宇宙猫文明ダイス(テスト)スレ・小説版   作:フィークス2号

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登場キャラクター紹介

【王様(ジョン・ギアリー司令長官)】
にゃんこ王国の王であり、艦隊司令長官を務める。

【レイヴン】
王国の『エイリアン対策室』の室長を務める。
今回はシンディックの調査に同行できてテンションが上がっている。

【スミス艦長】
補助艦タヌキの艦長を務めつつ、補助艦部隊の総指揮官も務める。

【ヤン・ウェンリー】
後世で歴史家として名を残す男。
現在はフェザーンでのゴタゴタで望まぬ出世した結果忙殺されており、昼寝する時間どころかブランデー入りの紅茶を嗜む時間すらなくてストレスがマッハ。



第7話 シンディックの調査

 

 

 

 王国の艦隊に所属する要猫(要人)が参加した艦長会議を終えた後、俺は【エイリアン対策室】の室長を務める【レイヴン】と改めシンディックエイリアンについての話をした。

 

 「それで……室長、君はあの宇宙猫(シンディック)についてどう思ってる?

 俺は皆の手前、過度に敵意を煽らないように彼らの美点、一部の仲間を犠牲にしてでも、情報とそれ以外の仲間を守ろうとした点を強調したが……。

 正直言って、俺はバダヤ艦長があいつらシンディックを悪魔と罵った時に、思わず同調しそうになった。」

 

 俺はため息をつきながら言った。

 目の前の黒猫……【レイヴン】室長は口に手を当てながら、どこか余裕そうな口調で言った。

 

 「悪魔……確かに夷狄共(シンディックエイリアン達)の振る舞いは、恐ろしさを感じさせる物でおじゃるな。

 

 こちらの応答が届く前に先制攻撃をしかけ、

 味方が乗る船を自らの攻撃で爆破し、

 おまけにその正体もほとんど分からず仕舞い……。

 

 残酷で敵対的な印象を与えるに十分じゃのう。」

 

 「つまり…君も同意見だと?」

 

 そう聞くと【レイヴン】室長は首を横に振った。

 

 「そうではない。麿は一般的な感性で言えば、陛下やバダヤ艦長が抱く嫌悪感が当たり前のものだと肯定したに過ぎぬよ。

 

 さて……であれば何ゆえ夷狄はそのような振る舞いをしたと、陛下はお思いか?」

 

 【レイヴン】はまるで、教師が生徒に問題を自力で考えさせるかのような口調で言った。

 よく考えればこの黒猫は軍学校の校長だから教師みたいなもんだ。というか校長にしたのは俺だ。

 

 しかし、何であいつらシンディックがそのように振る舞ったか…。そんなこと考えたこともなかった。

 軍事的視点で考えると、あいつらは俺たちを過小評価して、簡単に倒せると思ったのか?実際俺たちの船はシンディックの船よりも基本的にサイズこそ大きいが数では劣っていた。

 いや、そもそもだ。俺たちとシンディックは敵対関係にないはずだ、勝てるとしても外交的に致命的な悪影響が出る。

 外交的(政治的)視点なくして純軍事的視点のみで判断するのはおかしい。

 戦争状態ならまだしも、あの時点ではまだシンディックと王国は敵対関係になかったはず……。

 

 いや……もしシンディックがそう認識してないとしたら?

 

 俺はゆっくりと、【レイヴン】に尋ねた。

 

 「……まさか、【シンディックエイリアン】は既に他の勢力と交戦している?」

 

 その答えを聞いた【レイヴン】はどこか満足そうに付け加えて言った。

 

 「あるいは、『既に自分たちに対して、敵対的な勢力が存在すると認識している』と考えるべきでおじゃるな。

 

 【シンディック】は別の宇宙猫か、あるいはシンディックの同族と敵対関係にあったのかもしれないと麿は考えておりまする。」

 

 俺はほんの少し前まで、王国が大企業同士の内紛状態にあったことを思い出した。

 もしあの紛争が続いていている最中にシンディックエイリアンが来たら?

