「ここは......どこだ?」
「ここはエーリアスよ!」
狭間の地では聞いたことがない地名。膨れ上がる疑問に困惑しているとエルフィンは言う。
「ねえ!あなた、エーリアスじゃないところから来たんでしょ!教主がそうだからきっとそうだわ!」
「ここは、狭間の地とは違う場所ということか?」
「うーん。狭間の地がよくわかんないけど、きっとそう!」
「ひとまず助けてくれたことを感謝する。貴公、名は何という。」
「私はエルフィン!この妖精王国の偉大な女王様よ!!」
(しろがね人のような特徴をもっているが、彼らより随分愛くるしいな......)
そう心の中で思いながらエルフィンをよく観察をすると体の一部が腐敗に侵されていた。
「っ!すぐに私から離れたほうがいい!」
「え?なんで?」
とぼけた顔のようなエルフィンは呑気に疑問符を浮かべる。
「私は生まれながら腐敗という力を宿してしまっている。エルフィン、貴公も既に腐敗で体が傷んでいるだろう。」
「あ~。道理でなんだか体がちょっとだるいのね~。」
「最悪、死んでしまう。そうなる前に」
「し?しぬってなあに?」
「っ!?」
驚きで言葉が止まってしまうマレニアを差し置いてエルフィンはマイペースに言う
「そんなことより、あなたになにがあったの?なんで倒れてたの?その腐敗の力ってなに?色々話そうよ~。あ!そうだわ!」
思い出したかのように自らの懐をまさぐる。
「お腹空いたでしょ!これ私のアイスケーキ!一緒に食べましょ!」
「......」
自らの状態をもう一度考える。敗北を喫したあの時よりいくばくか腐敗の力は弱まっている。まだ腐敗へ抗う意思は尽きていない。目の前の恩人を腐敗させないために抑え込むことはできるはずである。そして何より、目の前の金髪の幼子が自らの兄と重なって見えた。
「では、いただこう。」
「あ、その刀で切り分けられそうじゃない?大きいほうは私ね!」
「......まさかこのような使い方をするなんて思ってなかったな......」
*
「エルフィン、貴公には兄弟や姉妹がいるか?」
「双子の姉がいるわ!ベリータっていうの!」
「そうか!私にも双子の兄がいるのだ。とても優しい性格で、私のこの腐敗をどうにかしようとしてくれていたんだ。そう。私のために兄様は王に......」
「うん?どうしたのマレニア?」
(私が敗れたあの褪せ人。彼は強かった。それもあのラダーンに匹敵するほどに。そして、彼が王になるのだろうという妙な確信がある。それなのに私は、あの褪せ人を止めることができず、約束を守れなかった。)
黙ってしまったマレニアをそっと手のひらを包んだ。
「なにがあったのかわかんないけど、きっとそのお兄さんもマレニアのことが好きだったのね。」
「!そうだな。」
「私のベリータもすごいのよ!とても賢くて、魔女たちの女王なの!」
「そうか。もっと色々聞かせてくれ。」
妖精女王と神人のお茶会は進んでいく。
*
二人がケーキを食べ終わって少しした後。
「あ、そろそろ反乱が収まったかしら。」
妖精王国の方見ると火の手は収まっていた。
「じゃあ私そろそろ帰るわね。マレニアはどうする?」
「私は、この世界に来た意味を知りたい。だからしばらく旅をしようと思う。」
「そう。それじゃあまたね。」
「ああ。また会おう。」
別れ際、手を振りながらエルフィンは言う。
「マレニア!友達だからいつでも妖精王国にいらっしゃい!いつでももてなすわ!!」
「友達か......初めてできたかもしれないな。」
*
「女王様!どこをほっつき歩いていたのですか!?おかげで反乱軍を収めるのが大変だったんですよ!!」
「ネルいいじゃん。それくらい。」
「女王様、なんだか少し匂いますよ?臭いです。早くお風呂に入ってください。」
「え!臭い!?確かになんだか疲れちゃったし、もう今日は寝るわ。」
「あ、待ちなさい!お説教がまだです!」
「今日も妖精王国は騒がしかったな。」
エルフィンとネルを見ながら教主はひとりごちるとそこに話しかける来客が一人。
「教主ちゃん?」
「ブルミ?どうした?」
「なんだかよくないものの気配をこのエーリアスから感じるの。」
「よくないものってなんだか抽象的でよくわからないな。」
「私にもよくわからないの!なんだかこの世界に馴染まない何か?みたいな?」
「まぁ、気に留めておくよ。」
「いざ、ってときは守ってあげるからね!教主ちゃん!」
「はいはい。」
そうして、今日も妖精王国の夜は更けていく。
*
妖精女王のアイスケーキ
妖精女王が夏によく行く店の定番メニュー
一人で隠れてつまみ食いするとおいしい
友達と食べるともっとおいしい
一時的に魔力攻撃力を高め、凍傷を少し蓄積する