少し時間が飛んで3日目。2回戦の相手は赤鬼みてぇなやつが相手だった。力はそこそこあったが、金棒を振り回すだけで面白みのないやつなので、一発受けてから終わらせることにした。
「とどめだクソチビぃぃ!!!!」
頭から鈍い音がなるがききはしない。魔力のぶつかり合いにおいて、魔力量の差は絶対だ。如何に威力が高そうに見えても、込められた魔力が相手の魔力を破れなければ意味はない。
「お返しだデカブツ」
「ぐおぉば…!?」
顎を蹴り上げると白目を剥き倒れていった。うん、魔法を使わないと味気ないな。それよりも次だ。予選で高得点を出した男との戦いだ。明日を楽しみにしていよう。
翌日。
『準々決勝、最後の戦い。フィオーレ王国最強と名高い魔導士ギルド、
「(魔導士ギルドか…ようやく魔法以外で異世界ものらしい単語が出てきたなぁ。)」
故郷では外の情報はシャットアウトされてたからなぁ……ある意味箱入り息子ということになるのか?いや、ないな。
「おいガキ、命が惜しければ今すぐ降参しろ」
「そっちこそ、俺を失望させるなよ」
「減らず口を...!!」
キレるおっさんをよそに、俺はどの滅竜魔法使おうかと悩んでいた。こいつに限った話じゃないが、ぶっちゃけ8種類は多い。
この前も言ったが本来なら竜の魔力は、殴る、蹴る、放つぐらいしかできないはずだと思うのだが、ここで俺の魔力操作が加わると話が違ってくる。
魔力の圧縮、発散、放出、操作、硬化、吸引、回復、どれも自在にできるため相手を撃破、拘束するだけなら属性による差別化があまり意味をなさない。
まだ八竜の力を手に入れたばかりだが、このリソースの無駄はいずれアクノロギアの戦いにおいて致命傷になる可能性が高い。いちおう対応策は思いついているが、いきなり実行するにはリスクが大きい。
『試合時間は30分。どちらかが戦闘不能となるか降参することで決着とします』
考え事をしていたら試合が始まりそうだ。とりあえず二つに絞って使うことにした。ちょうど試したかったこともあるしな。
『それでは両者構えーーッッ!!...始めッ!!』
開始と同時に突撃し接近戦に持ち込む。まずは顔面から!!
「うらァ!!」
振りぬいた拳は腕をクロスすることで防がれた。宙を足場にすかさず蹴りを放つがバックステップで避けられる。こちらの隙をついて魔力を込めたパンチを繰り出してきたが、こちらも拳を突き出し相殺する勢いで距離を取る。
見た目と言動に反して意外と武闘派だな。よほど血筋がよいのだろう。
「おっさんやるなぁ。魔導士の割には」
「雷を使わないとは舐めた真似を...あと、俺はまだ24だ!!」
「へ、マジで?老けすぎだろ」
てっきり中年ぐらいかと思っていたのだが。『中身』を見なければ分からないとは.......俺もまだまだだな。
「…その減らず口をきけないようにしてやる!!『ダーク・コール』!!」
やつの周りから無数の紙が列を成して発生し襲い掛かってくる。
(これは...形式(かたしろ)!?なんでこんなもんを、おっさんが使うんだよ!)
四方八方から襲い掛かってくる紙を掻い潜り、腹に蹴りを入れるが手ごたえがない。
「ハハハ、きかんなぁ」
どうやら本当に効いていないようだ。おそらく形代に何か仕組みがあるのだろう。吹き飛ばすのは簡単だが、この魔法のタネを暴きたくなったので乗ってやることに決めた。
「『金剛竜の剣山山脈』!!」
やつの足元から無数の石の剣山を発生させ、上空へ吹き飛ばす。やはりそうだったか。攻撃を当てた瞬間、形代の大半が消滅した。
「なるほどね。この紙にはダメージを肩代わりさせる魔法でも込められているのか」
落下するイワンを眺めながら独り言ちる。
「くっ、地面を造形しただとぉ...だが既に貴様の体の半分以上を俺の紙が覆っている。もう逃げられんぞ!!」
体に纏わりついている紙が一斉に起爆する。爆発に呑まれたセレナをみて、イワンは勝利を確信する。
「どうだ俺の『呪紙魔法』の威力は!!これで跡形もなく……!?」
爆風の影から出てきたのは、光沢を伴い光を反射する無傷のセレナ。
「ハハハ、きかんなぁ」
「バカな......肉体を鉱石に変える魔法だと...!」
「『金剛竜鱗』ダイヤモンドが砕けるかよ」
せせら笑いながら左手に魔力を貯めて魔法を放つ。
「『常闇竜の獄門乱牙』!!」
左手から放たれた闇竜の顎がイワンに襲い掛かり、体を飲み込む。
(ーーなんだこれは......何も見えない.......いや、これは......!?)
「闇の竜はお前の闇や罪を媒介に心を侵食していく。さあ、お前の闇を数えろ!!」
闇竜の力を人に振るうのは初めてだ。記憶を覗くなんて行為、必要最低限に抑える必要があるが、高い魔力を持ち、心に問題がありそうなやつがいつ現れるか分からない。悪いが実験体になってもらうぞ。
(親父...なぜ俺をS級に昇格させようとしない...なぜギルダーツに勝てぬのだ...なぜルーメン・イストワールを隠しておくのだ...なぜ......なぜ親父や祖父のような魔法を持つことができないのだァァァ!!!!)
怒り、憎しみ、妬みなどの記憶が渦巻いて流れてくる。
(あーめちゃくちゃコンプレックス抱えてんなぁ...思ったよりも鮮明に記憶が見れるし便利だけど、いい魔法とは言えんな。けどやってみた感じ、考えてた応用にいかせそうだ)
闇の竜が負の感情に呼応し、肉体を破壊し始めたところで解除する。殺すつもりは毛頭ない。
「伸びろ『金剛竜棍』!!」
突き出した腕が勢いのままダイヤの棍に変化し、イワンの顔面を捉える。勢いのまま壁に叩きつけられ倒れ伏し、意識を飛ばした。
気絶したことを確認したのちにそのまま会場を後にする。3回戦終了だ。
・金剛竜アダマス・タイマイ
食べた鉱物を再現できる体質を持っている。
かつては空を飛んでいたが、背中生えた巨大なダイヤモンドのラクリマ重さに耐えかね、地を這う亀のようになった。
その硬度はアクノロギアさえも喰らうことを諦めたが、年々大きくなるラクリマの重さで動けなくなり死亡した。
・金剛竜の剣山山脈
地面に魔力を流し込み剣山を発生させる魔法。
今回はイワンの魔力強化を貫かないように石の剣山にしたが、本来なら金剛石の剣山が発生する。
・金剛竜鱗
体を金剛石の鱗に変化させる魔法。無類の防御力を誇るが、結局魔力量で負けると、鉄にも砕かれる。
もっと厚みを持たせるとダイヤモンド・ジョズみたいになる。
・金剛竜棍
腕を金剛石の棍に変化せる魔法。伸縮自在。
ガジルの鉄竜棍の金剛石バージョン
・常闇竜の獄門乱牙(ごくもんらんげ)
八竜乱牙の闇竜一頭のみの魔法。
今回の試し打ちで魔力操作により、記憶であれば全て覗けることができることが分かった。
必要な時以外では使わないようにするかもしれない。