イマドキ魔王は苦悩する   作:だいふく。

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003 黒服。

 誠に勝手ながら、今日も愚痴らせてもらう。

 

 ──昨日の俺……何をした? 

 

 朝、目が覚めた瞬間から胸の奥が熱い。熱というより、焦げついたみたいな嫌な感覚だ。

 まぶたを閉じても、見える。黒い炎。焼け落ちる音。地面に伏せる人々。怯えて後退するモンスター。

 そして何より──俺の声で吐き出された、最悪の台詞。

 

『──頭が高いな、ひれ伏せ人間共ッ!!』

 

 もう嫌だ。死にたい。

 あれを“俺の声”でやらかした以上、今日から俺の人生は「渋谷の厨二魔王」ルートに入っていてもおかしくない。

 枕元のスマホを掴み、指が震えるのも構わず画面を叩く。ニュースアプリ。SNS。動画サイト。検索。

 

 ──「渋谷 黒い炎」

 ──「学ラン 魔王」

 ──「ひれ伏せ 学生」

 

 最悪の単語を自分で入力している時点で、もう罰ゲームだ。……が、出てこない。

 出てくるのは「渋谷でスタンピード」「異能防衛機関が対応」「負傷者は軽傷中心」といった、当たり障りのない記事だけ。動画も遠景ばかりで、黒炎の中心がどうなっていたかは曖昧にぼかされている。

 

 ……消されてる? 

 

 その可能性が頭をよぎった瞬間、背筋が冷えた。

 消されているなら、誰かが消している。

 そして“誰か”が、未登録の異能者を放置するはずがない。

 

『フフ……追われ迫られてこそ、魔王の本懐よ』

(黙れ)

 

 横で笑う骸骨──メルギドスの気配を無視して、俺は布団から這い出た。

 考えても仕方ない。どうせ現実は、俺の都合なんて一ミリも聞かない。だったら、いつも通り学校に行く。授業を受ける。友達とくだらない話をする。

 昨日を“昨日”に押し込める。押し込めるしかない。

 台所から、味噌汁の匂いがした。

 テレビのワイドショーが騒いでいる。天気予報と出現注意報が並んでいる。

 

「あはよう悠。すこし顔色悪いんじゃない? 寝不足?」

 

 母さんが湯気越しに言う。

 俺は味噌汁をすすって、なるべく普通に頷いた。

 

「……ちょっと」

 

 昨日のことを思い出すたび、胃がねじれる。

 でも言えるわけがない。“昨日の渋谷で、俺の身体が勝手に魔王になってさ”なんて。

 向かいの椅子に、妹がドカッと座った。

 長い髪を雑に下ろしていて、毛先だけ少し色が抜けている。耳のピアス。制服は規定から外れた着崩し。

 いわゆる不良のような見た目。普段の俺との会話なんて朝晩の「飯」と「うざ」くらいだ。

 なのに今日は、妙に静かだった。

 

「……昨日」

 

 妹がぼそっと言った。

 箸が止まる。

 

「……ありがと」

 

 小さすぎる声。聞き間違いかと思った。

 母さんも一瞬だけ固まり、それから何も言わずに皿を並べ直す。空気を読んだのか、見なかったことにしたのか分からない。

 俺は曖昧に頷いた。頷くしかなかった。

 すると、ゆっくり妹は口を開いた。

 

「兄貴さ。昨日、なんか変な──」

「あぁ!! そろそろ行かないと遅刻だ!!」

 

 俺は大きめの声で被せた。

 露骨だ。雑だ。最悪の誤魔化しだと自分でも分かる。

 

「お、おい待てよ兄貴!」

 

 妹が椅子を鳴らして立ち上がる。

 俺は返事もせず、食器を流しに置いて鞄を掴んだ。

 

「行ってくる!」

「ちょ、まだ味噌汁──!」

 

