数千回目のループに疲れたので休暇をもらったら、何故かみんなの様子がおかしくなりました   作:ド級のリトライ

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アビドス砂漠一攫千金チャレンジ!?

 

 

 

 

 

 そんなチラシが目に留まった。

 

 ここはブラックマーケット。連邦生徒会も野放しにせざるを得ない巨大闇市場。ここは何処もかしこも違法に溢れかえっているため、連邦生徒会が公式に認可されていない依頼や、違法スレスレ……というか飛び越えた取り引きなんかも頻繁に行われている。

 実は、僕は以前ブラックマーケットの首領(ドン)をやっていた時もあった。理由としては、ここの資源に目をつけたから。

 この市場は結構大きい。それこそ三大校までとは言わないが、そことタメ張れるぐらいにはお金の流通が激しい。その資金や、ここでしか入手できない武器など、かなり魅力的だった。だから色々工作してトップに立ち、資金提供・武器提供とかして先生と協力してみたんだけど、結果はお分かりの通りです(n敗目)。

 

 「でも、こんなチラシ見たことないんだが……?」

 

 そもそも、ブラックマーケットの首領(ドン)になったのも途方もなく前のことだ。こんな薄っぺらなチラシ1枚覚えてる訳もないか。

 

 「なになに……猶予は1ヶ月。アビドス砂漠からアビドス生徒会が遺したとされるお宝を掘り出せ、と。そして、掘り出した者には賞金があり、その額はなんと1億か…………………1億!?」

 

 咄嗟に口を抑える。

 き、聞かれてないよな……?ここ闇市なだけに治安はゲヘナとどっこいどっこいだから、1億の大金なんて耳にしたらハイエナの如く群がってくるぞ。

 ただ、ハイエナたちの気配はしないため、僕の独り言は人混みの中で霧散したらしい。人が多くて助かった……

 

 しかし、1億。アビドスが抱える借金の9分の1。凄まじいと言う他ない。

 

 「ただまぁ、普通に考えれば望み薄だな」

 

 アビドス生徒会のお宝は、あの方舟を除いて、すでに全ての物品が借金返済に充てられている筈だ。それか盗まれているかのどちらかだ。

 だから望み薄。多分これを依頼してきた人も、うっすい望みを抱いて、アビドス生徒会の遺産に縋ろうとしているのだろう。この大金も端から期待していないことの証左だ。

 故に、これを受けることはタダ働きになるに等しい。何処かの便利屋と同じ状況だなぁ。

 

 だが。

 

 「ふ〜〜ん、おもしれー依頼。お宝探しはいつだって男のロマンだ」

 

 それで良い。それが、良い。

 

 今回は、効率とか、効果的とか、そんなもの一切関係なく、自分がしたいと思ったことを自由気ままにやっていくのがモットーだ。

 非生産的?結構。非現実的?結構。時間の無駄?大いに結構。それがやりたいんだから。

 

 「よし、そうと決まれば準備しないと。水はたくさん持って行こう。着替えも一応。あぁ、コンパスも忘れちゃダメだ。シャベルは支給してくれるのかな?」

 

 それにしてもアビドスか〜。時期的にアビドス対策委員会のみんなと会うかもな〜。………元気、してるかなぁ。

 干渉はしないけど、遠目からなら様子を見るのも良いかもしれない。

 

 

 まぁ、間違ってもあっちから干渉してくるなんてことは起きないから、結構気楽で良いね!

 

 

 

 

 

♾️

 

 

 

 

 

 「今日も柴関ラーメン行く〜?ちょうどセリカちゃんのバイトの時間だしさ〜」

 「何が“ちょうど”よ!みんな来ないでよ!?」

 「いいですね☆行きましょう!」

 「ん、勿論行く」

 「あはは……セリカちゃん、頑張ってね……」

 「アヤネちゃんまで!?ダメだから、絶対ダメ!!」

 

 とか言って、結局押し切られるのが様式美になりつつあるよね。

 

 アビドスに来てしばらく経った。

 最初は土地勘のなさ故か、それとも砂漠地帯を舐めていた故か、危うく砂漠のど真ん中でミイラになるところだったけど、何とか元気にやっています。シロコには感謝してもしきれないよ。

 その後も、ヘルメット団とのゴタゴタや、セリカ拉致未遂事件とか色々あったけど、今も元気に先生をやっています。

 

 「先生も勿論来るよね?」

 「うん、行かせてもらおうかな」

 「もう〜!!」

 

 セリカは声にならない悲鳴を上げながら教室を出て行ってしまった。多分このままバイトに向かうのだろう。

 

 「セリカちゃんも向かったことだし、おじさんたちもゆったり向かうとしますか〜」

 「ん、みんなは先に行ってて。私は先生に用事があるから」

 「うへ!?今の言葉、もしかして………告白!?シロコちゃん!幾ら相手が先生でも、おじさんは認めな───」

 「違う」

 

 何でだろう、ホシノがやけに頑固なお父さんっぽく見えちゃう。日頃の言動のせいかな……?

