仗助「完璧な学園生活っすね〜ッ、女子高生しかいないって点に目を瞑ればよォ〜ッ」 作:カブライニキ
少々気弱で怖がりだが、お人好しで表裏のない性質の持ち主
所属『アリウス分校;一年』
僕の名前は『広瀬康一』15歳
まー......名前を覚えてもらう必要はないけど......ちょっぴりでも、記憶の片隅にでも置いてほしい
「......日記?」
「うん、これからの生活、何が起こるかわからないから、文字を書けるうちに書いておこうと思って」
僕は今、『戒野ミサキ』さんと......言い方は悪いけど、逃亡生活をしている
なんで逃亡生活なんてしているのか、もしかして犯罪者なんじゃあないかと思われるかもしれないけど、それは違うと断言できる
「............」
「え...えーと......好きにしててもらって大丈夫......だよ?」
「うん」
「.........ちょ、ちょっとでも横になる、とか......」
「別に」
「そ、そうだ!ヒヨリさんからもらってきた雑誌が「いらない」......ハイ.......」
ええと......彼女は別に悪い人じゃあない。
今こうやって僕にくっついているのだってきっと悪気があってやっているわけじゃあないのだろう
きっと彼女は......一年一緒にいてもよくわからないけど、多分寂しがりやなのだろう
でも今書いているところを見られたらきっと怒られる。ただでさえ彼女を学校から連れ出したのは僕なんだ
「......これから、どこに行くの」
「うーん......完全に完璧に当てがないからなぁ〜っ......」
さて、何故僕たちが学校から逃げ出す、だなんて自殺行為をしたのか
それを少し説明する必要がある
それと_________________________
僕の『能力』についても
_________________________________________
〜一ヶ月前〜
『そこ。サボるな』
「すっ、すみません...!」
まだ薄暗い時間帯の中、1人の少年は『いつも通り』ロボットの監視員に見張られて作業を進めていた
トンカチを握り、壊れかけの建物を修繕する
未だ慣れない感覚を握りしめて、少年......広瀬康一は作業を続ける
(ヒィ〜っ......眠いし寒いし......もう何年もこの学校で暮らしてるけど全っ然慣れないや......ああ、今日は朝の配給を受け取り損ねたからなぁ〜っ......どうしてもっと早く起きないんだよ僕はーっ!)
「ふわぁ......」
『あくびを垂れるなガキ!』
「うわぁっごめんなさい!!」
あくびをすれば銃口を向けられる
伸びをすれば今度は弾丸が出てくるだろう
銃社会であるキヴォトスとはいえ、この光景は異常。
だが、康一にとって......
『アリウス分校』の生徒にとって、この
「はぁ........朝からこれじゃあ、今日は先が思いやられる......」
そんなことをぼやきつつ、午前中の作業が終わった康一
その後ろに、ぬっと忍び寄る......というか
「朝の配給、受け取り損ねたんでしょ」
「まさにその通り......ってうわぁ!?な、なんだミサキさんか......びっくりしたなぁ......」
「はぁ......驚かせるつもりで話しかけてない」
当の本人は、全く怖がらせるつもりもない
康一の隣に座るのは戒野ミサキ。
付き合いでははや一年となる相方だった
「.........これ」
「えっ?......もしかして......お弁当?」
「どうせ、食べ損ねてから何も食べてないんでしょ」
ミサキがため息と共に取り出したのは、少し暖かさが残っているお弁当の包み。
もっとも、弁当箱は所々焼けこげたように爛れているし、それを包むハンカチだってボロッボロだ
「......」
「.........別に、気に入らなかったら食べなくても「ありがとうミサキさん!」っ......別に、中身も美味しくないから感謝なんかしなくてもいい......」
ミサキはそう言いながら、康一からプイッと目を逸らす
おそらく、康一の屈託のない笑顔を見続けるのは彼女にとってあまりよくないことだったのだろう
「それじゃあ......いただきます!.........むぐ......むぐ.........ん“っ!?」
小さな弁当箱にはほぼ生焼けの卵焼き、おそらくレンジでチンした程度であろう生臭い小魚
そして芯が硬い米が入っていた
これなら、まだ配給の味けないレーションの方がマシなのでは?と疑いたくなるようなご飯
「............どっ、独特な味!だね!」
康一、どうにかジャリジャリと謎の食感のする卵焼きを飲み込んでミサキにフォロー
「......無理して感想言わなくていい。料理の仕方なんてわかんなかったから......不味いのはわかってる」
じゃあなぜ康一にそれを渡したのか、と聞くのは野暮ったいのだろう
「そっ、そんなことないですよ!せっかく作ってきてくれたんですし......何より、ちゃんと美味しいですよ!」
康一、男を見せる
弁当に入っていたおかずとご飯をそれぞれ食べ、明らかに無理をして笑顔を作る
(さ、魚が生臭い...ッおそらく全く悪気がないし善意だけでやってくれたのだろうけどこれは......っ......いや、配給を逃した僕にわざわざミサキさんが作ってくれたんだ!全く不味くなんかヴォえ」
「......あっそ」
まだそっぽを向いたままの顔は、どこか熱を持っていた
「ふぅ〜......今日も疲れたなぁ〜......早く高校を出てキヴォトスの外にでも行きたいよ......」
今日も今日とて怒られながら康一は全ての作業を終了。
その疲労は体についている煤からも見てとれる
「.........に.........った筈だ」
「わか.........で......」
「ん?......この声......ミサキさん?」
いつもは通らない小道からミサキと誰かの声が聞こえ、康一は恐る恐るその小道を覗いてみる
(うう......やっぱり暗くて狭い......ミサキさん、こんなところで何して......)
