【王様(艦隊司令長官)】
にゃんこ王国の王様。そしてフェザーンに派遣された艦隊の司令長官も務める。
今作の主人公、名前はジョン・ギアリー。
【リオーネ副大臣】
王国の優秀な女性政治家。
王様が後継者もまだ生まれてないのに、本拠地を放っておいてフェザーン開拓に行くのを嗜める。……が無視されて怒ってる。
しかもおまけに王妃様まで同行したからブチギレてる。
ちなみに政府の要である彼女がフェザーンに行くことについて、他の政治家が不安で胃がキリキリしてる事については無視してるので、あんまり王様や王妃様のことを責められる立場ではない。
【カラバリ少佐】
元王立宇宙公社の社員。
色々あって王国軍に入隊した。
【黒猫の貴族】
平安貴族のような言葉を使う、元エイリアン対策室の室長。
フェザーン開拓に参加できなくて嘆いてる。
【ヤン】
後に歴史家として大成する男。
だが現在のところ、歴史書を書いてると途中から地球外生命体のレプリティリアン(トカゲ人間)が、超能力を使って暗躍していたという意味不明な結論になる。
本人は大真面目だし陰謀論者ではないと自認しているので、頭を抱えている。それらの怪文書は押入れの奥に埃をかぶって眠っている。
にゃんこ王国において、最も偉大な旅路が始まる事を皆が知っていた。
それは【フェザーン星系】の開拓の旅路である。
王国宇宙軍はかつて現国王の政策で、工兵部隊としての能力が大幅に増強された。
歴史学者であるヤン氏はこの時の王国宇宙軍に対して、
『古代ローマのレギオンの如く、戦闘だけでなく工事にも優れた実力を持つ集団であり、
戦時だけでなく平時にも活躍することの出来る組織であった。
基本的に軍隊とは暴力装置であり可能であれば存在しない方が好ましい限りだが、
こういった形で平和利用が可能である軍隊は私個人としては好ましいものに感じられる。』
と評価している。
だがこの評価に関しては彼の書いた著作のごく一面を切り取ったものであり、
軍組織ではなく官僚的な側面や、
企業との癒着による組織腐敗の可能性、
有事の際における民間部門での建設力不足の問題、
そして優秀な建築界の人(猫)材が軍に流出してしまうという懸念など、
様々な副作用などにも言及しており、ヤン氏はこの王国宇宙軍の状態に対して、賞賛一辺倒であったわけではない事を留意しておくべきである。
にゃんこ王国の宮殿を離れて、俺は馴染みの深い艦隊に戻ってきた。
俺が宇宙海賊との戦いで乗船した船、【巡航戦艦ドーントレス】に戻ってきたのだ。
俺の乗る宇宙シャトル(連絡艇)が、【巡航戦艦ドーントレス】のシャトルベイ(連絡艇発着場)に到着して、艦内にアナウンスが流れる。
「クルーに伝達、ドーントレスにギアリー司令長官がお戻りになられました。
クルーに伝達、【ドーントレス】に『ドーントレス』がお戻りになられました。」
アナウンスが「【ドーントレス】に『ドーントレス』がお戻りになられました」と言ったのは、何も放送事故ではない。
王国宇宙軍の伝統では艦長が船に帰還する際に、艦長を船の名前で呼ぶ習慣があるのだ。
艦長と船は同一の存在として扱われて、敬意をもってクルー達に迎え入れられる。
そしてシャトルの中で隣に乗っていた、
デシャーニ艦長が敬礼しながら俺に言う。
「ギアリー司令長官、ドーントレスにお帰りなさい。」
俺はその言葉を聞いて、俺の艦隊に帰ってきたという実感が湧いた。
俺は故郷の惑星グレリオンで生まれた、
そして戸籍の関係上だと惑星コサトカが居住地となっている。
そして猫類は惑星グレンデルで誕生したという起源がある為、グレンデルこそがすべての猫の真の故郷だという意見もある。
だが……それでも、俺にはこの職場である艦隊が……俺がいつも乗ってる【巡航戦艦ドーントレス】こそが俺の帰るべき本当の我が家に思える。
そして戻ってきたという、暖かくも気の引き締まるような感覚が全身を走った。
そして俺はデシャーニ艦長に敬礼をしっかりと返して言った。
「ただいま、デシャーニ艦長」
【にゃんこ王国】の王……いや、今は司令長官として、ある1匹の猫、第一艦隊司令長官ジョン・ギアリーが艦長会議を開いていた。
王国軍の名だたる名将が一同に会していた。
「こちら【巡航戦艦レビヤタン】のチュレブ大佐、出発準備整いました」
「こちら【巡航戦艦フュリアス】のクレシダ大佐、同じく」
「こちら【重巡航艦カブト】のベナン中佐、政府要人のゲストを含めて全員が乗艦。出発準備は万全です」
力強くも冷静な態度で、ギアリー司令長官の側近とされる艦長達が報告した。
「【戦艦オリオン】のヌモス大佐、問題なし」
戦艦の艦長である、古参の艦長が手短に報告する。その言葉からなんの感情も読み取れない。
「【高速補助艦タヌキ】のスミスです!補助艦部隊は絶好調!フェザーン星系なんて5個分くらい開拓でるくらい物資を生産できますよ!」
「こちら【高速補助艦ウィッチ】のティロシアン艦長です。本当にフェザーン星系5個分開拓させるのは辞めて欲しいです……」
そして艦隊の運用や開拓に必要な物資を生産する、移動式工場とも呼べる【高速補助艦】の艦長達も報告を終えた。
そしてついに新しく軍に入隊した、とある女指揮官が報告する番になった。
「カ、カラバリ少佐です、あ、その、
【小型特務輸送艦サザナミ】、準備ヨシっ!