 

 「じゃあ先に向かってますね☆行きますよ、ホシノ先輩☆」

 「うへ〜、先生、シロコちゃんのことよろしく〜」

 「よろしくお願いします!」

 「うん。みんなも気をつけて!」

 

 ピシャリとドアが閉められ、足音が遠ざかっていくのを確認した後に、改めてシロコの方へ顔を向ける。

 真剣な表情だ。それこそ、先刻ホシノが言ったように、本当に愛の告白をするんじゃないかと思える程の気迫。

 

 「どうしたの?シロコ。みんなの前では聞けないこと?」

 「……………」

 

 沈黙。ただ、必死に勇気を振り絞っている最中なのだろうということは、彼女の顔からも理解できた。だから、私はただ待ってあげることしか出来ない。

 

 「………先生、教えてほしいことがある」

 「ん?何かな。私が答えられることだったら良いんだけど……」

 「ん、多分大丈夫。それに、これは先生にしか答えられないと思う」

 

 私にしか答えられない、か………困った、全く見当がつかない。

 

 しかし、そんな浮ついた心は、次の瞬間には粉々に打ち砕かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「───カイトって………誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………どうしてこの子が()()()()を口にして、どうして()()()について尋ねてくるのか。

 空気が一段と重くなったような気がした。

 

 「………どういうことかな」

 「先生と初めて会ったあの日。道で倒れていた先生に水を渡したら、カイトって名前が出てきた」

 「え?そ、そうなの?」

 「やっぱり無意識だったんだ。それで、その、ずっと気になってて……」

 

 シロコのある意味衝撃的な告白に、『そうだったのか』といった謎の安堵感と、『何をしているんだ私は』といった自分自身に対する羞恥心が、心の中に同居する。

 無意識に呟くほど、彼の存在が私の心を占めていた事実をまざまざと叩きつけられて、先生正直恥ずかしくて死にそうです。

 

 それに、意外にもシロコは、私が思うよりずっと繊細なのかもしれない。

 今日聞いてきたということは、名前を間違えられたことに対して、あの日からずっと気にしていたということなのだから。

 確かにあの時は名前も知らなかったが、助けてくれた相手の名前を間違えるのは、やはりかなり失礼にあたる行為だろう。

 

 「ご、ごめんね。シロコが助けてくれたのに、名前間違えちゃったりして……」

 「ううん、気にしてない。そんな事より早くその人について教えて欲しい」

 

 あ、あれ、あんまり傷ついてないっぽい。

 とにかく、早く彼女の要望に応えてあげなければ。どうしてそこまで知りたがっているのかは分からないけど……

 

 「カイトは男の子だよ。綺麗な白髪で、身長も男の子の中だと中ぐらいなんじゃないかな」

 「男の子、白髪……」

 

 シロコはぶつぶつと、何かを思い出すように顎に指を当てていた。

 

 「ただ、残念ながら私が彼について知っているのはこれだけなんだ。私も必死に探しているんだけど、どうやらどの学園にも所属していないっぽいんだよね」

 「………何で先生は、そうまでしてその男の子のことを探しているの?」

 

 ……何で、かな。理由は色々あると思う。

 気になるから。知りたいから。話してみたいから。放っておけないから。先生だから。大人だから。

 

 だけど、1番はやっぱり────

 

 

 

 

 

 「───その子が私にとって、とても()()()()()()()と思うから、かな」

 

 

 

 

 

 言葉にするとひどく単純で、だけど理由にするにはこれ以上ない動機だった。

 彼が何者で、どんな存在なのかは分からない。良い子なのか、それとも悪い子なのかも。

 ただ、たった一度だけでも良いからあの子に触れたい。あの子の顔を見たい。今はただ、それだけを望んでいた。

 

 

 

 ピシリ、と。何かに亀裂の入る音がした。

 

 

 

 「────」

 

 

 

 改めてシロコの顔を見れば、何故か、シロコは苦悶の表情を浮かべていた。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そんな表情。

 ただ、そんな不穏な気配は一瞬で消え失せ、すぐに元の無表情に戻った。まるで、最初から何もなかったように。

 

 「ん、そっか。教えてくれてありがとう、先生」

 「ううん、むしろ全然答えられなくて申し訳ないというか……」

 「そんなことない」

 

 正直、これで良かったのかと、内心自問自答する。

 しかし、幾ら考えたところで、吐きかけた唾はもう戻せない。

 

 「行こう、先生。今ならまだ到着前に合流できる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん、遅れてごめん」

 「お〜、シロコちゃん遅かったね〜。先生と何してたの?」

 「秘密」

 「え〜!?そんな殺生な〜……」

 

 柴関ラーメンがある市街地で何とか合流できた。

 多分、私たちが合流できるように、ホシノたちもなるべくゆっくりと向かっていたのだろう。

 シロコも表面上は何ともない。ただ、一瞬見せた湿った雰囲気がどうにも頭から離れない。

 

 (気のせい、かな……)

 

 自分の中でそう結論付けて、ホシノたちの背中を追い────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────白髪。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ッ」

 

 一瞬、一瞬だった。フードの隙間から見えた綺麗な白髪の持ち主が、たった今隣を通り過ぎたように見えた。

 慌てて振り返るも、すでに人波に取り込まれ、その姿を消す。これも気のせいだというのか……?

 

 「先生〜?どうしましたか〜?」

 「………いや、何でもないよ」

 

 無理やり自分を納得させ、彼女たちと柴関ラーメンに向かう。

 後ろ髪を引かれる思いのまま、フードの人物が頭から離れずに。

 




「お宝♪お宝♪」(気分ルンルンで先生たちとすれ違ったことに気づいていない男の図)
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