「ジェダイ評議会、ナイトのウォンとパダワンのモニアだ。予定通り監査に来た。ドッキングの許可を」
「......コードを提示して下さい」
ウォンはローブの中からカードを取り出し機械に差し込む。
「......確認しました、どうぞお入り下さい」
船がドッキングすると後方の扉が開き、ウォンとモニアはそこを通って中へ入っていく。
入って直ぐが客室になっており、そこにはこの食料プラントの管理人のテグリスが居た。
「どうもどうも! マスターウォン、お弟子さんもようこそお越しくださいました。早速本題に。我々としてもドゥークーの思想には勿論大反対でございまして......」
テグリスは向こうの扉近くにいたエイリアンにチラッと目をやった。エイリアンはそれに気づくと慌てたように部屋を出た。
「ですが最近は同業者の中でも物騒な噂をよく聞くので、我々は勿論そういった者などとは全く違うと理解頂く機会を得られて誠に」
「挨拶は結構。まずデータベースをコピーさせて欲しい。」
「......ええ、勿論です! おいドラナ! 遅いぞ!」
先程部屋から出ていったエイリアンが飲み物を持ってやって来る。
「時間がかかるでしょうから是非お飲み物でも、あ、ここにお座りください。ドラナ、データコアをお持ちしろ」
「失礼、我々は任務中持参した食料のみを許可されて居るのです。」
ウォンは、隣で飲み物に手を伸ばしていたモニアを鋭く一瞥しながら言った。
少し経つと、先程のエイリアンがデータコアを持ってきてモニアに手渡した。ウォンは隣のモニアに目配せをし、モニアは頷く。
そしてモニアは自身のカード型デバイスにプラグを差し込んで解析を開始した。
「......データベースの解析には少し時間がかかる。その間にプラント内を案内して欲しい」
テグリスは一瞬顔を曇らせたが、すぐににこやかな表情に戻った。
「もちろんです! では、まず栽培区画からどうぞ!」
テグリスに続いて、ウォンとモニアが歩き出す。モニアはデバイスから目を離さず、データを解析しながらウォンに付いていく。
栽培区画は、何階層にもわたって作られた畑だった。柵はなく、下を覗き込むと水路があり、水が流れては下の階へと落ちていく音が響いている。
「ご覧の通り、衛生面には細心の注意を払っております。我々はこのようなクリーンな環境で食糧を生産し……」
テグリスの口ぶりは滑らかだったが、ウォンはただ無言で歩を進める。
次に案内された加工区画は、機械の騒音と蒸気に満ちていた。収穫された作物がベルトコンベアに乗せられ、パッキングされていく様子をウォンは黙って見ながら歩く。
「そしてこちらが貯蔵区画です! この冷却タンクで新鮮なまま保管しているので液状食料でも標準時間で1000日は保管可能なのです!」
テグリスはやや早口でそう言う。周りには冷却液のポンプがたくさん繋がったタンクが並んでいる。
「......解析終了、異常なしでした。」
モニアは小さな声で報告する。
しかしモニアがウォンの顔を見ると、ウォンは真剣な面持ちで目を瞑っていた。テグリスもそれに気づく。
「ウォンさん? どうされました?」
「......」
ウォンはふと急に得体のしれない感覚がした。それが何かは分からないが、なにかここで運命が変わってしまうような、重要で、決定的なものだと感じた。
ウォンはその感覚に従いあたりを見回し、タンクの裏にある壁にフォースを集中させた。
ウォンがその壁を怪しんでいることを察したテグリスは顔から血の気が引いた。
「……モニア、ここの見取り図を」
ウォンが言い、モニアは慌ててデバイスで見取り図を開く。ウォンは映し出された図面を指さし、テグリスに問いかけた。
「ここだけ壁が厚い、防御用にしてもここだけ厚くすることはない。なにかご存じで?」
テグリスが答える。また少し早口になる。
