仗助「完璧な学園生活っすね〜ッ、女子高生しかいないって点に目を瞑ればよォ〜ッ」 作:カブライニキ
「ふっんふふーん、ふふー♩」
漫画のキメゴマのように彩られた空の下、ミルクシェイク片手にご機嫌なステップを踏む女子高生
今日も『杜王町レディオ』のMCのゴキゲントークに耳を傾けながらいつものバスへと向かう
彼女の名は『杏山カズサ』『トリニティ総合学園』2年生の特段変わったところもない普通の女子高生である
「あ...♩......ふふっ」
そんな彼女の一つ『変わったところ』
それは......
「わっ!!」
「うおあっ!?!?な、なんっ......って先輩っスか......はぁ...びっくりさせんでくださいよ全く......」
「あははっ、ごーめんごめん。今日も無防備にしゃがんでるなーって、さ。何してんの?」
「あー......その......亀が」
「カメ?」
「っス、昔っから爬虫類はニガテで...今日から高校生ってことでどーにか克服しようと思ったんス。いっつもこの噴水で泳いでるんで......」
彼女の変わったところ、それは『リーゼントの完全にヤンキーフェイスの少年とツるんでいること』
学ラン、ハートや平和を表すアクセサリー。極め付けには雄々しいリーゼント。
まるで昭和風のヤンキーをそのまま表したような風貌
あらゆる流行が入り乱れる学園都市『キヴォトス』であったとしても特異なものだろう
「そーいえば今日から『仗助』も高校生か......時間の流れは早いね〜、少し前まで私より小さかったのに......」
「中学の時にだいぶ伸びたっスからねェ〜......ま、まぁそれでも亀は無理っスけど......」
「あはっ、ま、そういう臆病なところも仗助のカワイイとこだけど」
彼の名は『東方仗助』今日からトリニティ総合学園一年生となる男子高校生。
チャームポイントはなんと言ってもそのリーゼント。
「あら、杏山さん」
「げっ......」
バス停から声をかけてきたのは見るからに『お嬢様』といった雰囲気のお嬢様方三人。リーダー格であろう金髪縦ロングと取り巻き2人。
仗助が亀をニガテなようにカズサも彼女らのことがどーにもニガテらしく、さっきまでのご機嫌気分はどこへやら、その不満を露わにする
「......そちらの方は......新入生?」
「っス、今日からお世話になる東方っス。よろしくお願いします」
仗助は深々とお辞儀をして誠意を見せるが______________________
「いやいや普通学ランなんて今更着る?アクセサリーのセンスも全くだし」
「やめなってェ、本当のこと言ったらカワイソーでしょ」
新入生だからかなんなのか、完全に仗助を下に見ている
これにはカズサのこの態度もお察しの通りである
「ふふっ、申し訳ありません。彼女たちは正直で......」
「......いいよ仗助、ほっとこ」
カズサはもう無視のターンを決め込んでいるが、仗助は一応先輩だから、とコミュニュケーションを続けている
「てか、なんで亀?」
取り巻きのうち1人が仗助が持ち上げた亀をジロッと見つめる
「ああ...ニガテなんスよね......爬虫類はむかっしから......」
そして______________________
「仗助さん」
「はい?」
リーダーの金髪が、仗助の手にいた亀を平手で吹き飛ばした
「ここトリニティには厳しい上下関係が存在します。ですので、2年生である私には仗助さんの『誠意』を見せていただきたいのです」
吹き飛ばされた亀は電柱にぶつかり、重傷を負っていた
だが、仗助は
「えっと...誠意ってのは...」
「大変シンプルなことです。誠意は金銭で伝わりますので」
詰まるところ、有り金を渡せとのことだろう
「っス......どうぞ」
普通ならブチギレてもおかしくないこの状況だが、仗助は従順に財布を渡した。
ニヤニヤしながらその財布を受け取った金髪は、その中に入っていた仗助の身分証を見て吹き出した
「方に仗...って......くすっ...!あははは!まるで冗談みたい!いっそのこと『ジョジョ』に改名なさっては?」
「ぶっ、ははは!!いえてますね!まぁ今日のところはこれぐらいで勘弁してやるよ『ジョジョ』」
まさに嘲笑。だが仗助は怒るでも呆れるでもなくただ黙っていた
「......ぷっ...!やっぱり...ダメです...くすくす...っ今の時代にリーゼントって......ぶふっ!だっさ......w」
何も言わない仗助をカモだと思い込んで金髪は少し豪快に吹き出した。
今回も仗助は黙っている______________________
『ドラァ!!!!』
「ぶっ...... !?!?!!?!?!??!」
と、思いきや
「テメェ......今俺の髪のことなんつった......!この俺のヘアスタイルが『ペロロさん』みてぇだとぉ?」
「だ、誰もそんなこと言ってないだろ!!」
「わ、私のっ...私の顔が......!」
『何か』によって金髪の顔が鼻血ブーになった
「て、テメェーーーッ!!!!私のッ!!私の顔になんてことをォ!!ちょっと身長があるからって調子に乗ってるんじゃあないですよォーーーーーッ!!!!」
「も、もうやめましょうよぉ......こいつ明らかに強いですよ...っ」
金髪はバッグから自分の『銃』を取り出そうとするが、取り巻きに止められてその動きを止めた
「っ......あ、あれ...?私の顔が...戻って......」
金髪の言う通り、顔の傷は治った。
だが、なぜだかその形が歪である
「な、なんか変...っ」
そう、絵に描いたようなブサイクヅラになっているのである
人の髪型をバカにできるようなヤツにはお似合いのメイクなのだろうが、なぜこうなったのかがわからない
「ひっ......ヒィぃぃ!!!!」
さっきまでの威勢はどこへやら、仗助から奪った財布を放り出して金髪と取り巻きはどこかへ逃げていった
「あーあ。カワイソ」
カズサはそんなことを言いつつもどこか笑顔になっている
「ふぅ......」
仗助も息を整え、先ほど電柱に当たって怪我をしていた亀を噴水へ戻してやった
それは弔い......などではなく
『亀の傷がすっかり直っていた』
「あっ!仗助早く行こう!そろそろ学校始まっちゃうって」
「ええっ!!初日から遅刻はマズイっスよォ!」
カズサに手を引かれ、仗助は学校へと駆けていった。
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「......ふふ...っ」
とあるリビングで、1人の『羽の生えた』女性は笑みを浮かべる
そして、その目線は一枚の写真に向けられていた。
それはおそらくその女性の中等部での卒業写真であろうか、泣きじゃくった女性の隣に、それを慰めようとする後輩の『男の子』の姿があった。
「......ようやく、ですね......『仗助くん』」
これは、彼らの奇妙な学園都市生活を描いた物語である