……じゃなくて、問題ありません!」
カラバリ監督改めて、カラバリ少佐。
彼女は緊張感に包まれながらも、王国の歴戦の猫達が集うこの艦長会議に参加していた。
ぬはカラバリ……しがない建設現場の監督だったんぬ。そして今は王国軍の宙兵隊少佐をやってるんぬ……。
ことの始まりはステーション建設のために働く、現場猫達が休暇をとった際にその穴埋めとして王国工兵隊が手助けに来てくれたことだったんぬ。
最初は兵隊さんを相手にステーション建設のためとはいえ、色々と指示を出すのは緊張したけど、次第に慣れてキビキビと指示を出せるようになったんぬ。
そして最後は兵隊さん達の協力のおかげで、無事に星系管理ステーションを完成させられたんぬ!
ステーションが完成するあの時の高揚感は、いつでも気持ちのいいものなんぬ!
そしてぬはステーションの助っ猫(助っ人)に来てくれた工兵隊のみんなと、完成記念のパーティで大はしゃぎしたんぬ!
いや〜、あのパーティは一体感があって楽しかったんぬなぁ〜。
そのパーティの最後の方で、兵隊のみんなが真剣な顔でぬに頼んで来たんぬ。
「カラバリ監督さん……。王国軍に興味はありませんか?
俺たちは……ぬ達は、カラバリ監督さんのような上司のもとで働きたいんぬ!」
ぬは兵隊さん達に、ここまで好かれてるなんて思ってもみなかったんぬ。
事故を避けるためとはいえ、口うるさく注意をしたり、
危ないと思ってつい大声を出してびっくりさせちゃったり、
色々と不備があるのを直前まで見過ごしちゃって事故直前のところまで行ったり、
……思い返すと至らないところばっかりなんぬなぁ。
ぬは自分がそんな優秀じゃないし、建設作業でも下手なところがあったことを伝えて、その申し出を断ろうとしたんぬが……。
「いや……口うるさくと言いますが、指差し確認とかの事前チェックを怠ったのは俺たちなんで」
「大声?あの私が命綱をつけ忘れて船外作業に出発しようとしたことですか?
あれは完全に私の落ち度ですし、むしろカラバリ監督が声をあげてくれなかったら、私は死んでたかもしれないので……むしろカラバリ監督は命の恩人ですよ!
「俺がまだ機械の中で点検作業をしてる時に、他の作業員が機械を動かそうとするのを止めてくれた件ですか?
あれはお掃除ロボットが『点検中です』の立てかけを取ってっちゃったのが原因ですし……」
「そうですよ!そういう事故があるかもしれないと聞かされてたのに、お掃除ロボットを作動させちゃった僕の責任ですよ!」
兵隊さん達のみんなが、ぬに落ち度なんてなかったと励ましてくれてるんぬ!
とても……とてもありがたいんぬ。
それはそれとして、勝手にお掃除ロボット作動させたやつは後でガチ目にお話しするんぬ。
ぬは思った以上に自分がみんなから慕われていたことを知ったんぬ。
ぬは兵士のみんなと一緒に宇宙ステーションを作る仕事にやりがいを感じていたんぬ。
最近では、王国軍の工兵部隊なども拡充されてるらしいと聞いたにゃん。
多分、この情勢下で戦争が起こる事はなさそう……。
それを考えると、宇宙ステーション建設の仕事は、今のぬの会社よりも規模の大きい王国軍が主体になってこなすかもしれないんぬなぁ……。
ぬはふと、上司が王国軍に出向して色々と技術指導をする猫を募集していることを思い出したんぬ。
ぬはこのパーティの後、真剣に考えて……。
王国軍に入隊することを決断したんぬ!
そしてその後、お掃除ロボットを勝手に動かした奴とお話ししたんぬ。
にゃんこ王国における歴史的な軍事行動TOP10を決めるとしたら、どれが選ばれるべきだろうか?