「......いえ! きっと見取り図が古いんです! その……壁の向こうは、ただの断熱材が!」
「本当に何も? 空間があるように感じられるが」
「本当です!」
ウォンはテグリスから大きな焦りと緊張を感じ取った。
「......失礼、確認させて頂く。」
ウォンはそう言って、モニアに目配せをした。
モニアは頷き腰のライトセーバーを取り出す。ヒルトのボタンを押すと、鋭い音とともに青い光を放ってライトセイバーが起動する。
モニアはテグリスの制止を無視してそのままセイバーを壁に当てた。すると壁はさっと溶け、そのままセイバーを動かすことで四角い穴が開いた。
穴の中には、稼働中のコンピューターがあった。画面にはデータが転送されていることを示す、小さな点滅が幾つも確認できる。
ウォンは中身がかなり予想通りであったのを、かえって意外に感じた。
「......テグリス、これは?」
「......ドラナ! ”ブルーミルクをお持ちしろッ”
!」
テグリスはそう叫ぶと走り出す。横にいたエイリアンはその声にハッとすると服の下からレーザー銃を取り出し、ウォン達に向けて乱射し始めた。
モニアは直ぐ様ウォンとエイリアンの間に立ちセイバーを回転させレーザーを跳ね返す。
エイリアンは照準をコンピューターに移して破壊しようとするが、引き金を引いて飛び出たレーザーはモニアのセイバーに弾かれ、跳弾によってエイリアンは倒れた。
「......やはりな、モニア、この機械の動作を止めてデバイスにコピーを取らせろ」
「はいッ」
ウォンはテグリスを追う。モニアもコンピューターに機械を取り付け、直ぐ様後を追う。
ウォンはテグリスが脱出ポッドに向かって走っているのに気づいていた。ここで逃がしたら厄介である。
テグリスはそのまま走り、机を動かしたりドアを閉めたりで妨害しながら逃走を続ける。
ウォンはそれらをフォースで吹き飛ばしながら走って追いかける。
そうしてテグリスは先程の栽培区画に逃げ込んだ。
「おいッ! バレたッ! やれッ!」
テグリスがそう叫んだ瞬間、噴射音と同時にブラスターの音が聞こえ、咄嗟にウォンの前に身を出したモニアは弾に当たり、水路に転がり落ちていった。
「モニアッ!」
モニアが地面にぶつかる音がする。
ウォンはフォースでモニアの意識を確認すると、モニアの方を向くことなく、直ぐ様ブラスターの音の方を向く。
そして腰にあるライトセイバーを磁力フックから手で離してヒルトのリングを捻ると、空気を切り裂くような音とともに緑色の閃光を放って起動した。
そのまま両手で持って自身の身体の正中線の前にセイバーを構える。
「んだよ無名のマスターかよ。どうせならもっと有名なのが良かったぜ」
肥料タンクの上からジェットパックでエイリアンが降りてくる。
腰のブラスター、革のバンドリア、大きい帽子、手に持った大きなレーザーライフル、明らかに賞金稼ぎだ。
肌は緑、特徴的な頭部の形からしてカララン族だが、靴を履いている。
「エイリアン。無知な貴様に教えてやろう。評議会の最高位ではない私を『マスター』と呼ぶのは、貴様が私に敬意を払っていることになる」
ウォンはそのまま走って両足とフォースで飛び上がり、上から斬りかかる。が、ジェットパックで後ろに逃げられる。
「チッ、どうでもいい揚げ足取りやがってムカつく野郎だ。んでもって俺の名前は『エイリアン』じゃなくてブラッドだ、お前の人生で最後に知り合った男になる」
「生憎、貴様と知り合う気はない、瞬殺する。」
ウォンはまたフォースで飛び上がる。
今度は壁を走りブラッドの前に降り立ち、横薙ぎで斬りかかる。
ブラッドは後ろに倒れながらそれを避け、またそれをウォンが走りながら突くが、ブラッドはまたジェットパックを使い後ろにそのままの姿勢で勢いよく動き、距離を取りつつライフルを撃つ。
