マンダレイの弟はゲッターの尖兵 〜ピクシーボブによる逆光源氏計画遂行中〜   作:お粥のぶぶ漬け

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ふと他の作品を考えてる時に思い付いたんで書きました

続けるかは気分次第なので感想よろしくお願いします




1話

 

「――…信乃(しの)姉さん……?」

 

記憶が蘇り呆然とする五歳の俺を後ろから抱きしめているのは、十八歳の瑞々しい美しさを湛えた女性、送崎信乃だった。前世で画面越しに憧れていたプロヒーロー「マンダレイ」その人だ。だが、今の彼女はまだヒーロー候補生としての青さを残しており、俺を「竜(りょう)」と呼んで、弟への愛おしさを全身から溢れさせている。

 

(マジかよ……! ヒロアカの世界に転生……しかも、マンダレイが俺の姉貴!? 十三歳差とか、めっちゃ若い!綺麗!勝ち組、転生者としてこれ以上ない勝ち組だ……!)

 

俺は心の中で激しくガッツポーズを決めた。

直前までの記憶なら鮮明にある。俺は確か、自室のベッドで『ゲッターロボアーク』のアニメを視聴していたはずだ。宇宙を塗り潰す進化の光、あの狂気的なまでに熱い物語を網膜に焼き付けていた――その直後に意識が途絶え、気づけばこの世界で「送崎竜」としての生を受けていた。

 

「竜? どうしたの、そんなにニヤニヤして。……やっぱり個性が出るのが楽しみ?」

 

信乃が俺の頬を指先で優しく突っつく。五歳の俺は、姉さんの指の柔らかさに感動しながら、必死に思考を巡らせた。

 

(姉さんが信乃姉さんなら、俺の個性も何かしら発現するはずだ。せっかくこの世界に来たんだ。自分の『個性』ってやつを一度、思いっきり試してみたい!)

 

病院での個性診断の結果は「因子はあるが、何を待っているのか分からない」

という非常に曖昧なものだった。だが、俺の胸の奥には確かに「何か」が疼いている。俺は純粋な好奇心に突き動かされ、自分の内側にある「力の種」を、強引に掴み取ろうとした。

 

(……来い! 恐らく精神系、それか信乃姉と同じテレパスだと思うが、俺の『個性』、さっさと目覚めろッ!!)

 

本来、個性の発現はもっと緩やかなものだ。しかし、五歳の子供の未熟な渇望と、転生者としての巨大すぎる魂、そして死の間際に見ていた「ゲッターロボの記憶」の残滓が、最悪の化学反応を起こした。

意識の深淵へ手を伸ばしたその瞬間。

俺の精神は、対象を指定しないまま次元の壁を突き抜け、あの日、死の直前に見ていた宇宙で最も「熱い」進化の波長に同期してしまった。

 

――ドワォォォォォオオオ!!

 

視界のすべてを、目に焼き付くような禍々しくも美しい**「緑色」の輝きが埋め尽くす。

それは、遥か未来か別次元の宇宙で、終わりなき闘争と進化を続ける『ゲッター艦隊』**の意志だった。

 

(なっ……!? 繋がった先が、宇宙の果て!?)

俺が求めた「個性」というスイッチは、よりにもよって、次元を跨いで宇宙の真理そのものであるあの狂気の光を呼び寄せる信号(ビーコン)になってしまったのだ。

 

『……見つけたぞ……』

『……未知の因子「個性」……これこそが、我らの求めた新たな進化への鍵……』

『……あらゆる「個性因子」の情報を収集せよ。あわよくばその力そのものを奪い、この世界の特異な「技術」もすべて食い潰せ……』

 

接続されたのは、この世界の「個性」なんていう生易しいルールではない。全てを尽く吸収、再構成する進化のエネルギーの奔流――ゲッター線。

彼らは竜という個体を使えるか使えないかなど関係なく、情報収集のための**「端末(ターミナル)」として、その生身の肉体**を強制的に造り変え始めた。

 

「ぎ、ぎゃあああああああああああ!!」

「竜!? 竜、どうしたの!?」

 

信乃の悲鳴が聞こえる。同時に、彼女の個性『テレパス』を通じて、俺の脳内に彼女の深い動揺が流れ込んでくる。だが、俺の体の中では、眠っていた個性因子が猛烈な勢いで宇宙の果てからの緑の光を吸い込み、爆発的な変異を始めていた。

 

(待て、やめろ! 俺の体、勝手に『造り変えられてる』!?)

 

細胞の一つ一つが、高効率なエネルギー炉としての機能を備えるよう、分子レベルで最適化されていく。

機械化ではない。だが、血管を流れる血はより熱く、心臓の拍動は重厚な駆動音を伴い、肺は周囲のエネルギーを取り込む吸気口へと変質する。

人のまま、人を辞める。胸の中央に、宇宙の熱源を直接宿したような「炉心」としての機能が定着した。

 

(ふざけんな! 俺を……俺の身体を、勝手に進化の『パーツ』にすんじゃねぇ!!)

