それはにゃんこ王国民の「ぬ」が初めて行う宇宙での大仕事だったんぬ……。
ぬはにゃんこ王国の王立宇宙公社に勤める、宇宙開発業に従事するぬこ……猫なんぬ。
ぬっていうのはうちの方言で、「私」や「僕」、に相当するんぬ。
由来は「猫」が訛って「ぬこ」になり、
短縮されて「ぬ」になった後、
一人称も語尾も「ぬ」になったんぬなぁー。
でも割と上層部と違って、現場とかではみんな言葉は訛ってるんぬ。
ぬの王国は一時期色々と荒れてて大変だっんぬなぁ〜。
でも、王様が頑張ったおかげで今はとても過ごしやすくなったんぬ!
そしてぬは他の星系の宇宙開発を任されたんぬ!
昔……ご先祖様の時代では宇宙開発は盛んだったらしいけど、ぬの時代はご無沙汰だったから、
ぬは浪漫を感じててワクワクしてるんぬ!
「安全確認ヨシっ!」
宇宙空間でも事故は起こる。
故に猫達は指差しを行い、しっかりと確認をしないように規則に則り作業をしていた。
この猫達は新しい星系を開拓する為に、
巨大な宇宙人工建造物・・・星系管理ステーションを建てる為に作業していた。
星系管理ステーション、その役割は多岐にわたる……。
星系内を航行する艦船の情報や通信、管制などの業務。
星系内のスペースコロニーや、入植惑星の管理。
物資を運ぶ為の交易船や、宇宙艦隊、星系警備隊、
などなどの様々な艦船の港としての役割。
そして軍事上の防衛拠点として役割。
多くの機能を求められる総合人工宇宙拠点。
それが星系基地であった。
そしてこの『アンバール星系・総合管理宇宙ステーション』の建設を任された『王立宇宙公社』の猫達は、全力でこの一大事業に取り組んでいた。
「手順とか覚えてないけど多分ヨシっ!ボタン押すんぬ!
「何も『ヨシっ!』ではありません!
やめてください!まだ清掃作業中だからこの機械のボタンを押しちゃダメだから!猫が死ぬって!やめてくださいさい!
ぬぁぁぁぁ!やめるんぬ!」
「良いこと思いついたんぬ!この空気注入機を罰ゲームでけつの穴にぶち込んで、おなら出させるんぬ!」
「その機械のパワーを猫に使うと、ケツが裂けて死ぬんぬ!」
「どうなってるんぬ!使う予定の資材が届いてないんぬ!」
「どうして貴方が頼み忘れた資材の件で、
その発注業務とは無関係な上司である私にキレてるんですか……?
どうして……」
ただし、その作業員の経験値の欠如から、全力で空回りしている様子も散見された。
それもそうだ。
にゃんこ王国は現国王が就任する前に起きた、長引く政治的混乱や自然災害、宇宙海賊の猛威などにより、
新規の星系管理ステーションはほとんど建てられていなかった。
その為に作業手順に関する経験や、
安全規制に関する規則、
星系基地建造に必要となる資材などの管理システム、
これらの多くが未熟な状態で星系基地建造に挑まなければならなかった。
これらの経験や知識、ノウハウなどは理論の研究だけでは限界があり、より実践的な知見を得る為には、実際に星系基地建造をやらなければ得られない。
この『アンバルー星系・総合宇宙管理ステーション』の建築は、それらのノウハウを獲得する実験的な要素が含まれていた。
多くのトラブルに苛まれつつも、新人現場監督猫と、新人現場作業員猫は徐々にゆっくりと『アンバルー星系基地』の建造を進める。
しかし、その歩みは止められることとなる……。
「建設中止……なんぬ?」
「ああそうだ。」
現場監督猫は上司から呼び出されて告げられたのは、まったく予想もしていない言葉だった。
「な……なんでなんぬ!?あ、なんでですか?
……もしかして、私の監督不届きが原因でしょうか?」
現場猫はどうしてこうなったかを必死で考えた。
……現場猫監督には心当たりがありすぎた。
フリーダムすぎる部下にゃんこ達の大暴れ、
それに伴う想定と同じスピードでしか進まない建設作業、
嵩んで行く経費、
2件ほどの軽度な事故による機材の損失、
etc……。
猫監督としては、それらは自分の指導力不足だと後ろめたさを感じていた。
だがそれらは流石に辛うじて許容範囲内だと現場猫監督は認識していたが、上層部はそう判断しなかったのでは?
多少自分に能力不足があろうとも、自分の評価や給料が下がり、どれだけ酷くても自分がこの役職を外される程度だと考えていた。
だが……自分は甘かったのではないか?
現場猫監督は自分のせいで、アンバルー星系管理ステーションの建設そのものがおじゃんになってしまったと思い、嫌な汗が吹き出た。
しかし、上司は困惑した表情で言った。
「か、監督の不届き?