 もしかしたら、敵対勢力と誤解して先に先制攻撃していたのは俺たちの方だったかもしれない……。

 

 そう考えていると、【レイヴン】室長は続けて話した。

 

 「麿はシンディックの夷狄達は、仮想敵に対する警戒感から心理的圧力が深刻であったのではないかのう?

 

 シンディックは麿達がこの『フェザーン』にいる事を予測しておらず、

 麿たちとの不意の遭遇でパニックを起こし、そのまま敵と誤認したという仮説が建てられるでおじゃる。」

 

 「なるほど……だが、味方殺しについては?

 あれはどう考えても、シンディックの過激性や悪魔性の表れに感じるが?」

 

 俺はこのエイリアン専門家の話に引き込まれていた。

 

 「それについても、シンディックなる夷狄の内的要因ではなく、外的要因……別の夷狄の影響と捉えることも出来るでおじゃるな。

 

 例えばシンディックが非常に残酷な敵を想定しているとか……。

 ファルコ大佐を覚えているか?」

 

 ファルコ……あの海賊時代に捕虜になり、敵に拷問されてしまった大佐か。

 彼は過激派で、指揮官としても実力不足だがあのような目に遭うのが公正だとは俺は思えなかった。

 

 「つまり……シンディックは俺たちに捕まったら、捕虜として捕まった味方も拷問されると考えたのか?

 それこそ死んだ方がマシだと思えるくらいの……」

 

 「正確には、『シンディックが想定する敵』に捕まればじゃがな。

 ところでファルコ大佐は見つかったでおじゃるか?」

 

 「いや……シンディックとの交戦中に、オリオンが大破した混乱に乗じて、シャトルと共に行方不明になったことまで分かったが、それ以外は……」

 

 ファルコ……今回のシンディックとの戦いで行方不明になった軍猫だ。

 彼はかつての海賊時代で、企業の軍に捕まった経歴を持つ。

 俺は彼が捕虜になった後、拷問による精神的な後遺症などもあり、以前よりも過激になったファルコの扱いに困った。

 なので最終的にオリオンに乗せて、そこで当たり障りのない仕事に就かせた。

 

 本音を言えば軍務から距離をとって回復に専念して欲しかったが、軍での地位は彼にとって心の拠り所で、彼はそれを望まなかった。

 

 精神病の話というのは、にゃんこ王国ではまだ世間的には理解が薄く、その事実を彼の了承を得ぬままに公然と発表し辞めさせるのは、彼の名誉を傷つける上に倫理的な問題に直面する。

 

 だが彼が不調であることは明白であり、軍の要職に就け続けるわけにもいかない。

 しかし彼を無理にやめさせれば、どうしても周りから怪しまれ最悪ファルコ大佐が裏で名誉に関わる問題(精神病ではなく汚職など)に関わっていたという誤解を与えかねない。

 

 俺はその解決策が思いつかずに、戦艦オリオンの中でプロパガンダ資料の作成などの当たり障りのない仕事を任せていたのだ。実際、彼のプロパガンダに関する案は光るものがあり、ファルコの案が採用された事は何度もあった。

 

 

 だが……残念な事に彼はシンディックが来襲した際に、ファルコ大佐を乗せた戦艦オリオンは大破した。

 ファルコ大佐はその混乱の原因で、過去の戦争のトラウマが再発して暴走し、シャトルに乗り込んでそのまま行方不明になったと思われる。

 

 俺はその事実を知った時、ファルコ大佐の件で深い後悔をした……。

 

 俺の表情を見た【レイヴン】が、何か俺に言って励ましていたが俺はその内容はほとんど耳に入らなかった。

 

 もし、俺の振る舞いを……精神病を患ったファルコ大佐を戦場に連れて行き、病状を悪化させた事を、シンディックエイリアンが見たらどう評価するのだろうか?

