「B小町のアイの子供?」
それは夕食の後だったアクアは彼女に自分の秘密を打ち明けた
「そう東京ドームライブ当日に殺されたアイドルの…」
「かなちゃんと同じ映画に出てた人だよね?」
頷いたアクアにあかねは近づいて優しく抱き締めた。想像してなかった突然のことに驚く彼の頭を撫でる
「家族が居なくなるのって寂しいでしょ」
「でもミヤコさんやルビーがいたから」
「私はアクア君の母親にはなれないけど、一緒に歩くことが出来る」
「そうだな、ゆっくり歩いていこう」
あっという間に2人の仲は深く親密になっていく、物置きに使用している部屋を整理しベッドを購入したが無用の長物になってしまった。シングルからセミダブルになった寝具で2人は互いの体温を確かめあうように抱き合う…そして
「奴隷契約破棄ですか?つまり…」
「俺にはあかねが必要です」
溜息を吐いた奴隷商人は全てを察し書類を作り判子を押した
「お幸せに!店舗を拡大したら御贔屓に」
「ありがとうございます」
その足で2人は婚姻手続きをした。この世界の適齢期は現代日本よりも早く王族や貴族なら産まれた瞬間に許嫁が決まることが多々ある。一般家庭や冒険者だと早ければ15歳に結ばれることもザラである
「では王都のノーザンから指輪を注文しますのでサイズを測りますね」
商業ギルドの受付嬢は、慣れた手つきで巻き尺を使って採寸をすると必要事項を紙に記載していく、貴族以上になればデザインを注文することが出来るが一般の2人は3つの既存パターンから選ぶことになる
「私も相手がほしいわね」
受付嬢の言葉を聞き流し新婚になったアクアたちは手をつないで外へ出ていった。そして店では常連客から祝いの言葉を受けたことで2人は結ばれたことを実感するのであった
「旅行?」
隣で横になる彼女は夫のことを見つめながら首を傾げる。夫婦になっても2人の暮らしは変わらずポーションや医薬品を売りながら過ごす日々が続いていた。この世界にはネットやゲームが存在しないので妻のあかねは自宅の庭でガーデニングをしている
「新婚旅行はしたいと思って」
「アクア君とならどこでもいいよ」
云わばハネムーンで、現代日本と違い旅行代理店なんて存在しないので計画を1から立てる必要となる。準備をするだけで大変だ
「もしかしたら私たち以外に来ている人がいるかもね」
「知ってる人とは限らないが」
ランプの灯を消して暗くなった室内では月の明かりが窓から差し込んでくる。その影に流れ星が横切ると若い男女たちの組体操が始まった。互いに初めてを捧げたときは震えていたが今では楽しむ余裕もある。アクアは妻をうつ伏せにさせると整体師のように凝った筋肉を解しながらマッサージをしていく
「うん……んぅそこは」
次第に火照る体に頬は紅潮するが焦らすようにツボを押さえていく、立ち仕事やガーデニングで下半身を酷使するので腰から下を触っていくと可愛い声をあげながら悶える。アクアは興奮を抑えながらも臀部の少し上を優しく触り下着に指をかける
「もう…えっちなんだから」
「じゃあこのまま寝る?」
抱き着いてくる妻と唇を重ね合わせ欲望のままに求めていく、愛を伴う行為に制限時間なんて存在しない!軋むベッドに滴り落ちる汗が他のモノと混ざり合う。若さの勢いも相まって復活するのも早い、汚れても大丈夫!明日は洗濯日和の模様だ
「旅か?」
「妻と遠出をしたいと思いまして」
翌日商業ギルドに顔を出すとギルドマスターが現れ別室に通された。アクアは昨日のことを伝えると彼女は腕を組んで唸り声をあげていた
「それなら王都近辺はどうだ?」
「王都ですか?」
「そうだ!観光出来る場所もあるし娯楽施設も沢山ある。王都に入るには面倒な手続きが必要になるがシルクやサンデーの城下町ならギルド証で通ることができる」
良さげな提案に頷きそうになるアクアだが1つの気になった質問をぶつけてみる
「どれぐらい掛かりますか?」
「日数か?そうだな…馬車だと片道2週間ってことろだ」
「行って帰ってくるだけで1ヶ月」
「それだけ店を空けてしまったら………って思っているだろ?」
その言葉に頷くがギルドマスターは笑って白い歯を見せると
「ワイバーンに乗れば約1日で到着する」
「ワイバーン?」
