【『レイヴン』】
にゃんこ王国のエイリアン対策室の室長(トップ)。
翻訳機の開発者である事や、エイリアン研究の専門家である為に、他の猫よりも遥かに上手くシンディックとの会話ができている。
【ラップ】
シンディックの少佐。
『レイヴン』との会話を行う。
もし故郷に帰れたら、婚約者と結婚すると誓っている。
【ロジェロ】
シンディックの大佐で艦長を務める。
『翻訳機』を通して語彙を増やす作業を行う。
【ブラダモンド大佐】
にゃんこ王国の大佐。
今にも爆発しそうな救命ポッドを回収して、ラップ少佐やロジェロ大佐を助けた。
【レイヴン】視点
エイリアン対策室室長を務める【レイヴン】と呼ばれる黒猫の貴族は、宇宙シャトルに乗っていた。
彼はシンディックの救命ポッドを回収した、ブラダモンド大佐が指揮を取る【巡航戦艦ドラゴン】を目指していたのだ。
現在の王国艦隊では政府の高官も参加する艦長会議が開かれていたが、【レイヴン】はそれに参加することよりも直接シンディックエイリアンとコミュニケーションをとり相互理解を深めることを優先したのである。
【レイヴン】はシンディックエイリアンを回収した巡航戦艦に乗る士官と通信を試みた。
「こちらは【レイヴン】、夷狄の調査は如何に?」
巡航戦艦の士官は【レイヴン】の古風な喋り方に戸惑いつつも、現在の状況を説明した。
「は!現在、確保したシンディック個体に対して【レイヴン】室長が開発した『翻訳機』を用い、現在ブラダモンド大佐が意思疎通を図るべく調査を行なっています。」
「ふむ……あの艦長が直々に夷狄の調査の指揮を取っていると?」
「いえ、ブラダモンド大佐は確保したシンディックエイリアンには高位の指揮官……おそらく艦長?と思われる者もおりまして、階級的にブラダモンド大佐が交渉……いえ、コミュニケーションを行なっております。」
「ふむ……」
【レイヴン】はその話を聞いて少し考えた後、シンディックの様子を尋ねた。
「それで、夷狄の現在の様子はどのような物でおじゃるか?捕らえた直後は激しく動揺していたと聞いたが……」
「彼らのパニックはある程度治ったようですが、目に見えて衰弱しています。
彼らは病気に感染しているのかあらゆる個体に脱毛症状が見られ、露出されている肌の部分は血の気もなく、見るからにぐったりとしています。
個体によっては艦に救出された直後に、床に嘔吐をして気絶する個体もいました。」
士官がそう報告した後、シンディックエイリアンの最新の動画が【レイヴン】に送られた。
そのエイリアンは体の一部分を何らかの素材(調査の結果、シンディックエイリアンとは別の種族の遺伝子が確認された)で覆っている。
士官は病気による脱毛症状が見られると説明していたが、毛が生えていない場所……というか逆に毛が生えている部分はほぼ全ての個体で共通していた。
映像のシンディック個体達は、見るからに明らかに元気がなく体調が悪そうだが、これはどちらかというとウィルスなどのではなく、精神的な影響であると【レイヴン】は感じた。
それを見て【レイヴン】は一つの仮説を立てた。
(ふむ……これはこのシンディックエイリアン達が全て同じ病気に罹っているのではなく、元々彼らは体毛が体の一部にしか生えない種族なのでは?
士官は彼らの元気の無さを病気だからと推測していたが、知的異星種族に捕えられた事による極度のストレスや絶望感が原因の可能性も考えられる。
あの嘔吐したシンディックエイリアンも、我々猫族を確認した途端に取り乱していた……。
やはり、彼らは我々を……【にゃんこ王国】を別の存在と誤解したまま戦闘を開始したのではないか?
