アニポケ転生者物語   作:投稿者

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【閑話】旅立ちの朝、語られなかった想い

セキエイの舞台裏、戦士たちの休息

セキエイ大会の期間中、選手村の宿舎は、常に独特の緊張感に包まれていた。

だが、俺の部屋だけは少し違っていたかもしれない。

 

予選リーグを全勝で突破した夜のことだ。

俺は、次の試合に向けてデバイスでデータを整理していた。ふと気配を感じて振り返ると、狭い部屋の中に、ポケモンたちがぎっしりと集まっていた。

 

「お前たち、どうしたんだ?狭くないか?」

 

フシギバナが、申し訳なさそうに身を縮こまらせている。その横で、ウインディが尻尾を振って俺の膝に頭を乗せてきた。

ワオォン……(主、休もうぜ)

 

どうやら、俺が根を詰めすぎているのを心配してくれたらしい。

ハピナスが温かい卵を差し出し、ヤドランが「やぁん?」と呑気な声で和ませる。カイリューは天井に頭をぶつけないようにしながら、俺を背中から抱きしめてくれた。

 

「ありがとうな。……そうだな、今日はもう休もう」

 

俺はデータを保存し、ポケモンたちの輪の中に潜り込んだ。フシギバナの背中の花から漂う甘い香りと、カイリューの体温。

最強のセキュリティに守られて、俺はその夜、泥のように眠った。

 

決勝戦の前夜もそうだった。

高ぶりすぎて眠れない俺の枕元に、ゲンガーがそっと現れた。

ゲッゲッ……(寝れないのか?)

「ああ。明日の相手、カイトの手持ち……特にあの黒いリザードンが気になってな」

 

ゲンガーはニヤリと笑うと、影絵遊びを始めた。壁に映し出される、コミカルなリザードンやフシギバナの影。

「ははっ、似てないなそれ」

ひとしきり笑った後、ゲンガーは真剣な目で俺を見た。

ゲンッ!(俺たちがついてる。絶対勝てる)

「……ああ。そうだな」

 

言葉はなくても、心は通じ合っている。

そんな夜があったからこそ、俺たちは決勝の舞台で、最高のパフォーマンスを発揮できたのだ。

 


祝勝会の夜、母と子

大会終了後の祝勝会。マサラタウンの実家は、お祝いの花束や電報で溢れかえっていた。

近所の人たちや、オーキド博士、サトシたちも帰った後。

静まり返ったリビングで、俺は母さんと向かい合って座っていた。

 

「改めまして。優勝おめでとう、ミナト」

母さんが、温かい紅茶を淹れてくれた。

「ありがとう、母さん。……シルフカンパニーの時は、迷惑かけたな」

 

「ううん。あの時、あなたが来てくれなかったら、どうなっていたか……。私の方こそ、あなたを危険な目に遭わせてしまって、ごめんなさい」

 

母さんは少し目を伏せた。シルフの優秀なエンジニアとしての顔ではなく、ただの母親としての顔だ。

「でもね、決勝戦のあなたの姿を見て、思ったの。ああ、この子はもう、私が守ってあげなきゃいけない子供じゃないんだって」

 

母さんは顔を上げ、少し潤んだ瞳で俺を見つめた。

「フシギバナやカイリューたちと一緒に戦うあなたは、本当に立派なトレーナーだったわ。……強くなったわね、ミナト」

 

「……まだまだだよ。サカキには逃げられたし、ミュウツーのことも……」

「そうね。でも、あなたは諦めないでしょう?」

 

母さんは見透かしたように微笑む。

「あなたは、いつだって『現実』から逃げずに立ち向かってきた。これからも、きっとそうするはず」

 

母さんは立ち上がり、棚から一つの包みを取り出した。

「これ、餞別よ」

包みを開けると、中には最新鋭の防水・耐衝撃仕様のバックパックと、機能性が強化された新しい旅の服が入っていた。

 

「オレンジ諸島は海が多いからね。それに、あなたの旅はまだまだ続くんでしょう?」

「母さん……」

「行ってらっしゃい、ミナト。たまには連絡するのよ?」

 

