登場人物紹介
【ジョン・ギアリー司令長官】
シンディックとの戦闘でヒヤヒヤしてる、
それはそれとして強い。
【エイリアン対策室室長【レイヴン】】
彼が夷狄と呼ぶエイリアンの行動を見て、学ぶことに必死。
【デシャーニ艦長】
シンディック軍の手強さから、『シンディック指揮官』を実力を認めつつも、対抗意識を持つ。
「あの指揮官よりも私の司令長官の方が勝ちます。」
【『シンディック指揮官』】
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【ジャン・ロベール・ラップ少佐】
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【王国艦隊視点】
それは王国艦隊がタルタロス星系に足を踏み入れて、少し経ってからのことであった。
王国艦隊が星系に突入して少しした後、シンディック艦隊がタルタロス星系に出現したのである。
そのシンディック艦隊を見て、艦隊司令長官……王国の王であるジョン・ギアリーはすぐさまエイリアン対策室の室長【レイヴン】に相談した。
「【レイヴン】……再びシンディックの艦隊が現れたが、どう対応すべきだと思う?
通信をしたとして、向こうは応じるだろうか?」
その王の質問に対して、黒猫の貴族【レイヴン】はモニターに映る艦隊を見つめながら言った。
「それがまぁ定石でおじゃるな。
無理にその定石を外す理由もなかろう。
たとえ無視されたとしても、少なくともこちらは対話をしようと試み、交戦を避けようとしたという事実は残る。」
その意見を聞きつつ、ギアリーは好戦的な部下の意見を思い出した。
あまり下手に出てもシンディックエイリアンを付け上がらせるだけではないか?という話だ。
「なるほど……私は少し強気に出ようと思っているが、君の意見はどうだ?
彼らを刺激したりしないだろうか?」
「こちらは一度夷狄に襲われた身、それだけの態度を示すのも猫の道理では許されるはずよのう。
今の所はここまでの宙域を航行していて、ここら一帯がシンディック領ということを示す情報もない。
こちらが彼らの領地に侵入したと問われる根拠もないでおじゃるから、外交的には問題はないと思うが……。
されど、これらは麿達の価値観、実際にはやってみなければ確固たる事は言えますまい。
麿としては、こちらの態度を示す事も含めてやる価値はあると進言いたしまする。」
ギアリーはこのエイリアンに一度も会った事がない、エイリアン専門家をどこまで信用すべきか少し悩んだが、自分の直感と彼の意見に従いシンディックにメッセージを送ることにした。
【『シンディック指揮官』の視点】
シンディック艦隊の指揮官の一人である彼は、他の仲間に対して交戦の前に敵の艦隊と交渉を呼びかけることを進言した。
しかし、彼の意見は退けられた。
彼は前の戦いで残った艦隊の指揮を取り、そのまま望まぬ出世をしたが、同格の指揮官の中ではまだ若く、権限も足りなかったのである。
そしてシンディックの艦隊は、戦闘準備に移ったのだった。
【王国艦隊視点】
王国艦隊の旗艦ドーントレスは、シンディックからの返答の通信を受け取る事はなかった。
代わりに目にしたのは、大型のシンディック艦から小型船が大量に出てくる光景であった。
「司令長官!シンディック艦隊から謎の船が出撃しました!
……あれは威嚇行動でしょうか?」
ドーントレスの指揮を取るデシャーニ艦長が、ギアリーに話しかける。
「いや……あの小型船では速度が足りず、十分な火力は出せないだろう。
だから戦闘用ではなく、救命用のシャトルなんじゃないか?」
ギアリーの考察に対して、デシャーニ艦長は異なる視点で意見を出した。
「船の速度が重要になるのは、ミサイルや鉄鋼弾などの実体弾に限られます。
それらの実体弾は速度の分だけ威力が増しますが、シンディックの主力兵装である超遠距離ビームなどは速度に関係なく一定の攻撃力を持てるかと……。」
それを聞いてギアリーは少し納得した。
「ふむ……だが、あの小ささでは遠くまで届くビーム兵器を動かす為のエネルギーの発電量が不足しそうだ。
となると近距離戦に特化した兵器なのか?」
そう考えると、ギアリーの中で辻褄が合った。
恐らく前回の戦いではあれらの小型船を展開する前に、短期間で艦隊が撃破されたので出る幕がなかったのだろう。
(最初から展開しているのは、こちらが突撃した際に返り討ちにするためか)
ギアリー艦隊司令長官は、ジリジリと後退して敵の出方を見ることにした。
【『シンディック指揮官』の視点】
指揮官としての苦悩とは何だろうか?