そしてその誤解に気がつき、激しく動揺している可能性があるな。)
【レイヴン】には最早、心の中で貴族言葉を使う余裕すらなかった。
それほど彼は、シンディックエイリアンの正体を探るのに熱中していたのである。
そして【レイヴン】はシンディックを回収した巡航戦艦に移乗して、実際に話してみる事にした。
【レイヴン】はこの対エイリアン用翻訳機の開発者である。翻訳機というよりは、コミュニケーションを取るための言語学習装置であり、超高性能な辞書機能付きコンピューターに近いかも知れない。
そして【レイヴン】は慣れた肉球捌きで翻訳機を動かし、ガラス越しに目の前のシンディックと会話を試みた。
このシンディックはブラダモンド大佐が話している、艦長クラスのシンディックとは別……艦長より少し階級が低いのかもしれない。
士官曰く、猫族の姿を見るなり咆哮をあげて嘔吐し気絶したが、気絶から回復し目覚めると、コミュニケーションの為に不在となった艦長の代わりに何やら指示を出していたようだ。
他のシンディック達からは慕われているのか、彼が気絶している間は他のシンディックににより甲斐甲斐しく介抱されていたようだ。
艦長クラスのシンディックからも、彼を気にかけている素振りが確認された。
これらの事から【レイヴン】はこのシンディック個体を、
・艦長に準ずる地位の指揮官
・階級こそ低いが貴族的な存在
・シンディック達の中で私的に友好関係を築いている個体
これらのいずれか、あるいは全てを満たすのではないかと考えた。
すくなくともこの個体は、同族と友好的な関係を築けるだけの最低限のコミュニケーション能力は保証されていると思われる。
【レイヴン】は緊張を感じつつも、シンディック個体との会話を始めた。
【レイヴン】とシンディックエイリアン(ラップ)との会話ログ
【レイヴン】:猫、話、欲しい、よい?
シンディック個体:よい
【レイヴン】:私、話す、猫、指揮官、貴方は?
シンディック個体:私、士官、名前、ジャン
20秒の沈黙
シンディック個体:私、士官、ジャン・ロベール・ラップ、私、ラップ
【レイヴン】:了解、私、レイヴン
シンディック個体→ラップ:レイヴン?カラス?黒い?から?
少し沈黙
【レイヴン】:はい、黒い、同じ、私、レイヴン、カラス、猫だけど
ラップ:はい
このシンディック個体……『ジャン』というの名前を聞いた時、私は動揺した。
王の名前……ジョンと似ていたからだ。
最初はシンディックエイリアンがこちらの情報を深く知り、プレッシャーを与える為にこちらの王の名前を名乗ったと思ったが、どうやらそうではなく、彼がたまたま似た名前をしていたという偶然のようだ。
彼はその後にジャンロベールラップと名乗ったことから、名前の一部が偶然一致したと思われる。
【レイヴン】:質問、調子、どう?
ラップ:少し、良くなる、まだ良くない、辛い、ごめん、
【レイヴン】:体、心、どちら、よくない、もっと?
ラップ:心、家、行きたい、猫、戦う、ごめんなさい
【レイヴン】:ごめんなさい、何故?
ラップ:間違える、猫、戦う、よくない、シンディック、異なる、戦う、間違える、ごめん
【レイヴン】:シンディック、戦う、よい、何?
ラップ:鉄、光る、木、王様、異なる、シンディック、群れ、よくない、戦う、
少し間を置く
ラップ:シンディック、王様、いない、シンディック、王様、異なる、群れ
【レイヴン】:シンディック、仲良く、猫、欲しい?
ラップ:シンディック、猫、仲良く、欲しい、ごめんなさい、間違えた、戦い
この『ラップ』という個体が主張するに、シンディックは何らかの敵と戦っていて、こちらへの攻撃は誤解による物だということを訴えている。
『鉄、光る、木、王様』……これが何を意味するのかは不明だ。
『シンディック、王様、いない、シンディック、王様、異なる、群れ』
これもよく分からない。王が死んだことで混乱しているということか?
それで指揮系統の混乱から、我々に攻撃した?
誤解でこちらに攻撃したという主張が正しいとすると、もしかしたらその誤解を解けば和平への道が十分あり得る。
だが、王様……彼らのトップが不在となると、非常に話は厄介だ。交渉相手となる代表が居なければ、和平は困難になるだろう。
慎重に気を使いながら、シンディックの王についてを確認を行う。
【レイヴン】:シンディック、王様、いない、なぜ?
ラップ:シンディック、群れ、王様、いない、ずっと
ラップ:シンディック、全て、話す、仲良し、王様、異なる、偉い、シンディック、複数
ラップ:偉い、シンディック、王様、異なる、良い、シンディック、
【レイヴン】:ラップ、シンディック、偉い?
少し沈黙
ラップ:ラップ、偉い、少し、異なる、
ラップ:ラップ、話す、仲良し、共に、偉い、シンディック、
どうやらシンディックは王はいないが、王に相当する存在が複数いるようだ。
講和を行う際の代表が存在するかを確認したかったが、どうしても政治という抽象的な概念になり、ごく短時間で『翻訳機』で説明するのは難しい単語となる。
だが、ラップの話し方からするに『仲良し』、『話す』などの単語から寡頭制……もしくは、民主制隊の可能性を示唆している。
シンディックの敵について「王」という単語を強調している事から、政治体制の問題で対立しているのだろうか?
