宇宙猫文明ダイス(テスト)スレ・小説版   作:フィークス2号

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間話 シンディック指揮官とラップの再会

 

登場キャラクター紹介

 

【『シンディック指揮官』】

多分今が人生で一番必死に働いている。

この仕事が終わったら、結婚して趣味に生きると決心してる

 

【ラップ少佐】

『シンディック指揮官』の親友。

この後、婚約者と生きて再会して結婚した。

後に彼らの艦隊が危機的状況に陥ったのは、彼が結婚を目前に控えていて死亡フラグを立てたからだとネタにされた。

 

【副官】

『シンディック指揮官』の副官。

『シンディック指揮官』が大好きすぎて軍に入ったという噂。

 

 

 

 


 

 シンディック指揮官は疲れ果てていた。

 彼はとても手強い敵……それも恐らく未知の宇宙人と戦い、多くの仲間を失った直後であった。

 その仲間の中に、彼の親友も含まれていた。

 

 この宙域にいる傷ついたシンディック軍は、本国からの増援で、なんとか敗北する前の規模まで戻った。

 

 変化と言えば、複数あった。

 この新たな補充部隊を含む3個艦隊の指揮を、この『シンディック指揮官』が最高司令官を務めることになった事。

 そして、彼の血気盛んな部下が仲間の救出を求め、もう一度あの手強い敵と戦うことを求め、その要求を拒否する仕事を彼が……この『シンディック指揮官』がこなす必要があったこと。

 それと彼の好物である、ブランデー入りの紅茶の消費量がほぼゼロになった事だ。

 

 『シンディック指揮官』は彼の同居人に、何度も酒類の摂取を控えるよう文句を言われていた事を思い出した。

 

 (もし、あいつにいい報告ができるとするなら、それだけかな……)

 

 そこまで考えて、『シンディック指揮官』はまだ冗談を思いつけるな程度の元気があるならまだ自分は余裕はあると前向きに考える事にした。

 

 そんな時、シンディックの女性が彼の部屋に駆け込んできた。

 このシンディックの女性は彼の副官であった。

 

 「提督!大変です!」

 

 副官が息を切らしてやってきたのを見て、『シンディック指揮官』は言った。

 

 「何を慌てているんだ?世の中には慌てたり叫んだりするに足りるようなことは何もないぞ」

 

 「彼らです!その……先ほど戦った帝国、いえ、『例の艦隊』が戻ってきたんです!」

 

 「なんだって!?」

 

 その話を聞いて、『シンディック指揮官』は慌てて叫び、自分の発言が間違いだった事を証明した。

 

 


 

 シンディック艦隊、旗艦の艦橋にて

 

 『シンディック指揮官』は先ほどまで戦っていた宇宙人の『例の艦隊』……シンディックの大半は、彼らの敵である『帝国艦隊』と思い込んでいる船団が、このタルタロス星系を航行する姿をモニター越しに見ていた。

 

 (おかしい……彼らが『帝国軍』であれ、『未知の宇宙人』の艦隊であれ、この星系に戻る理由がないはず……。

 兵站の限界から帰還すると思っていたが、読みが外れたか?

 ……ともかく、もしあの艦隊がこの星系に留まるなら、あいつを……『ラップ』を取り戻せるか?

 いや、そう期待させてこちらの動揺を誘うのが目的か?

 ここでもし彼らに釣られないでいたら、仲間を助ける機会をみすみす逃したとして兵の士気が下がる……。)

 

 そこまで考えてから、『シンディック指揮官』は頭を掻いて呟いた。

 

 「なるほど……それが狙いか。敵が最も嫌がる事をするのが戦争というのは、どうやら普遍の法則のようだ。」

 

 「提督、今なんと?」

 

 それを聞いた彼の仲間の軍人は、思わず聞き返した。

 

 「いや、何でもない。」

 

 『シンディック指揮官』は、敵がこちらを挑発し、挑発に乗らなければ仲間を見捨てたという構図を作る。

 そのような策に出ている事を、わざわざ口に出そうとは思わなかった。

 