それは猪突気味な仲間の後始末をさせる事も含まれるだろう。
現にこの『シンディックの指揮官』は、仲間の後始末をさせられていた。
敵が後退し始めたのを見て、仲間が強気になり敵を追い始めたのだ。
……展開した戦闘艇(繧ケ繝代Ν繧ソ繝九い繝ウ)を放置して。
『シンディック指揮官』は仲間を宇宙空間に置き去りに出来るわけもなく、鮮やかな手際で味方の戦闘艇を回収した。
彼は敵への追撃には乗り気ではなかったが、各個撃破を避ける為に、仲間と合流した。
彼はこれ以上、仲間に軽挙を慎んで欲しいと通信で頼んだが、指揮系統的に頼むことしかできず命令などはできなかった。
あくまで、自分の指揮権にない仲間には慎重な行動を提案することしか出来なかったのだ。
【王国艦隊視点】
「引けばそれ以上のペースで追ってくるな……。向こうは戦いたくて仕方が無いようだ。」
ギアリー司令長官がそう漏らすと、デシャーニ艦長は笑って言った。
「戦いたいのは彼らだけではありませんよ、私たちの艦隊も皆戦いたがっています。勝ち戦ですから。」
デシャーニ艦長の自信溢れる態度に、ギアリーは安心感を感じた。
「そうか……それは心強い。
だが戦うのは今じゃない、一つ前の星系に戻りそこで待ち伏せして奇襲を仕掛ける!
デシャーニ艦長、針路を反転してリンボー星系に向かってくれ。」
「了解です!」
そして王国艦隊はリンボー星系に向かい、タルタロス星系を後にした……。
【『シンディック指揮官』の視点】
この艦に乗る『シンディック指揮官』は頭を抱えた。
仲間の艦隊は敵の艦隊を追撃する為に、自分の制止も聞かずにそのまま敵を追ってワープアウトしてしまったのだ。
敵の装備は完全に近距離戦に特化している。
となれば、より有利な場所で戦うにはワープ先の星系(リンボー星系)で待ち伏せすることだ。
だが、こうなってしまった以上は仲間を見捨てるわけにはいかない。仲間の艦隊には彼の親友もいる。
『シンディック指揮官』は船に乗る参謀達に敵の船のデータを元に、どのタイミングでワープをすればいいかを計算させた。
しかし、ここでシンディックの士官が奇妙かつ不可解な情報をもたらした……。
参謀達はこの情報の意味を理解できず、困惑していた。
しかしこの聡い『シンディック指揮官』は一つの最悪の結論を導き出した。
彼には最初から軍事的に負けることを目標にするという選択肢はなかった。しかし、この時点で【軍事的に勝つ】という目標すらも選択肢から消失した……。
少なくとも軍事的に勝利しようとも、それは致命的な政治的失敗を意味すると、彼は理解したのだ。
彼はごく一部の信頼できる者にのみ、自分の結論と方針を伝えた後、リンボー星系へと向かった。
一人でも多くの仲間を救う為に……。
(謨オ縺輔s縺悟ク晏嵜縺ァ縺ッ縺ェ縺上?∽ココ鬘槭〒縺吶i辟。縺?焚譏滉ココ縺?縺ィ縺励◆繧俄?ヲ窶ヲ縲ゅ%繧後?蜴?サ九↑縺薙→縺ォ縺ェ繧九◇縲)
『シンディック指揮官』はこの時に気を紛らわす為に飲んだ紅茶から、全く味を感じなかったという。
【王国艦隊視点】
リンボー星系にワープした後、王国艦隊はワープポイントの後方に展開していた。
そしてシンディック艦隊がワープアウトする時間を見計らって、ワープポイントに向かって突撃し、タイミングよく奇襲をかける。
理論上は可能だが、実際にできるかどうかは未知数だ。
もしシンディック艦隊が待ち伏せを想定して反撃の体制を整えた状態でワープアウトしたら?
