退部届は自分の手で   作:砂廣ジュン

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影なきアマルス/ドリーム牧場

 

 

 昼空に、カブトが飛んでいた。

 

カブト「きゅぅ〜……」グルグルメ

 

ケララッパ「けらららっっぱ!!!」ブンブン

 

少年「カブトがケララッパに引っかかって飛んでる……」

 

少女「カブトは飛ぶかって言うけど、飛ぶんだね……」

 

ロトム「ケララッパも鬱陶しそうにしてるロト……」

 

 

 

少年「ダブラン!」ボム

 

ダブラン「ららん……だぶ!?」ニドミ

 

ロトム「こんなバラエティ番組みたいな光景見たら二度見もするロトね」

 

少年「"サイコキネシス"で良い感じに外してあげて」

 

ダブラン「だぶっ!」サイキネ

 

カブト「きゅっ!?」フワリ

 

少年「はい、キャッチ」

 

 

 

少女「この子、どこから来たんだろう?」

 

おじさん「おお、カブト! 無事だったか!」

 

少年「このカブトのトレーナーですか?」

 

おじさん「そうだ。お〜愛しのカブトよ。ごめんなぁ〜」ダキッ

 

カブト「きゅう!」ギュッ

 

少女「良かったね〜、カブト!」

 

おじさん「少し先に私の土地がある。カブトの恩人方にお茶でも淹れよう!」

 

 

 

 おじさんに連れられた先の開けた土地には、トレーラーと建材が置いてあった。

 

 その周囲ではカセキポケモンが3体放し飼いにされている。

 

おじさん「ここはドリーーーム! 牧場! カセキの研究やっとるぞ」

 

少年「オムナイトにチゴラス、アーケンまで居る!」

 

おじさん「いつの日か、大昔のポケモンでここをいっぱいにしてやる!」

 

少年「カセキ再生マシンだ……これ、お高いんじゃ?」

 

おじさん「夢のためなら大金程度なんのその!」ガハハ

 

 

少女「……ねえ。カセキ再生マシンってことはこの子たち、元は大昔のポケモンを蘇らせているんでしょう? ちょっと可哀想……」

 

おじさん「よく言われるよ。だが、ポケモンたちは可愛がっている。それに、これは男のロマンだ。カブト、オムナイト、チゴラス、アーケン、そしてアマルス。今はまだ五体だけだが、必ず実現してみせる!」

 

少年「アマルスも居るんですか?」

 

おじさん「おや? 放していたはずだが。あんな大きい子が目に入らないはず……」

 

 おじさんの目が周囲を見渡す。

 

 木の上のアーケン、じゃれあっているチゴラスとオムナイト、そして腕の中のカブト。

 

おじさん「一匹足りなぁぁあああい!!!」

 

ロトム「このおじさん逃し過ぎロトぉ!!!」

 

 

 

少女「ムーランド! おじさんの臭いを嗅いで、アマルスを探して!」ボム

 

ムーランド「ぼふっ!」

 

少年「アマルスが戻ってくるかも、おじさんはここで待ってて!」

 

ロトム「僕のアドレスを教えるロト! アマルスが戻ってきたら連絡するロト!」

 

おじさん「わかった!」

 

 

 

ムーランド「ぼふ……」フルフル

 

少女「……ダメね。ここの小川を通ったみたい。臭いが途切れているわ」

 

少年「困ったな。ダブラン、何か見つからないか?」

 

ダブラン「らんらん……」フルフル

 

少女「えっと、さっきからダブラン混乱してない? さっき見た場所を何度も見たと思えば、今はいきなり地面に這いつくばったりしてるけど」

 

少年「ダブランには二つ分の脳みそがある。別々のことを考えている分矛盾した行動もとるけど、発想が求められる場面だと優秀だ」

 

少女「心がふたつある……ってコト!?」

 

少年「合ってる」

 

ダブラン「だぶ! だぶ!」ブヨブヨ

 

少年「どうした? 地面を見ろって……ここ、霜が降りてる」

 

少女「アマルスの冷気! 行ってみましょう」

 

 

 

 ムーランドに乗って、今度は臭いではなくアマルスの冷気の跡を辿っていく。

 

 横道に見えるカリキリの群れは、鈍い動きで冷気の道から避けていく。湧き水を見れば、ヌメラが縮こまって水に浸かっている。

 

少女「……ねえ」

 

少年「どうしたの?」

 

少女「ポケモンを元々いない場所に連れてくのってどうなんだろう。当のポケモンも、周りも辛くなるなら……」

 

少年「……」

 

 表情から、カセキのおじさんを責めているわけじゃないことはわかった。

 

 ポケモンライドは、人間の力では行けない場所に行くためにポケモンの力を借りるサービスだ。

 

 つまり、本来住んでいたのとは違う過酷な環境に、育てたポケモンを送り込むことでもある。

 

