アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第7話

おつきみやまを越え、数日かけて歩き続けると、空気の質が変わったのが分かった。乾いた山の空気から、湿り気を帯びた、どこか水の匂いがする空気に。そして、視界が開けた先に、その街はあった。

 

「うわあ……」

 

思わず感嘆の声が漏れる。街の至る所に水路が張り巡らされ、青い屋根の建物が陽光を反射してきらきらと輝いている。水路では、コイキングやトサキントたちが優雅に泳ぎ、人々はその光景を当たり前のように受け入れていた。水の都、ハナダシティ。その美しさは、俺の想像をはるかに超えていた。

 

「すごいな、フシギダネ、ポリゴン」

「ダネー!」

 

フシギダネも初めて見る光景に興奮しているようだ。俺はまず、旅の基本に則ってポケモンセンターへと向かった。フシギダネとポリゴンの健康チェックをジョーイさんにお願いし、ロビーで一息ついていると、バックパックの中のデバイスが着信を知らせた。母さんからだ。

 

『ミナト?ハナダに着いたのね』

「ああ、今着いたところだよ。すごい街だな、ここ」

『ええ、シルフの技術も一部、都市開発に協力しているのよ。……それより、あなたに緊急の調査依頼よ』

 

母さんの声のトーンが、少しだけ真剣になる。

 

『ハナダシティの北部にある"竜の顎(りゅうのあぎと)"と呼ばれる滝壺で、数日前から原因不明の強いエネルギー波が断続的に観測されているわ。正体不明だけど、非常に高純度なエネルギーなの。テスターとして、現地を調査してデータを送ってちょうだい』

 

「竜の顎……?わかった、行ってみるよ」

 

テスターの仕事と、珍しい現象への好奇心。断る理由はなかった。

 

ジョーイさんからポケモンたちを受け取った俺は、街の北へと向かった。"竜の顎"は、地元では有名な観光名所の一つらしいが、同時に「近寄ると呪われる」といった物騒な噂もある場所らしかった。

 

たどり着いたのは、その名の通り、巨大な竜が口を開けたかのような、荘厳な滝だった。轟音と共に流れ落ちる水しぶきが、霧のように立ち込めている。

 

「ポリゴン、エネルギー波の発生源を特定できるか?」

『解析中……発生源は滝の裏側。高密度の水粒子がスキャンを妨害。接近します』

 

ポリゴンが滝に近づいていく。俺もフシギダネと共にその後を追った。滝の裏側には、人一人がやっと通れるくらいの、隠された洞窟の入り口があった。

 

洞窟の奥は、驚くほど静かだった。滝の轟音は壁に遮られ、代わりに澄んだ水が滴る音だけが響いている。そして、その中心には、月光のように青白い光を放つ地底湖があった。

 

そのほとりに、そいつはいた。

 

「……ミニリュウ」

 

青と白の、蛇のようにしなやかな体。頭の脇には小さな羽のようなヒレ。つぶらな瞳。幻のポケモンとも言われるミニリュウが、そこで苦しそうに体を横たえていた。

 

「ダネ……」

フシギダネが、心配そうに声を上げる。

 

俺はグラス型デバイスでミニリュウの状態をスキャンした。

『生命反応、低下。体表に複数の裂傷。高エネルギーによる熱傷の痕跡あり。……これは、非人道的な捕獲トラップの跡だ』

 

「密猟者か……!」

 

許せない。こんな美しいポケモンを、金儲けのために傷つける奴らがいる。ミニリュウは、なんとか罠から逃れて、この隠れ家までたどり着いたのだろう。

 

俺が近づくと、ミニリュウは最後の力を振り絞るように身を起こし、威嚇してきた。だが、その瞳の奥に恐怖の色が浮かんでいるのを、俺は見逃さなかった。

 

「大丈夫、何もしない。助けに来たんだ」

 

俺はゆっくりとバックパックを降ろし、薬や食料を取り出す。フシギダネは、俺の意図を察したのか、ミニリュウを落ち着かせるように「あまいかおり」を放ち始めた。甘く、優しい香りが洞窟に満ちる。

 

ポリゴンは、音もなく洞窟の入り口に陣取り、外部からの侵入者を警戒している。完璧な連携だった。

 

俺は、閑話の時間にフシギダネと見つけた薬草をすり潰し、ミニリュウの傷口にそっと塗っていく。最初は抵抗していたミニリュウも、痛みが和らいでいくのを感じたのか、やがて大人しく治療を受け入れ始めた。

 

「偉いな。もう大丈夫だからな」

 

試作品の回復薬を慎重に飲ませ、栄養価の高いポケモンフーズを口元に運ぶ。ミニリュウは、おそるおそるそれを口にし、少しずつ元気を取り戻していった。

 

俺は、その夜を洞窟で過ごした。焚き火を囲み、三匹(もう三匹だ)のポケモンたちと静かな時間を過ごす。

 

翌朝、ミニリュウはすっかり元気を取り戻していた。俺が目を覚ますと、その小さな顔を俺の頬にすり寄せ、感謝を伝えてきた。くすぐったくて、温かい。

 

「もう、大丈夫そうだな」

 

俺がそう言って微笑むと、ミニリュウはこくりと頷いた。

 

「俺と一緒に、来るか?世界には、もっと広くて、楽しい場所がたくさんあるんだぜ」

 

俺は空のモンスターボールを、そっとミニリュウの前に差し出した。ミニリュウは、つぶらな瞳で俺と、フシギダネと、ポリゴンを順番に見つめた後、迷うことなくその小さな頭で、モンスターボールのボタンに触れた。

 

カシュッ、という軽い音と共に、ミニリュウの体が赤い光になってボールに吸い込まれる。数回揺れた後、ボールはカチン、という音を立てて静止した。

 

新しい仲間が増えた。かけがえのない、運命的な出会いだった。

 

母さんには『エネルギー波の原因は強力な生命反応だったが、調査時にはすでに消失していた』とだけ報告しておいた。ミニリュウのことは、俺だけの秘密だ。

 

意気揚々とハナダシティに戻った俺は、街の中心で聞き覚えのある声に足を止めた。

 

「うーん、どうすりゃいいんだ!水タイプのジムなんて、ピカチュウだけじゃ相性が悪すぎる!」

 

見ると、ハナダジムの前で、サトシとタケシが頭を抱えていた。どうやら友人たちは、新たな壁にぶち当たっているらしい。

 

俺はニヤリと笑みを浮かべ、彼らに声をかけるべく、一歩を踏み出した。

チラシ裏から表にでるべきか

  • チラシ裏でいい
  • 表にでてもいい
  • まだ表にでるのは早い
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