彼だけが救われる物語   作:大気圏突破

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愛しい人との旅行は何回あってもいいですね

 ワイバーンによる空の旅が終わり夫婦はサンデーの街に降り立った。アクアは門番から商業ギルドの場所を聞きだすと妻と腕を組んで歩き出した。城下町はダノン以上に活気に溢れ商人や冒険者たちが闊歩している

 

 

「あの建物じゃない?」

 

 あかねの指さした先にはギルドのマークがデカデカと描かれた看板が存在感を示し、出入口はせわしなく開閉を繰り返している。建物の中に入り受付嬢にダノンから訪れたことを伝えると2階の応接室に案内された。なお近隣住民に頼まれた品や郵便物はギルドが預かり後日運搬してくれるようだ

 

 

「ようこそサンデーの街へ」

 

 目の前にいる男はセンドウと名乗るギルドマスターで2人を対面のソファに座らせる

 

 

「ダノンのギルドマスターからと『ハイポーション』です」

「ほう?その意図はなんや?」

「今後の商売で良いお付き合いをしたいと」

 

 別にアクアは住んでいるダノンから離れるつもりはない、しかし先のことを考え他の街の有力者たちと繋がりや縁を持つことが自分たちを助ける蜘蛛の糸になると考えている。

 

 

「若いのにしたたかなやっちゃな、気に入ったサンデー1番の宿を紹介してやるさかい」

「そんな…」

「ええんや、ワイは紹介するだけで銭を払うんはお前さんやから」

 

 大きな声で笑い飛ばすセンドウに圧倒された2人は乾いた笑い声をあげながら小さい汗を流す

 

 

「楽しんでくれや街にぎょうさん銭を落としてくれたら市場が潤う。金庫に札束を腐らせておくなんて神様に対する罰当たりや」

「商売人ですね」

「そうや銭は力の象徴なんや!ガマ口をきつく閉めていたら開け方が分からんくなる」

 

 その言葉に違和感を覚えた2人だが、話を止めることなくあえて口にせずスルーした。彼から観光名所や娯楽施設の書かれた冊子を受け取るとギルドを後にした

 

 

 

「ねぇアクア君」

「多分そうだよな」

 

 2人が同じことを思っていた。あのギルドマスターは自分たちと同じ存在であることに、貰った冊子の中に書かれていた施設には銭湯やボウリング場に賭場まで存在してる。これだけの証拠が集まれば信じない方が馬鹿である。そして紹介された宿泊施設は旅館を意識した建物で館内は浴衣着用であった

 

 

 

「米と味噌汁だ!」

「漬物もあるわ」

 

 なにより最高なのは宿で日本食が出てきたことで、従業員によるとギルドマスターが他国へ赴いて直接買い付けをしている。流石に流通経路はシークレットだったが久々の故郷の味に2人は満足した。温泉に浸かった2人は繫華街に繰り出して遊技場で遊びながら日頃のストレス解消にいそしんだ。なお夜は旅の開放感もあって布団の上でハッスルするのであった

 

 

 

 

「これで何人だ?」

「今日だけで3人だ」

「合わせて5人か」

 

 2人が旅行を満喫している頃ダノンの街ではデサイルとキングリーが店の近くで愚か者たちを縄で縛りあげていた。ギルドマスターの彼女が危惧していたことが的中し留守中の店に盗みに入る輩がいたのだ

 

 

「良い予感より嫌な予感が当たるのって最悪だな」

「しかしギルドも羽振りがいいよな1人につき20000も出してくれるなんて」

「それだけアクアの存在が重要ってことだろ」

 

 

 処罰を受ける罪人たちをギルド職員に渡すと2人は主のいない店を見ながら干し肉をポーションで流し込む、アクアのおかげで今の自分たちがいる。駆け出しの頃は日々の飯すら危ういこともあったが今では腹の虫が泣き叫ぶことは無くなった。少し切り詰めれば夜の店で綺麗な女の子と遊ぶことも出来る

 

 

「新商品のこれって」

「やる前に飲むと硬くなってパワーが漲るらしい」

 

 

 早く試してみたい!今回のクエストで更に捕まえることができたら最高級店のランキング上位を指名するつもりの2人の鼓動はいつも以上に脈を打っている。夫婦が帰ってくるまであと何人捕まるのだろうか?

