準決勝はそこそこ楽しめた。本来ならもっと粘れたと思うのだが、渾身の一撃を跳ね返されるのは想像していなかったらしい。
ちなみに3位決定戦だが不戦勝でジョゼの勝利らしい。まあ、あの男と戦えるレベルの魔導士ではなかったため賢明な判断だろう。
休息時間も終わり、最後の戦いが始まる。
『遂にやって参りました!!魔闘演舞、決勝戦!!!!魔導士ギルド、
相手は赤銅色のオールバックの髪に黒のマントを羽織った偉丈夫な男だ。探ってみた感じ、魔力量は先ほどの
『試合時間は無制限。どちらかが戦闘不能となるか降参することで決着とします』
にしてもこいつ見ていると無性に腹が立つ。別に初対面なんだけどな。
我ながら理不尽な怒りに疑問を感じていると、準備は整ったようだ。
『それでは両者構えーーッッ!!...始めッ!!』
試合開始の合図が出されたが相手に動きはない。こちらの出方を伺っているようだ。
「ほいじゃ適当に一発...『雷鳴竜の制圧雷砲』!!」
超高速で放たれた雷球は空を割きギルダーツに襲い掛かる。だがギルダーツ手をかざすと雷は爆ぜることなくバラバラになると四散し消えてしまった。
「どうした、もう終わりか?」
(なんだ?こいつの掌に触れた瞬間に魔力の制御が失われた…これが魔法を粉砕するということなのか?)
掌から格子状の魔法を使用したことは分かるが、簡単に斬られるような代物じゃないんだがな。
次に生成した金剛石の巨岩を投げ飛ばしたがこれも先ほどと同じく分解され消えてしまった。
これで遠距離攻撃はほぼ全滅と考えていいかな?
「今の魔法、斬撃というより分解という現象だな。触れた魔法を硬度関係なしに分解して無力化するとは、なかなかぶっとんだ魔法だな」
「滅竜魔法だったか?それを複数も扱うお前さんに言われたくねえ」
こいつの関係者の席の会話を拾うと、魔法名は『クラッシュ』らしい。
いずれ現れるとは思っていたが、いきなり出会うとはな。防御不可の即死魔法。
精神や魂に干渉する類の魔法は俺には効かんが、この手の現象を起こす魔法はくらうまでどうなるか分からん。
十中八九、魔力でギチギチに固めれば防ぐことは可能だとは思うが、万が一のため回避か相殺する方向でいこう。
その瞬間ギルダーツの姿が消え、目の前には足が迫っていた。
様子見は終わりだと言わんばかりに空に蹴り上げられ、続けざまに三発の広範囲のクラッシュを放つ。
迫りくる魔法を水、雷、闇の魔力弾で相殺すると、雷を纏って落下し、落雷の如く踵落としを叩き込む。
腕を交差させることで防いだが地面は陥没し予想以上の威力にギルダーツは顔をしかめる。
ギルダーツは片手でセレナの足を払いのけ、残る右手でクラッシュを放つ。セレナも左脚を金剛棍に換え、ギルダーツの右手を叩くことでクラッシュを明後日の方向へ受け流した。
だが右手の魔法は囮だったようだ。
「破邪顕正・一天!!!!」
「うぐぉ!?」
クラッシュを攻撃力に変換した左拳がセレナの腹に突き刺さる。咄嗟に腹を硬質化し守ったが、金剛石の最高硬度のガードを破り、セレナの肉体に深刻なダメージを与える。
頭から闘技場の壁に突っ込み、体半分埋まったところで止まった。
(いてぇ...肋骨が全部逝ったうえ、破片が肺と心臓、その他臓器に突き刺さってやがる。...俺じゃなけりゃ余裕で死んでたな)
怪我の具合を確認すると、魔力操作で異物を消滅させ、必要最低限に損傷部位を修復する。この世界に回復魔法はないからな。
このへんの肉体操作は、竜化を防ぐ際に散々行ってきたので問題なく行える。
修復を終えると周囲の壁を震動で粉砕し、元の位置に戻る。
「ふぃ、死ぬかと思ったぜ…ガキ相手に容赦ねえなぁ」
「冗談じゃねぇ。ジョゼを倒すようなやつに加減できるかよ。なんでこんな時に、お前さんのような化物が出てくんだ?」
「そうか?俺なんか、まだまだなんだが?」
「…ったくよぉ。最初とさっきの一撃、ワザと受けるやつがよく言うぜ」
まーバレるわな。
最初の蹴りは、風で体を押し出さなければ成層圏まで飛ばされただろうし、さっきの拳は防御したうえで普通に効いた。
この世界について知らないことだらけだが、人間基準で尋常じゃない魔力と、遠距離攻撃無効の即死魔法と、高い近接戦闘力の持ち主のこの男に勝てるやつなんているのか?ってレベル魔導士だな。
まあ、俺はアクノロギアを倒すことを前提に鍛えてきた。
肉体は滅竜魔法と薬でドーピングしまくりだし、自分でも魔力操作による肉体改造のしまくりである。
客観的に見ても、魔力の総量は俺の方が上だし、まだまだ引き出しは残っている。
が、賞金は多めに欲しいので、万が一がないようにしよう。
…舐めプは終わりだ。
目を閉じて集中力を高める。
魔力を今まで以上の速度で全身を循環させ、感覚を研ぎ澄ませる。
全身を駆け巡る魔力の速度が臨界点に達し、
限界を超える瞬間に不必要な感覚を…『閉ざす』
目を開けると、
それもそうだろう。突然相手の魔力どころか気配まで完全に消えてしまったのだから。
見えるのに見えない矛盾。それがギルダーツを混乱に導いている正体だ。
「律儀にこちらの準備を待ってくれてありがとう。そうそう、一つ訪ねたいんだけど...」
「テメェ、いったいどうなって--」
「光の速度で蹴られたことはあるかい?」
ギルダーツが反応する間もなく、文字通り光となったセレナの蹴りが横腹に叩き込まれた。
主人公は魔力を会得した時の参考として、前世でバトル漫画をいくつか読み漁っています。
正直、迷走しすぎたと思いますが、やりたいのでやってしまいました。
それもこれも、滅竜魔法が便利すぎるのが悪い。