数千回目のループに疲れたので休暇をもらったら、何故かみんなの様子がおかしくなりました   作:ド級のリトライ

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交錯

 

 

 

 

 

 今日もまた、誰かが縋り泣きつく夢を見る。

 

 

 知らない子だ。知らない男の子が、私を前にして泣いている。

 

 

 そんな状況を前にして、私が感じるのは────愛おしさだった。

 

 

 あんなに誰かのために必死に走る彼が、私の前で初めて弱さを見せたのだ。これを慈しまずに何を愛でよというのか。

 

 

 彼を支えられるのは私しかいない。

 

 

 彼には私しかいないって、そう思って。

 

 

 だから、約束したんだ。

 

 

 

 

 

 『大丈夫、私は絶対に忘れない。何度繰り返しても、必ずあなたを憶えているから』

 

 

 

 

 

 これは罪だ。

 

 

 忘れられない罪。

 

 

 忘れてはならない罪。

 

 

 私は、あの子に────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────朝。アビドスの太陽は今日も輝いている。

 少しぐらい勘弁してほしいな〜、なんて思いながら、制服に着替え始める。

 

 あぁ、そういえば今日も良い夢を見た。それこそ、()()()()()()って思えるぐらいの夢を。

 そう、確かあれは………─────

 

 

 

 

 

 「─────うへ、どんな夢か忘れちゃった」

 

 

 

 

 

 まぁ、所詮夢だよね〜。そこまで気にすることもないかな〜。

 

 

 

 

 

♾️

 

 

 

 

 

 「お宝♪お宝♪らんらんらん♪」

 

 果てしなく続く砂漠の中央で、ツルハシとスコップを装備して穴を掘り進める。

 燃え上がるのように蒸された砂漠は刻一刻と体力を奪っていく。しかし、それに負けないぐらいの熱を心に宿しているため、何とか相殺出来ている。

 

 しっかし、ここに来るのも久しぶりだ。かなり殺風景な場所だけど、僕としてはかなり思い出深い場所だったりする。

 初めてはホシノさんに連れられてやって来たんだっけか。最初は暑くて暑くてマジで干からびる一歩手前だったけど、かれこれ数十回に渡り来ているせいか、何やかんや慣れてしまった。人間の適応能力は凄まじいね。

 

 

 ───そして、ここは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 

 

 

 

 『大丈夫、私は絶対に忘れない。何度繰り返しても、必ずあなたを憶えているから』

 

 

 

 

 

 今思い返してみれば、生徒相手に“繰り返し”のことを話したのは、ホシノさんが初めてだったかもしれない。

 あの頃は色々気が滅入っていて、そんなつもりなかったのに、ついポロッと口から溢れ出てしまった。

 あの廃車された電車の上で、綺麗な夕陽を背景に、みっともなく赤子のように泣いて縋った。そんな僕を、ホシノさんは優しく抱き締めてくれた。

 

 彼女の言葉が、あの抱擁が、あの時の僕にとってどれだけ救いだったか。どれだけ心の支えとなってくれたか。どれだけ希望の光であったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ま、()()になったら()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おっと、そろそろ作業を開始しないと。期日も間近だし」

 

 とはいえ、こんな広大な砂漠の地でお宝を掘り当てるのはなかなかに至難の業だ。それこそ、カイザーコーポレーションのように、企業が総力を上げて、事業として取り行わないと。

 むむ〜、今からでも起業するか?()()()起業して一応成功を収めているから、そのノウハウは問題ないんだけど、流石に急ピッチすぎるか。

 

 「まぁ、お宝を掘り出せなかったのは残念だけど、初めてお宝探しできてよかっ「ガチンッ」…………ガチン?」

 

 金属同士のぶつかり合いに発生する甲高い金属音が鳴り響いた。音の発生源は───ちょうど僕の真下。

 

 「まさか。まさかまさかまさかまさかまさか……!!」

 

 や、やったというのか!?とうとう僕はお宝を掘り出せたというのか!?

 やはりトレジャーハンターは男のロマンだ!そうに決まっている!だって、こんなにもワクワクした気持ちを味わえるんだから!

 

 スコップで掘り進め、掘り進め、掘り進め。

 そうして、お宝の全貌が明らかになった。

 

 

 「…………………………破片?」

 

 

 んーっと、何だこれ?何かから欠け出た物なのは分かるんだけど、あまりに小さな破片でよく分からない。

 これはお宝?お宝、なのか?お宝……ということにしておこう!時間もないし!

 

 さて、窓口は闇銀行だったか。早速換金に行くぞ〜!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「申し訳ありません、お客様。見識した結果、これをお宝と認定するのは難しいそうです」

 

 ですよね〜。うん、分かってた分かってた。

 

 目の前のロボットから告げられた事実は、あまりにも現実的なものだった。

 夢とか、ロマンとか、そんなこと一切関係ない、純然たる事実を淡々と告げられた。

 

 「ちなみに、依頼主はどんなお宝を望んでいたんですか?」

 「はい、それに関しては『トリニティの一等地に一軒家を建てられるぐらいのすんごいお宝!』と仰っていました」

 

 アビドスニワカか?そいつ。そんなお宝あったらアビドスの借金も無くなってるっつーの!