 母さんの声を背中で切って、玄関を出る。

 靴紐を結ぶ指が、微かに震えていた。息が浅い。心臓がうるさい。

 言葉にした瞬間、現実になる気がした。

 俺は顔を上げて、朝の冷たい空気を吸い込んだ。

 いつも通りにしろ。

 いつも通りに、学校へ行け。

 ……やっぱり俺にはなんの覚悟もないし、何も受け入れられていない。

 通学路はいつもと同じ。コンビニの前でだべる高校生、開店準備の商店街、駅へ向かうサラリーマンの足音。

 渋谷が燃えた翌朝だなんて、嘘みたいに日常だ。

 

 ……嘘にしてくれ。

 

 そう思いながら、いつもの小さな公園の脇を通り過ぎる。ブランコが一つ、錆びた鎖で揺れていない。ベンチに座る老人もいない。

 俺は公園の角を曲がった。

 相変わらずこの辺りは人気がない。──そう思ったときだった。

 

「佐々木悠さん、ですね」

 

 背後から声が飛んできた。

 心臓が跳ねた。反射で足が止まり、振り返る。

 黒っぽいスーツの男が二人。

 手ぶらで、派手さもない。なのに立ち姿が妙に洗練されている。どこか日常とかけ離れた雰囲気。

 普通の顔をしているくせに、普通じゃない空気をまとっている。

 

「……誰ですか」

 

 喉が乾いて、声が掠れた。

 男の一人が、胸元から身分証を見せる。

 俺が見たくなかった、その身分証を。

 

 ──異能防衛機関。

 

 モンスター対処の実働機関。そして、異能者が関わる事件──異能犯罪の対処も担う、国家権限の組織。

 つまり、逃げても追ってくる種類の相手だ。

 

「昨日の渋谷の件で、少し事情を伺いたい。お時間よろしいですか」

 

 丁寧な言い方。

 でも断れる雰囲気が一ミリもない。もう一人が自然に俺の斜め後ろへ回り、逃げ道を潰す。……確保。そういう動きだ。

 

(やっぱり来たな……)

 

 息が浅くなる。

 ここで逃げたら、追われる。逃げなくても、詰みは詰みだ。──その時、

 

「……あ? 誰だテメェら」

 

 低い声が横から割り込んだ。

 俺が息を呑むより先に、妹が公園の角から出てきた。……追ってきたのか。あの会話の続きを、どうしても切りたかったんだろう。

 長い髪が風で揺れている。表情は険しい。

 普段、俺に向ける「うざ」の顔とは違う。明らかに“敵”を見る目だ。

 

「なにコイツら。……兄貴に何してんの?」

 

 兄貴。

 その呼び方を、こいつが外で使うなんて滅多にない。 スーツの男が「落ち着いてください」と言いかけた瞬間、妹が一歩踏み込んだ。

 

「落ち着け? テメェら誰だって聞いてんだよ! 朝っぱらから人の兄貴止めてさ。ナメてんの?」

「……お嬢さん、我々は」

「うっせぇ黒服野郎! 近づくんじゃねぇ!」

 

(やめろ! 目立つな!)

 

 俺は妹の腕を掴もうとして、手が空振りする。妹の勢いがそれ以上だった。近所の犬の散歩中の人が、ちらっとこっちを見る。最悪だ。

 そのとき、通りの向こうから落ち着いた声が挟まった。

 

「妹さん……気持ちは分かる。でも、ここで騒ぐと余計に拗れる」

 

 スーツじゃない。機関の戦闘服。

 若い男が歩いてくる。目の下に薄い隈。装備を身につけているのに、動きは静かだ。

 

「異能防衛機関の北見です。……そちらの、佐々木悠さんに用がある」

 

 妹が睨む。

 

「誰だよ、テメェ。

「……異能防衛機関、B級隊員の北見です。こちらの職員とは異なります」

 

