宇宙世紀ガンダム世界で生存戦略 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
キシリアの巣窟である月から早々に離れ、ニュータイプ研究所に送る人員を除き、独立作戦艦隊の面々はソロモンへと向かった。
ここはドズル中将が管理している為、キシリアの手の者も迂闊に手を出せないだろう。
(多数の女性と肉体関係を結んでいる俺をキシリアは生理的に受け付けないだろうから、絶対に上に立ったら粛清してくるんだよな……それを押し殺してでもニュータイプ研究に協力を要請してくるのは……まだ理性が残っている証拠か?)
「フジワラ閣下入ります」
「ホフマン少佐か……どうかしたか?」
「は、重力戦線において赤作戦が始まりました。経過は過去一手こずっているようです」
「そうか」
東南アジア制圧を目的とした赤作戦。
大規模な空戦が展開された為、航空戦力の劣るジオン軍の進行速度は遅く、更に熱帯地帯故に疫病と熱帯雨林に阻まれ、未知の環境に、ジオン軍の歩兵は地獄を見ているとのこと。
支配地域を広げてもゲリラによる抵抗も合わせてジオン軍は無視できない損害が広がりつつあった。
現在重力戦線には約300万人の将兵が派遣されているが、宇宙に戻ってこれるのは……50万人が帰れれば上々だろう。
(旧日本軍が中国の泥沼に無限に人材と物資を浪費しているのと同じ感覚だろうな……資源地帯だけ抑えれば良かったものの、欲張ったなぁ……)
「制宙権が取れているのでギリギリ補給できておりますが、ジオンの人口を考えますと既に徴兵限界は近づいております」
ジオン公国はコロニー40基に人口1億5000万人。
そこから全軍合わせると500万人近くが兵に取られている。
全体で考えると全人口の3.5%が兵になっていることになる。
ちなみに旧日本軍が人口の観点からも近いが、太平洋戦争末期に兵力750万人だったはずなのでジオン公国には一応まだ余力があることになる。
計算上はになるが……。
「国家総動員法における徴兵限界が750万人、重力戦線に更に100万人の兵を投入すると参謀本部は発表していたから……ジオンの若者は更に減ることになるな」
「未来を担う若者が消費されるのは実に心苦しいですなぁ」
ホフマン少佐はそんな事を本題にする訳が無いので、探りを入れる。
「で、本題は?」
「……地球の兵達でモラルが崩壊しているらしく、各地で虐殺や略奪が発生しているらしいです。総帥の優性人類生存説の弊害が出てしまっているようです」
「……宇宙でも聞こえてくるとなると相当だな」
「一応握りつぶしては居ますが、そのうち連邦軍がプロパガンダとして活用していきそうです」
「……ままならんな」
連邦が復讐を強めればジオンの兵がより死ぬことになる。
かといって宇宙の俺達に対応できることは無い。
「ドズル中将もこの事は」
「一応耳には入っているようです……ただ管轄が違うので何とも……」
「……補充兵の質は更に落ちると考えた方が良いな」
「はい」
「完成しました」
7月上旬、リキール工廠にて新型モビルスーツ……プロトタイプゲルググが完成した。
兵装はザク・マシンガンとヒートホークの改良型であり、ザクの武装をそのまま流用することもできる。
「エンジンはリキール・ドムと同じ超小型熱核融合炉を活用したため出力は変わりませんでしたが、推進力はリキール・ドムに比べて1万kgほど増加しています。装備の全重量も5トンほど軽量化に成功し、73トンまで軽量化させる事に成功しています」
製造コストもザクⅡの1.4倍程度と初期のヅダより低くなっていた。
足回りが良くなり、安定性が向上したドイツ軍のパンター戦車みたいな機体である。
「これを更に改修を加え、量産に適した機体に調整してみせます!」
「頼むぞ! マーズ、カガリ、メイ!」
「「「は!」」」
その後7月末に行われた新型主力モビルスーツの試験において、ジオニックからはザクⅡB型とF型を更に強化したザクⅡF2型、ツィマッドはリック・ドムの改修型のリック・ドムC型、そしてリキール工廠からはゲルググを提出した。
結果はゲルググが全ての項目で圧倒し、ゲルググの量産が決定された。
ただザクⅡの改修が可能なF2型は部分採用が決定され、その分はジオニック社に任せられることになる。
「ゲルググの量産は8月下旬から始まるから、9月頃にはリック・ドムとゲルググが宇宙の主力になるよ」
「あとはビーム兵器だな……メイ、ビーム兵器はどうなっている?」
「小型化は進んでいるのですが、空冷式に手間取ってしまっていて……もうしばらくかかるかと」
「なるべく急いでくれ……ゲルググは携行ビーム兵器を揃えて初めて完成するからな!」
「はい!」
8月に入り、ジオン公国では宇宙に展開している軍の規模が戦前基準に戻ったと発表したが、確かに艦の艦数は若干増加しているし、なんならドロス級宇宙空母が戦列に加わった事で艦の戦力は増加していた。
しかし、人員に関しては地球に降ろした将校も多く、練度は戦前よりも下がってしまっていた。
うちの部隊もサラミス級14隻とリキール重工作艦と大所帯である。連邦の操縦系なので慣らしに少し時間がかかってしまったが、8月半ばには船員も慣れ始め、十分な戦力として機能するようになっていった。
更にサラミス級の軽空母化の改修も完了した上で対空砲を追加し、弾幕性能の強化もしていた。
(まぁ弾幕張れてもモビルスーツに近づかれたら撃沈されるからな……結局モビルスーツに対抗できるのはモビルスーツかモビルアーマーくらいか)
少しずつ連邦でV作戦が進んでいるという情報が入ってきているが、内容が掴めないでいた。
(サイド7には近づけないし……俺等は暇で良いけどあと4ヶ月もしないうちに戦局が破滅に傾くんだよな……)
地上での損失が30万人を超え、相当数のジオンの若者が亡くなっていた。
(これガンダムをなんとかしてもジオン負けるんじゃね?)
そう思わずにはいられないのだった。