自宅からアクアが居なくなって24時間が経過していた。しかし2人は気にする素振りはなく日々を過ごし今後のB小町の活動方針や有馬のケアを含めた話し合いを行っていた。翌日の日曜も同じように時間を浪費していたが夜になっても帰ってこないアクアに怒りを覚え連絡を取ろうとしたがLINEは無視で通話も拒否されている
「五反田監督の所よね?」
「前にも言ったでしょ!別に居なくてもいいでしょあんなの」
「ルビー!」
あの日以降アクアとルビーの仲は悪くなり毛嫌いするようになった。もう彼女にとって兄は邪魔者でしかない、ミヤコも彼の独断行動に眉をひそめていたが口に出すことはしなかった。だけど今回のことは自分に相談してくれれば違う未来があったかもしれない
『どうしたんですか?』
「夜分遅くにすいません!休みの日にアクアがそちらにお邪魔してしまって、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
電話口の相手である五反田に謝罪の言葉を述べるミヤコは電話を代わってほしいと思っていたが
『いったい何のことで?』
「えっ?いや……アクアがそちらに」
ミヤコの背中に嫌な汗が流れ始めた。アクアが五反田家に居るのなら上記の言葉は返ってこないはずだ!少なくともボヤいてくるはずなのに
「一昨日にそちらへ向かうとルビーから聞いて」
『金曜?週末の3日間はずっと家に居たが、母ちゃんの趣味仲間ぐらいしか来てないぞ』
「それって本当ですか?」
『嘘を教えたところで俺に得なんざ1つも無いって、何かマズイことでもあったのか?』
五反田にとりあえず”問題無い”と伝えたミヤコは震える指で通話終了のボタンを押した。心臓の鼓動が異様に早くなり思考が上手くまとまらない
「帰ってくるの?」
顔を向けずソファに座るルビーはスマホを弄りながら尋ねてくるが喉から声が出てこなかった。喋り方や言葉の発声方法を忘れてしまった感覚に陥ってしまい返答することが出来ない
「ミヤコさん?」
「…ない」
「えっ?なに‼」
「監督の……ところに…居ない」
たどたどしく絞り出した言葉にルビーは”ふ~~ん”と返していたが次第に表情が険しくなっていく、ミヤコは彼女の前に立つと両肩を掴み
「ねぇ…本当に監督のところに行くって言ったわよね?」
「……うん、というか他に行くところなんて無いじゃん」
「そうよね……じゃあどこに?」
彼の行きそうなところに片っ端から電話を掛けて尋ねるのは悪手である。そして110番通報するのも考えたが下手に問題を大きくするのもマズイ
「きっと途中で姫川さんに連れ去られたんじゃ」
「それはないわ…撮影で四国に行くって」
「じゃあ…MEM」
B小町のどちらかの部屋に身を寄せているのでは?と言いかけたが、それだったら自分の方に連絡が来てもおかしくないはず。アクアの交友関係は広くはない!彼を2日間泊める人なんて監督以外に存在しない
「じゃあビジネスホテルとかに」
「五反田監督のところに向かうのに何でホテルに行くの?」
「そうだよね」
ルビーと話ながら彼女は何度もアクアのスマホに着信をするが出てくれず留守番電話のサービスに切り替わってしまう。LINEも無視が続きスタンプを連続投下しても反応は無かった
「とりあえずもう1日だけ待ちましょう」
「うん……全く私たちに迷惑掛けてばかりなんだから」
強がりを口にしているが表情がこわばりスマホを持つ手が震えている。部屋に戻った彼女はベッドの上で布団に包まり、兄に対してスタンプを送り続けたが既読の2文字が記載されないまま眠り落ちてしまった
「寝てないの?」
朝になり部屋から出たルビーは、リビングの椅子に座るミヤコの衣服が昨日のままであることを口にして底が黒く変色しているマグカップにコーヒーを注いだ
「大丈夫!若い頃は何日もオールしてたから」
「でも…少しぐらい寝た方が」
「私の心配より、支度しなさい遅れるわよ!」
カラ元気を見せてルビーの背中を押すと洗面台に向かい鏡を見た。目の下には薄い隈が浮かび疲れた顔をする自分が写り溜息を吐いた。あれから何度も着信を試みているが一向に繋がることはなく心に重いモノを感じてしまう