 

 

 しかし、ここで『例の艦隊』は予想外の行動に出る。

 何らかの小型艇……いや、救命ポッドを大量に射出したのだ。

 

 「あれは……もしや先ほどの戦いで捕えられた仲間が乗っているのでは!?」

 

 「そんなわけ無いだろう、何であいつらが捕虜を返すんだ?理由がない」

 

 彼の部下がそう言い合ってる間、『シンディック指揮官』は一つ心当たりがあった。

 『シンディック指揮官』は『例の艦隊』が守る星系、フェザーン星系で戦った際にボロボロになった空母を囮にして、敵が突入する直前で爆薬(ゼッフル粒子)にミサイルで火をつけて大爆発させた。

 

 恐らく、『例の艦隊』はその意趣返しでこの救命ポッドを送りつけたのではないか?

 そして自分たちがその救命ポッドを回収しようと近づいた途端に……ドカン!

 それが『例の艦隊』の狙いではないか?

 

 そこまで考えていると、シンディックの参謀の一人が報告した。

 

 「救命ポッドから光が……光が放たれて点滅しています!

 光でモールス信号を打っているようです!」

 

 「へぇ……それで内容は?」

 

 「えっと……基本的に『SOS』を繰り返していましたが、中にいくつか長文を送っているポッドもあります。

 

 !?ら、ラップです!

 救命ポッドの一つは自分が『ラップ少佐』だと名乗っています!」

 

 「…………」

 

 

 『シンディック指揮官』は、人生で最も苦悩する選択肢を迫られていた。

 

 


 

 「『コチラ、ラップ、

 アレ、テイコク、チガウ、

 ネコウチュウジン、タタカウナ、」』

 

 シンディックの参謀が解読したメッセージは以下の様な内容であった。

 

 「『テイコク、チガウ』……。

 あれはやはり、提督が仰るように銀河帝国ではなかったようですね。」

 

 「しかし、『ネコウチュウジン』って何だ?

 『例の艦隊』はネコが指揮をとってるのか?」

 

 部下が話し合っている間、『シンディック指揮官』は悩み続けていた。

 

 200年以上前に別れた、今も存在するかどうかも分からない国家と間違えて、全く未知の宇宙人と戦争を始めた……。

 この問題を政治家が解決出来るかどうかはともかく、今の『シンディック指揮官』にとって重要なのは、この『救命ポッド』をどう扱うかであった。

 

 本当にあの救命ポッドに『ラップ少佐』が乗っているかどうかは分からない。

 『ラップ』という名前を聞き出した後に、自動で点滅する光を放つ機会を乗せた可能性もある。

 そもそも、救命ポッドの中に『ラップ少佐』が本当に乗っていたとしても、爆弾という好ましくない同乗者も乗っている可能性もあるのだ。

 

 『シンディック指揮官』が判断を下せずに迷っていると、『ラップ少佐』が乗っていると思わしき救命ポッドは新しいモールス信号を打ち始めた。

 

 「『ネコ、ユウコウテキ、

 ホンヤクキ、モッテカエッタ、

 カイシュウ、タノム』」

 

 「翻訳機だって?そんなモノを開発できる程に、あの宇宙人の艦隊は高度な技術を持っているのか?」

 

 そう『シンディック指揮官』が呟くと、参謀がまた新しい報告をした。

 

 「提督!例のノイズです!恐らく、あの『例の艦隊』からの通信かと……」

 

 『シンディック指揮官』は、もし報告が来るなら今のタイミングだと予想し、他の仲間にも伝えていた。

 その予想はドンピシャのタイミングだった。

 

 「提督の予想した時間とピッタリだ!

