俺、転生先はチートハーレムって言ったよね??   作:むにゃ枕

1 / 6
EP.1
01.赴任ガチャ失敗


 チートハーレムとかなろう系とか、世間じゃ散々な言われようだ。でも俺は、胡散臭い自称神に転生特典について聞かれた時に、チートハーレムを望みました。

 だって、女の子にモテたいじゃん。チートで敵をねじ伏せたいじゃん。前世は陰キャの弱者男性だもん。

 

 そうしたら、転生先は宇宙世紀だった。しかもサイド3。もうね、詐欺かと。許さねえからなあの自称神。そう思いました。

 

「トーチ・リオシュ中尉。喜べ。栄転だ」

「栄転ですか? 俺は今の待遇で満足してますよ」 

「後方の教導隊で? お前みたいなエースパイロットが?」

「ええ。俺は足るを知る男なので」

「エースってのは冗談も上手いな」

 

 中佐は、俺の背中をバンバンと叩いた。ははっ。普通に痛い。それに、俺は冗談を言っていない。そもそも俺は、モビルスーツでの戦闘が好きじゃないんだ。

 俺のチートは、ちょっとした未来予知だ。いわゆるニュータイプ能力ってやつ。この選択をしたら死ぬってことが分かる。だから、咄嗟に生き延びる選択をしてきた。

 

 この能力を活かして、俺は戦争序盤でスコアを稼いだ。もう重力戦線がはじまっている。そのうち連邦のジムが出てくるだろう。

 そうなったらチート頼りの俺は死ぬ。俺は序盤でスコアを稼いだ単なる雑魚狩りの専門家だ。つまり雑魚専なのである。モビルスーツ戦なんてムリムリ。

 

 セイバーフイッシュ、トリアーエズとかの戦闘機。パブリクとかの航宙機がメインの獲物だ。補助艦小型艦もスコアになる。

 サラミスとかマゼランは狙わない。腐っても巡洋艦と戦艦だ。シャアみたいな本物じゃない限り、こういった主力艦とやり合うのは薦められない。下手したらこっちがやられる。

 

 俺みたいな姑息なチート頼りの偽エースパイロットは、後方の教導隊でぬくぬくしているのがお似合いなのだ。

 コロニー落としに反対して左遷されてから、俺は後方勤務しかしていないロートルだ。今更前線なんてムリムリカタツムリ。やめてクレメンス。

 

「どうしても、俺じゃなければダメなんですか? 俺には教官としての責任が有ります。今の教え子が卒業してからでも……」

「ダメだ。中尉。これは命令だよ。中佐である私からの命令でもあり、上からの命令でもある」

 

 上と来たか。嫌だなあ。俺は平凡な中尉だよ……権力闘争に巻き込まないでくれ。

 

「上ですか…? ドズル中将? ……キシリア少将ですか?」

「さてね。私に、そのことを知る権限はない。君、正直すぎるからね。ほら、辞令だ。先方は首を長くして君を待っておられる」

 

 中佐に追い出されるように基地を出る。纏めた私物はあとで送ってるもらえるという。

 来るように指定された場所はベイエリアだ。艦艇勤務になるのだろう。詳細は記載されていないので、よく分からない。嫌だなぁ。

 

 Eバイクを駆る。回した瞬間にトルクが出てかなり速い。内燃機関なんてものは密閉空間のコロニーじゃ存在しない。

 空気税なんてものまであるくらいだ。空気は重要なものなのである。内燃機関の排ガスでは汚せない。

 

 その空気税が、コロニーに還元されずに地球に住む人々のために使われているのはどうかと思うけどな。

 

 現状を変えるために言葉で訴えようにも、スペースノイドには参政権も投票権もない。もう終わりだよこの国。

 だから、ザビ家が持て囃されたのだろう。俺は、同じスペースノイドに対して毒ガスやら核やら使ったのも、コロニーを地球に落としたのも全く同意できないけどな。

 

「そこのバイク。止まれ!」

 

 ベイエリアに入る検問で誰何される。警備に立つのは青年に毛が生えたような青々しい兵隊だ。

 レビルの言うジオンに兵なしとはこのことだな。

 

「身分証を提示しろ。ここは民間人の立ち入りは禁じられている」

「トーチ・リオシュ中尉だ。話は通ってないのか?」

「中尉?? し、失礼しました」

 

 羽織っていた外套の襟から階級章を見せると、警備兵は納得したようだ。そもそも、連絡がいっていないのだろうか。

 俺は下っ端将校だが、腐っても将校でありバイクの所持くらいは許可されている。異動に辺り許可証も先方に出している。

 

 報連相出来てない?? ヤバくね??