下手に政治的な話をして、こちらにネガティヴな印象を持たせたくはない。
だが、それでも念の為に今後の防衛にも関わる事なので、ラップに確認しておく事にする。
【レイヴン】:シンディック、敵、鉄光る木、何?
ラップ:鉄光る木、敵、群れ、仲良くない、シンディック、今、流れる、前、前、前、良くない
【レイヴン】:前?
ラップ:今、前、流れる、前、シンディック、群れ、動く、鉄光る木、離れる、離れる、離れる
【レイヴン】:鉄光る木、シンディック、戦う、今?
ラップ:鉄光る木、離れる、離れる、戦う、異なる、今、
ラップ:鉄光る木、戦う、シンディック、群れ、後、後、後、
ラップ:シンディック、猫、見た、鉄光る木、間違えた、ごめんなさい
ラップ:シンディック、鉄光る木、見てない、ので、猫、間違えた
この『鉄光る木』という存在についての説明はとても興味深い。
『前』『今』『後』、これらの単純な概念を使いつつも、このラップというシンディックの個体は少ない語彙でありながらも、何とか我々に解説を行おうとしている。
『今』と『前』の組み合わせは過去だろうか?
とすると『今』と『後』は未来と解釈できる。
シンディックは『鉄光る木』と呼ばれる群れ……国などに所属したが、対立して別れたのだろうか?
そして『鉄光る木』と再び出会い戦争が起こると考えている。
ラップは「シンディック、『鉄光る木』、見てない、ので、猫、間違えた」と主張している。
となるとシンディックと『鉄光る木』は数世代分交流がないのだろうか?
シンディックエイリアンは『鉄光る木』なる勢力の存在を主に警戒しており、それ以外の知的異星種族との出会いを考慮しておらず、猫族を『鉄光る木』と誤認し先制攻撃を仕掛けた。
このような考察が思い浮かんだが、これが正しいかどうかは不明だ。
自分は無意識的な願望から、最もスムーズに講和が出来る展開を思い描き、それにラップの発言を当てはめているのかもしれない……。
そもそも、この『翻訳機』をシンディックが本当に正しく使いこなせている保証はない。
まだシンディックはこの翻訳機を手に取ったばかりなのだから……。
もしかしたら、意思疎通において多くの語彙の間違った運用がある可能性も考慮すべきである。
シンディック視点
ジャン・ロベール・ラップ少佐は黒猫の異星人との、謎の機械を用いた長時間のコミュニケーションを終えた後、捕虜となった彼の仲間が居る部屋に帰された。
その部屋には不安そうな表情で怯える仲間達や、彼が乗っていった船の艦長であるロジェロ大佐がいた。
ロジェロ大佐はラップ少佐が猫型宇宙人を見たショックで気絶した後、ラップ少佐より先に猫型宇宙人側の艦長とコミュニケーションを取っていたようだが、先に戻っていたようだ。
ラップ少佐はロジェロ大佐に敬礼をし、ロジェロ大佐もそれに返礼した。
「ジャン・ロベール・ラップ少佐、ただいま戻りました。
その……大事な時に気絶してしまい、本当に申し訳ありません。」
「いや……それは仕方ない。なにぶん帝国の捕虜になると思ったら、未知の宇宙人との予期せぬ遭遇をしたんだ。気が動転するのも無理もない。」
ラップ少佐とロジェロ大佐、2人にはかなりの疲労が見えた。
何せ全く未知の宇宙人とのファーストコミュニケーションをさせられているのだ。
しかも、こちらは猫族軍を帝国軍と誤認して先制攻撃を仕掛けた形であり、彼ら猫達からの第一印象は地の底レベルだろう。
ラップ少佐とロジェロ大佐は何とかここから、人類と猫族の相互理解を進め印象を改善する為に、全身全霊を注いで猫族との会話をしていた。
そしてラップ少佐はロジェロ大佐と先ほどの黒猫とのやり取りを話した。
「ロジェロ大佐、私は黒い猫に色々質問されました。
彼らは何故我々が、猫達を攻撃したのかを気にしているようです。」
「そっちはそんなに話が進んだのか?