 北見さんの言い方が妙に生々しい。

 “職員”と“隊員”を分けるのは、たぶん現場の線引きがあるからだ。そして、今ここに“隊員”が出てくる時点で、話が軽いはずがない。

 妹が俺を見た。

 

「……兄貴」

 

 見た事ないほど、不安そうな表情だった。

 

「大丈夫」

 

 だから兄として。安心させなくてはと思った。

 妹の目が鋭い。普段会話も少ないくせに、こういう時だけ刺してくる。嘘を見抜く目だ。

 

「……わかった」

 

 喉が詰まった。

 聞きたいことが山ほどあるだろうに、飲み込んだんだ。全く、いつからこんな大人になったんだろうな、うちの妹は……。

 

「今は何も聞かねぇ……だから、全部整理できたら話せよな」

「……うん、わかった。ありがとう」

 

 すると、黒服を一度睨んでから、妹は踵を返した。

 

「──逃げんなよ。兄貴」

 

 それだけを言うと、妹は歩いていった。

 足の力が抜けた。久しぶりにこんなに喋った。

 小さい頃と比べ見た目は随分と変わったが、その優しさは昔のままだったな。

 逃げたい。消えたい。全部なかったことにしたい。

 でも妹の前では言い訳ができない。いや、できてもしたくない。改めて、そう思えた。

 北見さんが小さく頷き、スーツの男たちも一歩引いた。

 

「……改めて言います。これは処罰じゃない。保護と事情聴取です」

 

 スーツの職員が丁寧に頭を下げる。

 

「昨日の一件は重大です。──同行をお願いします」

 

 昨日の地獄は、俺の中だけのものじゃなかった。

 俺は小さく息を吐いて、頷いた。

 

「……分かりました」

 

 §

 

 連れて行かれたのは警察署ではなかった。

 白い壁、静かな廊下、監視カメラ、消毒液の匂い。

 病院と役所を足して割ったような施設。

 “保護”という言葉に嘘がない程度には柔らかい空間だった。

 だが、柔らかいからといって安心できるわけじゃない。むしろ、その柔らかさが怖い。ここでは暴れられない。声を荒げられない。異常者として扱われるだけだ。

 小さな会議室に通され、俺は椅子に座らされた。

 向かいにスーツの職員。横に北見さん。

 机の上には録音機と書類、ペン、水。

 

「佐々木悠くん。確認します。あなたは未登録の異能者である可能性が高い。昨日、渋谷においてモンスターの群れが未知の手段で焼失した。あなたは現場から離脱した。──ここまで、事実に相違はありますか?」

 

 淡々とした言い方。逃げ道が潰れていく音がする。

 

「……離脱って」

 

 北見さんが言う。

 

「一瞬で消えたのを確認した。それに、空間系の痕跡が残ってた。俺と同じ系統の魔法の痕跡がな」

 

 俺は視線を落とした。

 認めたら終わる。否定しても、証拠があるなら終わる。

 

『ユウ、ここで我が王権を宣言し──』

(黙れ)

 

 机の下で拳を握り、掌に爪を食い込ませた。

 痛みで、かろうじて理性が繋がる。

 スーツの職員が、声の温度を変えずに言った。

 

「簡易の確認をします。危険は最小限に。北見隊員が立ち会います」

「……確認って」

「あなたの異能の有無と、反応の種類を。あなたと周囲の安全のためです」

 

 安全。その単語が、逆に俺を追い詰めた。

 

(発動したら、ここが地獄になる)

 

 周りが本能的恐怖で固まる。俺の口が勝手に痛いことを言う。声も顔も俺のまま。周りから見れば“佐々木悠が突然厨二を始めた”だけ。

 そして俺だけが内心で悶える。最悪だ。

 

「……無理です」

 

 俺は絞り出した。

 

「使いたくないです」

 

 言った瞬間、空気が少しだけ変わった。

 職員は反応を表に出さない。北見さんだけが、ほんの僅かに眉を動かした。

 

