アニポケ転生者物語 作:投稿者
「うわあああ!離せ、離せよ!」
サトシが、ピカチュウを強引に連れ去ろうとするミュウツーボールを必死に追いかけている。ピカチュウは必死に『10まんボルト』で抵抗するが、ボールは執拗に彼を追い詰めていく。
広間は阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。
トレーナーたちの抵抗も虚しく、次々とポケモンたちが捕獲されていく。
「(このボール……物理法則を無視した動きだ。シルフの技術さえも超えているのか!?)」
俺の目の前にも、三つのボールが迫っていた。ターゲットは、俺の腰にあるモンスターボールだ。
「やらせるか!ゲンガー、迎撃しろ!」
俺はゲンガーを繰り出した。
「ゲッ!」
ゲンガーが『シャドーボール』を放ち、迫りくるボールの一つを粉砕する。
「よし!壊せるぞ!」
だが、壊しても壊しても、天井の射出口から新しいボールが次々と補充される。キリがない。
根源を断たなければ、いずれ物量で押し切られる。
「ポリゴン2、システムのバックエンドに潜り込め!このボールの制御信号をジャックできるか!」
俺はポリゴン2を呼び出し、デバイスに接続した。
『了解。ネットワークへのダイブを開始。……解析中。信号パターンが非常に複雑です。これは電脳的なプログラムではなく、サイコパワーによる物理的な干渉プログラムです』
「構わない!お前の演算能力で、無理やり介入しろ!シルフの誇りを見せてやれ!」
『イエス、マスター』
ポリゴン2が空中に電子の網を展開する。
『インターセプト開始。……ミュウツーボール、周辺10メートル以内の制御権を奪取しました』
ポリゴン2の干渉により、俺とサトシの周りにあったボールが一斉に空中で停止し、火花を散らして爆発した。
「すげえ!止まったぞ!」
サトシが歓声を上げる。
「よし!いけるぞ!」
だが、その歓喜は一瞬だった。
玉座に座るミュウツーが、不快そうに指を動かしたのだ。
『……電子のノイズか。不快だな』
ミュウツーの瞳が青く光る。
その瞬間、ポリゴン2の展開していた電子フィールドが、不可視の圧力によって握りつぶされた。
ズドンッ!
『……システム……致命的な……エラー……再起動……不能……』
ポリゴン2がノイズを吐き出し、光の粒子となってデバイスへと強制送還された。デバイスからは煙が上がり、画面がブラックアウトする。
「ポリゴン2!!」
『無駄な足掻きだ。私の支配するこの島で、私の意思に抗うことなどできはしない』
ミュウツーが右手を握りしめると、俺の腰にあったボールが、見えない力で引きちぎられた。
「あっ!」
ウインディ、カイリュー、ヤドラン、サイドン、ラプラス……。
俺がこれまでの旅で絆を深めてきた仲間たちの入ったボールが、宙に浮き、次々と黒い闇に飲み込まれていく。
「やめろ……!返せ!」
俺は手を伸ばしたが、ボールは吸い込まれるように回収ダクトへと消えていった。
最後に残ったゲンガーも、俺を守ろうと影を伸ばしたが、ボールは影の中まで追跡し、彼を捕獲した。
「みんな……!」
手の中に残ったのは、空っぽになったベルトと、機能停止したデバイスだけだった。
俺は、膝から崩れ落ちそうになるのを、必死で堪えた。
「ピカチュウ!待てえええっ!」
サトシの絶叫が響く。
最後まで抵抗していたピカチュウも、ついに捕獲され、ダクトの奥へと連れ去られてしまった。
サトシは、迷うことなくダクトへと飛び込み、ピカチュウを追って闇の中へ消えていく。
「サトシ!」
俺もまた、迷いはなかった。
仲間を奪われたまま、おめおめと帰れるわけがない。
俺はサトシの後を追い、城の奥へと続く長い螺旋階段を駆け下りた。
階段の先、地下深くにあるのは、この不条理な世界の心臓部。
コピーポケモンたちが生成される、暗黒のプラントだ。
走りながら、俺は歯を食いしばった。
カントーチャンピオン?シルフの英雄?
そんな称号、この圧倒的な神の力の前では何の役にも立たない。
俺はまた、守れなかったのか。
「(いや、まだだ。まだ終わっちゃいない!)」
俺は、転生者として知っている。この先で何が起こるかを。
そして、その悲劇を止めるために、俺はここにいるはずだ。
「サトシ、待ってろ!俺も行く!」
最深部の扉を蹴り開ける。
そこには、無数のカプセルの中で脈動する、おぞましい生命の萌芽が並んでいた。
巨大なアームが、奪われたボールからポケモンの遺伝子情報を吸い上げている。
失った仲間たちを取り戻すための、絶望的な潜入。
だが、その暗闇の中で、俺は見た。
オリジナルの記憶を奪われ、戦うためだけに産み落とされる、悲しき命の誕生を。
「(これが……ミュウツーの逆襲の正体……)」
俺の拳が、怒りと悲しみで震えていた。