宇宙世紀ガンダム世界で生存戦略 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「旧式の兵器についてはネットにある程度情報が転がっているんだよな……」
宇宙世紀になってからでも20年も経過している兵器については基本一般にも情報開示がされている。
転生の意識が覚醒する前のフジワラも工科大学で旧世紀の兵器開発史なんかは習っていたし、今の部署に携わるようになってからも知識としては収集していた。
(ジオンの兵器開発形態は地球の兵器から完全に逸脱してしまっている。まぁ重力を気にする必要が無いから、大気圏突破能力を保有しなくて済むし、無重力が基本だから形に関しては自由が利く……しかも軍としてまだ未成熟)
黎明期の軍というのは結構迷走しがちであり、第一次世界大戦後の戦車開発史なんかはとても面白い。
火力不足が心配されながらも運用や戦術が確立できていたドイツ軍が戦車単体としては防御力が高かったフランス軍を完勝できた理由でもあり、ジオン軍は発展途上故に兵器や艦船設計も奇抜な物が多く感じる。
勿論中には宇宙運用で理にかなっている物も存在する。
俺の一押しは新型のパゾク輸送艦……あれは宇宙運用を前提とするのであれば複数の軍艦を素早く補給するという輸送艦の運用方法と合致した設計であると言える。
一方で気に入らないのはコムサイ……あれはなんでムサイ級軽巡洋艦に取り付けたのか……確かにテレビシリーズではシャアがアムロ達の居るホワイトベースを追撃し大気圏付近で戦闘した際にシャアを回収するのに使っていたが、あんなの局地戦も良いところ。
ただでさえ資源のやり繰りに苦労しているのにムサイ級にコムサイを取り付けた状態で建造するのは担当をぶん殴ってやりたい。
……まぁそれを設計したのうちの上司で、現ジオン軍の主要軍艦は彼が設計したのが殆ど……一応俺の艦設計の師匠であり、ザビ派の家柄とは言え大学卒業したての若造が少佐の地位に就けたのも彼のお陰ではあるから強くは言えない……。
(元の素質が良かったから中、高は飛び級、工科大学の後に士官教育を22歳で卒業、その後は開発局所属……)
今まで周りからは実家やザビ家の権力を使ってトントン拍子に昇進しているお坊ちゃま扱いであったが、ここ最近はガガウル級駆逐艦のモビルスーツ運用のための改修案を通したり、重工作艦や輸送艦の予算を上から貰ってきたため、少しずつ認められ始めては居たが……。
(重工作艦の改修が完了すればその功績で中佐への昇進は決まっている。後は戦争で艦隊運用ができる人物を上は重宝するはずだ。原作キャラだと似た立場のアサクラ大佐……今は大尉で同じ開発局に居るが、彼も技術士官であるのにシーマ様を指揮下に置いていたから、俺も部隊が与えられるかもしれねぇな)
そんな事を考えたりもしていたが、ある情報をキャッチする。
(各種兵器開発を行なっている部署を統合して総司令部直属の技術本部に再編……かぁ……)
本部長にはアルベルト・シャハト准将が少将に昇格の上で配置される予定であるらしい。
(さて、どうする?)
総司令部直属になるとザビ家での派閥はギレン派に傾く事になる。
(地球侵攻作戦の際にはキシリア派の突撃機動軍の権限が強くなるはず……あそこはどちらかと言うと能力主義的側面がジオン軍でも特にデカい。ザビ家中枢に近い一家出身の俺に海兵隊の様な汚れ役はやらされないとは思うが……万が一がある)
(宇宙攻撃軍は安牌ではあるが、地球侵攻作戦の際に降ろされる危険性もあるな……となると残るは親衛隊……いやサイド3防衛隊か)
もう既にザビ家に近すぎるため、このままだとザビ家と関係が深いとして、一年戦争を生き残ったとしても戦犯は不可避。
ジークアクス世界に行ければ良いけど、ジオンが負ければ残党として生きるか潜伏するかのどちらか。
(幸い俺に惚れ込んでくれたのと二重スパイの様な動きをしてくれるシャルという手駒はできた……軍艦の設計に携わっていくだけではちと戦時に自由に動くことができない。アサクラにおけるシーマの様な艦隊運用ができる腹心を確保しないと……)
俺は上司に技術本部に再編の際に建造中の重工作艦の運用に携わることはできないかというのと、上層部に対して重工作艦を用いた戦前における特殊作戦のレポートを提出するのであった。
「重工作艦を用いたアステロイドベルトにおけるモビルスーツの運用実験及び資源採取作戦……か」
「発案者は開発局のフジワラ少佐……ああ、あの」
「せっかくの重工作艦を事故で失う可能性が高くないか?」
「いや、重工作艦だからだろう。まだ発展途上のモビルスーツは兵器運用するには乏しい。良くて資源採取や重機としてしか使えない」
「それならばプチモビでも良いのではないか?」
「いや、実験データを集めるのであればモビルワーカーで十分だろう」
上層部は本作戦を好意的に受け取っていたがギレン総帥はその書類を一通り見た上で。
「モビルスーツのコンペが終わる頃には重工作艦の全改装が終わるであろう。コンペで勝利した側のモビルスーツの整備は勿論、製造ができるかどうかの実験も行うように伝えろ。それに伴う人員の編成については提案者であるフジワラ少佐に一任する」
ギレン総帥の一声で本作戦は決定となり、同時にフジワラ少佐が発注した交易船を2隻も資源回収や資材運搬をするのに従事させるように指示され、本作戦名を旧世紀に大人気だったゲームと同じ名前のマインクラフト作戦と名付けられるのであった。
「マインクラフト作戦……まぁ確かにマイニング(採掘)とクラフト(創造、建造)になるけどさぁ……馴染み深い名前だから良いか」
というわけで本作戦の指揮権を俺は与えられ、部隊の編成を任された。
(本作戦が開始されるのは0075年の後半以後だから約1年は時間があるか……まぁ長く続けられる作戦でも無いし、徴兵された任期のある兵で志願意欲のある人達から選ぶか……志願した職業軍人はアステロイドベルトに行きたい人なんか居ないだろうし……)
根幹となる人員は勿論職業軍人から抜擢する必要があるが……。
「俺の年齢もあるし若手で囲みたいなぁ……ん! マジか」
候補者一覧の中にシーマ様の名前があったのである。
「シーマ様おるやん……26歳、士官教育を2年前に卒業し、現在中尉……か。艦隊勤務経験もあるし、俺でも知っているくらい不幸な人物だから助ける意味も込めて引っ張るか」
勿論シーマ様を引っ張るということは、シーマ様とは別の人がシーマ様の様な汚れ役をやることになるが……それを言っていたら始まらないだろう。
俺が本作戦開始時は中佐になるため、部下は少佐以下を選ばなければならない。
「後はモビルスーツの開発や整備が行える技術者……ジオニックやツィマッドから若手を派遣してもらうか。作戦前に人員集めてシミュレーターで基本操作を学んでもらうか……」