「......忘れたとは言わせないぞ。|Vanitas vanitatum et omnia vanitas.《全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ》」
「......わかってる。わかったから.........もういい?」
「待て。まだ話は_________「......鬱陶しい」ッ!!」
バシン
ミサキは、話し相手によって頬を打たれた
一瞬怯んだように顔を顰めるが、ミサキの表情は再び元の無表情へと戻る
「ッ!!やめろっ!口答えされた程度で、殴ることはないじゃあないか!『サオリさん』!」
「.......康一、お前には関係のない話だ」
「いいやッ関係ある!だってこれは『スクワッド』の問題ってことですよね?なら、ちゃんと僕にだって関係あるってことですよッ」
ゴゴゴ......と康一とミサキをぶった女性......『錠前サオリ』は睨み合う
(や、やっちまったぁ〜ッ......小心者の僕がっ、何余計なことを......でも...ミサキさんをぶったのは、いくらサオリさんでも許せない......!)
「.........何故だ」
「えっ?」
サオリが一瞬顔を顰めた。
「何故お前はそこまで......ッ」
「何故...って......一体どういう________________」
ガオンッ
「あっ......行っちゃった......はぁ......怒ってるよなぁ......」
サオリは突然康一の目の前から消えた。だが、その現象に康一は何も違和感を覚えている様子はなかった
まるで、この『現象』もまた彼の日常であるかのように
「......なんで来たの」
「なんで...って、そりゃあミサキさんが打たれたから......」
「......関わっても姉さんの怒りを買うだけ」
「仮だとしても、家族同士で傷つけあうのはよくない、って『姫』も言ってますから」
「......おせっかい」
「あはは......まぁ、それぐらいしか取り柄がないもんで......」
体を丸め込むようにして建物の影に座り込むミサキの隣に、そっと彼は座った。
そして、懐からとあるものを取り出した
「はい、どうぞ」
「......何これ」
「朝のお弁当のお返し、ってことで」
ミサキに渡されたのは、『ティータイム』で配られる角砂糖。それも康一の分も入っているであろう二個分
「......渡したもの対してもらうものの等価がなってない」
「ミサキさんからもらったお弁当、すごく美味しかったので」
(......嘘つき。自分でもあんなものが美味しいだなんて間違っても言えない。なのに、なんで康一は......)
「なんというか、『気持ち』がこもっているような気がして」
「.........気持ち」
「まだちょっぴりだけ残ってるので、夜食にさせてもらいますね。ああ、心配しなくてもちゃんと食器は洗って......」
不意に、ミサキは康一の肩に寄りかかった
「ミ、ミサキさん......?」
「.........しばらくこのままでいさせて」
叩かれて、少し赤くなった頬を隠すように。
小柄な康一に寄り添った
「.........ま、まいったなぁ〜」
康一は、こういう時には気の利いたセリフでも......と捻り出そうとしたが、結局出てくるのは月並みな言葉
(言わない方がいいよなぁ......というか、言う必要もない、か......)
康一も、ただミサキに寄り添った
何も言わず、何もせず
寄りかかるミサキの異様に軽い体重を肩にかけて
その時だけは、世界は彼らのためだけに有ったのかもしれない
『チッ......こんなところでイチャついてやがったかガキ共......』
「わっ...!?ご、ご苦労様ですッ!!」
狭い通路を這うように出てきたのは、康一たちを管理している機械の兵士
『さっさと立ってついて来い。マダムがお呼びだ』
「マダムが......?」
「なんで僕たちなんかを......」
『そんなことは知らん。黙ってついて来い』
無理矢理、と言った感じで連れ出される康一とミサキ
いつも『マダム』に召集されるのは『アリウススクワッド』が全員揃った時だけだったから、より不思議に思ったことだろう
「うう...マダムにまで呼び出されるだなんて......本当に厄日なんじゃあないか......」
マダム
それは、康一やアリウスの生徒が『恐れて』やまない大人
「ふむ......経過は良好......『崇高』とまでは至れませんが......まぁ十分な『能力』でしょう」
ステンドグラスの光差し込む崩れかけの聖堂の中、全身が赤く、さらにドレスを纏った女のようなものが佇んでいた
「......サオリ、そんなに怯えなくともいいのですよ?何もとって食おうだなんて考えていませんので」
「ッ......い、いえ......怯えて、なんて」
「いえいえ、隠さずともわかりますよ?何せ、私は『観察』が得意ですので」
明らかにその存在に怯えるサオリはその恐怖に耐えるように手のひらをギュッと握り込んだ
「あなたの『スタンド』は十分
気色悪くサオリを見下ろすいくつもの視線
サオリの体はびくりと震えた
「さて......あなたの『家族』は果たして
マダム......『ベアトリーチェ』は薄く笑みを浮かべた
まるで、これから起こる『お楽しみ』が楽しみで仕方のない子供のように
「ッ......マダム、やはり、康一とミサキはまだ精神的にも成長しきっておらず...っ......使うに、たりえない......かと」
必死で絞り出した言の葉を悔いるように、サオリは言葉をベアトリーチェへとぶつけた
ミサキ「はぁ……なんで次回予告なんか」
康一「まぁまぁ……ええと、次回の『アオジョジョ』は…「アオジョジョって何」「この小説の略称らしいですよ…?なんの略にもかかってませんけど……」
「……次回、康一がマダムを殴る回」
「ちょっ!?ミサキさんネタバレはッ…ってもう時間がぁ…ええと!とりあえずっお楽しみにぃっ!!」
第七話『離せって言っているんだよ』