俺は新しい服を抱きしめた。

「ああ。行ってきます」

 

その夜、俺は母さんの作ってくれた夜食を食べながら、これまでの旅の話を語り明かした。

楽しかったこと、怖かったこと、そして感動したこと。

母さんは、一つ一つ頷きながら、優しく聞いてくれた。

 


博士の贈る言葉

出発の朝。港へ向かう前に、俺はオーキド研究所に立ち寄った。

博士は、既にパソコンの前で忙しそうにデータを整理していた。

 

「おはようございます、博士」

「おお、ミナト君!昨夜はよく眠れたかな?」

「はい。おかげさまで」

 

博士は椅子を回転させ、俺に向き直った。

「君のセキエイ大会でのバトルデータ、そして旅の道中で送ってくれたレポート……。どれも素晴らしいものばかりじゃった。特に、バサギリの発見……あの未知の進化と、岩石質の皮膚が放つ独特の色彩データは、学会でも大きな注目を集めておるよ。わしも、あのような色は見たことがないからのう」

 

「それはよかったです。……でも、俺にはまだ知りたいことがあります」

「うむ。ミュウツーのこと、そしてロケット団の動向じゃな」

 

博士は表情を引き締め、一枚のディスクを手渡してきた。

「これは、オレンジ諸島周辺の海流データと、最近観測された異常気象の記録じゃ。ロケット団が何かを探しているという君の情報と合わせると、ある一つの可能性が浮かび上がってくる」

 

「可能性?」

「『海の神』……ルギアじゃよ」

 

「ルギア……!」

映画『ルギア爆誕』の伝説のポケモン。やはり、奴らの狙いはそこにあるのか。

 

「確証はない。だが、君なら真実にたどり着けるかもしれん。……くれぐれも気をつけるんじゃぞ」

 

「はい。必ず、突き止めます」

 

俺がディスクをしまうと、博士は急に顔を緩めた。

「さて、湿っぽい話はこれくらいにして。旅立ちの日に、一句詠ませてもらおうかのう」

 

「えっ、ここでですか?」

「うむ!『新天地、波をかき分け、ラプラスだ』……どうじゃ?」

「……そのままですね」

「わっはっは!分かりやすいのが一番じゃ!」

 

博士の豪快な笑い声に、俺の緊張も解けた。

「ありがとうございます、博士。行ってきます!」

 

「うむ!元気でな!」

 


ライバルたちのその後

港へ向かう道すがら、俺はサトシの家の前を通った。

ちょうど、サトシが旅支度を整えて出てくるところだった。

 

「よう、ミナト!お前も出発か?」

「ああ。サトシは?」

「俺は、オーキド博士から『GSボール』ってのを預かってな。それを届けに、オレンジ諸島へ行くんだ!」

 

「GSボールか……」

やはり、運命は動き出している。サトシもまた、オレンジ諸島の物語へと巻き込まれていくのだ。

 

「奇遇だな。俺もオレンジ諸島へ行くんだ」

「マジかよ!じゃあ、向こうでも会えるかもな!」

「ああ。……リザードンのことは、どうするんだ?」

 

サトシは少し表情を曇らせたが、すぐに前を向いた。

「連れて行くよ。いつか絶対、わかり合ってみせる。それが、俺の新しい目標なんだ」

 

「そっか。お前ならできるよ」

「へへっ、サンキュー!」

 

そこに、シゲルも現れた。

「やれやれ、朝から騒がしいな」

「シゲル!お前はどうするんだよ?」

 

シゲルはフンと鼻を鳴らす。

「僕はしばらくカントーに残って、研究の手伝いをするよ。バトルの腕も磨き直さなきゃいけないしね。……ミナト、お前が帰ってくる頃には、僕の方が強くなってるから覚悟しておけよ」

 

「望むところだ」

 

三人は、それぞれの道を確認し合った。

サトシはGSボールの謎を解く旅へ。

シゲルは己を見つめ直す研鑽の日々へ。

そして俺は、世界の歪みを正すための戦いへ。

 