……何かあったのか!?」
それに対して現場監督は言う。
「はい、今まで報告させていただいた作業ミスによる2件の業務機械の損失などのことです」
それを聞いた上司猫は安堵する。
「ああ、あれなら軽微な被害だし許容範囲だ。
他のところではもっとアクシデントの数も規模も酷いしな……。
むしろ君のこのアンバルー星系管理ステーションの建設は、他と比べてもかなり迅速で丁寧だと高評価なくらいだ。
本社では君を出世させる話も出ているくらいだぞ」
現場猫監督はその言葉を聞いて驚いた。
「そこまで私のことを買ってくださるのですか!?
でしたら何故、アンバルー星系管理ステーションの建設中止が?」
「それは他の現場監督が君とそのチームほど優秀じゃないからだな。
まぁ、このような評価はフェアではないな。
他の現場監督やそのチームも優秀ではあるが、君ほど突出した成果は出せていない。
というか……若い頃の私でも君ほどの実力は発揮できないだろう。
他の現場も頑張っているのだがいかんせん遅れが出ててな……。
君とそのチームにはその応援に行ってもらいたいんだ。」
現場猫監督は自分に非があるのではなく、他のフォローの為に作業が中断になると聞き、安心した。
しかし、一つの疑問が湧いた。
確かに、自分たちのアンバルー星系管理ステーション建設は、本命のフェザーン方面星系の開発の予行演習という側面が強かった。
そして、すでにある程度作業を行なっているアンバルー星系での作業を中断し、わざわざ猫手や機材を移してまで作業しなければいけない所とはどこか?
「もしかして……その応援先とは、フェザーン方面の?」
「ああ、そうだ……。君に頼めるかね?」
フェザーン方面星系の開拓!
それは王国内で最も重要な仕事の一つだ!
この瞬間、現場猫監督は自分達が左遷されるのではなく、逆に栄転することを理解した。
「是非やらせて欲しいんぬ!」
現場猫監督ら思わず訛りが出てしまうほど興奮しつつ、その作業を受け入れた。
そしてアンバルー星系管理ステーション建設作業は一旦中止されたが、
アンバルー建設チームのスタッフは応援部隊として、
大きく猫王国の支配宙域拡大に貢献した。
それはぬがアンバルー星系を離れて、フェザーン方面の支配宙域拡張任務がひと段落した後のことだったんぬ
ぬは現場監督としてアンバルー星系の星系管理ステーション建設の経験を活かして、見事に活躍したんぬ!
正直、かなりヒヤヒヤする場面も多くあったけど、アンバルー星系の頃からの仲間や新しい仲間達と何とか星系基地完成を成し遂げたんぬ!
ぬはその完成の喜びに浸りつつ、完成を祝した打ち上げのパーティでマタタビ入りジュースを飲んでいい気分になってたんぬ。
いつも通り、部下達はどったんばったん大騒ぎしてるけど、今日だけは許すんぬ!無礼講なんぬ!
そんなことを考えて、部下が一線を超えないように陰で見張りながら飲んでいると、上司の猫が近づいてきたんぬ。
「お疲れ様なんぬ!」
「やぁお疲れ様、監督猫さん。
君のおかげで助かったよ!
ギリギリ間に合わせることができた……。
本当にありがとう!」
上司さんは目下のぬに、深々と頭を下げて礼を言ってくれたんぬ。
それだけ今回の作業は重要だった事が伺えるんぬ。
「監督猫さん……。
君に借りができたね。
何かお礼がしたいのだが、希望はあるかね?」
上司猫はそうぬに尋ねてきたんぬ。
そしてぬは少し考えた後、まだ未完成の状態にあるアンバルー星系の管理ステーションのことを思い出したんぬ。
そしてぬは思い切って頼んだんぬ。
「アンバルー星系管理ステーション……。
あれを、今度こそぬは完成させたいんぬ!
星系基地建設再開をする時、ぬをそのメンバーに入れて欲しいんぬ!」
こうして現場猫監督率いるチーム、通称アンバルーチームはそのまま蜻蛉返りして、再びアンバルー星系に戻り星系基地を完成させたのであった……。
他の現場猫「どうして、アンバルー星系から真反対の星系の応援に駆り出されて、そのまま真反対のアンバルー星系の建設作業の再会に従事させられるんですか?」
現場猫監督「それは君たちがふざけたり、遊んだりして1度目のアンバルー星系のステーション建設の納期が遅れたからだよ!(半ギレ)」
他の現場猫「……もしかして怒ってるんぬ?」
現場監督猫「そりゃふざけてぬのお尻にまで、空気送るチューブをぶち込まれそうになったらキレるんぬ。殺猫未遂なんぬ、わかってるんぬ?」
他の現場猫「……ご、ごめんなさい」
現場監督猫「じゃあアンバルー星系の建設、文句言わないで再開するんぬ!」
他の現場猫「イエス!マム!」