この問題に関して、さまざまな歴史家や評論家が現在進行形であらゆる出来事を持ち出して活発に議論をしている。
しかし、その中でも決して無視することができないのは【フェザーン開拓】であると主張するものも多い。
「にゃんこ王国は科学的調査における最重要拠点として、『フェザーン星系』をなんとしてでも確保しようとしていました。
『フェザーン星系』はこの天の川銀河のオリオン腕の外縁部にある星系でした。
これを地上の星で例えるとしましょう。
天の川銀河が惑星であるとすると、オリオン腕は地上の大陸です。
そして『にゃんこ王国』はオリオン大陸の内陸にあり、【フェザーン星系】はオリオン大陸の沿岸部……つまり海に面しているのです。
そして『にゃんこ王国』は海が見える場所に出て、そこでいろいろな情報を集めようとした……というわけですね。」
このように語ったのは天文学者のオリベイラ教授である。
そしてオリベイラ教授は続けてこうも語った。
「ただ、当時の『にゃんこ王国』の科学者たちとしてはこのオリオン腕の外縁部に出ることではなく、
【フェザーン星系に向かって、三連恒星から飛来した隕石群の観測調査】の方が比重が重かったと思われます。
当時のにゃんこ王国のワープ技術では二つ以上の太陽が星系を作る、連星星系を訪れることが不可能であり、その為に隕石を観測することで三連恒星の間接的な調査をしようとしていたというのが主な動機だったようです。」
そしてにゃんこ王国は、この科学的知見を深めるために重要なフェザーン星系開拓を万全を期すために大規模な軍隊を派遣したのである。
その陣容はまさに圧巻であった。
艦隊司令長官であり国王でもあるジョン・ギアリー、
圧倒的な戦果を誇る【巡航戦艦ドーントレス】艦長のデシャーニ、
【巡航戦艦フュリアス】の科学者としても名高いクレシダ大佐、
リオーネ副大臣の夫でもある【重巡航艦カブト】の艦長ベナン中佐。
【高速補助艦タヌキ】の艦長を務めつつ補給部隊のリーダーも兼任するスミス、【高速補助艦ウィッチ】のティロシアン艦長。
そして在りし日の若きカラバリ少佐(当時の階級)もその場にいたのだ。
この【フェザーン開拓】には文民も同行しており、リオーネ副大臣やチャンバー将軍、ナスル医師なども【重巡航艦カブト】に乗船して参加した。
ギアリー司令長官の不在の間の本国は、【巡航戦艦カレイジャス】の艦長ドゥエロスが残った部隊を指揮して守ることに決まった。
ドゥエロス艦長には妻子がおり、家族との時間確保する為にも残ることになったとも言われている。
なお、この【フェザーン開拓】の際に王国軍学校の校長を務める貴族軍人が
「麻呂を連れて行かずに開拓とな!?笑止千万でおじゃる!
未知の宙域に開拓するのであれば夷狄(エイリアン)との遭遇の可能性は格段に上昇する。
かつて夷狄対策の任に当たっていた麻呂を連れて行くのが道理のはず……口惜しや!」
と嘆き、彼は涙で自らの黒い毛を濡らしたという……。
それはともかくとして、このにゃんこ王国は大規模な部隊を【フェザーン開拓】に投入。
軍隊の主力だけでなく王国のトップであるジョン王やその王妃、文民の中でも優秀なリオーネ副大臣など、さまざまな重要人物を連れてフェザーン星系に向かった。
この決断がのちに、にゃんこ王国史を揺るがすことになる大事件、
【第一次フェザーン危機】……あるいは【シンディック戦役】に与えた影響の大きさは計り知れないものがある。
故にこの【フェザーン開拓】は歴史的に非常に重要なイベントであったと言えるだろう。
王国歴427年
ギアリー司令長官(ジョン王)に率いられたにゃんこ王国の第一艦隊は、その大艦隊と共に率いられた膨大な猫達と共にその圧倒的物量を駆使して【フェザーン星系】を開拓した。
カラバリ少佐率いる工兵部隊は短期間で迅速に星系管理ステーションを建設。
その後はフェザーン星系にある居住可能惑星に入植地を築く支援を行なった。
王国軍艦隊は小惑星に砲撃を加えて砕き材料確保に貢献、
補助艦部隊がその砕かれた小惑星のカケラを材料に開拓に必要な物資の生産を担う。
そしてフェザーン星系は驚くべきほどの短期間に開拓が成功したのであった……。
この開拓劇は《/b》【にゃんこ王国】《/b》にてフェザーンの奇跡として報じられ、王国のマスコミはこの吉報を大々的に報道。
王国はこの成功によってお祭りムードに包まれたのであった……。
「例えばの話だが、ここにリンゴが一つある。
そして君はそれを丸々全て食べる。
それは君にとっては、『リンゴを食べたことに成功した』と言えるだろう。
だが、物事は常に相対的な側面がある。
君が一つしかない丸々全てリンゴを食べれたということは、逆に私からすれば『そのリンゴを食べることに失敗した』と言える。
誰かにとっての成功は、誰かにとっての失敗でもあるのだ。」
ヤン・ウェンリー著
『にゃんこ王国史第18巻』
コーネフ=フェザーン出版社
538P
より引用
スーパーイベント:開拓の失敗
条件:重要星系への開拓を???に先んじて成功させる