マンダレイの弟はゲッターの尖兵 〜ピクシーボブによる逆光源氏計画遂行中〜   作:お粥のぶぶ漬け

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第3話

雄英高校の実技入試が終わり、夕闇が迫る頃。竜は「魔獣の森」の拠点へと帰宅した。入試の興奮がまだ冷めやらぬまま、玄関の扉を開けた瞬間――。

 

「竜! お疲れ様ぁぁぁ!!」

「ぐはっ……!?」

 

 正面から突っ込んできたのは、28歳のまだまだ瑞々しい肉体美を誇る**土川流子(ピクシーボブ)**だった。かつての「竜ちゃん」という呼び名は10年前に捨て去られている。彼女は今、一人の男としての「竜」に力任せにしがみつき、その豊かな胸を鋼のような体躯に押し付けていた。

 

 「流子……苦しい、離せ。28にもなってその飛びつき方はねぇだろ」

 「いいじゃない! 私が10年かけて手塩にかけて育てた『極上の投資先』が、あんなにカッコいいところ見せつけちゃって! 私、もう我慢できないわよ!」

 「……流子、はしゃぎすぎ。竜、お帰りなさい」

 

 奥から現れたのは、竜の実姉、**送崎信乃(マンダレイ)**だ。彼女もまた28歳。落ち着いた気品を纏いつつも、弟を見つめる瞳には、流子に負けじという独占欲が滲んでいる。

 

「信乃姉……ただいま。合格したかどうかは、まだ分からねぇけどな」

「ふふ、とぼけなくていいわよ。……ねえ、流子?」

 

 信乃が意味深に微笑むと、流子が自慢げにスマホの画面を見せてきた。そこには、雄英高校の演習場で0Pヴィランを貫く竜の「ゲッタービーム」の静止画が映っていた。

 

「……は? なんでそれを……」

「実はね、私と信乃で根津校長にお願いしに行ったのよ。『弟を贔屓しろとは言わない。ただ、個性の性質上、万が一の暴走があったら私たちが責任を取る。だからモニターで監視させてくれ』ってね!」

「……黙って見てたのかよ」

 

 竜は顔を赤くして視線を逸らした。プロヒーローとして、そして「一人の女」として自分を育ててきた二人だ。贔屓なしと言いつつ、全神経を集中させて自分の戦いを見ていたことは容易に想像がつく。

 逆光源氏計画の「収穫祭」。その夜、豪華な夕食を終え、リビングで寛ぐ竜に、流子が背後から抱きついた。

 

「いい、竜? あなたは私と信乃が共同で磨き上げた最高の男なの。雄英には可愛い女の子もいるでしょうけど、青臭いガキにフラフラしたら、この魔獣の森の土に埋めちゃうからね?」

 

 流子は竜の耳元で吐息を漏らす。28歳の女性が放つ香りと、10年間の「教育」の重み。15歳の竜にとって、これはのゲッター線の意志とは別の抗いがたいプレッシャーだった。

 

「わかってるよ。……あんたたち以上に『濃い』女なんて、そうそういねぇだろ」

「……っ! さらっとそういうこと言うんだから……本当、いい男になったわね、竜」

 

 流子は顔を赤らめ、嬉そうに竜の腕を抱きしめた。10年前、生意気に「呼び捨て」を宣言した5歳の少年の言葉を、28歳の彼女たちは今、何よりも重い約束として抱えている。

 

(竜……あなたは、放っておいたら私たちの手の届かないところまで進んでしてしまうのかもしれない。でも、その根っこの部分は、私たちが繋ぎ止めてみせる)

 

 信乃の深い決意がテレパスとなって竜の脳内に溶け込む。

 竜は少し気恥ずかしくなり、視線を窓の外の夜空へと向けた。

 

(……ゲッター艦隊。あんたたちの欲しがる『進化』も『闘争』も、俺の勝手だ。求めるものに多少の融通はきかせてみせるが…俺は、この場所を守るために、あんたたちの力を使い潰してやるよ)

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