 

 俺は少し前まで、シンディックエイリアンをどう評価するかという事で頭がいっぱいだったが、今は自分達がシンディックエイリアンから見ればどう映るかという問いに悩んでいた……。

 


 

 

 フェザーン星系で行われたシンディック艦隊との戦闘の後、にゃんこ王国では大規模な軍拡が行われた。

 

 これはジョン・ギアリー国王が以前からエイリアン対策の為に軍拡の必要性を説いていたのに加えて、実際にシンディックという目に見える脅威と遭遇した事で王国国民の大規模な自発的志願が相次いだ事で比類なき規模の大軍拡となった。

 

 統計によると王国民の1割近くが志願した、この一大ムーブメント。この背景にはやはりジョン国王の軍事的センスへの絶大な信頼があったと思われる。

 

 

 

 この中でもにゃんこ王国で特に注目に値するのは、兵站を担う【補助艦】部隊の大幅な拡張であろう。

 

 今回の大軍拡では未探索宙域での軍事行動となる為に、物資の生産能力や輸送能力を持つ【補助艦】と呼ばれる補給艦が大幅に増産された。

 『移動能力のある工場』と評すべきこれらの艦は、戦闘能力や機動力こそないものの艦隊が必要な物資を提供することができた。

 しかし、残念ながら機動力はない。

 「【高速補助艦】という名前がついているのに、高速なのはトラブルに陥る速度だけ」とすらも評されるほどに鈍足で遅い船であった。

 もしこの船について更に知りたいのであれば、この鈍足な船への愚痴や不満が更に100倍ほど目にするハメになる事を事前に記しておく。

 

 そしてこれらの増産された補助艦隊の指揮を取るのが、【高速補助艦タヌキ】のスミス艦長であった。

 

 『【補助艦部隊】の指揮官でありながらも、【高速補助艦タヌキ】の艦長を務めるスミス艦長は、その『鮮やかな手際』で120%の成果を出した。

 

 与えられた予算や物資を余す事なく適切に振り分けて100%の実力を出し、『亜空間』から更に50%の予算と物資を確保したのちにその20%を追加で艦隊の為に使用したとされている。

 

 この謎の『亜空間』や『鮮やかな手際』に関しての歴史家ヤンからの質問に対して、

 『合法ですとも!法的に問題はありません!』

 『ちょっとこう……ね?うちには事態をややこしくするのが得意な士官がいましてね!』

 『返す気があるのであれば、それは窃盗罪にはならないんですよ』

 『……君は本当に知りたいのか?【友達】に加わりたいのか?』

 

 などの返答をしたという。

 

 ヤン氏の友人であるキャゼルヌ兵站事務官(インタビュー当時)は、

 「汚職して物資を減らすならともかく、逆に増やすとか意味わからん」と述べている。

 他にも彼への評価としては「優秀過ぎる泥棒」、「捕まってないだけの犯罪者」、「不良ぶってたシェーンコップとかアッテンボローが、相対的に真人間になるガチ犯罪者をお出しするな」などの声がヤン氏の周りから聞こえたという。

 

 このキャゼルヌ事務官とスミス艦長という、二人の全く異なる毛色の兵站・補給担当の違いについては、

 「双腕戦争の補給戦」(著者:ヤン・ウェンリー)、

 「秩序の必要性(著者:ドーソン)」、

 「ウィッチにおける回顧録(著者:ティロシアン)」、

 などの資料にて深く言及されている。

 

 他の参考資料としては、

 「ブラックジャックと寝た女(著者:匿名希望D氏)」、

 「伊達と酔狂(ダスティ・アッテンボロー)」、

 「フェザーン回廊の兵站(共著:カラスマ・ミキオ、トシアキ・オリベイラ教授)

 

