アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第86話

「うわあああ!離せ、離せよ!」

サトシが、ピカチュウを強引に連れ去ろうとするミュウツーボールを必死に追いかけている。ピカチュウは必死に『10まんボルト』で抵抗するが、ボールは執拗に彼を追い詰めていく。

 

広間は阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。

トレーナーたちの抵抗も虚しく、次々とポケモンたちが捕獲されていく。

 

「(このボール……物理法則を無視した動きだ。シルフの技術さえも超えているのか!?)」

 

俺の目の前にも、三つのボールが迫っていた。ターゲットは、俺の腰にあるモンスターボールだ。

 

「やらせるか!ゲンガー、迎撃しろ!」

 

俺はゲンガーを繰り出した。

「ゲッ!」

ゲンガーが『シャドーボール』を放ち、迫りくるボールの一つを粉砕する。

 

「よし!壊せるぞ!」

 

だが、壊しても壊しても、天井の射出口から新しいボールが次々と補充される。キリがない。

根源を断たなければ、いずれ物量で押し切られる。

 

「ポリゴン2、システムのバックエンドに潜り込め!このボールの制御信号をジャックできるか!」

 

俺はポリゴン2を呼び出し、デバイスに接続した。

『了解。ネットワークへのダイブを開始。……解析中。信号パターンが非常に複雑です。これは電脳的なプログラムではなく、サイコパワーによる物理的な干渉プログラムです』

 

「構わない!お前の演算能力で、無理やり介入しろ!シルフの誇りを見せてやれ!」

 

『イエス、マスター』

ポリゴン2が空中に電子の網を展開する。

『インターセプト開始。……ミュウツーボール、周辺10メートル以内の制御権を奪取しました』

 

ポリゴン2の干渉により、俺とサトシの周りにあったボールが一斉に空中で停止し、火花を散らして爆発した。

 

「すげえ!止まったぞ!」

サトシが歓声を上げる。

 

「よし!いけるぞ!」

 

だが、その歓喜は一瞬だった。

玉座に座るミュウツーが、不快そうに指を動かしたのだ。

 

『……電子のノイズか。不快だな』

 

ミュウツーの瞳が青く光る。

その瞬間、ポリゴン2の展開していた電子フィールドが、不可視の圧力によって握りつぶされた。

 

ズドンッ!

 

『……システム……致命的な……エラー……再起動……不能……』

ポリゴン2がノイズを吐き出し、光の粒子となってデバイスへと強制送還された。デバイスからは煙が上がり、画面がブラックアウトする。

 

「ポリゴン2!!」

 

『無駄な足掻きだ。私の支配するこの島で、私の意思に抗うことなどできはしない』

 

ミュウツーが右手を握りしめると、俺の腰にあったボールが、見えない力で引きちぎられた。

 

「あっ!」

 

ウインディ、カイリュー、ヤドラン、サイドン、ラプラス……。

俺がこれまでの旅で絆を深めてきた仲間たちの入ったボールが、宙に浮き、次々と黒い闇に飲み込まれていく。

 

「やめろ……!返せ!」

 

俺は手を伸ばしたが、ボールは吸い込まれるように回収ダクトへと消えていった。

最後に残ったゲンガーも、俺を守ろうと影を伸ばしたが、ボールは影の中まで追跡し、彼を捕獲した。

 

「みんな……!」

 

手の中に残ったのは、空っぽになったベルトと、機能停止したデバイスだけだった。

俺は、膝から崩れ落ちそうになるのを、必死で堪えた。

 

「ピカチュウ!待てえええっ!」

 

サトシの絶叫が響く。

最後まで抵抗していたピカチュウも、ついに捕獲され、ダクトの奥へと連れ去られてしまった。

サトシは、迷うことなくダクトへと飛び込み、ピカチュウを追って闇の中へ消えていく。

 

「サトシ!」

 

俺もまた、迷いはなかった。

仲間を奪われたまま、おめおめと帰れるわけがない。

俺はサトシの後を追い、城の奥へと続く長い螺旋階段を駆け下りた。

 

階段の先、地下深くにあるのは、この不条理な世界の心臓部。

コピーポケモンたちが生成される、暗黒のプラントだ。

 

走りながら、俺は歯を食いしばった。

カントーチャンピオン?シルフの英雄?

そんな称号、この圧倒的な神の力の前では何の役にも立たない。

俺はまた、守れなかったのか。

 

「(いや、まだだ。まだ終わっちゃいない!)」

 

俺は、転生者として知っている。この先で何が起こるかを。

そして、その悲劇を止めるために、俺はここにいるはずだ。

 

「サトシ、待ってろ!俺も行く!」

 

最深部の扉を蹴り開ける。

そこには、無数のカプセルの中で脈動する、おぞましい生命の萌芽が並んでいた。

巨大なアームが、奪われたボールからポケモンの遺伝子情報を吸い上げている。

 

失った仲間たちを取り戻すための、絶望的な潜入。

だが、その暗闇の中で、俺は見た。

オリジナルの記憶を奪われ、戦うためだけに産み落とされる、悲しき命の誕生を。

 

「(これが……ミュウツーの逆襲の正体……)」

 

俺の拳が、怒りと悲しみで震えていた。

 

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