アニポケ転生者物語   作:投稿者

68 / 344
第60話

目の前に立つ存在。

鎧に覆われたその姿からは、生き物としての温かみが一切感じられない。ただ純粋な、破壊のエネルギーの塊がそこに在るようだった。

 

「ミュウ……ツー……」

 

俺の知識にあるミュウツーとは、少し違う。拘束具と呼ばれるアーマーによって、その力は制御されているはずだ。だが、それでも漏れ出るプレッシャーは、サカキのサイドンなど比較にならない。

 

「(これが、レベルが違うってやつか……)」

 

俺の足が、恐怖で竦む。

 

「行け、ミュウツー」

 

サカキの短い命令。ミュウツーは、無言のまま右手を軽く掲げた。

 

「フシギバナ、防御だ!」

 

俺が叫ぶより早く、見えない衝撃波がフシギバナを襲った。

 

ドォォォン!!

 

「バナッ!?」

 

フシギバナの巨体が、まるで紙切れのように吹き飛ばされ、壁に激突する。一撃。たった一度の手の動きだけで、俺の最強の相棒が、戦闘不能に追い込まれた。

 

「な……」

 

言葉が出ない。

 

「次は誰だ?全員まとめてかかってきても構わんぞ」

 

サカキの嘲笑。俺は、震える手で次のボールを握った。

 

「みんな、力を貸してくれ!総力戦だ!」

 

ハクリュー、ゲンガー、ウインディ、ポリゴン2、ラプラス……残るすべてのポケモンをフィールドに出す。

 

「ハクリュー、『はかいこうせん』!ウインディ、『だいもんじ』!全員で攻撃だ!」

 

五体のポケモンによる、最大火力の集中砲火。だが、ミュウツーは身じろぎ一つせず、それを受け止めた。いや、受け止めたのではない。攻撃が直撃する寸前で、見えない壁に阻まれ、霧散したのだ。

 

「『サイコキネシス』」

 

ミュウツーの目が青く光る。次の瞬間、俺のポケモンたちは全員宙に浮き、互いに激突させられ、地面に叩きつけられた。

 

「やめろぉぉぉっ!」

 

俺の悲鳴も虚しく、仲間たちは次々と倒れていく。

圧倒的。理不尽。絶望。

これが、神の力か。

 

「弱い。弱すぎる」

 

サカキは、つまらなそうに吐き捨てた。

 

「この程度の力で、私を止めようなどと。……ミュウツー、とどめだ」

 

ミュウツーが、倒れ伏したポケモンたちに向けて、巨大なエネルギー弾を生成し始める。『シャドーボール』か、それとも『はどうだん』か。どちらにせよ、これを受ければ、ただでは済まない。

 

「(動け……動けよ俺!)」

 

俺は、恐怖をねじ伏せ、前に飛び出した。

 

「やめろおおおお!!」

 

俺は、ポケモンたちを庇うように立ちはだかった。

 

「人間ごときが、盾になるとでも?」

 

サカキが冷笑する。だが、ミュウツーの動きが、一瞬だけ止まった。

その瞳が、俺を見ている。無機質な瞳の奥に、わずかな揺らぎが見えた気がした。

 

『……ナゼ……』

 

頭の中に、声が響いた。ゴースの時とは違う、冷たく、重い声。

 

『ナゼ、オマエハ……コイツラヲ、カバウ……?』

 

ミュウツーが、問いかけてきた。

 

「(こいつ……喋ったのか?)」

 

「仲間だからだ!俺の大切な、家族だからだ!」

 

俺は叫んだ。ミュウツーは、首を傾げる。

 

『ナカマ……カゾク……』

 

その言葉の意味を理解しようとするように、エネルギー弾の出力がわずかに弱まる。

 

「(今だ!)」

 

俺は、この一瞬の隙に賭けた。

 

「ポリゴン2!ミュウツーのアーマーの制御システムにハッキングしろ!拘束具を解除するんだ!」

 

倒れていたポリゴン2が、最後の力を振り絞って再起動する。電子の波動が、ミュウツーの鎧へと送られる。

 

「何をする気だ!」

サカキが叫ぶ。

 

「フシギバナ!最後の力で、『ソーラービーム』だ!」

 

壁際で倒れていたフシギバナが、俺の声に応えて立ち上がる。背中の花が、最後の輝きを放つ。

 

「いけぇぇぇぇっ!!」

 

ソーラービームが、ポリゴン2がハッキングで弱体化させた、アーマーの接合部を直撃した。

 

バキィィィィン!!

 

硬質な音が響き、ミュウツーの鎧に亀裂が入った。

 

「貴様ら……何をした!?」

 

サカキの狼狽する声。

そして、亀裂から溢れ出したのは、制御不能なまでに膨れ上がった、ミュウツーの真の力だった。

 

「グオオオオオオオオオッ!!」

 

ミュウツーが咆哮する。その衝撃波だけで、ジムのガラスが砕け散る。

拘束具が弾け飛び、その下から、白銀の体が現れた。

 

禁忌の力が、今、完全に解放された。

 

チラシ裏から表にでるべきか

  • チラシ裏でいい
  • 表にでてもいい
  • まだ表にでるのは早い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。