ウォンはそれらをセイバーで弾きながら走ってブラッドを追いかける。
「エイリアン、思ったよりはやるようだ。瞬殺の予定が狂った、30秒で殺す。」
ブラッドは後退を続けるが、背後には壁が迫っていた。
姿勢を前傾にし、壁を蹴ってウォンの頭上へ逃れ、裏に回ろうとする。
ブラッドの目の前まで来ていたウォンはそのまま横に回転。ブラッドを3回横薙ぎで斬ろうとするが、2回目までは空を切り、3回目でもブーツをかするだけだった。
「おいおい今のはヒヤッと」
「あと12秒」
ウォンはブラッドに裏に回られたが、そのまま回転を続け、その勢いを殺さないようにセイバーを腰や肩に通し複雑に回転しながらブラッドに斬りかかり続ける。
ブラッドはウォンの斬撃と移動の速さに焦り、ジェットパックの推進力を利用しながら後ろに下がりつつ、なんとか体を捻って斬撃を避けたりライフルを撃つ。
しかしそれらは全て回転しているセイバーに弾かれ、避けようと腰を引いた時に姿勢を崩し、3回の斬撃を食らう。ライフルを切り落とされたのと同時に胸のあたりを削がれ、腹に横の傷が入り、腰部の骨が浅く削られた。
ブラッドはそのままジェットパックに引っ張られ、倒れ込んだ後その場をバタバタと転がって向こうの壁に頭から強くぶつかった。
「3秒残し、か。ここまで腕が立つなら名くらいは知っているとも思うが。それより先程の動き......もしや......」
ウォンはセイバーをオフにし、ジェットパックが作動したまま壁に押し付けられて倒れているブラッドの下に立つ。
「死んでは......いないな。」
ウォンがジェットパックの側面のスイッチを切り、ブラッドの足にローブの中にしまっていたプラズマ錠を掛けようとしたその時、ブラッドは左手で腰の小型銃を撃とうとする。
しかしウォンは既にその事をフォースで察知しており、その手をはたいて腰の銃を水路に落とす。
「ヘッ......こんな......とこで......」
ブラッドはそのままそこで意識を失った。
「......やはり殺してしまったほうが」
「駄目だ、お前も感じたろう」
「......なにより評議会が許しません」
「いや、きっとこれはフォースの導きだ。評議会の方々もきっと許容して下さるはずだ。そもそもここで殺す利益が無い。評議会で判断してもらってからなら私も勿論納得しよう。」
「......ではどのみちコルサントですね。報告は?」
「通信可能領域に入ったら直ぐ様送ってくれ、どの道我々もすぐ向かうわけだが」
ブラッドが目を覚ますと、足は錠に掛けられ、服以外のものは没収され、腹や腰の応急処置がされた状況で壁のフックに網で捕らわれていた。
奥には先程のジェダイが居るので、ここがそのジェダイの船の中だとすぐに分かった。
「あ、起きました。」
ウォンがブラッドの所へ歩く。
「どうだ、痛みは、記憶は、意識はあるか」
ブラッドはウォンに向かって唾を吐く。
「......どうやら諸々大丈夫なようだな。」
ウォンがローブの袖で顔の唾を拭き取る。
「なんで俺を生かしてる? 俺はあんたらが知りたそうなことなんてなんも知らねぇぞ? あいつにはただ用心棒を依頼されただけだ、それともあんたらそういうシュミか?」
ブラッドがわざとらしく笑う。モニアはムスッとしてブラッドに向かって何かを言おうとしたがウォンがそれを制してブラッドに話す。
「先程の戦い、見事だった。ただの賞金稼ぎなら5秒も持たない。」
「おうおうそうかそんなにアンタはお強いんだな、だが質問の答えになってねぇ」
ブラッドはウォンの目を睨んだ。するとウォンの後ろに、奥から縛り上げられたテグリスを引きずって来るモニアが見えた。
モニアはテグリスを今のブラッドと同じようにブラッドの隣に括り付け、船の助手席に座る。
「終わりましたマスター、直ぐに出します」
テグリスは意識を失っているのか動かないでぐったりとしている。