 育てたポケモンが、こんなふうに苦しむかもしれない、そう考えたんだろう。

 

少年「難しいよね……」

 

 そう、言うしかできなかった。

 

 

 

???「さらなる輝きを得るには、ゼンリョクの冒険をしてこそだと思うよ。ライチさんはね」

 

少年「アマルス!」

 

少女「しまクイーン!」

 

ライチ「アローラ。盗み聞きみたいになってごめんね。このアマルスの知り合い? ライチさんが保護してたよ。暑さで弱ってたからね」

 

少年「トレーナーから逸れたので探していたんです。ロトム、おじさんに電話して知らせて!」

 

ロトム「こっちからアドレスは渡したけど、あっちのアドレスはもらってないロト」ムリムリ

 

少年「確かに」

 

 

 

おじさん「おお、アマルス! 無事で良かった!」ダキッ

 

アマルス「ひゅぉおおん!」

 

ライチ「あんたのカセキ研究は応援しているよ。けどね。自分のポケモンの面倒は見なさい」

 

アマルス「ひゅおん……」

 

ライチ「少なくともライチさんのポケモンはみんな、あたしにとっては子どもみたいなものだよ」

 

おじさん「はい……」

 

ライチ「さてと。しまクイーンの仕事をしましょうか」

 

少女「はい! 大試練お願いしたいです!」

 

おじさん「かわいいポケモン達の恩人だ! 場所が必要ならここで戦うと良い!」

 

ライチ「ありがとう。アーカラ島3人のキャプテンの試練をこなし、挑むは しまクイーンライチの大試練! 準備は良い?」

 

少女「よろしくお願いします!」

 

ライチ「アーカラで一番ハードなポケモン勝負、ガツンといくよ! アノプス!」

 

少女「行きます! ラプラス!」

 

 

 

 ラランテスを完封した少女も、この大試練には苦戦しているようだった。回避の指示が、少し甘い。

 

少女「ああっ、ムーランド!」

 

 アノプスとリリーラ、ルガルガンの猛攻で、既にラプラスもムーランドも倒れた。

 

 戦況は、互いに残り一体。

 

少女「お願いっ、バンバドロ!」

 

バンバドロ「ぶるるるっ!」

 

 バンバドロはやる気十分とばかりに地面を踏み鳴らしている。だけど、速度はどうしてもルガルガンが勝る。

 

ライチ「あたしらのゼンリョク、ぶつけるよ! ルガルガン、"ワールドエンドフォール"!」Zポーズ

 

ルガルガン「るっ……がぁぁあああ!」ガッツデセメロ!

 

少女(こんな大きな岩、避けられない……! どうする、どうすればいい!)

 

バンバドロ「ぶるっ!」

 

少女「……! わかった、耐えて! バンバドロ!」

 

バンバドロ「ぶるるるるっ!」

 

 Zパワーを帯びた巨石が、守りを固めたバンバドロに降りかかる。

 

 

 

 ドリーム牧場に砕けた瓦礫が散乱する。少年とおじさんも、ダブランの"リフレクター"がなければ危なかったほど。

 

 直撃を喰らったバンバドロは——

 

少女「行けーーっ!」

 

 瓦礫を吹き飛ばして、渾身の"10まんばりき"がルガルガンを打ち据える。

 

 ルガルガンに、効果は抜群だ!

 

ルガルガン「」バタンキュー

 

少女「勝った……?」

 

ライチ「すてき、ね。戻って、ルガルガン」

 

少女「勝った! 勝ったよ! バンバドロ!」

 

バンバドロ「ぶるるっ……!」

 

 

 

ライチ「迷いは吹っ切れた?」

 

少女「……いえ! 吹っ切れてないです!」

 

ライチ「そうかい。だけど、耐えるように指示できた。あれを忘れちゃだめだよ。競う相手は自分自身、共に歩むのはポケモンだからね」

 

少女「はい!」

 

ライチ「島巡りは逆のタイプとも関わる良い機会だ。あんたの冒険が、驚きや発見にあふれてることを願ってるよ」

 

少女「ありがとうございます!」

 

おじさん「4人とポケモンの分、ロズレイティーを淹れたよ。感謝と、勝利を祝ってな。ライチさん、音頭を」

 

ライチ「ありがとう。カップは持ったね? 大試練突破者に、乾杯!」

 

3人「「「乾杯!」」」

 

バンバドロ「ぶるるっ!」

 

 

 

 4人でロズレイティーを飲みながら、色々なことを話した。

 

 アローラのこと、カセキのこと。ブルベ学園の話もした。

 

 ムーランドとラプラスも、回復マシンで回復してから合流してポケモン同士で楽しんでいるようだった。

 

 月が出るまで話して、モーテルに泊まった。

 

少年「楽しかったな……」

 

 帰り際におじさんにもらった輝く石。月にかざすと、きらりと瞬いて見えた。

 

 

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