アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第84話

「うわあああ!波が来るぞ!」

サトシの叫び声と共に、巨大な波がラプラスを飲み込もうとする。

 

「ラプラス、『れいとうビーム』!」

 

俺の咄嗟の指示に、ラプラスが口から冷気を噴射する。迫りくる波の一部分が瞬時に凍りつき、即席の氷の坂道が形成された。

ラプラスはその氷の上を滑るように駆け上がり、波の頂点を越えていく。

 

「すっげえ……!波を凍らせて道にするなんて!」

「感心してる場合じゃないわよ!また来るわ!」

カスミが悲鳴を上げる。

 

休む間もなく、次の大波が襲ってくる。今度は横からの強烈なうねりだ。

 

「カイリュー、風を操れ!『おいかぜ』!」

 

上空のカイリューが翼を羽ばたかせると、俺たちの背後から強力な追い風が発生した。その風圧がラプラスを押し出し、波が崩れる前に一気に加速させる。

 

「(いい連携だ。この調子なら行ける!)」

 

自然の猛威と、人為的なサイコパワーが入り混じった最悪の海況。だが、俺たちのチームワークはそれを上回っていた。

 

数十分の死闘の末、俺たちはついに嵐の結界を突破した。

突然、風が止み、波が穏やかになる。

分厚い雨雲を抜けた先には、不気味な静寂に包まれた入り江が広がっていた。

 

「着いたのか……?」

タケシが顔を上げる。

 

霧が晴れた先に現れたのは、垂直に切り立った岩山と、その頂に鎮座する巨大な城塞だった。

無機質な金属と、古風な石造りが融合したような、異様な建築物。窓からは冷たい光が漏れ出し、訪れる者を拒絶しているようだ。

 

桟橋にラプラスを寄せると、そこには既に三人のトレーナーが到着していた。

 

「遅かったな。嵐を越えてこれたのは、僕たちだけかと思ったよ」

 

ピジョットの背に乗り、颯爽と降り立った少年、ソラオ。

ギャラドスの背に乗り、荒波を乗りこなしてきたウミオ。

そして、フシギバナと共に小船でたどり着いた少女、スイート。

 

彼らもまた、それぞれの相棒と共に、あの死の海を越えてきた実力者たちだ。

 

「お前たちも、招待されたのか?」

サトシが尋ねると、ウミオがニヤリと笑った。

「ああ。最強のトレーナーの宴となれば、断る理由はねえからな」

 

「(彼らも招待された『最強』候補たち……。だが、原作通りなら、彼らは……)」

 

俺の脳裏に、彼らのポケモンたちがコピーポケモンに敗北し、奪われていく未来がよぎる。

だが、今はまだ何も言えない。俺にできるのは、最悪の事態に備えて警戒することだけだ。

 

ギギギ……と重苦しい音を立てて、城の巨大な扉が開いた。

暗闇の中から、一人の女性が姿を現す。

 

「ようこそ、ニューアイランドへ」

 

長いローブを纏い、感情の読み取れない無機質な瞳。その顔を見て、タケシが驚きの声を上げる。

 

「ジョーイさん!?ジョーイさんじゃないか!行方不明になっていたと聞いていたけど、こんなところにいたなんて!」

 

タケシが駆け寄ろうとするが、ジョーイは無反応だ。

「……私は、この城の主(マスター)にお仕えする者。皆様を、パーティ会場へご案内いたします」

 

彼女の言葉には抑揚がなく、まるでプログラムされた機械のようだ。

俺はグラス型デバイスで彼女をスキャンした。

『警告。対象者の脳波に異常あり。強力な催眠誘導を受けています』

 

「(やっぱり、洗脳されている……)」

 

「案内してくれ。お前の主人って奴にな」

俺が言うと、ジョーイは無言で踵を返し、城の奥へと歩き出した。

 

城の内部は、外観の古めかしさとは対照的に、最新鋭の設備で満たされていた。

壁一面に張り巡らされたパイプ、怪しく明滅するモニター、そして遺伝子工学の実験器具のような装置。

ここは城ではない。巨大な実験場だ。

 

長い廊下を抜け、俺たちはメインホールへと通された。

ドーム状の広大な空間。その中央には、スタジアムのようなバトルフィールドが設置されている。

 

「ここが、パーティ会場か?」

ソラオが周囲を見回す。

 

『ようこそ、選ばれしトレーナーたちよ』

 

突然、天井から重厚で冷徹な声が響き渡った。

声の主を探す俺たちの目の前で、螺旋階段の上にある玉座が光に包まれる。

 

凄まじいプレッシャー。

肌が粟立つような殺気。

 

光の中から、ゆっくりと降りてくる一つの影。

白銀の体、長い尾、人間のような骨格を持ちながら、明らかに人間ではない異形の姿。

 

「ミュウツー……!」

 

トキワジムで見た時よりも、その存在感は増していた。

あの時は怒りと混乱に支配されていたが、今の彼は、静かな怒りを完璧に制御し、王としての威厳すら漂わせている。

 

ミュウツーは、宙に浮いたまま俺たちの前に降り立つと、冷ややかな視線を向けた。

 

『私は、この世で最も強く、そして最も孤独な存在。……人間たちよ、よくぞあの嵐を越えてきた』

 

テレパシーが直接脳内に響く。

サトシたちは、ポケモンが人語を話す(思考を送る)ことに驚愕している。

 

ミュウツーの視線が、招待されたトレーナーたちを一人ずつ走査していく。

そして、俺の前で止まった。

 

『……また会ったな。私の『鎧』を砕いた人間よ』

 

ミュウツーの目が、微かに細められた。

トキワジムでの出来事。俺とフシギバナが、彼の拘束具を破壊したあの瞬間を、彼は明確に覚えていたのだ。

 

「ミュウツー。招待に応じて来てやったぞ」

 

俺は、恐怖を押し殺して一歩前に出た。

「お前が何をしようとしているのか、見届けに来た」

 

『フム。……お前のそのポケモンたち。トキワの時よりもさらに輝きを増しているな』

 

ミュウツーは、俺の腰にあるモンスターボールを一瞥した。

『だが、所詮は人間に飼い慣らされた道具に過ぎん。人間と共にいる限り、ポケモンは真の強さを手に入れることはできない』

 

「なんだと!?」

サトシが噛みつく。

「ポケモンは道具じゃない!友達だ!」

 

『友達、か……。人間はいつもそうやって綺麗な言葉で飾る。だが、その本質は支配と被支配だ』

 

ミュウツーは、背後に控えていた三つの巨大なゲートを指し示した。

 

『どちらが真の『最強』か。私が創り出した、完璧な写し身たちで証明してやろう』

 

ゲートが開き、中から三体のポケモンが歩み出てきた。

フシギバナ、カメックス、リザードン。

だが、その体にはオリジナルにはない、不気味な黒い紋様が浮かび上がっていた。

彼らの目には、意思というものが感じられない。ただ、主人の命令を待つ兵器のような冷たさがあった。

 

『さあ、始めようか。人間への、逆襲の序曲を』

 

最強のポケモンによる、人類への宣戦布告。

逃げ場のない孤島で、俺たちの、本当の戦いが幕を開けた。

 

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