【王様】
本作の主人公。男性の猫。名前はジョン・ギアリー。
【王妃様】
王様の妻で美しい女性の猫。
軍拡を後回しにしたり、フェザーン開拓の際に「王か王妃かのどっちかは本国に残れ」と言ってきたりしてたリオーネ副大臣に少しムカついてる。
というか政治家全員に否定的な印象を持ってる。
【リオーネ副大臣】
フェザーン開拓で最近忙しかったが、ひと段落したので夫や子供達と家族みんなで休暇でも取ろうと考えているところ。
女性の猫。
【フェザーン開拓】、それは王国にとって科学的重要性だけでなく戦力的重要性も非常に高い一大イベントであった。
【フェザーン星系】はにゃんこ王国が位置するオリオン腕の隅にあり、そこは東側からしか侵入することができず、そして東側は他のにゃんこ王国の星系が防壁となり守られることとなる。
フェザーン星系は猫族以外の知的生命体……他のエイリアンの魔の手に脅かされることなく、安全地帯となり大いに発展することも予測されていた。
その為にゃんこ王国では、このフェザーン星系に遷都して王国の新たなる中心地にするという計画も持ち上がっていたのだ。
にゃんこ王国の王様とだけでなく王妃まてで直々に開拓に参加することを、リオーネ副大臣などの政治家が最終的に認めた理由として、この【フェザーン星系】の今後の重要性を王国民に示唆する狙いがあったからとも言われてる。
そしてこの【フェザーン星系】は開拓を終えた後も、にゃんこ王国の国王を始めとする多くの兵士達が滞在していた。
おまけに【フェザーン星系】の調査や、三連恒星から飛来した隕石の観測の為に訪れた数多くの科学者達がいた。
そしてそれらの兵士や学者を相手に商売をしようとする猫達、
フェザーン星系の将来的な発展を踏まえて進出した王立宇宙公社「ベイラムインダストリー」などの大企業、
それらがこのフェザーン星系に集まったおかげで、居住可能惑星たるフェザーン第三惑星も急速に発展したのであった。
俺はこの【フェザーン星系】にある、【フェザーン第三惑星】、その【惑星首都フェザーン】にある【フェザーン城】の会議室にいた。
くそ!俺は何回フェザーンって言ったんだ?
フェザーンという言葉が俺の中でゲシュタルト崩壊する。
フェザーンと何度も言うのは馬鹿みたいな話だが、まだいい名前が思いついていないので、便宜上このフェザーンという言葉を繰り返し使っている。
そのうちに惑星や首都や城ごとに相応しい呼ばれ方が出来て、自然とみんなその名称を使うようになるだろう。
俺はそんなことを考えながら、いつもの玉座と違って普通の座り心地の椅子に腰をかけて、ウキウキしている科学者達の話を聞いていた。
「三連恒星から飛来した隕石の調査に関しては、残念ながら現在イマイチ進んでおらず、この惑星にあるフェザーン第三大陸に天文台を建設する予定であります。」
科学者の話は、本来であれば今すぐ調査をしたい彼らにとって不都合な話題のはずだ。だがこの猫は一切落胆の色が見られない。
まるで代わりにとっておきのオモチャを与えられたかのような、そんな如何にも嬉しさを抑えきれないという態度が見える。
そしてその予測は当たったようだ。
「で!す!が!
なんと!このフェザーン星系は我々がいるオリオン腕の隅にあり、そこから先にはどこにもいけないと考えられていましたがそうではありませんでした!
フェザーン星系から見てサジタリウス腕の方向に、いくつか星系がありその星系へと到達可能な航路があったのです!
そしてフェザーン星系からそのサジタリウス腕の方向にある星系をいくつか経由すれば……我々はサジタリウス腕にたどり着ける!
なんと【フェザーン星系】には我々がいるオリオン腕と、別の星の密集地域である腕、【サジタリウス腕】を結ぶ航路が存在することがわかったのです!」
話を聞いて、俺は驚いた。
この天の川銀河にある別の腕と航路が繋がっているだと?
とても需要な情報だ……。
この話を聞いてもイマイチピンと来ていない、リオーネ副大臣の姿が俺の目に入った。
彼女は基本的に惑星で時間を過ごしているので、宇宙に関する専門用語に疎いところがあるのかもしれない。
ふと、俺はリオーネ以外にもイマイチ事態を把握できていない猫達がこの会議室で首を傾げているのに気がついた。
俺は彼らに説明する意図も込めてその科学者と話す。
「教授、ご確認させていただきたい。
銀河の密集地域の腕……。
それは惑星の地上で例えると大陸や諸島などに相当する物だという理解でいいだろうか?
つまり、我々の【オリオン大陸(腕)】の端に【フェザーン】があり、そのフェザーンから到達可能な小島(星系)がいくつか見つかった。
そしてこの小島を経由すると、隣の大陸である【サジタリウス大陸(腕)】に到達ができる……。
こういうことでいいだろうか?」
科学者は満面の笑顔を浮かべた。
「そうです!ジョン国王陛下!
我々はこのオリオン腕だけではなく、サジタリウス腕という新天地にも到達できるのです!