俺の場合は、もっと基本的な俺たちや猫達の言語や語彙についての話がメインだったが……。
そうか、あの猫達は言語学習と我々の意図の確認を並行して行なっているのか。」
2人そのようなが話をしていると、ラップ少佐から腹がなる音がした。
無理もない、捕虜になり目が覚めてから彼はほとんど飲まず食わずで猫族とのコミュニケーションを取っていたのだ。
ロジェロ大佐は申し訳なさそうに、ラップ少佐に伝えた。
「腹が減っているのか……。すまないが食事は一人前ではなく規定の半分で我慢してくれ。
なにぶん、食事が手に入る当てがないからな。」
「あ、当てがない?……猫族は捕虜に食料を供給していないのですか?」
「いや……彼らは我々に対して食料を出すつもりはあるのだが……。
彼らは我々が何を食べるのかを把握してないんだ。
どういう事情か知らんが、猫達は俺らを何故か牛などの草食動物だと考えていたらしい。
そのせいで最初、猫達は死ぬほど申し訳なさそうな顔をしながら干し草?を出してきた。
俺がそれを断ると、どのような物が食べられるのか?という話になったんだ。
だが、それについては医学や栄養学に関する知識の擦り合わせから始めないといけないんだ。
だからそこの問題が解決するまで、この救命ポッドの食料で間に合わせるしかない。」
ラップ少佐はそれを聞いて気が滅入った。
猫族とそれなりに会話らしいものをしてみたが、単語を無理に繋ぎ合わせたツギハギのような覚束ない内容だった……。
宇宙人との最初の会話にしてはかなり上出来かもしれないが、それでもまともな食事が出る前に、餓死する可能性もあるだろう。
ラップ少佐は気を紛らわす為にも、ロジェロ大佐と猫族の話を続けた。
「それで……ロジェロ大佐の方は猫族とどのような会話をしたのですか?」
「ああ、こっちの方はまず『翻訳機』の使い方の話から始めた。
大体の使い方がわかると、それからは『翻訳機』が表示する画像に映った色々な物に、片っ端から俺たちの言葉で何と呼んでいるのかを文字や音声で入力して、お互いの語彙を増やす作業が中心だった。
宇宙船の画像が出てきたら、宇宙船と入力したりな。
ある程度単語などの語彙を入力したら『ブラダモンド』と『翻訳機』を通して喋り、
その後でまた語彙を増やす作業をして、また『ブラダモンド』と話して……。そんな感じだ。」
ロジェロ大佐は『ブラダモンド』という単語を口にするたびに、どこかうっとりとした表情をしていた。
「『ブラダモンド』とは?」
「え?あ、ああ、俺が話をしている猫族の女性の名前だ。
彼女が言うには『ブラダモンド』は俺と同じらしい。何が同じなのかはよく分からないが、多分俺に親しみを感じてくれてるんじゃないかな。
彼女は……『ブラダモンド』は素晴らしい女性だ……。」
ロジェロ大佐はどこか心ここに在らずという、どこか間の抜けた表情で『ブラダモンド』という猫を思い出しているらしい。
「『ブラダモンド』……いい響きだ……。それに、彼女は優しくて、美しくて……『ブラダモンド』……」
ラップ少佐はロジェロ大佐も、自分と同じように窮地のせいで疲れているのだろうと考えて、生暖かい目で見守った。
ラップ少佐は自分も猫族に捕まった時、衝撃のあまり叫んで嘔吐し気絶してしまったことを忘れていなかった。ロジェロ大佐はその話に触れず、自分に気を遣ってくれたではないか。
ラップ少佐はロジェロ大佐の『ブラダモンド』なる猫への恋慕を、決して冗談のタネなどにすることはなかった。
ラップ少佐はその後、再び黒猫と『翻訳機』を用いて会話をすることになった。
だが、その時の会話はラップ少佐が予想するものとは遥かに異なる物であった。
黒猫はラップ少佐を仲間の元に返すと言い出したのだった……。
【レイヴン】:レイヴン、ラップ、話す、欲しい、良い?
ラップ:ラップ、話す、良い
【レイヴン】:猫、ラップ、他、返す、シンディック、欲しい、良い?
ラップ:ラップ、シンディック、返す、欲しい、良い
ラップ:ラップ、シンディック、返す、どのくらい、後?
【レイヴン】:猫、ラップ、返す、シンディック、今
ラップ:今?
【レイヴン】:ラップ、他、今、返す、シンディック、
【レイヴン】:猫、宇宙船、動く、シンディック
【レイヴン】:猫、宇宙船、同じ、場所、シンディック、宇宙船、後
【レイヴン】:猫、宇宙船、出す、ラップ、他、シンディック、後
【レイヴン】:シンディック、宇宙船、取る、ラップ、他
【レイヴン】:シンディック、宇宙船、ラップ、他、シンディック、返す
ここまでの会話でラップ少佐は困惑した。
猫族は自分たちを返すつもりなのか?
