アニポケ転生者物語 作:投稿者
スタジアム全天を焦がすような、黒いリザードンの咆哮。
対峙するフシギバナは、微動だにせず、四肢を大地に深く突き立てていた。
相性は最悪。誰もがカイトの勝利を確信しているかのような空気が、会場を包んでいた。
「フシギバナ、お前は怖くないのか?」
俺の問いに、フシギバナは静かに鼻を鳴らした。
「
その信頼が、俺の震える心を支えてくれる。
「リザードン、『かえんほうしゃ』!!」
カイトの先制。青白い炎が、一直線にフシギバナを飲み込もうとする。
「耐えろ!『ハードプラント』で防壁だ!」
フシギバナが地面から巨大な植物の根を出現させ、炎の盾を作る。だが、黒いリザードンの火火力は異常だった。盾は一瞬で灰になり、フシギバナの体に熱波が襲いかかる。
「バナァッ!!」
苦悶の声を上げながらも、フシギバナは退かない。
「燃え尽きろ!『だいもんじ』!」
「『まもる』だ!」
連続の猛攻を、精神力で耐え凌ぐ。だが、リザードンは空へと舞い上がり、上空からの『エアスラッシュ』でフシギバナを刻もうとする。
「(空中にいられたら、こちらの攻撃は届かない……)」
「フシギバナ、『あまいかおり』をスタジアム全域に広げろ!」
背中の花から、濃厚な香りが広がる。その粒子が空気の密度を変え、リザードンの翼の動きをわずかに鈍らせた。
「そこだ!『つるのムチ』で引きずり下ろせ!」
無数のツルが、逃げるリザードンの足を捉えた。
「なにっ!?」
カイトが驚く間もなく、フシギバナは全体重を乗せてリザードンを地面へと叩きつけた。
「グアアアッ!!」
激突の衝撃。だが、リザードンの瞳に、凄まじい闘志が宿った。
特性『もうか』。体力が減ったことで、炎の威力がさらに倍増する。
「終わりだ!『ブラストバーン』!!」
リザードンが地面を叩き、スタジアム全体が火柱に包まれた。
灼熱。逃げ場のない炎の檻。
「フシギバナ!!」
炎が消えた時、そこには焦げた大地の上に、満身創痍で立つフシギバナの姿があった。
全身が火傷だらけだが、その目はまだ、真っ直ぐに俺を見ていた。
「(まだだ……まだ、終わらせない!)」
俺は、サカキ戦で得た教訓をすべてぶつけることにした。
「フシギバナ、『ギガドレイン』!炎ごと養分を吸い取れ!」
「そんなことが……!」
カイトが叫ぶが、フシギバナのツルがリザードンの体に突き刺さった。
炎の熱量すらも、フシギバナは自らの生命力へと変換していく。
「バナァァァァッ!!!」
傷がみるみる癒えていくフシギバナに対し、リザードンは『ブラストバーン』の反動で動きが止まっている。
勝機は、この一瞬しかない。
「これが俺たちの、現実だ!!フシギバナ、最大出力、『ソーラービーム』!!」
「バナッ!!!」
フシギバナの背中の花が、太陽よりも眩しく輝いた。
凝縮された生命の奔流が、至近距離からリザードンを貫く。
光の柱がスタジアムを垂直に立ち上がり、天をも割った。
光が収まった時。
スタジアムには、深い静寂が訪れていた。
黒いリザードンは、目を回し、動かなくなっていた。
「……リザードン、戦闘不能!よって勝者、マサラタウンのミナト選手!!」
審判の宣言が、夢のように響いた。
次の瞬間、割れんばかりの大歓声が、爆発するようにスタジアムを包み込んだ。
「やった……。やったぞ、フシギバナ!」
俺は駆け寄り、倒れかけたフシギバナの首にしがみついた。
温かい。まだ生きている。俺たちは、勝ったんだ。
セキエイ高原の頂点。
俺は、相棒と共に、そこに立っていた。
視界が涙で歪み、空の青さが目に染みた。
午前はここまでになります。