いつものように魔法と薬品にさらされ続けているが、いい加減飽きてきた。ラクリマを取り込んでから更に魔力耐性に磨きがかかったようで、今までの魔法ではもはやびくともしない。俺としても実験が中途半端なものになるのは不満なのだが。
現状打破のため、研究員どもは新しく5人ほど、魔導士を雇ったようだ。全員元は正規の魔導士だったようだが、素行問題で表社会から追放されたらしい。こいつらの素性なんぞどうでもいいが、実力は確かなようで今までとは比べ物にならない威力の魔法を浴びせられていった。
そんななか俺個人も、魔力操作による筋繊維、神経、骨格を、戦闘に最適なフォルムへの改造や、魔力による肉体強化の効率化を、少しづつ探っていった
途中で、ムダに魔力を喰って肥大化しようとする筋肉や、肌が鱗に変わったりと、肉体改造に手間取った部分もあるが、問題なく作業は進んでいった。これが漫画ならそのままドラゴンに変化して力尽きるまで暴れる展開だが、あいにく異形に変貌するつもりはない。
そんな感じに鍛えていると滅竜魔法について、いくつか分かったことがある。
一つは、三半規管が特殊な形状に変化してしまうことだ。これがおそらく竜の肉体の特徴なのだろうが、これでは乗り物酔いが酷い体質になってしまう。乗り物が原因で殺されるなど笑い話にもならないので、あまり竜の形状を損なわない形で矯正した。
二つ目は滅竜魔法は肉体から直接魔法を打ち出すため、肉体から魔力を切り離すと制御を失うようだ。これに関しては持ち前の魔力操作により克服済であるためあまり問題ではないが、やはり炎のような流動体は遠隔操作に向いてはいないようだ。
三つ目に滅竜魔導士の肉体の強度だ。試しに魔導士どもの魔法を魔力強化抜きで受けてみたが、なんと肋骨数本が折れるだけで済んだ。常人が受ければ間違いなく木端微塵になる魔法をここまで受けきることができるとは思わなかった。しかも魔力による自己治癒の強化を行わず放置してみたら、僅か3日で完治できた。肉体改造の成果を含めてもこれは凄まじい生命力だと我ながら思った。
最後に自分以外の炎の制御だ。炎を食べる際に、自分から口に入れずとも、息を吸うように炎を吸引できることに気が付いた。これは某ピンク玉のような吸引力を得たわけではなく、自分の魔法以外で発生したあらゆる炎を、引き寄せられる能力があるというわけだ。つまりこの能力を応用すれば、全ての炎を自由に操れるというわけだ。
こうして修行を重ねるうちに、前世で共に鍛錬を重ねた友人…いや『シャドウ』こんなことを言っていたのを思いだした。
『核を超えるためには自分自身が核になればいい。そのためにも魔力を見つけないとね。』
突拍子のない発言を聞いたときは思わず面食らったが、今思えば合理的な発想だと思う。なぜならば、この世界において最強の存在であるドラゴンの対抗策が、己をドラゴンに変えることなのだから。
ある意味、正解を引き当てていた前世の友人の発想力に改めて感服させられた。
半年間の間だったが、だいぶ充実した修行を行えたと思う。
にしても次は水を操れるようになるか。炎といい水といい、サバイバルが楽になりそうな魔法が集まってくるな。どんなふうに使おうかワクワクしながらその日を待っていると、ようやく海王竜リヴァイアサンの滅竜魔法を手に入れる日がやってきた。