サンドローネさんに優しくしたい小説   作:コロサン狂い@ドットーレ!!!(散兵)

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好き……サンドローネ好きだよ、という小説。
頑張って書いてますが、キャラのエミュ甘かったりしたらすいません。
頑張って書きます。
見切り発車なのでプロットはないけど


第一話

「……は?」

 

あまりの衝撃に、間抜けな声とともに口があんぐりと開く。

 

「聞こえなかった?アンタは今日からワタシのメンテナンス係にしてあげるって言ったの。返事は?」

 

目の前に立つ女──ファデュイ執行官サンドローネの声が、唐突に落ちてきた。

 

「…は、はい、喜んで……?」

 

あまりの混乱に、思わずそのまま承諾してしまった。

突然の宣告と戸惑いながらの承諾。

それが、スネージナヤ生まれスネージナヤ育ちの晩年雑用整備工だった男、ミハイル・ヴォルコフの人生の転機だった。

 

彼の思考は、おそらく自らが呼び出される原因となったであろう数週間前の話に遡る。

ミハイルの所属していた小隊で、一つの自律機械が度重なる戦闘によって動作しなくなった。

普通の機械ならスクラップにして、武器を取り外して再利用で解決だろう、ここは過酷な戦場なのだから悠長に修理をしている暇はない。しかしそれは執行官であるサンドローネから作戦のために賜ったものであり、そんな扱いができる・許される代物ではなかった。

 

「おいどうする?サンドローネ様に知れたら……」

「しかし、整備工三人の手にかかっても直せなかったんだぞ、希望はもう……」

 

そんな中、一人の男が前に出た。

小隊に配属された整備工の最後の一人で、他のマシンの調整を任命されていた男だ。

彼は壊れたそれらの機械に触れ、いくつかのネジと鉄板を外し、内部構造を垣間見る。主要回路は、まだ生きていた。

短く白い息を吐き出し、

 

「……まだ直せる」

 

そう言って懐から工具を取り出した。

 

「お、おい!『傀儡』様の機械だぞ!?」

「大丈夫。逆に、『傀儡』様だからこそだ。あれほど卓越した人ならば、この措置も理解していただける」

 

彼は分解し、ただ修復するに飽き足らず、予備の電力と駆動装置を取り付けていく。

元々は攻撃的な機能に割り振られていた設計を、機械そのものの延命を両立させるものへと組み替えながら。

 

数時間後、基地には人だかりができていた。

 

「あの機械バカ、直したどころか改造したらしいぞ」

「なんだって?「傀儡」様に知れたら……」

「動かないよりマシだろ?」

 

ヒソヒソと噂話が聞こえる。

ミハイルを称賛する声と非難する声が混じって響く中、当の本人はそれらに耳を傾けることもせず、修理したマシンの動作点検を行なっていた。

そんな中、人だかりのさらに後ろから重い足音と駆動音が響く。

金髪の少女……「傀儡」と、その研究成果であり本人を抱えて歩く巨大なロボット──プロンニアがそこにいた。

それをファデュイの面々が認識した途端、人だかりは海を割る如く裂けて、その中央で動作点検を行うミハイルの元へ続く道が出来上がる。

噂話で満ちていた場は、一瞬にして凍りついた。

 

「そこの整備工、何をしているのかしら?」

「動作点検だ。生憎今は忙しいから、別件の話ならまた後で──」

 

動作点検に夢中な彼は、計器から一切視線を外さず、声の主人が誰であるのかすら気がついていない。そんなミハイルに、ファデュイの誰かが叫ぶ。

 

「後ろを見ろ!馬鹿野郎!」

 

鬱陶しそうに背後を向いたミハイルは目を見開く。

 

「っか、「傀儡」様!?とんだご無礼を──」

「御託はいいわ、どうしてこのマシンに動作点検なんてものが必要になっているのかしら?」

「…作戦行動中、稼働継続が不可能な損傷を受けましたので、俺が修理しました。そのため、もう一度動作点検を行っています」

「そう、じゃあ……実地試験は終わりにする。持って帰って良いかしら?」

「…は、はい」

 

淡白な会話を終えると、サンドローネはマシンに幾つかの操作を行い、それらを持ち帰ろうとする。

その去り際、思い出したようにミハイルの方を向いて

 

「何かあったらワタシの部下を通じて呼び出すから、覚悟しておきなさい」

 

そう言って立ち去った。

数日後、案の定「傀儡」の部下を通じてミハイルに呼び出しがかかった。

「傀儡」の自室に通された彼は、死すら覚悟して彼女の前に立つ。

その手から二つの設計図が机の上に広げられた。

一つは使い込まれたもの、もう一つは真新しい。

視線を落とすと、それは一つの機械の設計図だった。

彼が手を入れた後の構造と、元の設計。

 

「予備動力系統、予備駆動系統、予備兵装……無駄が多すぎるわ。これでは速度が落ちるし、兵器として役に立たない」

「いえ、一般兵と同程度の火力支援にはなります。……それに、壊れずに済む」

「へえ?あなたは機械を壊したくないって言うの?使い潰すために作られたモノなのに?」

「……っだからといって、無闇に破壊して放棄する理由にはならない」

 

その言葉を聞いて、「傀儡」は何かを考え込むように黙り込んだ。

彼女はミハイルの瞳を見て、そしてもう一度図面に目線を落とした。

その表情には、一瞬温かな感情が浮かんだかと思えば、次の瞬間には眉間に皺が寄る。

何か複雑な思いを飲み込んだらしい彼女は一言。

 

「……今日から、アンタをワタシのメンテナンス係にしてあげる」

「……は?」

 

あまりの衝撃に、間抜けな声とともに口があんぐりと開く。

 

「聞こえなかった?アンタは今日からワタシのメンテナンス係にしてあげるって言ったの。返事は?」

 

目の前に立つ女──ファデュイ執行官サンドローネの声が、唐突に落ちてきた。

 

「…は、はい、喜んで……?」

 

あまりの混乱に、思わずそのまま承諾してしまった。

冒頭も言ったように、これこそがミハイル・ヴォルコフという男の人生の全ての転換点だった。

 

「数日以内に女皇様に──いえ、アナタの上司でいいわね。そいつに異動命令を出しておくから、近いうちに今の部屋を引き払って引っ越せるように準備しなさい」

「えっと……?引っ越し?」

「当たり前でしょう?ワタシ、これでも精密機械なのよ?数日に一回メンテナンスをするのがベスト。この場所から離れて住んでる人間にはそんなことできないでしょう?」

 

「……なぜ俺に?」

 

サンドローネは、ほんの一瞬だけ口元を歪めた。

 

「だって、壊したくないんでしょう?

やってみなさい」

 

その瞬間、ミハイルは理解した。

これは彼女から彼への挑戦であり、同時に彼の思想への挑戦だ。

 

「了解しました。……できる限り、最善の手段を尽くすと誓います」

「大袈裟ね。誓わなくても良いから、結果を出して」

 

サンドローネはそう言って彼から視線を逸らした。

 

「生憎、今日は忙しいの。誰かさんの言葉を借りるなら、『別件ならまた後で』ね。異動手続きが終わった後にまた来なさい」

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