 

 

 

「はぁ〜〜頭が痛い!」

 

 商業ギルドではマスターが頭を抱えながらソファに座る老人と話し合っていた

 

 

「どうするつもりじゃ?」

「生温いことはしない全員あの世に送り届ける」

「末恐ろしいの」

 

 

 冒険者ギルドの長はアゴを触りながら彼女のことを笑っていたが目は真剣そのものだった

 

 

「やはりメジロからか?」

「いや…そこからは1人も居なかった。エイシンとテソーロが大半であとは名も知らない小さな村だった」

「儂らの出来ることは限られとる」

「だが護らないといけない街や国の為にも」

 

 

 後日のことだが飲まず食わずで磔にされた罪人たちは首と胴体が処刑人によってグッバイされ口に手紙を添えられ住んでいる街へ送り返された

 

『今回は序の口』

 

 文面を読んだ街の長たちはダノンに手を出さないことを周知徹底させるが完璧ではなかった

 

 

 

 

 

 

「綺麗」

「本当だ!」

 

 ファイナルファンタジーに登場するチョコボのような魔物に乗って2人は街の外にある観光地に訪れていた。先導する魔物使いはガイドの役割も担っていて歴史について語っている

 

 

「あそこに複数の樹木が絡みついていますよね?」

 

 人差し指の先には大きな木々があり目を凝らすと何かがぶら下がっているように見える。ガイドは懐から大きめの南京錠とナイフを取り出した

 

 

「これに名前を刻んで枝に括りつけた男女は生涯別れることなく幸せに過ごすことが出来る言い伝えがあります!」

「ねぇアクア君」

「やろうか?」

「毎度あり」

 

 

 見事にセールストークに騙された2人だが悲観はしていない、本人たちの受け取り方次第で詐欺師だって神様になる。文句を垂れるよりも本当に幸せになれば勝ちなのだ!アクアたちは互いの名前を刻んで木に括りつけた。今度は家族が増えたときに刻みに来ようと誓った2人は手を繋ぎ戻っていく、その近くに慣れ親しんだ名前があることには気付かなかった

 

 

 

 

 

「どうやったサンデーは?」

「楽しむことが出来ました」

「それはええこっちゃダノンに帰るんやろ?じゃあこれを持っていってくれんか?」

 

 テーブルの上に置かれた封筒に入った書類は封蠟で閉じられている。白黒の縦縞模様の服を着たセンドウは笑いながら対面にいるアクアたちに視線を向ける

 

 

「最高の宿でした」

「どうやった米の味は?コシヒカリやあきたこまちには及ばないが美味かったやろ?」

 

 その言葉に全身の毛穴が開いた夫婦は顔を見合う

 

 

「あんたらもワイと同じ流れ着いたもんやろ?アクアは外人のような見た目やが言葉のイントネーションが日本人と一緒や」

「センドウさんはいつから?」

「ワイか?数えんのも忘れちまった!過去は関係あらへん、ここをもっと大きくして人をぎょうさん集めて毎日をお祭り騒ぎにしたいんや」

「叶うといいですね」

「お前さんたちも方々(ほうぼう)に宣伝してや」

 

 

 

 ギルドを後にした2人はワイバーンに乗って城下町を離れる。自分の太ももに頭を乗せる妻は

 

 

「多分あの人は寂しい気持ちを押し殺していると思う」

「あそこは小さい日本だ」

「騒ぐことで大きな穴を埋めるように、日本にいたことを忘れるつもりが潜在的に求めてしまっているの」

 

 妻の洞察力の高さを理解しているアクアは頭を撫でながら髪の毛の感触を楽しむように梳いていく、故郷に帰ることは出来ないが心と体を安息の地で満たすことが出来た。充電したらパワーを開放するだけである。ダノンの街に戻ったら冒険者たちが一気にやって来るだろう

 

 

「(近場を冒険してみたいな)」

 

 彼も男の子だ冒険者たちを見るとウズウズしてしまう。守る家族がいるので無茶をすることは出来ないがスライム退治や薬草採取ぐらいをやってみたいと思うのであった。そんな彼らに近々新たな出会いが訪れるのであった




アクア君ならファイナルファンタジーのことをFF(エフエフ)じゃなくてファイファンって言いそうな気がする

次話はみんなのお楽しみ現代編です

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