 一体、なぜ分かったのです?」

 

 「ちょっとした手品さ」

 

 『シンディック指揮官』は紅茶を飲みつつ、向こうの救命ポッドや『例の艦隊』がFTL通信が出来ないことを確信した。

 

 

 そして遂に、シンディック指揮官の艦隊が助けに来ないで動かない事に、

 『救命ポッド』が痺れを切らしたのか、

 『ラップ少佐』を名乗るポッドは新しい三つ目のモールス信号に切り替えた。

 

 「『ムダメシグイ、ゴクツブシ、ハヤクタスケロ、

 ジェシカニ、イイツケルゾ』」

 

 『シンディック指揮官』は、ここでようやく彼のあだ名や、ラップ少佐の婚約者の名前が出た事で、あのポッドに本物のラップ少佐がいると確信して、救出作戦を決意した。

 

 

 


 

 「もう一度確認するが……本当に何も罠が無かったのかい?」

 

 『シンディック指揮官』は部下の精鋭部隊の指揮官、シェーンコップに尋ねた。

 

 「ええ、少なくとも我々が見抜けるレベルの罠が無いことは確かですな。

 提督、他の部隊にも確認させますかな?」

 

 「いや、結構。君たちが見抜けないレベルの罠を、他の部隊に見つけられるとは私も思わないよ。」

 

 その後、シンディックの精鋭部隊は『例の艦隊』から射出された救命ポッドを開き、ジャン・ロベール・ラップ少佐を降ろした。

 

 ラップ少佐が乗ってきた救命ポッドには、宇宙人が作った超強力な照明装置や謎の機械(後に翻訳機と発覚)などもあった。

 しかし、毒物や爆弾類などの罠の類は一切なかった。

 

 そしてラップ少佐はポッドから降りて船に乗った途端、『シンディック指揮官』との通信を求めた。

 

 「大至急アイツを呼んでくれ!

 モールス信号で伝えたけど、端折りすぎてて何も伝わってないだろう!

 だけどどうしても伝えなくちゃいけないんだ!」

 

 「慌てなさんな、ラップ少佐殿。

 提督さんはあんたと話したくて仕方がないそうで、既に話す準備は万端だそうだ。」

 

 そう言うと精鋭部隊の一人が通信機をラップ少佐に渡した。

 

 その通信機にはすでにラップ少佐が最も話したい相手である、『シンディック指揮官』に繋がっていた。

 

 「やぁ、ラップ、おかえり。酷い慌てようだなぁ、まるで宇宙人に攫われたみたいだったぞ。」

 

 『シンディック指揮官』は本当にラップ少佐が、宇宙人に囚われていたと予測していたが、いつもの調子で冗談混じりに言った。

 

 「ああ!そうなんだ!いいか、よく聞いてくれ、大切なことだと……!

 

 あの艦隊は帝国じゃない!宇宙人だ!

 

 そのラップ少佐と『シンディック指揮官』のやり取りを見ていた士官の一人が言った。

 

 「ラップ先輩の帰還第一声の報告……何も情報量増えてませんね」

 

 「いいや、少なくとも彼が無事だという情報が増えたよ。」

 

 ラップ少佐と自分の後輩である士官が漏らした言葉に、『シンディック指揮官』は機嫌が良さそうに返した。

 

 

 そして『シンディック指揮官』は、全ての救命ポッドを回収した後に、『例の艦隊』は……宇宙人は一切の罠など仕掛けておらず、全ての捕虜を無事に自分たちの元に返してくれたことを理解した。

 

 宇宙人は善意に基づいて、紳士的に捕虜の返還を自発的に行ってくれたのだ。

 

 そして、『シンディック指揮官』は頭を掻いて呟いた。

 「どうも勝つことばかり考えていると、人間は際限なく卑しくなるものだなぁ」

 

 それは相手の善意の行動を疑い続けてしまった、『シンディック指揮官』自身に向けた言葉であった。

 

 

 そして『シンディック指揮官』はラップ少佐に頼んだ。

 

 「お願いがあるんだ、ちょっと『例の艦隊』……猫の宇宙人にメッセージを送りたくてね。

 その帰ったばかりで悪いが、大至急メッセージを作る為に手伝って欲しいんだ」

 