「じゃあな、二人とも!また会おうぜ!」

サトシが駆け出していく。

「気をつけて行けよ、ミナト」

シゲルが手を振る。

 

俺も、二人に背を向けて歩き出した。

寂しさはない。ただ、前へ進む意志だけがあった。

 


嵐の予感、最凶の招待状

マサラタウンの港。

そこには、既に準備万端のラプラスが待っていた。

 

「待たせたな、ラプラス」

「キューッ!」

 

俺はラプラスの背中に飛び乗った。

心地よい揺れ。潮の香り。

全てが、新しい冒険の始まりを告げている。

 

「みんな、出てこい!」

 

俺は、手持ちのポケモンたちを甲板(ラプラスの背中)に出した。

フシギバナ、ポリゴン2、カイリュー、ゲンガー、ウインディ。

そして、海を泳ぐラプラス。

 

「カントーの旅は終わった。だが、俺たちの戦いはこれからだ」

 

俺は、海平線の彼方を指差した。

そこには、大小様々な島々が浮かぶ、オレンジ諸島がある。

 

「全速前進!オレンジ諸島へ!」

 

俺の号令と共に、ラプラスが力強く波を蹴った。

白い水しぶきを上げて、俺たちは大海原へと進み出す。

 

だが、出航して間もなくのことだった。

穏やかだった空が、急速に暗雲に覆われ始めた。

 

「(天気が崩れるのか……?)」

 

『警告。上空より、高速接近物体あり』

ポリゴン2がアラートを発する。

 

見上げると、厚い雲を突き破って、一匹のカイリューが降りてきた。

俺のカイリューとは違う、どこか無機質な目をしたカイリューだ。首には、鞄を下げている。

 

「郵便屋……?」

 

カイリューは、俺の目の前に降り立つと、鞄から一通の手紙を取り出し、無言で手渡してきた。

そして、役目は終わったとばかりに、再び空の彼方へと飛び去っていった。

 

「なんだ、あいつ……」

 

手紙は、黒い封筒に入っていた。封蝋には、見覚えのない紋章。

俺は、嫌な予感を覚えながら封を開けた。

 

中には、ホログラム投影装置が入っていた。

スイッチを入れると、空中に立体映像が浮かび上がる。

そこに映っていたのは、暗い部屋と、ゆったりとしたローブを纏った女性の姿だった。

 

『選ばれし強きトレーナーよ。あなたを、私の主(マスター)が主催するパーティへ招待します』

 

女性の声は、どこか機械的だった。

 

『場所は、ニューアイランド。嵐を越えた先にある、最強の城。……そこで、あなたに会えるのを楽しみにしています』

 

映像が消える。

ニューアイランド。聞いたことのない島の名だ。

だが、俺には分かっていた。この招待状の主が誰なのか。

 

「(このサイコパワーの残滓……間違いない)」

 

俺は、手紙を握りしめた。

トキワジムで感じた、あの冷たく、絶望的な気配。

 

「ミュウツー……」

 

サカキの元を去った彼が、ついに動き出したのだ。

最強のトレーナーを集め、何かを始めようとしている。

 

「(行くしかないな)」

 

オレンジ諸島へ向かうはずだった進路を、俺は変更した。

嵐が渦巻く海域。ニューアイランドへ。

 

「みんな、覚悟はいいか?」

 

フシギバナが、低く唸る。ウインディが牙を剥く。カイリューが翼を広げる。

ゲンガーがニヤリと笑い、ポリゴン2が戦闘モードを起動する。

全員、戦る気だ。

 

「あの時の決着をつける時が来たようだ」

 

俺は、荒れ狂う海を見据えた。

この先に待つのは、最強のポケモン・ミュウツー。

そして、俺たちが越えなければならない、最大の試練。

 

「進路変更!目指すはニューアイランド!」

 

ラプラスが方向を変え、嵐の中へと突っ込んでいく。

雷鳴が轟き、波が高くうねる。

だが、俺たちの心に恐怖はない。

 




本日はここまでになります。
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