サンドローネさんに優しくしたい小説 作:コロサン狂い@ドットーレ!!!(散兵)
「……ねぇ、サンドローネ。新しい機械を作ったの?」
「いいえ、まだ設計段階よ。何でそんなことを聞くわけ?」
「……じゃあ、これはサンドローネの新しい機械じゃないの?」
そう言ってコロンビーナが頬を突いたのは、まさに現在サンドローネの隣で設計図を吟味していたミハイルだった。
異動命令から数週間。
ミハイルはその能力の高さから普段はサンドローネの助手で働いていたのだ。
「……そうなの?でも、動かないよ?電池切れじゃないの?」
「違うわよ。……集中しすぎて何も聞こえてない、コイツの悪い癖よ」
「ふ〜ん……えい」
コロンビーナは追加で二回、三回と彼の右頬を突く。
すると、流石に鬱陶しかったのかミハイルが右を向くと、あまりに近い位置で覗き込むコロンビーナに驚いてひっくり返りそうになった。
「……わ、急に飛び上がってどうしたの?」
「アンタが近すぎるのよ、コロンビーナ」
ミハイルは気を取り直して椅子に座り直し、コロンビーナに向き直った。
「何の御用でしょうか、「少女」様」
「別に、サンドローネにお友達なんて珍しいなって思って」
「は、はぁ!?別に友達なんかじゃ……、ちょっと興味があるだけよ。私とは全く別の思想で機械を弄るから」
「違う?どう違うの?」
「コイツはね、機械を壊さない前提で作るのよ。まるで生きてるみたいに扱うの」
「……へぇ」
「ちょっと!わざわざ教えたのに、興味なさそうな反応しないでくれる?」
苛立つサンドローネを尻目に、コロンビーナは二人の覗き込んでいた設計図を覗く。
「……全然わかんない」
「……えっと、こちらが駆動系。人間で言う関節で、こちらが動力源、心臓にあたるものです」
「全部二個あるね」
「片方がメイン、片方が予備です」
サンドローネよりも噛み砕いたミハイルの説明はコロンビーナにウケが良いらしく、彼女の閉じたままの目が輝いているように見えるほど嬉々として彼女は質問を繰り返す。
「……全部、予備があるの?」
「はい。そうすれば、壊れずに済むでしょう?」
そこまで聞いて、コロンビーナは再び首を傾げた。
「壊れちゃ、ダメなの?」
「ダメとは言いません。……俺の方が異端側ですから。しかし、その──」
ミハイルは目を泳がせる。
何かいい例えがないかと探して、そして
「「少女」様は「傀儡」様と良好な仲であると存じていますので、少し不快な例えになりますが……「傀儡」様が損壊したらどうでしょうか、二度と声も体温も感じられなくなったら」
「……悲しいね」
「そうでしょう?何故なら「傀儡」様は高度な自我を持ち、共感しやすいからだ。それ故に機械であってもその喪失を死として感じることができる。俺は、機械全般にそれが言えると思うんです」
それを聞いたコロンビーナは一言。
「……サンドローネは、ミハイルが作らなくても壊れない。だよね?」
「……えぇ、そうね」
言葉に詰まった挙句、サンドローネは彼女を安心させることにした。
本当は、いつまで動くのか自分でもわからない体だ。その上執行官ともなればいつ破壊されるとも限らない。
しかし、彼女はそう強がって見せた。
そこにミハイルが
「ご安心ください、「少女」様。何があろうと「傀儡」様をお守りするのが俺の仕事です」
そう言うと、コロンビーナはニッコリと笑って
「うん、サンドローネをよろしくね」
「……お任せください。我が身命を賭して」
「……では、俺はそろそろ一度帰らせていただきますので」
しばらくして、ミハイルはそう言って席を立った。
サンドローネとコロンビーナの二人だけが部屋に残される。
「……でも、安心した」
「はあ?何が?」
「サンドローネ、私がいなくてもお友達が作れたね」
「……っ!だから、友達じゃないってば!」
顔を赤くして怒り心頭な様子のサンドローネを意に留めることすらなく、サンドローネは微笑む。
そして、流れるような動作でサンドローネの卓上の皿からお菓子を盗む。
「……うん、美味しい。また来るね」
コロンビーナは、そう言ってその場を立ち去った。
一人残されたサンドローネは
「……壊れない機械、ね。馬鹿馬鹿しい、人間だって壊れるのに、機械にそれができると思うの?」
そう、呟いた。