「使いたくない理由を聞かせてください」

 

 職員の声は穏やかだ。穏やかだからこそ逃げられない。俺は喉を鳴らした。

 

「……発動すると、俺の意思と関係なく、制御できなくなります。意識は残ります。でも、勝手に……」

 

 言葉が詰まる。“勝手に痛い台詞を吐く”とは言えない。死にたい。

 北見さんが、低く息を吐いた。

 

「……昨日の現場と一致します」

 

 職員が立ち上がり、壁の装置に触れた。

 部屋の隅が低く唸り、空気が少しだけ重くなる。

 

「抑制フィールドです。異能の拡散を抑えます。完全ではありませんが、最小限にはできます」

 

 準備が良すぎる。つまり、こういう事案は初めてじゃない。

 

「……佐々木くん、大丈夫です。我々を信じてください」

「…………」

 

 その優しさが苦しい。

 もう、腹をくくるしかないのか……。

 

「……わかりました」

 

 そして、俺は内側に意識を向ける。

 

「──ッ!!」

 

 ゆっくりと意識が沈んでいく。

 メルギドスの姿が重なり──背筋が勝手に伸びる。顎が上がる。口角が吊り上がる。

 全部、自分の意志じゃないのに、全部、自分の体で起きる。

 

「フフ……フハハハハハッ!!」

(やめろ、やめろ、やめろ……!)

 

 俺の高笑いが響き渡った。

 次の瞬間、空気が凍った。

 職員の表情が固まる。瞬きが止まる。北見さんの肩が跳ね、そのまま膝が落ちかける。昨日の“跪き”が身体に刻まれているみたいに。

 

「うむ……よい檻だ。我を迎えるに不足はない。人間共、褒めてつかわすぞ」

(言うな! 頼むから言うな! 迎えられるな! 帰ってくれ頼むから!)

 

 内心の叫びをよそに、俺の口は滑らかに恥を垂れ流す。声は俺のまま。顔も俺のまま。つまり、“俺が言っている”としか見えない。

 職員が喉を鳴らしながらも必死に言葉を出した。

 

「……北見隊員……状況……」

 

 北見さんが歯を食いしばり、姿勢を保つ。決して逃げないという、意思が伝わってくる。

 

「佐々木……! 聞こえるなら……戻れ……!」

 

(聞こえてます! 俺はここにいる! だから止めてください!)

 

 抑制フィールドが唸りを増す。空気が重い。水の中に沈むみたいに体が鈍る。

 

「──おい、発言を許した覚えはないが。どういう了見だ、人間?」

(うわあああああ!! やめろ!!)

 

 俺は必死に内側から体を引っ張った。

 指先。足先。呼吸。意志を一点に集める。

 “譲る”のを、取り戻すんじゃない。──譲った手綱を、もう一度握り直す。

 ほんの一瞬だけ、口が止まった。

 

「……っ」

 

 北見さんの呼吸が戻る。

 今がチャンスだと直感した。

 

(戻れ……戻れ……!)

 

 意思がゆっくりと浮上する。

 全身がぐらりと揺れ、汗が一気に噴き出した。

 俺は椅子の背にもたれ、荒い呼吸を繰り返した。

 胃が気持ち悪い。喉が痛い。

 そして何より、恥ずかしさで心臓が爆発しそうだった。

 

「……すみません……今の……」

 

 言い訳が追いつかない。追いつくはずがない。

 北見さんが乾いた笑いを漏らした。馬鹿にする笑いじゃない。悔しさ混じりの笑いだ。

 

「……やっぱり、あんただったんだな」

 

 職員が深く息を吐き、書類に目を落とす。

 

「……確認できました。佐々木悠くん。あなたの異能は極めて危険です。戦闘能力だけではなく、周囲への影響が」

 

 俺は俯いた。

 

「……だから、使いたくないんです」

 