 

 出迎えに来た黒髪お団子准尉。彼女に案内された先には、ムサイ級があった。外装がピカピカである。新造艦だろう。となれば乗っているのは新しく編成された部隊である可能性が高い。

 オープニングスタッフみたいな立場になるのか。嫌だなぁと思ってしまった。

 

「こちらです。リオシュ中尉」

「案内ありがとう。准尉、君もこの艦のクルーだったりするのか?」

「ええ。お嬢様の付き人をさせていただいております」

 

 お嬢様? 付き人? およそ軍隊に似つかわしくない言葉が准尉の口から飛び出してきた。これは、酷いハズレくじを引いたのかもしれない。

 

 通されたムサイのブリッジ。そのキャプテンシートには、およそマトモな軍隊にはいないような存在が座っていた。

 シートの動きに合わせてブロンドが揺れる。スラリと伸びた白い脚が艶めかしく動く。

 

 少し捲れた黒いミニスカートと太腿の間からは、色とりどりの水玉が浮かんだ白い布地が見えていた。

 

「あなたがトーチ・リオシュ中尉ね。私は、このフネの艦長であるフリューゲル・ティルピッツ少佐よ。よろしくね」

 

 パンツ丸見えお嬢様の口から、意味が分からない音が生じている。こんな奴が少佐だと? 俺より若いのに? 士官学校も出てないようなガキだぞ。マジで意味が分からない。

 落ち着け。冷静にならなければ……

 

 目の前のお嬢様の水玉パンツを見ていたら、俺は冷静になった。

 

「ははーん。これは盛大なドッキリだな。准尉。君がこの部隊の指揮官か? 階級の詐称は重大な軍規違反だぞ」

「いえ、フリューゲルお嬢様は紛れもなく少佐で、このムサイ級コンクエスタの艦長です」

「いやいやいや、冗談キツイぜ……そこの、軍曹。冗談だよな?」 

 

 俺が呼び止めた軍曹は、黙って首を振った。

 

「ティルピッツ家という名前をご存じですか?」

「…知らん。准尉さんよぉ……俺は権力って奴が大嫌いでね」

 

 金で階級を買えるという噂は聞いたことがある。目の前のお嬢様もそんなタイプだろう。最悪だ。コイツらはザビ家の威光にあやかる寄生虫である。左遷された俺を、新編部隊のモビルスーツ隊の幹部として都合良く使おうってハラだ。

 

「何か誤解があるようね。私はあなたのザビ家に対して意見するようなところを気に入っているの。私はチカラが欲しいのよ。ザビ家の意のままにならないチカラが。だから、軍に入って出世しなければいけない。

 私に力を貸しなさい。トーチ・リオシュ中尉」

  

 コイツらダイクン派かよ!! クソが!! より悪いわ!

 

 お嬢様はキメ顔で言っているが、ずっとパンツが見え隠れしている。付き人の准尉は特に何も言わないスタンスらしい。

 

「俺が力を貸すか、貸さないかはひとまず置いておく。誰も突っ込まないから言うんだが、ティルピッツ少佐殿、下着が見えておりますよ」

「へ…?」

 

 お嬢様はようやく自身のスカートがずり上がっていることに気が付いたらしい。慌ててスカートを戻している。

 白い肌が真っ赤に上気している。

 

「へ、変態っっ…! レビィ。どうして言ってくれなかったの!? みんなに見られちゃったじゃない」

「痛い目に遭わないと、学ばないと思いまして」

「バカ! 意地悪!」

 

 嗜虐的な笑みを浮かべるレビィ准尉。へー。そういう趣味なんだ。

 

 混乱に乗じて、俺はブリッジを抜け出した。教導隊の中佐は全部知ってたに違いない。あの糸目モノクル女、隠れダイクン派じゃねぇか。俺をダイクン派の仲間だと思ってやがった。

 

 ザビ家にチクろうかな…… いや、そんなことをしたら俺も仲間とみなされて殺されるかもしれない。

 

 帰ろうかな〜と思っていると、パイロット徽章を付けた兵に声を掛けられる。

 

「隊長殿! お久しぶりであります。自分を覚えていらっしゃいますか?」

「イッシュ伍長じゃないか。出世して今は軍曹か。良かった。会えて嬉しいよ」

「えへへ。その…自分も隊長殿と会えて嬉しいです。その、デー、いえ、一緒に食事に行きませんか?」

 

 かつての部下であったイッシュ軍曹。左遷のゴタゴタで別れたが、色々あった仲だ。

 彼女が俺に好意を寄せているのは薄々察していた。こうも真っ直ぐな好意を向けられるとすごく嬉しい。

 ハニートラップ……? 知らない言葉ですね。

 

「この部隊なら隊長殿とご一緒できると聞いて、待っていました。それにこの部隊はお給料が高いのです」

 

 そこのところ詳しく。

 

 自分に好意を持ってくれている女の子がいて、給料が高ければそれで良くないか? ダイクン派……? なにそれ美味しいの?

 

 悔しいけど女の子とお金には勝てない。

 

 ごめん、教導隊には戻れません。今、ダイクン派の巣窟にいます。政治的にヤバそうだけど、お給料が良いらしくて俺のことを好きそうな女の子がいるので、今はもう少しだけ、知らないふりをします。

 

 この部隊、かなーりヤバそうだけど後方で燻るのにも飽きてきたからな。へへ、断じて金と女に釣られたわけじゃない。へへへ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。