アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第81話

スタジアム全天を焦がすような、黒いリザードンの咆哮。

対峙するフシギバナは、微動だにせず、四肢を大地に深く突き立てていた。

相性は最悪。誰もがカイトの勝利を確信しているかのような空気が、会場を包んでいた。

 

「フシギバナ、お前は怖くないのか?」

俺の問いに、フシギバナは静かに鼻を鳴らした。

バナッ(主がいるなら、どこまでも行くさ)

その信頼が、俺の震える心を支えてくれる。

 

「リザードン、『かえんほうしゃ』!!」

カイトの先制。青白い炎が、一直線にフシギバナを飲み込もうとする。

「耐えろ!『ハードプラント』で防壁だ!」

 

フシギバナが地面から巨大な植物の根を出現させ、炎の盾を作る。だが、黒いリザードンの火火力は異常だった。盾は一瞬で灰になり、フシギバナの体に熱波が襲いかかる。

「バナァッ!!」

苦悶の声を上げながらも、フシギバナは退かない。

 

「燃え尽きろ!『だいもんじ』!」

「『まもる』だ!」

連続の猛攻を、精神力で耐え凌ぐ。だが、リザードンは空へと舞い上がり、上空からの『エアスラッシュ』でフシギバナを刻もうとする。

 

「(空中にいられたら、こちらの攻撃は届かない……)」

「フシギバナ、『あまいかおり』をスタジアム全域に広げろ!」

背中の花から、濃厚な香りが広がる。その粒子が空気の密度を変え、リザードンの翼の動きをわずかに鈍らせた。

 

「そこだ!『つるのムチ』で引きずり下ろせ!」

無数のツルが、逃げるリザードンの足を捉えた。

「なにっ!?」

カイトが驚く間もなく、フシギバナは全体重を乗せてリザードンを地面へと叩きつけた。

 

「グアアアッ!!」

激突の衝撃。だが、リザードンの瞳に、凄まじい闘志が宿った。

特性『もうか』。体力が減ったことで、炎の威力がさらに倍増する。

 

「終わりだ!『ブラストバーン』!!」

リザードンが地面を叩き、スタジアム全体が火柱に包まれた。

灼熱。逃げ場のない炎の檻。

「フシギバナ!!」

 

炎が消えた時、そこには焦げた大地の上に、満身創痍で立つフシギバナの姿があった。

全身が火傷だらけだが、その目はまだ、真っ直ぐに俺を見ていた。

 

「(まだだ……まだ、終わらせない!)」

俺は、サカキ戦で得た教訓をすべてぶつけることにした。

「フシギバナ、『ギガドレイン』!炎ごと養分を吸い取れ!」

 

「そんなことが……!」

カイトが叫ぶが、フシギバナのツルがリザードンの体に突き刺さった。

炎の熱量すらも、フシギバナは自らの生命力へと変換していく。

「バナァァァァッ!!!」

 

傷がみるみる癒えていくフシギバナに対し、リザードンは『ブラストバーン』の反動で動きが止まっている。

勝機は、この一瞬しかない。

 

「これが俺たちの、現実だ!!フシギバナ、最大出力、『ソーラービーム』!!」

「バナッ!!!」

 

フシギバナの背中の花が、太陽よりも眩しく輝いた。

凝縮された生命の奔流が、至近距離からリザードンを貫く。

光の柱がスタジアムを垂直に立ち上がり、天をも割った。

 

光が収まった時。

スタジアムには、深い静寂が訪れていた。

黒いリザードンは、目を回し、動かなくなっていた。

 

「……リザードン、戦闘不能!よって勝者、マサラタウンのミナト選手!!」

 

審判の宣言が、夢のように響いた。

次の瞬間、割れんばかりの大歓声が、爆発するようにスタジアムを包み込んだ。

 

「やった……。やったぞ、フシギバナ!」

俺は駆け寄り、倒れかけたフシギバナの首にしがみついた。

温かい。まだ生きている。俺たちは、勝ったんだ。

 

セキエイ高原の頂点。

俺は、相棒と共に、そこに立っていた。

視界が涙で歪み、空の青さが目に染みた。

 




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