「いったいどこにいるの?…アクア」
フィクションならここで玄関のドアが開く音がして彼が帰ってくるが現実は甘くない、身支度を済ませた彼女は自身の頬を叩いて気合いを入れて社長の顔になった
「はぁ~」
教室内のルビーは頬杖をつきながら溜息を吐いた。朝からずっと同じように遠くを見つめスマホを握っているがアクアからの反応は無かった。僅かな望みに賭けて普通科の方に出向いてみたが空振りで終わった
「ルビーちゃんどうしたん?」
「みなみちゃん」
周囲のクラスメイトは不機嫌な彼女に近づこうとはしなかったが、寿みなみだけは心配し声を掛けてきた
「ちょっとプライベートで色々あってね」
「ウチでええなら相談相手になるで」
「ありがとう」
今は彼女の優しさに身を預けたいが兄が金曜から行方知れずなんて言えやしない、当たり障りのない会話を続けていると
「ルビーさんちょっと」
「フリルちゃん」
しばらく撮影続きで休んでいたフリルから彼女たちの前に現れ、神妙な顔つきで口を開いた
「あの〜大丈夫ですか?」
「えっ?あぁっと!どうしたのMEMちょ?」
事務所では寝てなかったミヤコが常に上の空だった。それを見かねてメンバー最年長であるYoutuberが声を掛けると慌てるように顔を向けた
「ちょっとゴタゴタ続きでね」
「まぁ有馬ちゃんのスキャンダル対応だけでも大変なのに悪いイベントが立て続けに起きると参りますから」
「そうね」
「ところで1つ尋ねたいんですが」
きっと悪い話題から話しを逸らすかと思ったミヤコは無理に作り笑いをみせると
「なんでアクたんと繋がらないですか?」
今1番聞きたくないワードが彼女の口から飛び出しミヤコの心拍数は一気に急上昇した
「土曜日からアクアにLINEを送っても無視されて、着信しても出てくれなくて」
「えっと……それは」
教室内では不知火フリルからの質問攻めにあうルビーが必死に言い訳を考えていた。飄々としているが人の心を見抜くことに長けた彼女に生半可な嘘は通用しない
と言ってもバレる可能性が高く仮に上手く騙せたとしても短期間の猶予しかなく、それまでにアクアが帰ってくる保証なんて無い
「あ〜やぱっり無視されとるね」
「みなみさん着信もお願いします」
黙っている間にフリルから促され彼女はボタンを押して耳に当てるがベルの音が連続で続き、留守電のメッセージが流れはじめた
「普通科にもいませんでしたし」
「ルビーちゃん、いったい何があったん?」
クラスメイトで大事な友達に嘘はつきたくない!でも本当のことを教えて余計な心配を掛けたくない気持ちがある。それに伝えたところで現状が好転するとは思わない…だけど
「(苦しいよ!何で帰ってこないの)」
声にならない叫びを心に押し込める彼女は作り笑いを浮かべるが、長年芸能界の悪鬼羅刹たちと死闘を繰り広げていたフリルには見抜かれていて耳元で小さく
「ここで言えないことなら今からサボタージュしましょ」
「えっ?」
「みなみさん3人分の早退届けの紙を職員室からお願い出来て?」
「ええよ行ってくるさかい」
「ちょっと2人とも」
完全に彼女のペースに飲み込まれたルビーは、なす術なく2人に連行され学校の外へ出て行った。なお有馬はアクアに繋がらないことをヤキモキしながら放課後に2年の教室へ向かうつもりだった。目的の人物はいないのに―――
「さて私の家なら問題無いでしょ」
「内緒話ならここしかあらへんな」
3人は不知火家の門を跨ぎフリルの私室に入ると主は鍵を閉めた
「ルビーさん私たちに隠し事は無しよ」
「全部吐いてもらうで」
「……うん、分かった少し長くなるけどいい?」
彼女たちが頷くのを見たルビーは隠していた封印を解くように心を込めて
「私は殺されたB小町のアイの娘なの」
今日はここから長くなりそうだ!
欲に負けて書いちゃいました。とりあえず異世界編を2~5話書いて現実を1~2話更新で執筆しようと思います。次話はアクア君の方になります
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