シンディックのワープ装置が王国のそれとは違い、タイミングがずれたら?
あるいはあの【小型船】がワープ機能を持っていて、常に近距離戦を戦える状態で艦隊と共にワープしてきたら?
考えれば考えるほど不安が増す。
しかし、結論は既に出した……。
ギアリー司令長官は時間を見計らって艦隊に命令を出した。
「全艦につ告げる、光速0.1で3時の方向に向かって突撃せよ!」
まだシンディック艦がワープアウトした姿は確認できていない。
だが、今のうちに動いて加速しておかなければ有効な火力を発揮できない。
これはギアリー司令長官は、ご先祖様への祈りの言葉を口にしつつ、モニターに注目した。
「シンディック艦!ワープアウトしました!
小型船は展開していません!
敵船の艦首はこちらを向いていません!
いえ、回頭してこちらを向こうとしているようですが、針路を変更するのに手間取っているようです……!」
デシャーニ艦長が報告する。
そしてシンディック艦隊が背後から迫る王国艦隊を迎撃しようと方向転換している最中に、ついに二つの艦隊はぶつかり合った。
それはたった一瞬の刹那の出来事であり、それを感知できるのは艦に搭載されたコンピューターだけであった。
ギアリー司令長官は僅かな揺れを感じた後、モニターに表示されたリプレイ映像と戦果報告を見る。
王国艦隊は回頭を試みるシンディック艦の横っ腹にありったけの兵器を叩き込んだ。
青く輝くボール状のレーザー『分解フィールド』の直撃を喰らいつつも、シンディック艦はシールドで辛うじて相殺し防いだ。
しかし、その次に続く『スペクターミサイル』や『ブドウ弾』などの船の加速度が乗った実体弾が恐るべき速さで敵艦を切り裂き、ボロボロに変える。
この宙域にいるシンディック艦の半分は煙を吹いている状態だ。
しかし、何かがおかしい……手応えが薄い。
実際にモニターに映るシンディック艦の戦果判定は1/3にとどまった。
そしてギアリー司令長官はこの違和感の正体に気がついた。
「どうやらシンディックにも賢い奴がいるようだ。
恐らく今までのシンディックのやつとは指揮官のレベルが違う」
速度の影響でワープポイント付近から離れる王国艦隊のレーダーは、時間をずらして後からやってきたシンディックの艦隊を捉えた……。
【『シンディック指揮官』の視点】
仲間の艦隊を追ってリンボー星系に後からやってきた、『シンディック指揮官』の予測は的中してしまった。
モニターにはボロボロに破壊された味方の多くの艦船が映り、それらは救命ポッドを次々と出している。
一方でそのシンディックの艦隊をボロボロにした敵はほぼ無傷だ。
『シンディック指揮官』はこの状況をどう捉えるべきか迷っていた。
味方が敵に打撃を与えられないことは本来なら悲劇だが、どんな時にも例外はある。
例えば……それは【敵】が本当に倒すべきでない存在である状況だ。
少なくともこの『シンディック指揮官』は、仲間を攻撃した艦隊は本来の【敵】ではない可能性を意識していた。
そして『シンディック指揮官』は、仲間の指揮官から指揮権を引き継いで、味方に対して指示を出し始めた。
「逕滄d縺励◆縺?b縺ョ縺ッ關ス縺。逹?縺?※遘√?謖?、コ縺ォ蠕薙▲縺ヲ縺サ縺励>縲ゅo縺碁Κ髫翫?迴セ蝨ィ縺ョ縺ィ縺薙m雋?縺代※縺?k縺後?∬ヲ√?譛?蠕後?迸ャ髢薙↓窶ヲ窶ヲ縲
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(生還したいものは落ち着いて私の指示に従ってほしい。わが部隊は現在のところ負けているが、要は最後の瞬間に……。