つまり陸路ではなく空路で向かうことである。馬車とは違い盗賊に襲われることはなく安全に目的地まで向かうことが出来る乗り物で馬車より割高となっている
「金の方は問題無いだろ?」
「まぁ」
「それで行くんだったらギルドの方からも1部を出そう」
その申し出にアクアは驚いてしまう。夫婦の旅行に対してギルド側が金を出すなんて
「向こうのギルドに荷物を届けてほしい、それにお前たちが城下町に行くことを知ったら他の奴らも同じように頼んでくるはずだ!」
近隣の街ならギルドへ依頼を出せるが、距離が離れているところだと敬遠されてしまい受注されることは限りなく低い、それなら遠出をする人に頼んでしまおうということである
「それでお願いします」
「出発日が決まったら教えてくれ、君の家の警護を冒険者ギルドに伝える必要があるから」
「えっ?」
「なに呆けた顔をしてるんだ?当たり前のことだろ」
テーブルに置かれた飲み物を一気飲みすると彼女は更に
「この街やギルドにとって君は大切な存在だ!そしてよからぬ考えを持つ愚か者が店を空けている間に悪さをする可能性がある」
この世界にセコムやアルソックなんて存在しない、家の防犯は鍵や雨戸を閉めるぐらいで夜は憲兵や元冒険者が見回っている
「でも」
「冒険者たちの小遣い稼ぎに手を貸してほしいな、それに牽制の意味もあるが無法者を近づけさせない目的もある」
ギルドマスターは机から1枚の紙を取り出してアクアに渡す。そこに書かれていたのは以前自分たちに『ハイポーション』を物々交換してほしいと頼み込んだ男の調書だった。地図にも乗らない小さな村で家族と暮らしていたが1番の働き手である長男がモンスターに襲われて重症を負った。治す術がなく苦しむ息子を見て父親は旅の商人から『ハイポーション』を売る若者の話を思い出し庭で獲れた野菜を袋に詰めてダノンまで訪れた
「君がもし交換や無償提供をしていたら私は軽蔑をしただろう」
「他の購入者に対する侮辱なので」
「分かっているならいいさ、欲しければ金や商品に見合うモノを用意しろ!特別扱いを許してしまうと不平不満の温床になってしまう」
「鬼ではありませんから取り置きぐらいはします」
細々なことを話しアクアは部屋から出て行った。ギルドマスターは足音が聞こえなくなるのを確認すると頭を掻きながら思案する
「(彼にはここに骨を埋めてもらいたい、馬鹿共が手を出して見限ってしまう可能性を潰しておかないと街の存続にも関わる)」
アクアの『ポーション』や医療セットのおかげで冒険者たちの帰還率が上昇し『ハイポーション』は交易にも使える。小さな市場の商人だった彼はダノンにとってなくてはならない存在となっている。だからこそ上に立つ者として守らなければならない
「(街の外から下手人が出てくれれば)」
とどのつまり自分たちのところから罪人を出すのは不味いが、他の街や国なら今後の交渉で優位な立場になる。パワーバランスを大きく傾けることも可能だ
「(何も起きないのが最高だけどな)」
妻にギルドでの出来事を伝えると了承してくれた。庭の花は近所の人に頼んで水を撒いてもらうことになり2人は計画を立てながら荷造りを始める。アクアは表の看板に休むことを記載し店に訪れる常連客たちにも口頭で伝えた。そして案の定だが荷物運びの頼み事が多く舞い込んできた
「すっご~い」
「あぁ本当だ!」
2人は魔物使いが操縦するワイバーンの背に乗って大空を飛んでいた。小型種なら背に跨る形となるが大型種の場合は馬車のように座るスペースが備え付けてある。空気が薄い?上空は寒い?そんなことはありません。魔物使いの展開する魔法は搭乗者を守るようにドーム型の結界を展開しているので地上にいるのと変わらない
「いっぱい楽しもうね」
「あかねと一緒ならどんなことでも」
「(甘酸っぱいな~)」
手を握る夫婦はこれからのことを期待し目的地に向かうのであった
現在2本執筆してますが終わったら、『転生した魔法使い』のIF(序盤の神社で双子と一緒にアイも保護)か自分の好きなアク×アビにしようと考えています。ネタの引き出しが殆ど無いので推しの子二次小説はそれで区切りにします(R18はムラムラしたときに書きますが)
アクアたちが幸せになればなるほど現実組は…
感想ありがとうございます。