ち落とす。その間に、「やどりぎのタネ」がイワークの体力をさらに奪っていく。

 

そして、ついにその時が来た。イワークの動きが、目に見えて鈍くなる。

 

「今だ、フシギダネ!決めろ!『はっぱカッター』!」

 

フシギダネが、ありったけの力を込めて、無数の葉っぱを刃のように射出する。それはもはや、ただの葉っぱではなかった。ポリゴンが作り出した隙、やどりぎが奪った体力、そしてフシギダネ自身の闘志。その全てが乗った、必殺の一撃。

 

無数の緑の刃が、イワークの巨体に突き刺さる。

 

「グルオオオオオオオッ!!」

 

イワークが、今日一番の悲鳴を上げた。そして、その巨体が、ゆっくりと、ゆっくりとフィールドに崩れ落ちていく。

 

ズウウウウン……。

 

地響きと共に、勝敗は決した。

 

「イワーク、戦闘不能!よって勝者、挑戦者ミナト!」

 

審判の宣言が、静まり返ったジムに響き渡った。観客席から、一瞬の沈黙の後、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。

 

俺は、ぜえぜえと息を切らしているフシギダネに駆け寄り、その頭を優しく撫でた。

 

「よくやったな、フシギダネ。お前が今日のヒーローだ」

 

「ダネ……」

 

フシギダネも、誇らしげに、そして少しだけ甘えるように、俺の手にすり寄ってきた。

 

やがて、タケシが静かにこちらへ歩み寄ってきた。その表情は、敗北の悔しさよりも、どこか清々しさに満ちていた。

 

「完敗だ、ミナト。君の知識、戦術、そしてポケモンとの絆。見事だった」

 

タケシはそう言うと、右手を差し出してきた。俺もその手を固く握り返す。

 

「ありがとうございます、タケシさん」

 

「このジムバッジは、君のような強いトレーナーこそが持つにふさわしい」

 

タケシはそう言って、灰色の六角形をしたバッジを俺に手渡した。初めて手にするジムバッジ、グレーバッジだ。ずっしりとした重みが、勝利の実感を伝えてくる。

 

「ありがとう、ございます!」

 

俺は深々と頭を下げた。こうして、俺の最初のジム戦は、最高の形で幕を閉じた。

 

フシギダネと、そしてポリゴン。二匹の頼もしい相棒と共に手にしたこの勝利は、俺たちの旅にとって、大きな、大きな一歩となったのだった。

チラシ裏から表にでるべきか

  • チラシ裏でいい
  • 表にでてもいい
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