 

 

 

 「はああ!?アウトローを目指すこの私に、日雇いのバイトをしろっていうの!?」

 

 

 

 などと、依頼者の貪欲さに内心唾を吐いていると、よく通る甲高い声がホールの中で響き渡る。

 声がした方へ顔を向けると────あぁ、彼女たちだったか。

 

 「あれは……」

 「あぁ、便利屋の皆様ですね。当行でお金の貸し借りをご要望しているお客様です……が、当行の融資基準に満たされていないペーペーの企業様でして。一応6時間ほど放置してお帰り頂けないか模索していたのですが……」

 「まぁ、図太さだけで言うなら凄いですからね、あの子たち」

 「……?お知り合いで?」

 「いや、()()()()()。ただ、あの子たちにはなるべく優しくして下さると助かります。色々大変なんですよ、あの子たちも」

 「は、はぁ……」

 

 しかし、そうか。()()()()()。まさか、これまで()()()()()()から、今から()()()()()を体験することになるとは……人生分からないもんだね。

 

 「あっ、一応目を閉じておくことをオススメしますよ」

 「何を言って───」

 

 

 

 

 

 ────パッ。

 

 

 

 

 

 停電。同時に鳴り響く銃声。複数人の悲鳴が聞こえてくる。

 そして、電気が復旧した頃には、マーケットガードは全員地に伏しており───

 

 

 「全員その場に伏せなさい!」

 

 

 懐かしくも馴染みある声が、凛と鼓膜を揺らした。

 

 

 

 

 

♾️

 

 

 

 

 

 「ん、銀行を襲う」

 「はいいいい!?!?」

 

 私たちが支払っていた現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れていたところを目撃し、その集金確認の書類を抑えるべく、銀行襲撃を立案した。

 

 準備は万端。いつ銀行強盗してもいいように、しっかりと覆面を───

 

 「…………あれ、()()()()

 

 身に覚えのない、()()()()()がバックから出てきた。

 アヤネのではない。ヒフミは今日知り合ったばかりだから用意できていない。なら、これは先生の……?いや、それも少し違う気がする。

 

 「……ごめん、ヒフミ。あなたの分の覆面は準備がない」

 「え、えぇ!?い、いいですよ!?むしろ良かったというか……!」

 「いいえ!それじゃああまりに可哀想です!というわけでヒフミちゃん、とりあえずこれをどうぞ☆」

 「え?ちょ、まっ────」

 

 ヒフミが鯛焼きの袋を被せられているところを見ながらも、私の心はこの謎の覆面でいっぱいだった。

 ヒフミに渡そうと思えばできた。けど、私が拒否した。いや、拒否なんて生温い感情じゃない。()()()()んだ。この覆面を誰かが着けている姿なんて、見たくなかったから……

 

 「シロコちゃん、準備はいい?」

 「……ん、行こう」

 

 こうして記念すべき第1回銀行強盗が幕を開けた。心のモヤモヤはずっと残ったまま───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「全員その場に伏せなさい!」

 

 人生で一度は言ってみたいセリフも言えた。これだけで銀行を襲撃できて良かったと思ってる。

 

 「さぁ、そこのあなた。少し前に到着した現金輸送車の集金記録をこのバックに ────」

 

 ふと、近くで伏している茶色のフードを被っている人が目に入る。その人は丁寧にも私たちの指示を仰ぎ、約30センチメートル先に拳銃を置き、両の手の平を後頭部に重ね、完全な無害アピールをしている。ただ、私たちの行動ひとつひとつを具に見ているようだった。

 特に変なことではない。むしろ、銀行強盗の場面に遭ったら、犯人の行動を警戒するのは正常な行いと言える。

 そう、この人は何もおかしくない。ただ、おかしいのは()()()。何故か、このフードを被った人から目が離せないのだから。

 

 「ねぇ、そこのあなた───」

 「ど、どうぞ!これでもかと詰めました!どうか命だけは!」

 「あっ、えっと……」

 「シロ──じゃなくて、ブルー先輩!ブツは手に入った?」

 「う、うん、確保した」

 「それじゃ逃げるよ〜。全員撤収!」

 

 みんながそそくさと撤収していくのを端目で追いながら、眼はやはりこの人だけを見ていた。

 フードの人も私の視線に気づいたのか、今まで伏せていた顔を上げて────

 

 

 

 

 

 ────視線が、交錯する。

 

 

 

 

 

 「カイ────」

 「シロ──じゃなくて、ブルーちゃん!早く行きますよ☆」

 「…………………うん」

 

 ここでようやく目を離し、ノノミの後を追うように闇銀行から逃げた。

 

 あの目。透明で、くすんだ赤みの黄みがかった琥珀色の瞳。見るだけで無条件に安心してしまうような、そんな瞳。

 私は、あの目を────()()()()()。ただ、どこで見たのかは思い出せないだけ。

 だけど、少しずつ、でも確かに、漠然とした型にピースが嵌っていくのを感じた。

 




(う〜〜ん、みんな元気そうだ。良かった良かっ………なんかめっちゃ見てくるんですけど……)
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