アニポケ転生者物語   作:投稿者

60 / 344
【閑話】炎の記憶、絆の深化

神速の競争

ストーンタウンでガーディがウインディに進化した翌日のことだ。

俺たちは、セキチクシティへと向かう平原で休憩をとっていた。

 

ワオォォン!(力が有り余ってる!)

 

進化したばかりのウインディは、その巨体を持て余すかのように、興奮気味に地面を掻いている。その様子を見て、三つの頭を持つ韋駄天――ドードリオが反応した。

 

ド、ドリオ……(速さなら、負けない)

 

ドードリオの挑発に、ウインディが鼻を鳴らす。

こうして、突然のスピード勝負が始まった。

 

「よーい、ドン!」

 

俺の合図と共に、二匹が弾かれたように飛び出す。

ウインディは、炎を纏ったような爆発的な加速で一気にトップスピードへ。対するドードリオは、三つの頭で空気抵抗を計算し、無駄のないフォームで大地を蹴る。

 

「(すげえ……二人とも、目で追えない)」

 

結果は、ウインディの僅差の勝利。神速の名の通り、瞬間的な爆発力はウインディに分があったようだ。

だが、持久力ではドードリオに軍配が上がるだろう。二匹は互いの健闘を称え合い、その様子を見ていたサイドンやニドクインも、大いに盛り上がっていた。

 


海上の日常

ラプラスの背中に乗り、グレンタウンを目指す海路でのこと。

俺の主力メンバー以外のポケモンたちも、交代で甲板(ラプラスの背中)に出て、海の空気を楽しんでいた。

 

ニドォ……(海って、広いのね)

ニドクインは、初めて見る海に感動している様子だ。その隣で、サイドンは恐る恐る海面を覗き込んでいる。

 

サ、サイドン……(水は……苦手だ)

岩・地面タイプのサイドンにとって、海は恐怖の対象でもあるらしい。

そんなサイドンに、ヤドンが「やぁん?」と呑気に尻尾で水をかけてしまい、サイドンが大慌てで逃げ回るという一幕もあった。

 

一方、空ではストライクが修行に励んでいた。

野生のカモネギが持っていたネギを、空中で両断する訓練だ。

「シャッ!」

音もなく鎌が閃き、カモネギが落としたネギが見事に二等分される。

ストライクは満足げに頷き、カモネギに新しいネギ(どこから調達したのか)を渡して礼を言っていた。

 

それぞれが、それぞれの方法で、旅を楽しんでいる。

そんな光景を見ていると、これから待ち受ける激戦のことも、一瞬だけ忘れることができた。

 


癒やしのヤドン

グレンタウンに到着し、ポケモン屋敷で衝撃的な日記を見つけた夜。

俺たちは、重苦しい空気に包まれていた。

ミュウツー。サカキ。そして、シルフの関与。

知れば知るほど、事態の深刻さに押しつぶされそうになる。

 

そんな時だった。

「やぁん……」

ヤドンが、俺の膝の上にのそりと乗ってきた。その重みと、間の抜けた鳴き声に、俺は思わず力が抜けた。

 

「お前は、本当にマイペースだなあ」

 

ヤドンは、俺の顔をじっと見つめると、口からポロリと何かを落とした。それは、どこかで拾ってきた綺麗な貝殻だった。

 

ヤドン……(元気、だして)

 

テレパシーではないが、不思議とヤドンの気持ちが伝わってくる。

「……ありがとうな」

 

ヤドンの無垢な優しさに、張り詰めていた糸が少しだけ緩んだ。

そうだ。俺には、こいつらがいる。

どんなに強大な敵が相手でも、一人じゃない。

 


灼熱のあとさき

カツラとのジム戦を終え、俺はウインディのケアをしていた。

激しい『フレアドライブ』の反動で、体にはいくつもの火傷の跡がある。

 

「よく頑張ったな、ウインディ。お前のおかげで勝てたよ」

ワオォォン(主のためなら、火の中だって怖くない)

 

ウインディは、俺の手を舐めて答える。その舌の熱さが、彼の忠誠心の証だ。

 