いや、よく考えれば彼らも自分たちの扱いに困っているのだろう。彼らは自分たちを草食動物と誤解していて、十分な食事すら用意するのにすら戸惑っている。
それを考えると、捕虜を返還して死傷者を最小限に抑えようとしているのだろうか?
ラップ少佐は、自分やロジェロ大佐、他の仲間達に対する扱いが礼儀正しい物であったことから、猫族はかなり理性的な存在で話が通じるのかもしれないという期待を抱いていた。
だが、まさか捕虜返還を試みるとまでは思っていなかった。
目の前の黒猫は、『翻訳機』を用いて言葉だけでなく、映像なども使用してラップ少佐たちを猫の救命ポッドに入れた後射出して、ラップの仲間に回収させようとしていることを説明した。
ラップ:それ、良い、シンディック、仲間、助ける、ありがとう
ラップ:猫、ラップ、仲間、返す、数?
【レイヴン】:ラップ、仲間、返す、今、移動、後、返す
ラップ少佐は何人の捕虜が変換されるかを聞きたかったのだが、時間を聞かれたと誤解されたようだ。
ラップ少佐は頭を捻りつつも、もう一度黒猫に尋ねた。
ラップ:猫、ラップ仲間、数、連れてく、猫の家?
ラップ:ラップ仲間、帰らない数?
ラップ:猫は知りたい欲しいシンディック、多分猫は連れてくラップ仲間少し、連れてく仲間どれくらい?
少し沈黙した後、黒猫は返答した
【レイヴン】:猫知りたいシンディック、でもラップ仲間返す全部
ラップ:……全部?ラップ仲間全部?
【レイヴン】:全部!返す仲間全部!連れてくシンディックない!
ラップ少佐は困惑した。猫族は全ての捕虜を返還するつもりなのか!?
何かの誤解ではないか?普通は調査の為に何人かは捕虜として連れて帰り、情報収集をするはずだろう……。
彼ら猫は自分たちに興味がないのか?
ラップ:ラップわからない……。
ラップ:ラップはシンディック返す良い、ラップ仲間全部返す良い、良い良い
ラップ:猫はシンディック知る欲しくない?
【レイヴン】:猫はシンディック知る欲しい、シンディック知るない良くない、良くない
【レイヴン】:猫はシンディック仲良く欲しい、シンディック仲間大切、大切、シンディック仲間返すないは良くない
【レイヴン】:猫の王様欲しいシンディック仲良く、今猫シンディック戦う良くない
【レイヴン】:シンディック仲間返す良い、シンディック猫仲良く後、猫シンディック戦うない後、それ良い良い、良い
ラップ:ありがとう、ラップ感謝猫、シンディック猫仲良く、ラップも欲しい
【レイヴン】:レイヴン感謝ラップ、ラップ話す良い、シンディック知る良い、レイヴンラップ話す後
ラップ:話す後、良い
【レイヴン】:話す後、良い
こうして歴史的な2つの文明の、最初のコミュニケーションが終わった。
ロジェロ大佐やラップ少佐、その他の捕虜は全てタルタロス星系にて救命ポッドに乗せられた。
そして彼らが乗る救命ポッドは無事に仲間に回収されて、捕虜達は故郷に帰還したのである。
猫の異星人が作った救命ポッドや、捕虜がお土産に持ち帰った猫族の食料、そして『翻訳機』と共に……。
当時の学者の間では、この『翻訳機』が最も猫族達との和平に貢献すると考えられていた。
しかし、当時のジャーナリストやロマンチストは『翻訳機』以上に和平に貢献する物があるとと考えていた。
それは猫族の友好的な振る舞いに感銘を受けた、元捕虜の軍人やその家族や友人達、それに感化され民衆の平和を望む声である。
猫族の公正な捕虜への扱いのエピソードや、猫の王による平和を求める演説の映像(猫族とのコミュニケーションや翻訳機のおかげで猫語の解読が進んだことにより、演説内容の解読も進んだ)、これらは民衆の心を掴み、猫族との戦争中止を求める大規模な反戦平和運動へと繋がったのである。
その運動の参加者の中には、猫族から解放された元捕虜のジャン・ロベール・ラップ少佐や、その妻となるジェシカ・E・ラップ夫人の姿もあった……。
こうして、最悪の出会いから始まったファーストコンタクトは、和解への道を急速に、光よりも速く歩み始めたのである。
スーパーイベント:反戦平和運動の高まり
条件:シンディック(???)において、にゃんこ王国との友好的な平和運動が高まる