いや、とにかく生き残ることを考えてくれ。くれぐれも、これ以上の敵への攻撃は最低限の自衛の場合を除き禁止する。)
シンディックの指揮官にはこの戦いで勝つ算段はあった。
しかし、それは必然的に【敵】に対する軍事的攻撃を伴うものであり、その選択肢を選ぶべきでないと彼は考えていた。
敗北は許されないが、それ以上に敵を打ちのめして勝利することも許されない。
単純に勝利を追い求めるわけにはいかない、非常に奇妙な戦いを『シンディック指揮官』には強いられていたのだ……。
【王国艦隊視点】
王国艦隊は急反転しつつ、シンディック艦隊に再度突撃した。
そして追い討ちを仕掛けてさらに撃破する艦を増やす。
だが、後から来たシンディック艦隊の咄嗟の砲撃で的確に妨害され、思った以上に効果は薄かった。
ギアリー司令長官はこの後からやって来た、やり手の『シンディック指揮官』の戦術に何か恐ろしさを感じた。
圧倒的優勢にも関わらず、何故か強烈なプレッシャーを感じるのだ。
(この悪寒はなんだ……?これはご先祖様からの何かのメッセージなのか?)
シンディック艦に想定よりも打撃を与えられなかったことに対して、少しイラつきながら言った。
「姑息な時間稼ぎです。こんなことをしても、私たちの勝利は揺るぎません。」
(戦果報告を見る限り、クレシダ艦長やチュレブ艦長、バダヤ艦長でさえも手こずっている。
デシャーニ艦長の言う通り、今回の攻撃を凌いでもすぐ次の攻撃がシンディック艦隊を襲うだろう。
あの『シンディック指揮官』も把握しているはずだが……狙いはなんだ?時間を稼いで何をするつもりだ?)
ギアリー司令長官がそう考えていると、シンディック艦が一つの【何か】……とても小さいものを撒いた。
「何を出した?機雷か?あれ一つでは意味がないはz……」
そうギアリーが言いかけた途端、その【何か】は大爆発を起こした。
それに巻き込まれれば、戦艦ですらひとたまりもないほどの爆発だ。
そしてその爆発を見せつけた後シンディック艦隊は【何か】を大量に散布した。
まるで王国艦隊との間に壁を作るように……。
「クソ!あのゴミみたいに小さいあれは全部機雷か!?」
ギアリー司令長官が呟くと、デシャーニ艦長は進言した。
「もし、あれら全てが機雷であるならば、わざわざ事前に爆発させず、突っ込ませてから起爆すればいいはずです。
あえて我々が突入する前に起爆したのであれば、実際にあの規模の爆発を引き起こせる機雷は、ずっと少ないのでは……?」
「だが、少ないとしても実際にどの程度あの爆発を引き起こせる機雷があるのかは不明だ。
仮に起爆するのがあの機雷の中で1割だけでも、無駄に艦や兵士を突っ込ませて消耗させたくはない……。
時間は掛かるが迂回して堅実に攻める。」
「……了解しました」
王国艦隊はこうして迂回して、3度目の攻撃に向けて行動を始めた……。
【『シンディック指揮官』の視点】
『シンディック指揮官』は【敵】の艦隊が罠に引っかかり、時間を稼ぐことに成功したのを見てから、全力で救命ポッドの回収を行なった。
本来なら戦いで使用する戦闘艇2機をワイヤーで結び、そのワイヤーに引っ掛けて救命ポッドを回収するなど本来の規格外運用などを用いた総力を挙げての回収作業であった。
「荳?莠コ縺ァ繧ょ、壹¥縺ョ謨大多繝昴ャ繝峨r蝗槫庶縺吶k繧薙□縲√%縺ョ讖滉シ壹r騾?@縺溘i繧ゅ≧謨大勧縺吶k隕玖セシ縺ソ縺ッ縺サ縺ィ繧薙←縺ェ縺??