フシギバナやハクリュー、ゲンガーたちも集まってくる。

彼らは、ウインディの勝利を自分のことのように喜んでいた。

 

「みんな、聞いてくれ」

 

俺は、クリムゾンバッジを握りしめ、仲間たちに語りかけた。

 

「次は、最後のジムだ。トキワシティ。そこには、俺たちが倒すべき最大の敵、サカキがいる」

 

ポケモンたちの表情が引き締まる。彼らも覚えているのだ。あの圧倒的な敗北を。

 

「俺たちは強くなった。進化し、新しい技を覚え、絆を深めた。だが、相手はそれ以上の化け物だ。油断はできない」

 

俺は、一人一人の目を見つめた。

 

「ここからは、総力戦になる。メインメンバーだけじゃない。サイドン、ニドクイン、ドードリオ、ストライク……全員の力が必要だ」

 

サイドォ!(任せろ!)

ニドッ!(いつでも行けるわ!)

ド、ドリオ!(走る準備はできてる!)

シャッ!(俺の鎌で切り裂く)

 

サブメンバーたちも、闘志を燃やして応えてくれる。

頼もしい限りだ。

 


それぞれの特訓

トキワシティへの出発まで、俺たちはグレンタウン近郊で最後の追い込み合宿を行った。

 

サイドンは、岩山に向かって『つのドリル』の回転速度を上げる訓練を繰り返した。一撃必殺の精度を高めるためだ。

ニドクインは、その怪力を活かした『ばかぢから』と、広範囲攻撃の『だいちのちから』の切り替えをスムーズにする連携訓練。

ドードリオは、三つの頭が独立して状況判断し、死角のない全方位攻撃を行う『トライアタック』の精度向上。

ストライクは、『つるぎのまい』で攻撃力を極限まで高め、一瞬で敵の懐に入り込む『でんこうせっか』とのコンビネーションを磨いた。

 

そして、ヤドン。

彼は一見、ただ寝ているように見えるが、ポリゴン2の解析によれば、常に周囲のサイコエネルギーを吸収し、体内で増幅させているらしい。

「(いざという時の、とんでもない爆発力に期待だな)」

 

主力メンバーたちも負けてはいない。

フシギバナは『ハードプラント』の硬度強化。

ハクリューは『りゅうのまい』からの『げきりん』制御訓練。

ゲンガーは影の移動速度と、『さいみんじゅつ』の命中率向上。

ポリゴン2は、サカキの持つデータの更なる解析と、戦闘時のサポートプログラムの最適化。

 

全員が、自分の役割を理解し、限界を超えようとしていた。

 

「(これなら、行ける)」

 

俺は、確信めいた手応えを感じていた。

あの日の敗北は、無駄ではなかった。

あの悔しさがあったからこそ、俺たちはここまで強くなれたのだ。

 


決意の夜明け

出発の朝。

グレンタウンの港で、俺は海を見つめていた。

この海の向こうに、マサラタウンがある。そして、そのすぐそばに、トキワシティがある。

 

旅の始まりの地へ戻る。

それは、物語の終わりを意味するのかもしれない。

だが、俺たちの旅は、これで終わりではない。

 

「サカキを倒し、ミュウツー計画を止める。それが終わったら……」

 

俺は、隣に立つラプラスの首を撫でた。

 

「また、みんなで旅に出よう。今度は、何のしがらみもない、本当の意味での冒険に」

 

キュウ……(楽しみね)

 

ラプラスが優しく鳴く。

 

「よし、行くぞ!」

 

俺はラプラスの背に乗り、仲間たちをボールに戻した。

目指すはトキワシティ。

最後のジムバッジ、そして、最大の決戦の地へ。

 

朝日が昇る。

海面が黄金色に輝き、俺たちの行く手を照らし出す。

迷いはない。

俺と、最高の相棒たちなら、必ず勝てる。

 

「全速前進!トキワシティへ!」

 

ラプラスが波を蹴り、力強く進み出す。

俺たちの長い旅の、最終章が幕を開けた。

 

チラシ裏から表にでるべきか

  • チラシ裏でいい
  • 表にでてもいい
  • まだ表にでるのは早い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。