 などの資料も候補に上がる。しかし、後者の資料はキャゼルヌ氏とスミス氏の言及は上記の三資料よりも薄く、その本において割かれるページ数も少ない。ただ、兵站担当や憲兵以外の視点から見た両者に対する資料としては十分に活用することができる。

 

 ともかく、こうして大軍拡を終えたにゃんこ王国艦隊は、この大規模に拡張された艦隊と補助艦部隊を伴って、フェザーン星系以西の宙域に進出したのであった。

 


 

 

 次々とフェザーン以西の宙域を探索し、どんどん進む王国艦隊。

 

 その艦には、王国と艦隊の指導者であるジョン・ギアリー司令長官だけでなく、エイリアン対策室の室長【レイヴン】も乗っていた。

 

 その話題は一向に観測されない、シンディックのスペースコロニーについてであった。

 

 

 「【レイヴン】室長……。俺たちの艦隊はそれなりにシンディック宙域に近づいたはずだ。

 にもかかわらず、入植惑星……はともかくスペースコロニーすら見えないのは何故だと思う?」

 

 ギアリーは素直に質問をぶつけた。

 それに対して【レイヴン】は少し考えてから言う。

 

 「ふむ……彼らが居住可能惑星至上主義的な価値観を持っているのやも知れぬ。」

 

 「『居住可能惑星至上主義』?」

 

 「麿も夷狄(シンディック)ではないから想像するしかないがのう。

 何らかの影響……例えば文化や宗教的な価値観で、スペースコロニーや宇宙鉱山ステーション、それらのものを嫌悪しているのかも知れないと考えられまする。

 されど、夷狄(シンディック)は恒星間宇宙船を作るだけの技術があるのも事実。

 それらを作る術が全くないというわけでもないと予想できるからのう……。

 

 技術はあるのにやらないとなれば、物質的な束縛ではなく、精神的な束縛があると考えるのが自然でおじゃるな。」

 

 【レイヴン】は技術的問題が無いことから、シンディックの精神的要素に注目して自論を述べた。

 

 「そうか……。俺はデシャーニ艦長と話した際に、『スペースコロニーなどは戦争の際にすぐ破壊されるから、シンディックはそれらを好まない』という話になったのだが、それについてはどう思う?」

 

 その発言を聞いた時、【レイヴン】は動揺したように見えた。

 

 「戦争による影響……。確かにそれも考慮すべきでおじゃるな。

 ただ、それをいうならば惑星とて脆いという条件は同じ。

 もし惑星に核兵器を打ち込めば、あっという間に生態系は乱れて居住は不可能になるのではあるまいか?」

 

 「そうか……核兵器か。

 ところでシンディックエイリアンにも冷戦などの、全面核戦争の危機があったのだろうか?」

 

 興味本位からギアリー王は尋ねた。

 

 「おそらくはあったであろうな。

 例えあったとしても、核戦争が起きたのは宇宙進出を終えた後。

 母星がある星系の別の衛星や惑星に入植した後に起きたもので、少なくともシンディックの全文明崩壊レベルには至らぬ、限定的な核戦争となるのう。

 もし、その核戦争が母星以外への入植前に起きていて、すべての文明や国が消失する規模であったとしよう。

 その核戦争の復興から再び宇宙進出するのはざっと1万年くらいは掛かるはずよのう……。

 

 1万年も時間的開きがあれば、核戦争を起こした文明や当時のシンディック種族との連続性はほぼ皆無と言えるのではないか?」

 

 その言葉に、王は静かに頷いた。

 にゃんこ王国の猫たちは皆、猫族発祥の地である母星グレンデルに対して敬意を持っている。

 シンディックエイリアン達も、彼らの母星への敬意や故郷への想いれを持つのだろうか?

 ……それとも自分たちとは全く違い、単なる過去の遺物として頭の片隅にしか無いのだろうか?

 はたまた、聖地として崇めているのかも知れない。

 

 王の中で、未知の存在であるシンディックへの想像は膨らむばかりであった。

 

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