(一人でも多くの救命ポッドを回収するんだ、この機会を逃したらもう救助する見込みはほとんどない。)」
彼の考えを知らない部下のシンディックの兵士たちは『シンディック指揮官』に、【敵】に対して攻撃することを提案したが、
「遘√↓縺ッ濶イ縲???∴縺ゅk繧薙□縲√?縺ィ縺セ縺壹?遘√?謖?、コ縺ォ蠕薙▲縺ヲ谺イ縺励>
(私には色々考えあるんだ、ひとまずは私の指示に従って欲しい)」
と言ってその意見に耳を貸すことはなかった。
『シンディック指揮官』は部下が自分が「敵を打ちのめす策を考えている」のだと誤解していることを察していたが、その誤解を訂正する気も暇もなかった。
そしてシンディックは救命ポッドを8割回収した後、迫る【敵】の艦隊から逃れる為にタルタロス星系へ撤退した。
そして『シンディック指揮官』は、部下に作らせた救助者リストを確認した……。
そこには何度探しても、彼の親友の名は載っていなった。
彼はあそこで無理に交戦してでも、全ての救命ポッドを回収すべきだったのではないかと自問した。おそらく、彼の実力ではあれば【敵】に対しても十分勝機はあっただろう。
だが、それよりも彼には軍人としてまだまだやるべきことがあった。
その仕事が終わった後にも、彼の親友の婚約者にこの事をどのように説明するかを考える必要もあった。
【王国艦隊視点】
「おかしい……彼らは何故フェザーン星系とは打って変わって、こちらへの攻撃ではなく味方の救出を優先した?
自分の情報を隠す為?いや……それならばあの大型船の時のように、片っ端から砲撃して救命ポッドごと破壊した方が手っ取り早く時間も短く済む。
指揮官の違いか?いや……おそらくあの指揮の洗練さから『シンディック指揮官』は直感的にだがフェザーン星系とリンボー星系でも同一の采配に感じた。
となると、何か思考に影響を与える要因が……。」
旗艦ドーントレスの環境にて、ぶつぶつと黒猫の貴族が、貴族訛りがない普通の喋り方で延々と呟いていた。
その姿を見て、デシャーニ艦長とギアリー司令長官はヒソヒソと話し合う。
「なあ……あのエイリアン対策室室長……【レイヴン】は普通に喋れたのか?」
「そのようですね。あの黒猫貴族がパソコンとかに指示を出す際に、急に貴族訛りが消えて標準語になるという噂を聞いていましたが、実際に彼が普通に喋っているところを見るのは初めてです。」
話し声が聞こえたのか、黒猫貴族は独り言をやめて司令長官と艦長に言った。
「ああ、これはこれは。お見苦しいところを見せて誠に申し訳ないでごじゃる。なにぶん、麿も動揺していたもので……。」
ギアリー司令長官は色々と【レイヴン】に突っこみたくなる所があったが、その前にエイリアン達に対処する必要があったのでそれは後にすることにした。
「こちらは艦隊司令長官ジョン・ギアリーだ。
カラバリ中佐……。現在、大量の救命ポッドが漂っているが回収をしてくれ。」
宙兵隊の指揮官であるカラバリ中佐(元少佐)に、ジョン・ギアリーは指示を出した
カラバリ中佐からはその後すぐに返信が来て、後2時間で準備が完了すると言われた。
「エイリアンの姿を確認できるのは2時間後か……。」
そうギアリー司令長官が呟くと、巡航戦艦の艦長の一人であるブラダモンド大佐から通信が入った。
「司令長官、大変です。シンディックの救命ポッドの一つが……いや、複数のポッドが火を吹いています!
おそらくデブリの一つが当たり、損傷したのかと……。
このままでは中にいるシンディックが死亡する恐れがあります!どうか回収の許可を!」
その報告の通り、複数のシンディックの救命ポッドがボロボロで今にも爆発しそうであった。
(あの激戦の後だ……。あの小型の救命ポッドではバリアーの出力も弱く、戦闘の激しさで巻き込まれて損傷もするだろう。
くそ!どうすればいい?宙兵隊を動けるようになるまで時間が足りない!)
