宇宙世紀ガンダム世界で生存戦略 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
(試作しても良いって言ったけど、ガンガン成長している天才ってこえーわ……)
工廠の片隅に足の無いザクⅠが転がっていた。
いや、足の部分が円柱型の大型スラスターへと換装されていた。
その姿を見て俺はとある機体の原型であることを確信する。
(デラーズ・フリートでガトーが乗ってたノイエ・ジールに似ている……)
上半身はザクⅠなのであるが、エンジンをツィマッド社製の木星エンジンに耐久性が高いルナチタニウム合金の比率を増やし、耐久性を向上した上で各種フレームを強化、あと木星エンジンにリミッターを取り付け、小型のサイドアームを取り付けていた。
人型ではなくなったし、全長も20メートルまで大型化。
コストもこの試作機はザクⅠ3機分ととんでもなくコストが高いが、それに見合う機動力を誇る。
『こいつは良いや! 今までのザクが自転車とすると、こいつはレーシング用のオートバイみたいなもんだぜ!』
『じゃじゃ馬だねぇ……でも高性能兵器としてはこれぐらいが丁度いいんじゃないかね?』
アベリー中尉とシーマ中尉のそれぞれの評価であり、乗りこなせた者達からの評価は比較的良かったが、射撃管制システムが試作機の速度に追いつけない問題が発生していた。
現実の兵器に例えると、時速300キロ代の複葉機の武器の中、いきなり時速700キロ近くの末期戦闘機並みの射撃システムを求められたら射撃は当たるはずがない。
これを初っ端から当てられるのはアムロかシャアとかのガチニュータイプの化け物達だけである。
ちなみに俺は危ないからと乗せてもらえなかった……残念。
「良いデータが取れたわ!」
「……木星エンジンの改善案も見えてきた」
技術者達は大喜びである。
宇宙空間だったら足に凝る必要は無いのではないか?
……と俺が言ったのが原因であったが、モビルスーツが月面作業重機として開発された側面があった為、ザクは足がちゃんと付いていたが、対連邦宇宙軍に限るのであれば足がある必要は無い。
「あと装甲は連邦宇宙軍の対空砲に耐えられるだけの装甲があれば十分。ミサイル攻撃やビーム兵器にはビームコーティングした盾があれば十分だろう」
ジオン軍はビーム兵器の小型化に手間取り、戦争末期に実用化していたが、ビームコーティング技術は無いのかと確認したところ、普通にあることがわかった。
ただビームコーティングはあくまで塗料なので、完全にビームを防げるわけではなく、連邦軍やジオン軍の軍艦から放たれるビーム兵器に対して1秒程度守れる程度の防御力しかなかった。
あと普通の塗料より高い問題もあったが、宇宙空間での戦闘を前提にすればビームコーティングの盾はあった方が良いし、ガンダムが出てきた際に対抗手段になりうる。
マインクラフト作戦が始まる前にザクの装備案としてビームコーティングの盾を要望したが、上層部は懐疑的であった。
(対艦攻撃を主任務とする初期ザクⅡこそ必要な装備だろうに……)
そんな事を思うが、今装備品の製造や研究が自由にできる環境なので、意見はガンガン言っておく。
まぁどう頑張っても携行ビーム兵器の開発は難しいだろうが……。
(一年戦争でノイエ・ジールが間に合えば一部戦局は打開できるだろう……何よりオールドタイプでも運用できる点が良い。まぁ技術的発展を考えるとザクをとにかくこねくり回したほうが良いんだろうけど……)
ただ今回の開発経験で成長補正のある技術者達の【開発】の数値はガンガン上昇し、新しい機体開発に弾みがつくのだった。
「人員の交換?」
『ああ、マインクラフト作戦が順調に進んでいることを受けて、初期人員の一部をサイド3に戻すよう上層部が決定した。主にパイロットになるがな』
アクシズの軍事拠点化に合わせて、一年戦争までは衛星通信を用いてサイド3との通信がアクシズでは行えた。
その為、マインクラフト作戦の人員の配置転換について報告を受けたのである。
『リストを今送る』
送られてきたリストを確認すると、こちらからは隊長であるアベリー中尉以外の男性パイロットが本国に戻されることになり、逆に送られてくるのはダイクン派の名家のご令嬢達であった。
一応今までの女性隊員達は家族がダイクン派で巻き添えを喰らった形なので軍に入隊して身分保障をするという手が使えたので自ら志願してマインクラフト作戦に従軍していたが、今回のリストの女性隊員は過去にザビ家に対してデモを行なったり、反抗した形跡がある者達であった。
『パイロットとして使い潰してくれて構わない』
上官からそう言われるが、恐らくうちの部隊の女性パイロット達ザクⅠで戦場に出されることになりそうである。
「了解しました。試作品を含めて人員交換の際に輸送艦でパイロット達を送ります」
『うむ、上層部は君の手腕を期待しているよフジワラ中佐。ああ、そっちに居る人員は好きにして構わないと君の父上からの伝言だ。良かったな。ハーレムだぞ』
「お気遣い感謝します」
『ふん』
ブチッと通信が切れる。
俺は直ぐにマーズとカガリの2人を呼ぶのだった。
「今のザクの姿を変えない状態で可能な限り高性能化させる……ですか?」
「できないか?」
「前にも言ったけど今のザクだとこれ以上は無理」
「そうか……」
「政争に巻き込まれている感じ?」
「うーん、そうなんだよな。今のままだと女性パイロット達が使い潰される可能性が出てきた」
「……それは困る」
「嫌ね……ジオンが独裁国家ってことを改めて思い出すわ」
「新型ザクの案はどうなった?」
「一応こっちにも設計図が送られてきたけど」
「それ作れないか?」
「「うーん」」
難しいのは分かっているが……どうかと頼み込む。
「色々試してみることにするわ」
「……マインクラフト作戦中は抹殺される可能性は無い?」
「それは無いと思うぞ」
「……時間が必要」
「まぁマインクラフト作戦は0078年9月まで続くから頼むわ」