 

俺の叫びも虚しく、胸の奥でドクンと最初の拍動が刻まれた。あらゆる物質、エネルギー、そして「個性」すらも分解し、吸収するための「生命の胃袋」が、俺の中に完成してしまった。

 

【運命の交錯と再起】

この異変にいち早く気づいたのは、信乃のチームメイトである「ラグドール」こと、知床知子(しれとこともこ)だった。

 

「お待たせ信乃! 竜くんの個性をあちきの『サーチ』で見極めてあげ――」

 

十八歳の彼女は、本能的な違和感に突き動かされ、竜に個性を放った。その瞬間、知子は言葉を失い、その場に崩れ落ちた。

 

「ひっ、……あ、あああ……っ!!」

 

彼女の目に映ったのは、五歳の少年ではない。

少年の背後にそびえ立つ、地球を片手で握り潰して笑う、全身から緑の閃光を放つ真っ赤な悪魔の幻影。その理を維持するために打ち込んだ、あまりにも暴力的な進化の意志。

知子はそのまま白目を剥き、恐怖のあまり失神した。

それから数日。

俺は自室のベッドで、絶望していた。自分の胸の奥で脈打つのは、あまりにも力強く、重い鼓動。目を閉じれば、次元の向こう側から「早く個性を食わせろ」「この世界の技術体系を解析しろ」とゲッター艦隊の冷徹な意志がプレッシャーをかけてくる。

 

「……あーあ。ヒーローどころか、ただの捕食端末じゃねぇか……」

 

そんな「怪物」に、誰が助けを求めるというのか。

その時だった。

 

「なーに湿気たツラしてんのよ、竜ちゃん!」

 

勢いよくドアが開き、土川流子(つちかわ りゅうこ)が飛び込んできた。

 

「流子(りゅうこ)さん……」

「流子お姉さん、でしょ! 知子(ともこ)がああなったのは、あの子の精神がちょっと繊細すぎただけ。強い力、いいじゃない! 規格外、最高じゃない!」

 

十八歳の流子は、竜を強引に抱き寄せ、その瞳を覗き込んだ。

 

「制御できないなら、できるようになるまでお姉さんたちがシゴいてあげる。あんたが将来、とびきり強くなって私を養ってくれるなら……今の絶望なんて、未来への希望に早変わりよ! これぞ究極の投資、『逆光源氏計画』! 私好みの最強ヒーローに育て上げて、将来はじっくりいただいてあげるから!」

 

流子の目は、宝石を見つけた肉食獣のようにキラキラと輝いていた。

ゲッターの端末。宇宙の尖兵。そんな禍々しい運命よりも先に、肉食女子の執念が竜を圧倒した。

 

(……ああ。ゲッター艦隊がどうとか、もうどうでもいいや)

 

竜の心に、ふっと灯がともった。たとえ端末だとしても、この肉体を動かしているのは俺の意志だ。

俺を愛してくれるこの人たちを守るための「力」に変えてやればいい。

 

「……分かったよ、流子。俺、やってみる。あんたを養えるくらいの、最強のヒーローになってやるよ」

「え……今、呼び捨て……?」

「流子が『計画』だなんだって俺を男として見てるんなら、お姉さん扱いはもうおしまいだ。これからは、お互いに名前で呼び捨てだ。いいな?」

「……っ! ……え、ええ、わかったわよ……竜!」

 

流子は顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうに不敵な笑みを返した。

 

【野生の咆哮:2月26日】

それから10年。

竜は流子のスパルタ指導の下、魔獣の森で山を駆け、流子が個性『土流(どりゅう)』で生み出した土の魔獣を砕き、生身の肉体を極限まで「最適化」し続けた。柔(やわら)の個性『軟体』による、関節を外されるような超近接格闘術も、竜の生存本能を研ぎ澄ませた。

かつての可愛らしい少年の面影は消え、そこにいたのは、前世で見た「流竜馬」を彷彿とさせる、不敵な笑みを浮かべる野獣のような男前だった。身長は180cmを超え、贅肉を削ぎ落とした鋼の筋肉は威圧感を放っている。

 

「竜! 忘れ物はない!? ハンカチ持った!? 終わったら美味しいもの食べに行きましょうね!」

「竜ちゃん……じゃなくて竜! 暴れすぎて会場壊しちゃダメよ! 応援してるわ!」

 

玄関先で、すっかり過保護な姉と化した信乃と、相変わらずギラついた視線を送る流子が送り出してくれる。

 

「わかってる。行ってくるよ」

 

2月26日。雄英高校、実技入試会場。

群れを成す受験生たちの中心で、竜は静かに目を閉じる。

 

(……聞こえるか、ゲッター艦隊。あんたたちの欲しがってる『個性』と『情報』、山ほどあるぜ)

 

胸の奥、生身の炉心が重厚な駆動音を上げ、全身の血液が沸騰する。血管を流れる熱はもはや人間の域を超え、周囲の空気を歪めるほどの陽炎となった。

 

(だが、これはあんたたちのためじゃない。俺が最強のヒーローになるための、ただの『手段』だ。……全部食らい尽くして、俺の血肉に変えてやる)

 

目を見開いた竜の瞳の中で、鮮やかな緑色の光が爆ぜた。

 

「さあ、始めようぜ。……チェーンジッ!ゲッター1ッ!」

 

プレゼント・マイクの開始合図が轟く直前、竜の肉体はすでに、炉心に溜め込んでいたエネルギーをもってゲッター1を装甲の如く纏っていた。

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