 そしてこの後、この『シンディック指揮官』は彼の国で初めて宇宙人と通信し会話を行った人間となるのであった。

 

 

 

 そして『シンディック指揮官』はラップ少佐や他の解放された捕虜と協力した後に、『例の艦隊』を率いる猫型宇宙人が作成した、コミュニケーションのための言語学習機能のついたコンピューター……『翻訳機』を使用して感謝のメッセージを作成した。

 

 

 しかし、その文章は語彙の少なさなどから稚拙な文章であり、作成した本人である『シンディック指揮官指揮官』ですら

 

 「うーん、我ながら酷い出来だ。

 士官学校で楽をする為に手を抜いた作文を作ったことはあるが、それでもここまで酷くはなかったんだがなぁ。」

 

 と評するレベルの代物であった。

 

 そして『シンディック指揮官』はその感謝の文を猫型宇宙人が率いる『例の艦隊』に送信し、艦隊にシールドを解除させた後に彼は返信も待たずにそのまま仮眠をとってしまった。

 

 

 

 

 


 

 その後、猫型宇宙人が率いる『例の艦隊』は『シンディック指揮官』が作成したメッセージに一切返信をせずにタルタロス星系を去った。

 

 その光景を見ていたシンディックの軍人達は不安げな表情を浮かべた。

 

 「やっぱり、あのメッセージが変すぎたのかもな。

 ただでさえ言葉が拙くて変なの のに、あのメッセージを考えたのが変人の先輩だからなぁ。

 二重に変だから一周回って真っ当になることを期待してたんですけどねぇ。」

 

 毒舌気質な後輩の士官が、冗談混じりに呟いた。そうやって気を紛らわさなければ、やっていけないという部分もあっただろう。

 

 そしてその猫型宇宙人の『例の艦隊』が去ってから1時間後に、『シンディック指揮官』は呑気に艦橋に戻ってきた。

 

 「ふぁ〜。もうちょっと寝たかったけど、返信が待ち遠しくてついつい起きてしまったよ。

 私が自力で睡眠を中断するなんて、きっと故郷は豪雨が降ってるに違いないね。」

 

 そんな『シンディック指揮官』に対して、副官の美しい女性は紅茶を渡しつつ申し訳なさそうに言う。

 

 「その閣下、残念ですが……彼らは、『例の艦隊』はメッセージを残さず去ってしまいました。」

 

 「そうか、猫達の方も戦場にうんざりして家に帰ったらのかな?

 でもまあ、彼らが帰ったからと言って返信が来ないと決まったわけじゃないからね。

 

 後30分ほど返信を待つとしようか。」

 

 もう猫型宇宙人の艦隊は居ないのに、『シンディック指揮官』が言い出した時、他のシンディック軍人達は顔を見合わせて混乱した。

 

 『彼はまだ寝ぼけているのか?』

 『彼は酒好きだからもしかして酔ってるんじゃないか?』

 『もしかすると働きすぎて変になったのかもしれない』

 『いやいや、先輩が変なのは元からだ』

 

 などなどの話を声を潜めてシンディックの軍人達がしても、『シンディック指揮官』はお構いなしに胡座をかいて紅茶を優雅に飲みつつ待っていた。

 

 そして、信じられないことが起きた。

 もはや猫型宇宙人の『例の艦隊』がこの宙域にいないにも関わらず、返信のメッセージが届いたのだった……。

 

 『シンディック指揮官』はその事に驚きもせず、そのメッセージの解読を命じた。

 

 「10分も待つ必要もなかったか。

 どうやら彼ら猫達はかなり律儀な性格のようだね」

 

 副官は驚きつつ尋ねた。

 

 「これは何が起きてるのですか?

 彼らは一体、どんなトリックを?」

 

 『シンディック指揮官』は副官に微笑みながら言った。

 

 「彼らはトリックなんて使ってないよ。むしろ、彼らからすればトリックを使い続けてるのはこちらの方だよ」

 

 

 

 

 

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