「だから無視すんじゃねぇ、なんで俺を生かしてんだって聞いてんだよ」
ウォンはブラッドに一歩近づき、静かに言った。
「......あの戦闘で貴様が私の攻撃を回避した動き。ただのカララン族の賞金稼ぎが持ち得る技能ではない。なにより私自身が、そしてモニアも感じている」
「.......何言ってんだ?」
「......貴様はフォース・センシティブだ、ブラッド」
ブラッドは一瞬、顔から表情が消えた。
そして、直ぐ様大声で笑い飛ばした。
「ハハハ! その、何とかセンシティブってのは、あんたらみたいに光る棒をぶん回す変人らとおんなじだってことだろ? ふざけんじゃねぇそんなのまっぴらごめんだ、俺は健康優良なただの賞金稼ぎだ」
ウォンは真剣な眼差しをブラッドから逸らさなかった。
「貴様が何と呼ぼうと構わない。だがその力は貴様がただの小汚い賞金稼ぎではないことを示している。もっとも貴様は無自覚だったようだが」
モニアはちらっとブラッドの方を見た。ブラッドは顔こそバカにしたように笑っているが、驚きとほんの少しの期待が感じ取れる。モニアは何故だかそれがとてつもなく不快だった。
「アーハッハ! あーおかしい、へへッ......あんたにとっちゃ残念かもしれないが、親父もお袋もただのヤク中のクズ鉄拾いだ、それは無い。確かに俺ぁここらじゃ腕利きかもだがな」
ウォンは確かにブラッドの内に強いフォースを感じていた。だがブラッドは無垢だ。ウォンは自分が彼を正しく導かなければと思った。
そこでウォンは考える。あの妙な感覚は彼と自分とを結びつけるフォースの導きだったのだろうか。しかしどうも納得感がない。あのときの感覚はもっと決定的な、しかし、より個人的なものだった。
「フフッ、君が? 君が腕利きぃ?」
その声を聞いてブラッドが笑い声を止める。
「高い金払ってここらで一番の腕利きを雇ったと思ったのに、君はとんだ雑魚賞金稼ぎだったなぁ、あーあ」
テグリスがいつの間にか起きていた。
「ヘッ、あんたも諦めるこったな。どうせ俺らはこのまま裁判。良くて死刑、悪くて一生石掘りだ」
テグリスはブラッドの言葉を無視して続ける。
「あー、あのね、あなた方全員もう終わり。」
テグリスはニカッと笑うとウォンの方を向く。ウォンは視点をテグリスに移す。
「......聞こうか、我々がどう終わるというのかを。貴様の持ち物はすべて処分したが」
「違う違う、持ち物じゃない。あんたらコンピューターに触ったろ? あれがまずいんだ、あんたらも運が悪いなー。まともに監査が終われば死なずに済んだのに」
「......話がつかめない。分離主義含め敵対勢力の主要基地は周辺にはない。」
「あー、わかった、間違ってる点がようやくわかった。伯爵は関係ないし、その情報は間違ってる。ここら一帯の惑星はぜーんぶ”彼”のテリトリー、そろそろ部隊が来る」
ウォンが話を理解しかけた瞬間船体が大きく揺れる。
「ハッハー! タイミングバッチリ!」
「船体にダメージを受けましたッ! 場所は......通信機器!?」
「速度を上げろッ、ハイパースペースジャンプを急ぐ」
「ダメダメ、間に合わないよー」
モニアがレーダーを確認する。前方から何機か機体がやって来るのが感知できた。
「敵が接近してますッ」
「ジャンプの計算は終わるか」
「無理ですッ」
ブラッドは窓を見ていた。上方のまばらな小惑星の中からそれより早く動く緑の点々が見えた。
「あの距離からどうやって通信機器を......!」
「取り敢えず銃器類をオンにして蛇行を開始しろ、戦闘に備える。」
「なぁ、テグリスさんよ、部隊ってのが勝ったら俺も助けてくれるか?」
「は? バカか? 君、仕事失敗したんだし、君が生きてちゃ私が不快」
船内が騒がしくなる。その間にも緑色の船はウォン達の船に確実に近づいて来ていた。