砂浜なのに深く深く、人を飲み込んでしまいそうな黒。昼間はあんなに穏やかなのにどうして夜の海というのはこうも怖いのか。魂の奥底、原初の恐怖心を刺激される感覚と横でパチパチと木々が弾ける音がもたらす安心感に挟まれながら浜に寝転がる。
『荷物』が増えて夜の過ごし方もより豪華に出来ると言えど、こうした質素な野営も捨て難い。
森のさざめきや虫の音、人の足音すら聞き落とさないこの耳は少し離れたとこで電話をしている同行者の声も聞き逃さない。流石に電話から聞こえる声は分からないが彼の声ならいくらでも聞いていられる。
…声色が少し弾んだ。久方ぶりに話す相手なら興が乗ってくるのも仕方ないことだろう。来月の電話料金見るのが億劫になるだけだ、大きな問題では無いだろう。
これは長くなるな、そう悟り彼が眠ったあとこっそり楽しむ気で用意してた魚を取り出し火の周りに並べる。そうだ、貰った調味料を試してみるのもいいかもしれないな。
鱗が少しずつめくれ、ふっくらしてくる魚を見つめる。随分当たりを釣ったな、美味そうだ。
「あっずるい」
焼く様子を眺めていると彼…トレーナーが隣に座る。どうやら電話は案外あっさり終わったらしい。
「アンタも食べるか?」
「頂くよ、ステゴ」
「ほーら焼きたてだ。熱いぞ〜」
串を渡してやれば思い切りかぶりつく。あーあー、まだ塩かけてないんだぞそれ。が、彼は美味しそうに頬張る。旨味は十二分らしい。
「これ使うといい」
カニの甲羅で作ったお椀に旅の道中貰った調味料を盛り差し出す。随分香りが強いスパイスのようで少し盛っただけで匂いが際立つ。
舌をいじくり唾液を溢れさせる、魔性の匂いだった。
「ん〜!結構独特!」
「ほほう……だな!山椒みたいな匂いだが味は…」
「アレ…えーっと…グレープフルーツみたいな!」
「確かに。甘くて苦い…美味いなこれ!」
スパイスを貰った地で出されたスープ料理がこんな味だったことを思い出す。そうか…あの料理のスパイスだったのか…!
気付けばすっかり平らげてしまった魚たちの骨をそこらにまとめて捨て置き、再び自分の寝床に転がる。
「な、トレーナー」
「…どうしたの?」
「アイツら…今どうしてるんだろうな」
「それを見に行くんだろ」
「それもそうだな」
海風が肌寒い。彼に少し身を寄せる。
「誰も見てないからさ」
「明日港向かうために早いんだから…」
「まだ日が回った訳じゃない」
砂ってのは意外とあったかいもんだ。夜も快適に過ごせるくらいに、な。
数年ぶりに会うジャーニーらの姿が楽しみで仕方がない。
2日目です
お外で…ってのもいいもんだなぁと書いてて思いましたね
釣りグッズを買ったのに1度も釣りをしていない、そんな経験みんなもありますよね?自分も絶賛そうです春になったらするもん(やらないやつ)
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