アニポケ転生者物語   作:投稿者

73 / 344
第64話

俺はオーキド研究所の裏庭にある、大きな池のほとりで、ヤドンと共に過ごしていた。

 

サファリゾーンで仲間になったこのヤドンは、いつも通り、ボーッと水面に尻尾を垂らしている。その表情からは、何を考えているのか(あるいは何も考えていないのか)全く読み取ることができない。

 

「ヤドン、お前は本当にマイペースだなあ。セキエイ大会、一緒に行くんだぞ?」

「やぁん?」

 

ヤドンは、間抜けた声を出しながら、俺の顔をじっと見つめた。その時、池の端から一匹のシェルダーが、のそりと這い上がってきた。

 

そのシェルダーは、ヤドンの尻尾から漂う、甘く不思議な匂いに吸い寄せられるように、じわじわと距離を詰めていく。

 

「(あ、これは……)」

 

アニメやゲームで何度も見た光景。ヤドンの進化の条件だ。通常なら、尻尾を噛まれることで進化する。だが、俺のヤドンは、少し違った。

 

シェルダーが今まさに尻尾に飛びかかろうとした瞬間、ヤドンが不敵な笑みを浮かべた(ように見えた)。

 

「やぁんっ!」

 

ヤドンは、自分から尻尾をシェルダーの方へと差し出し、さらに微かなサイコパワーを放って、シェルダーを誘導したのだ。シェルダーがガブリと尻尾に食らいつく。

 

直後、二匹の体が眩い光に包まれた。

 

「なっ……!?」

 

光は渦を巻き、ヤドンとシェルダーのエネルギーを一つに溶かし込んでいく。ヤドンの体が立ち上がり、二本足で踏ん張る。尻尾に噛みついたシェルダーは、トゲのついた強固な殻へと変形し、ヤドンの体の一部として一体化した。

 

光が収まった時、そこに立っていたのは、堂々たる体躯のヤドランだった。

 

「ヤ、ヤドン……いや、ヤドラン!」

 

『ヤドラン。やどかりポケモン。ヤドンの尻尾にシェルダーが噛みつくことで進化。激しい戦いでも、尻尾のシェルダーが離れない限り、痛みを感じないと言われる』

 

デバイスの解説が流れる。だが、進化したヤドランの目は、以前のボーッとしたものとは明らかに違っていた。その瞳の奥には、研ぎ澄まされた知性と、膨大なサイコエネルギーが渦巻いている。

 

ヤドォーン!(準備はできたぜ)

 

ヤドランが右手を掲げると、池の水が巨大な塊となって宙に浮いた。進化したことで、その超能力は目に見えて強化されていた。

 

「すごいじゃないか、ヤドラン!」

 

駆け寄ってきたオーキド博士も、目を丸くして驚いていた。

「なんじゃと!進化の瞬間を自分から誘発したというのか!通常、ヤドンの進化は偶然の産物と言われておるが……。ミナト君、君のヤドンは、とてつもない意思の強さを持っておるようじゃな!」

 

「意思の強さ、か……」

 

ヤドランは俺の横に並ぶと、頼もしく胸を叩いた。その背中のシェルも、まるで盾のように頑強に輝いている。

 

不意に訪れた進化。

だが、それはヤドン自身が、来るべき決戦に向けて自ら選んだ道だった。

 

「よろしくな、ヤドラン。お前の防御と超能力、期待してるぜ」

 

「ヤドォ!」

 

のんびり屋の相棒が、最強の守護者へと覚醒した瞬間だった。

俺たちのチームに、また一つ、揺るぎない力が加わった。

 

チラシ裏から表にでるべきか

  • チラシ裏でいい
  • 表にでてもいい
  • まだ表にでるのは早い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。