そうギアリーが悩んでいると、カラバリ中佐から連絡が入った。
「失礼致します!お話は聞きました。
一部の宙兵隊であれば急がせれば1時間……いえ、45分でギリギリ間に合います!」
それは朗報であった。かなり無理をしているだろうが、ことは一刻を争う。
だが45分……おそらく数個のポッドは爆発するだろう。
となると、手は一つ……。各巡航戦艦に乗せられた予備の宙兵隊。彼らを回収作業に駆り出すしかない。
だが、下手したらシンディックエイリアンが巡航戦艦で暴れるかもしれない。
それに、十分な防疫対策の装備は各巡航艦の宙兵隊には配備しきれていない。
最悪、船員がシンディックの救命ポッドからの病原菌で汚染される可能性がある。
「司令長官!どうか、許可をお願いします!あの救命ポッドを回収する許可を……今にも爆発しそうです!おそらく45分も持ちません!」
ギアリー司令長官は深呼吸をした後、ブラダモンド大佐に回収の許可を出した。
どうか、あの救命ポッドが罠でありませんように……。爆発などしませんように。
ギアリーはこの決断が正しかったのか、救命ポッドが回収される直前まで悩み続けた。
【あるシンディックの軍人目線。】
俺が乗っている救命ポッドは今にも爆発しそうで、火を吹いている。
恐らく自分は死ぬだろう、そんな確信があった。
だが、ポッドが爆発する前に先ほどまで戦っていた敵の軍艦……。
銀河帝国の艦隊と思わしき船が、このポッドに近づいた。
「ラップ少佐!帝国が近づいてきます!ど、どうしますか!わ、我々は……こ、交戦準備はできています!」
俺の部下が震える声で、ハンドブラスターを握りしめて言う。
部下達は戦闘によって心に深い傷を……人によっては実際に肉体にも傷を負い弱っていた。
それだけ、あの完膚なきまでの敗戦は皆を弱らせたのだ。
「いや……ここは降伏するしかない。それが最も生存確率が高い方法だ。俺にはお前達生きて故郷に返す義務がある……。無駄死にさせるわけにはいかない。
帝国が200年前と違って、道徳精神に目覚めていることを祈ろう。」
俺はそう部下を落ち着かせた後、懐から婚約者の……ジェシカの写真を取り出した。
(お前の言う通り、こんな仕事辞めておくべきだった。)
そして俺はその写真を再びしまった。
帝国の船が救命ポッドを大急ぎで回収して、まるで台風の中のヨットのように激しく揺れる。
そしてポッドが回収された後、急いでハッチを開けて俺たちは帝国の艦に移った。
どこか俺はこの艦に乗った後、金髪の偉そうな一目で貴族とわかる着飾った軍人が帝国語(友人が言うには歴史的にドイツ語?とからしい)で勝ち誇って何かを喋りかけてくると思っていた。
だが、俺達を出迎えたのは金髪じゃなくて茶色毛をしていた。
そいつは着飾った服どころか、服なんて着ていなく、全身が体毛に包まれていた。
そしてドイツ語ではなく「ニャーニャー」言っていた。
そいつはそもそも人間ですらなかった。
大体150cmくらいの二足歩行をした猫だった。
……は?
俺は何があったのか必死で考えた結果、最悪の結論に至った。
俺達の国が帝国だと思って戦ってたのは、全然無関係のエイリアンだった。
俺たちの国は……見た事もないエイリアンに全面戦争をふっかけた……?
その恐るべき最悪の事実に気がついた俺は、思わず声にもならない大声を叫び、緊張やら恐怖やら救命ポッドの回収する際の揺れで、思わず嘔吐した後、そのまま気を失ってしまった。
これがこの俺、ジャン・ロベール・ラップ少佐が体験した、宇宙人、猫族とのファーストコンタクトだ。
ヤン・ウェンリー著
『にゃんこ王国史第21巻』
コーネフ=フェザーン出版社
139P
より引用