 それが本音だった。

 強いとか弱いとか以前に、人生が終わる。発動するたび、周りが凍って、俺の身体が勝手に恥を撒き散らす。職員は淡々と告げた。

 

「しかし放置はできません。本人の意思に関わらず再発する可能性がある。ご家族も含め、危険です。──そこで提案があります」

 

 嫌な予感しかしない。

 

「異能防衛機関直轄の育成課程──候補生課程への編入。監督下で訓練を受けてください。目的は戦力化ではなく制御です」

 

 育成。編入。監督。訓練。

 全部、俺が嫌いな単語だ。特に“監督”が無理だ。俺の恥を、毎日誰かに観測されるってことじゃないか。

 

「……拒否したら」

 

 俺が絞り出すと、職員は迷いなく答えた。

 

「保護の継続と、監督の強化です。罰ではありません。再発したとき、一般社会が耐えられないからです」

 

 一般社会が耐えられない。

 ……色んな意味で、ということか。

 北見さんが俺をまっすぐ見た。

 

「昨日、俺は何もできなかった。あんたが怖かった。今も怖いです。……でも、だからって放っておけない」

 

 その言葉が、変に刺さった。

 怖い。そうだろう。俺だって怖い。俺自身が。

 

『フフ……王の道は孤独にして栄光。その痛みすら蜜よ』

(うるせぇ!! 栄光なんていらねぇんだよ!! 平穏がいいんだ俺は!!)

 

 俺は頭を抱え、観念した。

 

「……分かりました。行きます。候補生課程」

 

 胃がきゅっと縮んだ。逃げ道が閉じた音がした。

 でも同時に、どこかで安心もしていた。

 少なくともここから先は、“やらかしたら終わり”が分かっている。分かっている地獄の方が、分からない地獄よりはマシだ。

 職員が頷く。

 

「ありがとうございます。あなたは危険な存在ではありません。危険な“現象”を抱えているだけです。私たちは、それを制御するためにいます」

 

 綺麗な言葉だ。

 でも俺は知っている。制御できるようになるまで、俺は何度も恥をかく。何度も空気を凍らせる。

 そのたびに俺は、自分の中で悶え続ける。

 廊下へ出ると、空調の風がやけに冷たかった。

 

「……確認なんだが」

 

 北見さんが横を歩きながら、ぽつりと言った。

 

「……何ですか」

「昨日の現場で、あんた……笑ってたよな」

 

 俺は足を止めた。肺が止まった。

 

「……俺の意思じゃないです」

「やっぱそうなのか。今日、それが知れてよかった」

 

 それから、北見さんは慎重に言葉を選ぶ続けた。

 

「能力を発動した瞬間、あんたの言動が“別人”みたいになった。あれは演技じゃない。そういうタイプの異能ということか。人格変容ってやつ」

「…………」

「正体は分からない。誰の魂とか、何者とか、そういうのは俺には断定できない。でも──あれが出てくる以上、放置できない」

 

 俺は視線を落とした。

 “正体は分からない”と言われて、なぜか少しだけ救われた気がした。

 

「……はい。そうですね」

 

 声がやけに乾いた。

 北見さんは小さく頷いた。

 

「候補生課程で制御できるようになれば、少なくとも現場で“再発”する確率は下げられる。……俺も協力する」

「協力、ですか」

「俺の異能は『空間魔法』。あんたも似たようなことができるなら、教えられることはある。あと……現場での“手順”もな」

 

 言葉は淡々としているのに、目だけは真剣だった。

 昨日、跪いて何もできなかった悔しさが、まだ残っている目だ。──優しい人だな。

 

「……ありがとうございます」 

『フフ……臣下が増えたな』

(黙れ)

 

 俺は肩で息を吐いて、歩き出した。

 候補生課程という名の檻に向かう。

 異能を使うことは黒歴史を増やすこと。

 そう確信できるのがいちばん嫌だった……。

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