そう!過去のご先祖様が旧大陸を渡って新大陸に到達したように!」
その話を聞いて会議室は大盛り上がりとなった。
「すごい……!それはつまり、まだまだ開拓できる場所があるということではないか!?」
「サジタリウス腕!もしかしたらそこには未知の資源や新しい発見があるかもしれない……!」
「ぬぁ・・・これはひょっとしてビジネスチャンスなんぬ?」
「これはこれは、うまくいけば所領を増やすチャンス!」
政治家や科学者、大企業のビジネスニャンに貴族達はその話を聞いて大はしゃぎであった。
東の方にもまだまだ開拓できる土地はある。だが、西の方にもさらに開拓できる土地があるとなれば、利益に目敏い彼らが大はしゃぎするのも無理はないはずだ。
俺はその話を聞いて、さらにこの好景気が維持されるだろうと予測し、少しほおが緩んだ。
素晴らしい……何もかもが上手くいっている
『何もかも上手くいっているとしたら、それは何かを見落としているのかもしれません』
ふと、俺は首都などを守る任務についている古い戦友、デカラ大佐の言葉を思い出した。
なぜこの言葉を思い出したのかはわからない。俺は何かを見落としているのか……何か。
そこまで考えて、ふとある要素について気がついた。
この考えを信頼できる軍の猫に相談したい。
俺は隣に座るターニャ(俺の妻で王妃だ)の顔を見た。
そして彼女の顔は青ざめていて、尻尾の先端も巻かれてお腹を抑えていた。まるで胃痛を抑えるかのように……。
どうやらターニャは俺よりも先に、状況の不味さに気がついたらしい。
「報告ありがとう。とても重要な報告だった。
私は王妃と話したいことがある。
少しだけ席を外すが、私たち抜きでも遠慮なく話を続けていてくれ。」
この会議室にいるリオーネ副大臣だけが、俺たちの様子がおかしいことに気がついたようだ。
だが他の猫達は俺たちの懸念にまだ気がついていないようで楽しそうにはしゃいでいる。彼らの気楽さが羨ましい限りだ。
そして俺はターニャと共に会議室を出た。
会議室を出た後、俺と王妃のターニャは隣の部屋で真剣な表情で話をする。
「ジョン……不味いわ。」
これほど緊張した顔の彼女を見たのはいつ以来だろうか?
おそらく大海賊時代が終わって以来、初めてのことかもしれない。
「ああ、そうだな。フェザーン星系が【サジタリウス腕】と繋がっているということは、
【サジタリウス腕】にいるかもしれない宇宙猫……エイリアンがこのフェザーン星系に攻め込むかもしれない。」
俺はハッキリと懸念を口にした。
こういった悩みをご先祖様以外に共有できることは本当にありがたい。
彼女がいてくれてよかったとつくづく思う。ご先祖様のお導きで彼女と出会えたことは、俺にとって最大の贈り物だ。
「全く……面倒なことになったわね。
あの旧家ごっこをしている黒猫を校長の仕事から、また【エイリアン対策室】に呼び戻す必要があるかもしれないわね。」
ターニャは呆れたように言う。
しかし、俺たち猫族は一度も猫族以外の知的生命体に出会ったことはない。
なのに宇宙猫(宇宙人)の専門家が居るのどういうことなのだろうか?
一度も出会った事のないエイリアンなど、どうやって研究するんだ?
俺はターニャとの会話を続ける。
「旧家ごっこ?君だっていいとこのお嬢様じゃないか。」
「ええ、でもあんな古臭い喋り方はしてないわよ。時代遅れの価値観も持ってないわ。
彼は自分の名前ですらあまり呼ばれないようにしてるのよ?
真名を隠して呪殺されないようにでもするつもりかしら。」
自分の名前を隠す?それは初耳だ。
みんな彼の名前を平然と呼んでいたはずだが……。
「もしかして【レイヴン】は本名じゃないのか?」
「ええ、もっとなんか変な名前だったはずよ。
確か【レイヴン】は今の【にゃんこ王国】でも親しみやすいように考えた通名だったと思うわ。
まぁ、あの黒猫の話はどうでもいいわ。
そんなことよりも問題はこのエイリアン対策よ。」
脱線していた話をターニャは戻してくれた。
もし彼女が止めてくれなかったら、俺はこのまま時間を無駄にしていたかもしれない。
「とりあえず、今わかっている最も重要なことを確認しよう。」
「ええ、そうね。認めたくない最悪の事実をね……。」
「「王国のフェザーンをはじめとする、西方宙域はもはや安全地帯などではない」」
俺たちは息ぴったりに同時に言った。
「私たちは西側が安全地帯になると思って計画を立ててきた。
でも、その予定は【サジタリウス腕】への航路が見つかったことで完全に狂ったわ。」
俺はため息を吐いていった。
「今の軍備じゃ足りないってことだな。
つまり、このお祭りモードのにゃんこ達にどうにか軍拡を了承させないってわけか……。」
ご先祖様……どうやらまだ俺に働いてほいしいのですか?
できればせめて1ヶ月くらいお休みしたかったのですが……。
「とにかく、この話をリオーネ副大臣にも伝えるところから始めよう。」
俺がそう言うとターニャは言った。
「それはいい考えね。軍拡を遅らせた挙句に私があなたと一緒に【フェザーン開拓】に同行することを反対した、あの女へのささやかな報復になりそうだわ。」
俺の王妃はどうやら、小さな幸せを見つける名人のようだ。
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