宇宙世紀ガンダム世界で生存戦略 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「フジワラ閣下」
「集まったか」
1月2日……ア・バオア・クー宙域から脱出したジオン敗残兵達はL1と呼ばれるサイド5宙域へと転進を行った。
サイド5宙域であればデブリが多く、大艦隊での進出は困難であるという判断と、リサイクル作戦で修復した工業コロニーに残してきたジオン兵やジオンシンパの工員が居たため、補給及び艦の修繕の為に立ち寄ったのである。
俺の前には佐官以上の人員が集まっていた。
俺、ホフマン大佐、シーマ少佐、アベリー少佐……その他にザンジバル級の艦長をしていたエレン中佐とバイチェフスキー中佐、モビルスーツ連隊の隊長をしていた女性指揮官のザイドリッツ少佐の7名がリキールに設置されていた司令室に集まっていた。
尉官はまだ数が多いのであるが、佐官以上はほとんど戦死してしまった為、佐官はこれだけである。
「さて、ア・バオア・クー陥落及びジオン公国を支配していたザビ家首脳陣が全員戦死してしまったこと、ジオン公国本国でダイクン派がクーデターを起こし、共和制に移行したことは知っていると思う」
その場にいる全員が頷く。
「この場に居る者だとアベリー少佐、シーマ少佐以外のメンバーは少なくとも何かしらザビ家と繋がっていたり、派閥に属していたメンバーだ。戦犯なのは避けられない」
エレン中佐は地球にて作戦行動中に補給が難しかった為、現地調達を繰り返してしまい、それが戦犯の可能性を強めていた。
バイチェフスキー中佐は本国で学徒兵の徴兵に関わっていた為、本国に戻れば袋叩きにされてしまう可能性が高く、ザイドリッツ少佐はキシリア少将によって階級を引き上げられており、秘密作戦に幾つか従軍していた為、記録が残っていれば戦犯の可能性があった。
アベリー少佐とシーマ少佐以外は本国に戻れない理由があったのである。
「軍人として職務を全うするのであれば本国に戻り、軍事裁判に出頭するのが筋だが……皆死にたくはないだろ?」
全員が頷く。
「まず学徒兵、彼らのうちサイド3に帰還を望む者はサイド5のテキサスコロニー経由で帰還させる。で、残った人員については俺が責任を持って面倒を見る」
「上官殿、発言をよろしいでしょうか」
「ザイドリッツ少佐何だ」
「その……私はキシリア派閥に属していたのですが、ギレン派の上官殿はよろしいので?」
「ギレン派だ何だはうちの実家がザビ家に近かったことと、粛清されないための方便だ。何故かギレン様の犬扱いされていたが……派閥は気にせんよ。それに派閥だ何だ言っている状況では無いだろう」
「そ、そうですよね。失礼しました」
「話を戻すぞ。まず俺達には幾つか選択肢が存在する。1つは他のジオン残党と共にアクシズを目指す選択だ。ジオン再興を考えるのであればこれが一番ベターだな。ミネバ様もいらっしゃるし」
「2つ目、地球圏が混乱状態なのを利用して身分を偽装する。結構な人数が居るが、俺のコネを使えばなんとかなると思う。他人のふりをして生きるパターンだ」
「3つ目……独自陣営を立ち上げる」
場に緊張が走る。
「正直ジオンの残党としては最大勢力に俺達は現状なっている。宇宙はこれから更に荒れていくと考えて独自に陣営を立ち上げて動くというのも選択肢として取れるだろう。俺達が取れる選択肢は主にこのどれかである」
皆一様に考えるが、アベリー少佐とシーマ少佐は
「フジワラ閣下に俺はついていくぜ」
「私もだ。本国に帰っても冷や飯食いになるだろうからねぇ」
選択肢をこちらに投げてくれた。
一方で他の佐官達はどうするべきか悩んでいる。
「閣下はザビ家の再興はなると思いますか?」
「それは無いな。全人口の半数を死に追いやった虐殺者を再度表舞台に連邦政府が出すと思うか?」
「……そうですよね」
バイチェフスキー中佐はザビ家に思い入れが強かったのか、少し気落ちする。
「2と3だが、地球圏に残るのであれば俺は起業するつもりだ。他の艦もここのコロニーの施設を使えば外装を変えることができる。そのまま表向きはデブリ回収や工廠の技術を生かしてモビルワーカーを製造すれば十分に利益を上げることができると思うのだが……それかアクシズに行き、主導権をガッツリ握るかのどちらかだな」
「閣下はどちらが良いと?」
「生活面の充実なら前者、リターンが大きいのは後者だな。後者は時勢さえ見極められればサイド3に帰還できる可能性すらある」
「ただ前者でも利益次第では中古のコロニーを購入することもできると思うけどな」
ローリスク・ローリターンかハイリスク・ハイリターンのどちらかである。
結局佐官達は俺の指示に従うというので纏まり、俺はアクシズには行かない選択肢を取るのであった。
「負傷兵の治療を優先だ! 元気な奴らは艦の修復の手伝い!」
現場では負傷兵の治療が懸命に行われていた。
基本宇宙での戦闘はモビルスーツが壊れたり、ノーマルスーツが壊れれば死に直結してしまうが、ノーマルスーツが壊れなくても腕を折ったとか色々な要因で負傷兵が出てくる。
他にも大規模戦闘で皆一様に疲れ切っており、休みを欲していた。
「ジオンは連邦に負けたってさ」
「となると次は本土決戦か?」
「俺達はどうなるんだ?」
「でもギレン総帥もキシリア閣下も戦死したと聞いたぞ」
「将校もほとんど戦死。うちはフジワラ閣下が生きているから統率ができているけど」
「クソったれ! デラーズ艦隊め! 学徒兵が頑張っている時に早期撤退しやがって!」
「そうだ! デラーズ大佐は何をしていたんだ!」
様々な感情がぶつかっていたが、フジワラ少将が姿を見せた事で、場は静まり返る。
「諸君、戦争は終わりだ。ジオンは負けた。我々上層部は話し合いの末、今後どうするかというのを決めた。まず本国の情勢を語っていくとしよう」
フジワラ閣下は、サイド3本国ではクーデターが発生し、ザビ家の政権は転覆させられ、共和制へと移行したと説明する。
その為ザビ家に近かった者や尉官以上の者は本国に帰るのは危険であると説明された。
逆に学徒兵や徴兵された兵士は現在サイド5宙域に居るため、サイド5経由で本国に戻ることは可能だと話される。
「一方で、ジオンが敗北したことにより地球復興の為スペースノイドがさらなる重税を課せられる可能性が高い為、スペースノイドの独立の為に戦っていた者は私に考えがある! 地球連邦から真の独立を目指すのであれば私にもうしばらく協力してほしい!」
そう閣下は力強く宣言された。
本国でも不敗の将軍として人気のあったフジワラ閣下の言葉に多くの兵達は魅了され、誰かがジークジオンと叫ぶ。
それに合わせて皆ジークジオンジークジオンと叫び、熱は伝播していくのであった。